日本国召喚 AIに二次創作を書かせてみた 作: まっこーける
イルネティア東部の港湾都市、アルーカ沖。
群青の海原の真っ只中に灰色の点が多数浮いていた。それらは海上自衛隊の護衛艦隊であり、その中心に一際巨大な艦が鎮座していた。
強襲揚陸艦『しまばら』とその同型艦『おおうら』である。
しまばら型は新鋭の揚陸艦だ。満載排水量は50000トンに達し、その全長は250メートルを超える巨艦である。
アメリカ海軍のアメリカ級強襲揚陸艦フライト1以降の艦をモデルとしており、その設計思想は、日本版海兵隊の水陸機動団の運用を想定したものとなっている。
その甲板上では多くの人員や機体が忙しく動き回っていた。
そして、その中に混じっている一人の陸上自衛官がいた。
彼の名は木村三等陸尉。所属は水陸機動団の小隊長である。
彼は光学照準器を始め様々なアクセサリーが装着された20式小銃をスリングによって前にぶら下げ、従来よりも軽量かつ高機能な4型防弾チョッキを着用している。しかし一番の見かけ上の特徴は強化外骨格(エグゾスケルトン)を着込んでいることだろう。
これは、陸上自衛隊が普通科用に開発したもので、人工筋肉などを組み込んだパワーアシストスーツであり、着用者の全身の筋力を増強させる効果がある。
これにより大量の装備や弾薬を持ち歩いてるにも関わらずその重さを感じさせない。
なお、この強化外骨格は、防衛省技術研究本部が開発・試作したものであり、現在、水陸機動団で試験運用中である。
「小隊集合!」
木村の号令と共に、隊員たちが整列する。
「これより我々はイルネティアのアルーカへ上陸。同市を占拠するグラ・バルカス帝国軍を撃滅します。目標は敵司令部が置かれている市庁舎の制圧。あらゆる障害は実力を以て排除。その為の手段は問いません」
「質問よろしいでしょうか?」
「何ですか? 藤代三曹」
精悍な顔つきをした男性自衛官が挙手していた。
「アルーカを守備する敵部隊は、どの程度の規模なのでしょうか?」
「総数は不明ですが、少なくとも3個大隊規模の戦力が確認されています。」
「支援は?」
「UAV(無人機)による航空攻撃が提供されます。呼び出し符丁は『ツルギ』。さらに必要に応じて艦砲による砲撃も行われる予定となっています。他に質問は?」
しまばらには日本が開発した無人攻撃機MQ-3が艦載されている。これは中型の無人機で対地ミサイルの他に様々な武装が搭載できる機体だ。
「ありません」
「結構。それではオスプレイに搭乗してください」
「了解」
「小隊、搭乗開始」
小隊の面々が次々とV-22オスプレイに乗り込んでいく。
「小隊搭乗完了」
「よし、発進準備」
「離陸します」
ローターの回転数が上がり轟音となり響く。機体が浮き上がり空へと舞い上がる。
眼下には海が広がり、遠くに黒煙がたなびくアルーカの町並みが見える。
しまばら、おおうらから発艦したV-22は十数機の編隊を組み前進を開始した。
◆◆◆
アルーカより10キロ東の海上に1隻の武装漁船が遊弋していた。これはグラ・バルカス帝国からイルネティア王国へ、対海魔用として供与された物であり、全長11メートルの船体に、7.92ミリ機関銃と、13ミリ機銃を搭載している。船員は元イルネティア王国海軍の水兵であった者たちだ。
イルネティア王国海軍はグラ・バルカス帝国に敗北した後、解体され、その人員の多くは新たに創設されグラ・バルカス帝国イルネティア沿岸防衛隊に組み込また。彼らはグラ・バルカス帝国の軍事顧問団により訓練を施された後、帝国の武装漁船や砲艇を供与され、近海の警備任務に就いている。
今回も、グラ・バルカス帝国イルネティア防衛軍からの指令を受け、この海域に配備されているのだ。
「船長!向こうから変な飛行機械がたくさんやって来ますぜ!!」
