鬼滅の刃 もう一人の鬼の王   作:マルルス

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ハイゼンベルクは藤襲山の最終選抜に乱入して原作の主人公である竈門炭次郎の抹殺を目論む。



今年最後の投稿になります。


死闘

藤襲山の各地で激戦が繰り広げられる中、ハイゼンベルク一味である北沢鈴子と鬼影は鬼殺隊士と隊士候補者を探していた。

 

「ふぅむ…連中は上の方に居るようですな。」

 

「そうですね…もうこの辺りは菌根兵とゾルダート達があらかた片づけたようですし…」

 

目の前で数人ぐらいの隊士達と候補者達が転がっていた。

生き残った連中は山を下りたか、まだ上で戦ってる最中だろうか?

 

(早く鬼殺隊の奴らを始末してハイゼンベルク様の信頼を勝ち取らないと…)

 

鈴子に少しの焦りが出る…。早くしないと菌根兵やゾルダートによって全部持っていかれるかも知れないからだ。

 

「鈴子殿。お気持ちは分かりますが戦場で焦りは禁物ですぞ。」

 

そんな鈴子の心情を見抜いたのが鬼影は静かに諫める。

ことわざに「窮鼠猫を嚙む」というものがある。追い詰められた人間の執念は恐ろしい。鬼影は人間だった頃にそれを知ったのだ。

生き残ってる隊士達や候補者達は死に物狂いで戦ってるだろう。だからこそ油断は出来ないのだ。

 

「すみません…」

 

鬼影の言葉に鈴子は冷静になり謝罪する。

 

「とにかく、慎重に動きましょう。物陰に隠れて奇襲を掛けてくるかも知れませんからな…。」

 

「はい」

 

辺りを警戒しながら二人は山を登る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴子殿…。貴方に聞きたい事があります」

 

「え? 何でしょうか…?」

 

山を登ってる最中、鬼影は鈴子にある事を気になっていたのでこの際、聞くことにする。

 

「鈴子殿、貴方は()どうして鬼殺隊に入ったのですか?」

 

「えっ?」

 

鬼影の言葉に鈴子は足を止めて呆けてしまう。

 

「初めて貴方を見た時です。当時は貴方は鬼殺隊隊士として他の者と一緒でしたが…貴方だけ他の連中と違う目つきをしていた」

 

「…」

 

「貴方と共に行動していた隊士達は()()()()()()()()()…そんな目でした

しかし貴方は違った。貴方はそんな()()()()()()()()()()()()()()()()かのような…()()()()()()()()を見る目だった。

何故です?」

 

「…それは…」

 

「あの中で貴方だけが浮いてる存在だったので(それがし)はずっと気になっていたのですよ。」

 

鬼影がハイゼンベルク一味に加わる前の話だ。

彼は鬼舞辻無惨によって鬼にされた存在だ。そんな存在だから鬼殺隊に滅殺の対象になっていた。

ある日の夜、鬼殺隊に見つからり多勢に無勢だったから逃走にする中、己を追う鬼殺隊隊士の集団でただ一人違う目つきをしていた少女が居る事に気づき追われてる最中だというのにそれが不思議に思っていた。

その後、偶然現れたハイゼンベルクの誘いの乗り一味に加わった鬼影。

そして自分と同じくハイゼンベルクの一味の加わった一人だけ目つきが違う少女、北沢鈴子…。

鬼影は以前から気になっていた。何故鈴子は鬼殺隊に入ったのか?

