俺ガイル2   作:ゴン1555

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プロローグ

「あ」

 

とうとう、降ってきた。

 

空港に着いたときから、いつ泣き出すかもしれなかった空は、ちょっとだけ意地を張り、その涙を冷たい風で凍らせた。

耳をつんざくジェットエンジンの音が、ゆっくり遠ざかっていく。

 

その騒がしさをかき消すように、空から降りてくる粉雪は、ますますその数を増やしていく。

 

俺は、そんな白さの源を探すため、真上にある空を見上げる。

いや、そんなのは言い訳で、本当は、目の前の現実から目をさらすために。

…具体的には、今飛び立っていくあの飛行機を、絶対に視界に収めないために。

 

とうとう降ってきた。

三人から二人が抜け出してしまった日にも。

 

 

そして今日…

二人から一人が去り、一人と一人が残されてしまった日にも。

 

「帰ろう…」

 

『あいつ』は去った。

そして、『俺とあの娘』だけが残った。

 

「帰ろうよ…もうここには何もないよ?」

 

「だな…」

 

言葉とは裏腹に、足は一歩も動かない。

空を見上げた視線を、声の主に戻すことすらしない。

 

そして、そんな突き放した態度を、謝ることすらしない。

 

一度、最低の裏切りをしてしまった相手だから。

もう、ずっと最低を貫くために。

 

「ずっとここから動かないって言うんなら…」

 

だから、俺なんかに優しいことばをかけないでくれ。

 

「わたし、こうしてる。あなたが冷えてしまわないように、ずっとこうしてるから」

 

背中に感じる柔らかさと温かさ。

 

俺の胸に回され、しっかりと握りしめられた両手の強さ。

 

「こうされることが嫌なら…あのこを裏切ってしまうって感じるなら…」

 

そして、心を締め付ける重さ。

「早く、ここを動こ。振りほどいてよ…」

 

そんな背中から伝わる温かさに、凍り付く。

彼女が優しければ優しいほど、俺の罪深さに押しつぶされる。

 

「これ以上、ここから動こうとしないなら…」

 

こんなに優しくて…

精一杯、我慢して背伸びしてゆるして、自分の中のしこりを、俺のために全部抑え込んで。

 

なのに…

 

「悲しさのあまり、あなたがわたしを受け入れてるって、最低の思い込み、するよ?」

 

そんな瞬間も、俺の頭の中を占めているのが、あいつのことしかないって事実に。

 

とうとう、降ってきた。

 

一番大切なものを失った日にも、やっぱり、俺の前にその白い姿を見せてくれた。

 

雪は、覆い隠してくれる。

 

辛いこと、哀しいこと。そして、見たくもない真実を。

 

ただ白く、きれいなだけの世界を目の前に広げ、俺たちを、そこに置き去りにしてくれる。

 

………

けれど、所詮は雪であり。

一度解けたら、そうやって隠していた事実を、忘れていた想いを、もう一度白日の下にさらす。

黒く汚れ、ぐちゃぐちゃに踏みつぶされた泥のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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