見張り員の声が船内に響き渡る。船橋にいた船長が双眼鏡を手に取り前方を見る。
「なんだありゃ!? 鳥か?」
「いや、飛行機ですよ。プロペラの付いた空飛ぶ乗り物ですよ。あれは……」
「司令部に報告して指示を仰げ。戦闘になるかもしれないぞ。総員戦闘配置。対空戦闘用意。各個射撃でいい。撃てるものなら撃ち落とせ。」
「アイサー」
数分の後、司令部より無線が入る。
「こちら司令部。貴船よりの報告を受領した。当該空域に接近しつつある不明の航空機は敵である。発砲を許可する。繰り返す、発砲を許可」
「了解しました」
通信士が無線機に向かい返答する。
「全砲門開け!! 目標、敵航空機群。」
「アイサー」
船首と船尾に設置された機関銃が旋回し仰角を取る。
「発射っ!」
ダダダッという連続音をたて機銃から曳光弾が数珠繋ぎに放たれる。それらはオスプレイに向かって飛翔していく。
しかし、その弾丸はオスプレイを捕らえることは無い。
「とにかく撃ち続けろ。やられる前にやっちまえ!」
「おう」
さらに、機関銃による銃撃が続き、空に曳光弾が舞う。
◆◆◆
「前方の漁船より発砲!」
木村の耳に飛び込んできたのはそんな声だった。
(無視するか、排除か……)
木村が逡巡する。次の瞬間、共通回線に別の声が飛び込んできて、彼は思わずインカムに手を当てた。
「こちらスズメ1。武装漁船を排除する」
声の主はヘリボーン部隊を護衛する陸自の新型攻撃ヘリOAH-2のパイロットだ。後部に推進用プロペラを備えた高速ヘリコプターであり、オスプレイに追従が可能な高速性能をもつ機体だ。
OAH-2のパイロットはヘルメット照準システムに武装漁船を捕らえるとロックオンする。それに連動しそのスタブウィングに取り付けられたJAGM(統合空対地ミサイル)の複合シーカーが起動した。
「ターゲット補足。ファイア」
轟音とともにスタブウィングから切り離されるJAGM。
それは空中を疾走すると、漁船に突き刺さり、そして爆発する。
爆炎に包まれ炎上しながら漂流する武装漁船はやがて波間へ姿を消した。
「前方に新たな敵船!」
OAH-2の操縦士の声が響く。アルーカの方向から新たな敵である砲艇が向かって来ていた。
「スズメ1。これより敵船を排除する」
「了解」
木村は小さくうなずきながら言った。
◆◆◆
「くそっ! 何だあの化け物は。」
「対空機関銃を撃ちまくれ! 当たらなくても牽制にはなる」
「了解!」
甲板上の13ミリ重機関銃が吠え、曳光弾が飛ぶ。しかし、それはOAH-2に掠りもしない。
万が一命中したとしても、複合材で構成され、コクピット周りは23ミリ機関砲に抗湛する機体はそう簡単に墜ちないだろう。
「くそったれがぁ!!」
船員の一人が叫ぶと同時に、JAGMが砲艇に着弾し炸裂した。
「ぐわあああっ」
排水量50トン程度の砲艇は、一瞬にして真っ二つに引き裂かれ海中に没していった。
◆◆◆
「周囲に船影なし。オールクリア」
「了解」
武装漁船と砲艇を排除した水陸機動団の面々は、再び編隊を組み、やがてアルーカ市街地上空へと到達した。
眼下には、石造りの町並みが広がっており、遠くに黒煙が見える。その時建物の合間や屋上から白煙を曳く物体が多数撃ち上げられる
「ロケット!ロケット弾です!!」
「各機散開。回避せよ」
なるべく分散して飛行し、敵の射点から逃れる。
しかし、彼らの眼下からはさらに多くの無数のロケット弾が飛来してくる。ガンナーがオスプレイ下部に取り付けられている遠隔操作ミニガンで地上を掃射し、地上へ弾丸のシャワーを浴びせる。
「もうすぐランディングゾーンに到達。あと少し耐えてくれよ」
機長の言葉通り、ほどなくして彼らはランディングゾーンである中央広場に到達し、ホバリングを開始する。