だから思い切って彼女に質問したのだ。

 

「私が鬼殺隊に入った理由ですか…。……簡単に言えば()()()()()()()()()()()のですよ」

 

鈴子は目の前にいる鬼…鬼影に自身の境遇を話すべきか迷ったが彼も同士なので話す事にした。

 

「無理やり…? どういう事です?」

 

「そうですね…。これは私の家に理由があったんです…」

 

鈴子は鬼影に自分の過去を話す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の家は外国との貿易をする会社を経営していたのでとても裕福でした」

 

12歳の頃までは裕福な家庭のおかげで不自由もなく気の良い友人と毎日遊びながら平穏暮らしていた。

 

「当時は分からなかったけど今思うと本当にかけがえのない楽しい毎日でした。

でもそれが唐突に終わったのです…」

 

過ぎ去ってしまった過去を思い出し憂を帯びた表情を出す鈴子。

 

「あの日です…。 私はもうすぐ女学校に入学するので勉学に精を出していました。」

 

入学する女学校に備えて勉強していた時、当主である父に部屋に来るように呼び出されたのだ。

 

「急にお父様に呼び出されて部屋に入ると()()のような物を渡されてコレに限界が来るまで息を吹き続けろと言われたんです。

私は訳が分からなくて理由を聞いても言われた通りにやれとしか言われず…仕方なくやったんです」

 

理由を聞いても答えてもらえず「言われた通りにやれ」の一点張りで仕方なく瓢箪に限界が来るまで息を吹き続けた。

その後、限界が来た鈴子は息を吹き込むのを辞めると父から「部屋に戻りなさい」と言われたので結局、理由が分からないまま不機嫌になりながら部屋に戻った。

 

次の日の朝だった。

鈴子はまた父から呼び出される。昨日の事といい一体何なのか…とウンザリしながらまた父の部屋に行く鈴子。部屋に入ると父だけではなく祖父と祖母、母と上の兄達がいた。

 

「家族全員が同じ部屋に集まっていて驚きました…。おまけに皆、真剣な顔つきだったので…」

 

鈴子は自分は何かやったのか…? そんな恐怖が沸き上がってきた。

恐る恐る鈴子は自分の座布団に座った。

父からまずは()()()()()()落ち着けと言われ茶を啜る。

 

鈴子…。明日からお前は()()()に入る為の修行に出てもらう

 

当主である父が真剣な顔つきで淡々と鈴子に告げたのだ。

 

「意味が分からなかった…。いきなりそう言われたんですよ…。」

 

そして鈴子の父は説明する。

 

この世に鬼という人食いの怪物が居る事

 

そしてその鬼を狩り人々を守る鬼殺隊の存在

 

代々受け継がれてきた北沢家の掟

 

「北沢家は昔、鬼に襲われ食われそうになった時…駆け付けた鬼殺隊によって一族が救われただけではなく鬼殺隊を率いる産屋敷一族に多大な支援と援助によって家は大変な財産家になったんです。

その恩を報いる為に北沢家は優れた人を鬼殺隊に入隊させ鬼から人々から守るのが使命だそうです」

 

鈴子は当初、全く信じていなかったそうだが父と祖父が真剣に話すので段々と本当だと分かった。

 

「話を聞いて私はそんな危険な仕事をする組織に入らないといけない事に絶対に嫌だと反対しました…。

だって私は…もうすぐ学校に入って友達とワイワイと楽しみながら通学すると思っていたんですよ…。

それなのにいきなりそんな組織(鬼殺隊)に入れなんて…酷過ぎますよ…!!」

 

自分に置かれた状況に理解した鈴子は泣きじゃくりながら父に縋りついた。

 

鬼殺隊(そんな所)に行きたくない!!考え直して欲しい!!

 

しかし父はそんな鈴子の態度に憤慨し彼女を平手打ちをした。

 

大恩ある産屋敷様に報いる事がどれだけの名誉なのかお前には分からないのか!!!

 

()()()()()()()で大声で怒鳴りつける父に鈴子は恐怖した…。こんな怒りを今まで見た事が無かったからだ。

 

「鈴子に何をするの!!」

 

鈴子を近寄り抱きしめる鈴子の母…。

 

父に言っても無駄だと知った鈴子は今度は母と兄達、祖父と祖母に縋りついた。

 

しかし…

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…!!」

 

鈴子を強く抱きしめて大粒の涙を流す母…。

母は今でも反対してるんだろう…。

 

「鈴ちゃん…! 可哀想にな…何でこんな目に合わないといけないんじゃ…!」

 

祖母も泣きながら鈴子を抱きしめる。

 

「泰三《たいぞう》! 今回の件は儂が産屋敷様を説得する!!