「全員降着! 降着!」
水機団隊員たちが20メートル上空でホバリングするオスプレイからそのまま飛び降りる。生身なら危険な高度だが着地の衝撃は身につけたエグゾスケルトンが緩和してくれる。木村たちは素早く散開して周囲の安全を確保する。
「隊長。敵は?」
「まだいるでしょうね。しかし、あれだけの数のロケット砲があるとは思いませんでした」
彼らが今立っている場所は、既に市街の中心部であり、周囲には民家や商店が立ち並んでいる。
しかし、それらの建物は、そのほとんどが木造か石造の建物である。
「RPGもどきに、M2ブローニングもどきか。ここは異世界だというに……まるで地球の第三世界みたいだ」
「我々の任務は、この都市を制圧し、敵戦力の無力化を図ることです。」
「わかっています。行きましょう」
木村は、部下たちに指示を出し、周囲警戒を命じると自身も周囲を見回しつつ歩き始めた。
「敵襲ー!! 日本人だー!!!」
突如として響き渡る叫び声。木村たちの目の前では、数十名ほどのグラ・バルカス兵の集団が、手に持った自動小銃を構えて、こちらに向かってきているところだった。
「コンタクト!」
木村はすぐに20式小銃を構え、先頭の兵士の胸部に照準を合わせる。そして引き金を2度絞った。その間0.3秒
乾いた破裂音が響くとともに、光学照準器の中でグラ・バルカス兵が仰向けに倒れる。
突然倒れた仲間を見て驚く兵士たち。その隙を逃さず、他の兵士にも銃撃を加える。
20式の銃口が火を噴くたびに一人また一人と倒れていく兵士達。
「撃て、撃ち殺せ!」
グラ・バルカスの指揮官らしき兵士が叫ぶ。すると、その声に応じて残った兵たちが、手に持つ自動小銃を発砲してきた。
だが、藤代三曹がミニミ軽機関銃の射撃を開始し、銃弾の嵐が彼らを襲う。さらに他の隊員の射撃も加わりグラ・バルカス兵を撃ち倒していく。
「ぎゃあああっ」
悲鳴を上げながらバタバタと崩れ落ちる兵士たち。水機団隊員の射撃は非常に正確であった。彼らの練度もさることながら、エグゾスケルトンの恩恵も大きい。
これにはパワーアシシト機能も備わっており射撃の反動を
軽減する機能が備わっている。5.56ミリ弾の反動はほとんど感じられない程だ。
「タンゴ、ダウン」
藤代の一言により戦闘は終了する。すでに周囲に動くものは見当たらない。
「隊長、制圧完了しました」
「了解。UAVを展開してください」
「わかりました」
命令を受け隊員の1人がバックパックからハンドローンチ式の小型UAVを取り出し射出する。高性能バッテリーによって駆動するUAVには様々なセンサーが装備されており、小隊の索敵能力を飛躍的に高める。
「周囲はクリアです」
UAVから送られてくる市街地の映像をタブレット端末で確認した隊員が報告する。
「了解。周辺を警戒しつつ、市庁舎へ向かいます」
木村の指示に従い部隊は移動を開始した。
◆◆◆
アルーカ市街地内。
「日本の奴らヘリコプターみたいな物を飛ばしてきましたよ。しかも、あんな大きなものを。」
双眼鏡を覗いていたグラ・バルカスの見張りの兵士は、隣に立つ同僚に話しかけた。
「ああ。ヘリコプターは俺達の国でも試験的に一部で運用され始めたばかりなのに」
「やはり日本は相当進んでるみたいですね……まぁいい。アレの準備をしろ」
「了解」
「しかし、あのヘリを落とせるのか? 」
「大丈夫ですよ。我々にはあれがある」
そう言って、彼は足元にある物体を指差す。それは全長70センチほどの大きさで円筒形をしたものだった。
「しかし、本当にこんなもので、あいつらを撃墜できるんですかね?」
「そりゃ墜とせるだろう。ま、当たればの話だが」
2人は、手元の資料を見ながら話している。そこには『ブル2対装甲ロケットランチャー』と書かれている。