幾ら素質があっても鈴子に鬼狩りなど無理じゃ!!

資金援助をいつもの倍にすれば産屋敷様も許して下さるだろう」

 

恐怖に怯える孫娘の痛ましい姿に鈴子の祖父は当主である息子を説得しようとするが…。

 

「父上…貴方は相変わらずそれだ…。我が兄が使命に殉じて鬼殺隊に入ろうとするのに母上と共に猛反対しましたな。

産屋敷様に会社の資金援助を受けておいてその恩を報いないその姿に情けなく思います。」

 

自身の父親に軽蔑する目で見つめる鈴子の父…。

息子のその態度に祖父は激怒する。

 

「何を言うか!! 何処に自分の子供を喜んで死地に送る親がいる!!

鈴子を見よ! こんなに怯えておるのだぞ!! お前は何とも思わないのか!!」

 

「鈴子の素質は我が兄を凌駕してる。これほどの素質を持っているのに関わらず鬼殺隊に入れないなど産屋敷様のご恩を仇で返すのも同然。

こうしてる間にも鬼に食われる者が居るのですぞ?」

 

祖父の怒りの叫びを聞いても鈴子の父は気にもせず、寧ろコレが当たり前の行動だと言わんばかりだ。

 

「我が兄は鬼から人々を守る為に戦い戦死した。私はそんな兄上を誇りに思っています。

そして鈴子も鬼狩りの使命を果たしていけば兄と同じ志を持つだろう」

 

鈴子の父は羨望するような顔で娘である鈴子を見つめる。

 

「お…お前は…」

 

話を聞いていた祖父と祖母、母と兄達は夫を、父を、息子に恐怖する。

 

「話は終わりだ。

鈴子、直ぐに持っていく物を準備しなさい。もうじき迎えが来る」

 

父は手を挙げると襖が開いて刀を武装した者達が部屋に入って来ると刀を抜いて切っ先を突き付けてきた。

 

「鈴子は鬼殺隊に入隊する。これは当主としての決定事項だ。

邪魔をするなら身内でも容赦せぬ…!」

 

それは本気の言葉だった。

最早、逃げ切れないと悟った鈴子は泣きながら自室に戻り持っていく物を袋に詰めて母と祖母の泣き叫ぶ声を聞きながら父が手配した育手の元に送られたのだった。

 

「…これが私が鬼殺隊に入った経緯です」

 

話を終えた鈴子は目に光が宿っていなかった。

 

(何という事だ…! これは人柱…生贄と同じではないか!!)

 

鈴子の悲惨な過去に鬼影は怒りに震えていた。

自分の娘に対して何という所業なのか…!

幾ら産屋敷に報いる為とは言え本人の思いを無視して己の考えを押し付ける鈴子の父に怒りを抱く。

 

(可哀想に…。 もしも鬼殺隊に入っていなかったら友人達と学校に行って平穏な日々を過ごしていただろうに…!)

 

そんな日々を突如奪い去る北沢家の掟…それを喜々として己の娘を鬼殺隊に捧げる父親…まさに狂気である。

 

「後から知ったんですが…産屋敷は私の家だけではなく華族や他の裕福な家にも資金援助をしていてその見返りに鬼殺隊の人材確保に協力をさせているんです。

それだけではなく孤児院から引き取ったり人身売買などもやって鬼殺隊の人材の確保もやっているみたいです」

 

「!? な…なんという…!!」

 

その言葉に鬼影は産屋敷一族に戦慄する。何も知らない子供を引き取りそれを良い事に鬼狩りは崇高な物と教えて洗脳し長生きも出来ない組織に入れさせる…。

正に鬼畜である。

 

「そうやって奴らは自分の手を汚さずに鬼狩りを続けている訳か…。

それを1000年も…」

 