「よし、準備できたぞ。いつでも発射可能だ」
「次弾装填は頼むぜ」
「任せておけ」
彼らは、ブル2を抱え上げると、そのまま建物の陰に隠れる。そして、ロケット砲の照準を上空のV-22へ向けると、引き金を引いた。
ドォンという音とともにロケット弾が打ち出され、空へ消えていった。
「外れた。もう一発いくぞ!」
ブル2の砲口からロケット弾をねじ込もうとするが、なかなかうまくいかない。
「おい! 早くしてくれ!!」
「うるさいな!! 今やってんだよっ」
「下手くそめ!」
「なんだと!?」
言い争いを始めた2人だったが、上空から徐々に近づくOAH-2のエンジンの爆音に気付くと、慌ててロケット砲を構え直す。
「やべぇよ、やべぇよ。来るぞ!!」
「お助けぇー!!!」
彼らが叫び声を上げた瞬間だった。
OAH-2の下部から放たれた30ミリ機関砲弾が、2人をブル2ごと粉々に吹き飛ばす。
叫び声を上げる暇もなく一瞬にして絶命する。
「さっさと射点を変えないからだ。バカが」
OHA-2のガンナーは無表情のまま呟いた。
◆◆◆
アルーカ港。この港湾区画はグラ・バルカス帝国を開発の手がかなり入っており、近代的な様相を呈していた。港の浚渫も済んでおり、大型船の入港も可能な程だ。
「隊長、日本の水陸両用車らしき物が接近しています」
港の一角で双眼鏡で海上を監視していたグラ・バルカス兵が言った。
「数は?」
「15両です。おそらく歩兵を輸送するための車両かと」
その言葉を聞いたグラ・バルカスの隊長は、部下に指示を出す。
現在、彼らが展開しているのは、アルーカ市の港湾区画である。この地区には船揚げ場があり、上陸が容易なため敵が上陸した場合に備え待機していたのだ。
「よし、射程に入りしだい攻撃せよ」
「了解」
命令を受けた兵たちは、一斉に自動小銃や機関銃を構え始める。
「距離、500メートルを切りました」
「撃てー!!」
指揮官の声と同時に発砲音が鳴り響く。
しかし、小銃程度では水陸両用車は撃破できない。
「ブル2発射用意」
だが彼らは必中を期すためブル2をギリギリまで温存したのだ。
「距離300……250…….200……」
「まだだ。もっと近づけろ」
その時であった。
突如として砲弾が飛来し、グラ・バルカスの部隊を潜む建物ごと薙ぎ払う。
「うわぁああっ」
悲鳴を上げながら倒れる兵士達。砲撃の正体は沖の護衛艦の127ミリ速射砲から撃ちだされた誘導砲弾によるものだ。
上空を監視するUAVからの情報と誘導を元に、正確な射撃を行ったのである。
上陸前に徹底的に市街地を砲撃してもよかったのだが。自衛隊としては市街地への被害は最小限に抑えたかったし、なにより補給を容易に受けられない立場にある。そのため、弾薬の消費を避けるため敵の位置を把握してから攻撃を行いたかったのだ。
「ちくしょう……」
「痛いよぉ」
「ひぃいい」
倒れたまま動けずにいるグラ・バルカス兵達。
そこへ、さらに追い討ちをかけるように、水上を25ノットという高速で駆ける陸自の新型水陸両用装軌車の、25式水陸両用車が船揚げ場から姿を現す。
「こちら1号車! 目標を制圧する」
25式は砲塔に備わっている35ミリ機関砲を連射しながら前進していく。
「うぅ……くるなぁああ」
なんとか砲撃を免れたグラ・バルカス兵は必死に逃げようとするが、35ミリエアバースト弾によって次々と薙ぎ倒される。
25式は搭載していた水機団の隊員を展開する。そして無惨な肉塊と化したグラ・バルカス兵らを容赦なく履帯で踏みつけながら、水陸両用車部隊は市街へと進攻していく。
◆◆◆
アルーカ市庁舎。グラ・バルカス陸軍イルネティア東部方面隊防衛隊司令部にてレイナルド・エア少将は、戦況の報告を聞いていた。
「報告! 日本軍がアルーカ中央広場を占拠しました。市街各所に浸透しつつあります」
「報告!、港湾部からも日本の装甲部隊が上陸! 各所で我が軍の防衛陣地を次々に突破しております」
「報告! Dブロックに展開していたアントン中隊との連絡が途絶しました。さらに通信網に攻撃を受けております」
レイナルドは次々と舞い込んでくる凶報に顔をしかめる。
(やはりここに日本が来たか……)
予想通りではあった。
だが、それでも想定外なのは自衛隊の動きの速さだ。
「奴らの進撃速度は脅威的です。閣下! ここは危険です! 避難された方がよろしいのではないでしょうか」
参謀の一人が進言してくるが、彼は首を横に振る。
「馬鹿を言うな。我々がここで逃げたら誰がアルーカを守るんだ? 我々は最後まで戦い抜くぞ!」
「しかし、閣下。北部からムーも迫りつつあります。このままだと包囲されます。今は西部へ撤退しましょう。そうすれば、まだ勝機はあります。我々の任務は異世界連合軍を撃退する事です。ここで死ぬことではありません」
「く…それはそうだが……」
彼の言うことは正論だった。確かに今の状況でアルーカ市を放棄するのは得策とは言えない。
だが、だからといって、この場で戦うことに何の意味があるのか? そんな疑問を抱く。
「失礼します!!」
突然、扉が開かれ一人の兵士が入ってくると、息を切らせながら言った。
「緊急連絡です。ムーの戦車部隊と思われる車両がアルーカ北部に出現!! 現在、第53連隊と交戦中です!」
「なに!?」
レイナルドの目が驚愕で見開かれる。
「閣下! もしムーが機械化された部隊を上陸させたとなると進撃速度は相当なものです。もはや一刻の猶予もありません。どうか撤退の許可を」
その言葉を聞いた瞬間、レイナルドは撤退を決断した。
しかしこのまま逃げるわけにはいかない。追撃を食い止め、少しでも敵の侵攻を遅らせるべきだと判断したのだ。
ここで1人の男が名乗り出る。
「レイナルド閣下。殿は小官にお任せください」
彼はアルーカ市防衛隊指揮官であるビアス中佐であった。
「ビアス中佐、貴様何を言っているのだ?」
レイナルドの問いに対し、ビアスは淡々と答える。
「私の任務はアルーカ市防衛であります。それに、ここには私の部下や無辜の市民が大勢おります」
「……」
「私は軍人として最後まで戦います。どうかご命令を」
「わかった。貴様に命運を預けよう。頼むぞビアス中佐」
「ハッ! なるべく長く日本人共を敵を食い止め、1人でも地獄へ道連れにしてやりますよ」
ビアスが敬礼すると、部下達と共に部屋を出ていく。
残されたレイナルドは、しばらく考え込むと、意を決したように立ち上がった。
◆◆◆
一方、木村三尉率いる水機団の小隊は、水陸両用車部隊と合流を果たしアルーカ市内を移動していた。
「こちら1班。敵影なし。これより前進する」
『了解』
木村たちは市街中心部の大通りを進む。大通りは先程までの戦場騒音が嘘みたいに静まり返っていた。
「どうやら敵は市庁舎周辺を固めてる模様です」
「激しい戦いになりそうですね……」
藤代の言葉を聞きながら、木村は呟いた。そのときUAVタブレット端末を確認していた部下が声を上げる。
「隊長! 左前方の曲がり角より歩兵30人及び戦車が3輌が接近してきます!車種はハウンドⅡ」
「了解。MQ-3に支援をさせます」
木村は無線機の周波数を変更すると無人機のオペレーターを呼び出す。
「ツルギ2、こちら赤の16。航空支援を要請。座標はD114514……その位置にる戦車を片付けてください」
「要請を受領。目標補足。ライフル」
上空を飛行している無人攻撃機が、対地ミサイルを発射した。ミサイルは先頭を往くハウンド戦車に命中し炸裂。爆発の余波は付近の歩兵を巻き込んだ。
続けて発射されたミサイルも2両目にも命中し、ハウンドを燃える鉄くずへと変える。しかし、ここでMQ-3からの攻撃が途切れてしまう。
「ツルギ2。残弾なし」
「もう弾が尽きたかのですか? 確か12発程搭載できるはずでは?」
「支援を必要としてるのはお前たちの部隊だけではない。バカスカと撃ちまくってたらあっという間になくなるさ。ツルギ2帰投する」
「了解。支援感謝します。交信おわり」
ドローンからの映像を確認する限り、アルーカ市庁舎周辺で特に激しい戦闘が行われているようだ。
「ツルギ2は弾切れで帰投しました。残りの戦車は自分達で対処します」
木村はそう言うと、他の隊員達に指示を出す。
「マイクロミサイルで戦車を叩きます。援護を」
「了解!」
木村は20式の下部にアドオン式で取り付けられた40ミリグレネードランチャーへマイクロミサイルを装填する。
「合図で攻撃開始。3、2、1、今!」
木村の合図で、小隊員たちが曲がり角から飛び出し、射撃を開始した。
20式やミニミから放たれた銃弾は、ハウンド戦車を撃破されたため未だ態勢を立て直せてないグラ・バルカス兵を次々に貫いていく。
「木村小隊長! 照準よし!」
1人の隊員が20式に装着されているレーザー照準器をハウンド戦車に向けながら叫ぶ。彼のレーザー照準器からは不可視のレーザーがハウンドに照射されている。
「発射」
木村はグレネードランチャーのトリガーを引く。それと同時にマイクロミサイルは射出され一直線に飛翔した。そして、砲塔正面に激突し起爆する。
一拍遅れてハウンドのハッチから火柱が噴き出した。
それに追い打ちをかけるように木村たちは残存のグラ・バルカス兵へ銃撃を浴びせる。
グラ・バルカス兵たちも負けじと応射するが、圧倒的な練度と射撃精度を誇る木村の部隊を止めるには至らない。
「敵が撤退していきます」
「慈悲は不要です。撃ちなさい」
木村たちは逃げるグラ・バルカス兵の背中へ容赦なく銃弾を撃ち込む。1分もしない内にグラ・バルカス兵は皆地面に倒れ伏した。
「敵殲滅」
「了解。小隊、前進を再開」
小隊は大通りを進み、市庁舎を叩くべく進軍を続ける。
◆◆◆
アルーカ市庁舎は4階建ての建物だ。建物の窓という窓から銃火が瞬き、水機団に包囲されつつも、熾烈な攻防戦を繰り広げていた。
「撃ぇええい!!」
「うぉおおおッ!!!」
怒号と銃声が飛び交う中、アルーカ市防衛隊指揮官であるビアス中佐は3階で部下と共に戦っていた。
「この日本人野郎!! 死ねぁあああ!!!」
ビアスは叫びながら割れた窓から自動小銃を乱射する。既に部下達は半分ほど死に絶えていた。それでもなお彼らは戦い続ける。
「くそったれがァアアッ!!!」
ビアスが絶叫し引き金を引く。バンと銃弾が発射されるが、それを最後に遊底が後退したままになる。弾切れだ。
ビアスはポケットに手を入れ弾薬クリップを探る。だが、そこにあったはずの予備の弾薬はどこにもなかった。
「あ……」
彼は思い出す。先程最後のクリップを装填したことを。
「畜生が……! 弾、弾はどこだ?」
絶望が脳裏を支配すると同時に、背後に気配を感じ振り返る。そこには血まみれの部下の姿があった。
「中佐……すみません」
「おい……! しっかりしろよ……!」
「自分はここまでみたいですね……。どうか……ご無事で」
「待て……! 死ぬな……!」
部下は力なく笑うと、そのまま息を引き取った。
「日本人め…!」
怒りの感情が爆発しそうになる。その時、血まみれのスコープ付きボルトアクションライフルが視界に入った。
「これならまだ使えるか」
ビアスは血にまみれて、ぬるぬるした小銃を手に取る。ボルトを操作し、薬室を覗き込んだ。
「弾は2発入っているな」
弾丸を確認し再び装填すると、窓から市庁舎の玄関に向けて構える。
「日本人め思い知らしてやる」
スコープのレティクルに水機団隊員の胸を重ねる
「地獄に落ちろ」
ビアスはそう呟き、引き金を絞る。轟音とともに弾丸は放たれ、隊員を貫いた。スコープの中で隊員がゆっくりと崩れ落ちる。
「ざまあみやがれ」
そう言い捨てると、ビアスはボルトを操作し排莢すると再び小銃を構える。しかし、その瞬間だった。
「ぐおっ!」
突如とし爆風が窓の外から襲い掛かる。砕けた壁が石礫となって室内を吹き荒れ、ビアスの身体は壁へと叩きつけられた。
「うっぐうう」
朦々と埃が充満する中、ビアスは血が流れる頭を押さえ、よろめきながらも立ち上がる。
「中佐!大丈夫ですか!?」
駆け寄ってきたのは副官の男だ。
「問題ない……。それより何が起こった? 敵の新兵器か?」
「中佐それより早く逃げましょう! ここは危険です!」
「逃げるだと? もう完全に包囲されている。どこへ逃げるというのだ?」
「とにかく上階へ。少しでも長く生き延びて時間を稼ぐのです」
「……そうだな。よし行くぞ!」
副官に支えられながらビアス階段へ向けて歩き出す。
◆◆◆
1発の鋭い銃声。それと共に藤代が崩れ落ちた。
「スナイパーだ!」
「藤代三曹。しっかりしてください」
市庁舎から狙撃された藤代を木村は引きずり物陰へと退避する。ボディアーマを始め、様々な装具を身につける成人男性を引きずるのは普通なら難儀するはずだ。
だが、木村はエグゾスケルトンによって増幅された筋力によってそれを成し遂げていた。
「木村小隊長……どうやら肋骨が折れたようです」
放たれた銃弾は藤代のボディアーマーの抗弾プレートに命中。貫通こそしなかったが、衝撃により骨を折っていたようだ。
「応急処置をします」
「隊長、自分は大丈夫です。それよりスナイパーを……」
「スナイパーの位置は分かりますか? 84を撃ち込んでやろうかと思います」
「3階左から3番目の窓にいます。恐らくあそこから撃ってきました」
「了解。少し待っていてください。すぐに終わらせてきます」
木村は他の小隊員を呼び、84ことカールグスタフ84ミリ無反動砲の射撃を指示する。
「あそこの窓に向かって撃ちなさい」
「了解」
命じられた隊員は大幅に軽量化された新型84ミリ無反動砲を構える。
そして、照準を合わせ引き金を引いた。
ドォンと爆発音が響き渡り、対戦車榴弾が発射される。砲弾は弾痕だらけの3階の壁面に命中。どっと破片が飛び散り、壁面の一部が崩れ落ちた。
「吶喊!」
今の一撃で敵の銃火は確実に弱まった。その隙に25式を盾にしながら、水機団の面々は市庁舎内へ突撃する。
ドッドッドッと35ミリ機関砲を連射し、25式はグラ・バルカス兵を牽制する。そして1階の壁面へそのまま突っ込み、壁に大穴を開けた
「突入!」
25式が開けた穴から次々と隊員たちが突入していく。
「敵兵発見!」
「排除しろ!」
「くそったれが!」
「死ね!」
「殺せ!」
怒号と悲鳴、そして発砲音が入り乱れる中、木村の小隊も建物内部へと侵入した。
屋内では激しい銃撃戦が繰り広げられている。しかし、日本が優位にあるため徐々に制圧は進んでいた。
「3階は制圧しました!4階へ上がります」
3階はあちこちに死体があるものの、動く者は見当たらない。
木村を先頭に慎重に階段を上がる。内部は薄暗い為フラッシュライトで照らしながら進む。
4階の廊下を進んでいる時にそれは起こった。突如として物陰からビアスが飛び出してきたのだ。
「なっ!?」
「日本人め! よくもこの私にこんな屈辱を味わわせてくれたな!」
怒り狂うビアスの右手にはナイフ握られていた。それが一直線に木村へ振り下ろされる。
「ぐっ!」
咄嵯に木村は左腕でナイフを受け止める。その腕に刃が深々と突き刺さった。
しかし木村はまるで痛みを感じていないかのように平然と右腕を振り上げ、ビアスの顔面に掌打を打ち込む。エグゾによって増幅された一撃は簡単にビアスの鼻柱をへし折る。
「ぐあっ!」
鼻血を出しながらよろめくビアスに対し、木村は追撃をかけるべく右足を踏み込む。
しかし次の瞬間、突如として横合いから何者かが現れ、木村に向けて拳銃を構えた。そいつはビアスの副官であった。
「っ!?」
一瞬の判断。木村は自分の腕に刺さったナイフを引き抜く。同時に副官へ向かって投げつけた。
「うおっ!」
副官はそれをよけようと身を捩るが、僅かに遅かった。肩口にナイフが深く食い込んだのだ。
木村は副官の腹へ蹴りを叩きこむ。相手が倒れると同時に木村は振り返りざまに態勢を立て直そうとするビアスの胸へ掌打を連続で打ち込む。迫真空手の基本技の一つ『双打陽』である。
「ごほっ」
肺の中の空気を強制的に吐き出され、よろめいたところをさらに回し蹴る。
「ぎゃあああ」
胸部の骨が砕ける感触を味わいながら、木村は副官の方を見る。どうやら致命傷ではないようだ。
木村は素早く副官から拳銃を奪い取る。そしてそれを倒れ伏すビアスへ向ける。
「ち、ちくしょう……悪魔の日本人めぇ、さぁ殺すがいい……。だが最後に教えてやるぞ。お前たちは絶対に勝てん」
「お前は敗北した。大人しく降伏することです」
「ふ、ふざけるな。私は……偉大なる帝国の軍人だ。敗北など認めない」
「うるさいですね……」
木村は足を振り上げるとビアスの股間を思い切り踏みつける。
「アッーー!!!」
白目を剥き、絶叫を上げるとビアスは失神した。
「小隊長殿。大丈夫ですか?」
部下が駆け寄ってくる。
「ええ。大したことありません」
そう言うと木村は部下たちに指示を出す。
「この階を徹底的に捜索して下さい。まだ生き残りがいるかもしれません」
「了解です」
その後、市庁舎内と市街地の掃討戦はすぐに終わった。グラ・バルカス兵の士気は既に崩壊し、続々投降したからだ。
木村の小隊は降伏したビアスと副官を拘束すると市庁舎の外へ出た。既に日は暮れかけ辺りは夕日に染まっている。
木村は歩きながら刺された左腕の傷口を確認する。木村の左腕は一見すると普通だが、傷口からは機械部品の様な物が覗いていた。
木村は腕の調子を確かめるように手を握ったり開いたりしてみる。
「機能に問題なしですね」
「隊長の左腕は義手だったんですね……」
「ええ。転移前の紛争で失って以来、ずっと装着しています。慣れれば生身の腕みたいに動かせますよ。ほら、こんな風に銃も撃てるし、日常生活にも不便しません」
「再生処置は受けなかったのですか? 今の医療技術なら四肢再生ぐらいなら簡単ですよ、自衛官なら優遇制度もありますし」
木村は左手を軽く握り締める。
「このカーボンナノチューブ製人工筋肉とチタン合金で出来た腕は、生身の腕には真似できないような力も出せるんですよ」
「そうなのですか……」
「それにしても、まさか異世界に来てまでこんな戦いに巻き込まれるとは思いませんでしたね」
「全くです」
二人は顔を見合わせ苦笑する。
「ところでこの戦争、いつまで続くんでしょうかね」
「一つ言えるのは、まだまだ始まったばかりという事です」
「我々には帰る場所があるのですから、必ず勝って帰りましょう」
「ええ!」
こうして、陸上自衛隊水陸機動団によるイルネティア島上陸作戦は成功裏に終わった。
アルーカの市街地戦において自衛隊はグラ・バルカス帝国の陸軍部隊を撃破し、橋頭保の確保に成功した。
しかしまだイルネティア島全域での敵戦力の殲滅には至っておらず、島内には未だ残存兵力が存在している。
イルネティア島での戦いはこれからが本番なのだ。