いったいどれだけの命が産屋敷一族に使い潰されたのか…。

鬼舞辻無惨は太陽の克服の為に1000年に渡り数えきれない人間を鬼にしてきたが産屋敷一族もその無惨を討つ為に数えきれない人間を犠牲にしている…。

どちらも唾棄すべき悪である。

 

「鈴子殿…そのご両親とはもう…」

 

「最初は手紙でやり合っていましたが父はそれを必ず内容を見て気に入らなければ誰にも見せずに処分していました…。

ですから鬼殺隊に入った後でも父が居ない時間を見てお母様と兄様達、おじい様とお婆様に会いに行っていました。

皆、嬉しそうに迎えてくれてお母様とお婆様は毎日仏様に私の無事を祈ってくれて…おじい様と兄様達は何とか私を助けようと動いてくれています」

 

「良き家族ですな。父親を除いて…」

 

「えぇそうです。おじい様は昭平(しょうへい)叔父様と連絡を取って私を助けようと動いてくれいます」

だけど…。」

 

鈴子の顔が曇る…。

 

「何が問題でも…?」

 

「昭平叔父様は帝国陸軍の中佐ですが聞くところによると軍部や警察の中にも産屋敷のシンパが潜んでいるそうで迂闊に動くのは危険だそうです。」

 

「厄介な…」

 

普通に考えれば産屋敷一族だけでは1000年に渡って鬼や鬼殺隊の存在を世間から隠すのは不可能…。

当然、権力側に協力者がいるのは当然の話だろう。

 

「話が変わりますが…私はお父様が信頼する育手の元に地獄のような修行を耐えてこの藤襲山の最終試験を何とか合格しました…。

その後、鎹鴉の指示を受けて鬼狩りを行ってきました」

 

育手の元に送られた鈴子に待っていたのは想像が絶する修行が待っていた。

 

至る所に危険な罠が張られた山の頂上に放り出されて一日以内に戻ってこいとか

 

いきなり真剣を持たされて木刀を持った育手に手加減無しに体中に打たれながら身を守り方、刀の扱い方を教えられる

 

体中に重石を付けられて深い川底に放り投げられる

 

そして最終試験では弱い鬼しかいないと教えられていたのに隊士でも手に負えなさそうな全身が無数の手に覆われた鬼がいた。

 

 

このように何度も死にかけた…。

逃げようにも人里から隔離された場所な上に育手も一日中監視もあり逃げられない。

鈴子はやるしかなかったのだ…。

 

「任務では他の隊士と協力する場面がありました。その人達は鬼に大切な人を食い殺されたから復讐心も相まって鬼を殺す為なら自分の命を簡単に放り投げる人ばかりで…。

私はついていけなかったんです…。

だって私は鬼に家族や友人が殺された訳でもなく父に無理やり鬼殺隊に入らされたんですから…」

 

最終試験を合格して鬼殺隊の隊士となった鈴子だが任務で共に戦う他の隊士達と何度か行動を共にしたが彼らは鬼を倒す為なら全身が傷だらけになろうが手足がもがれても鬼への殺意を無くさずに尚も食らいついていった。そんな彼らの()()()姿に鈴子は恐怖を感じていた…。

 

「どうしてそんな平然に自分を犠牲に出来るのか

幾ら憎くてもそうまでして鬼を倒したいの…?

理解出来ませんでした…。」

 

鬼に家族が友人が殺された訳が無い鈴子には理解できない有り方だった。そのため鈴子は周囲との覚悟の違いに辟易してしまい孤立していった。

 

「お父様は私が鬼狩りを続ければ亡くなった伯父様のような信念と考え方になるとか言っていましたが絶対にそんな事になるわけがありません…。」

 

「でしょうな… そう言った信念や覚悟を持った者はそれ相応の出来事があったからこそ持つことが出来るのであって貴方のように鬼に何かされた訳でもないのに強制的に入れられた者には理解できる訳がない…。」

 

鬼影は溜息をついて鈴子に同意する。

 

「恐らくですが、貴方の父君は亡くなった兄、貴方の伯父に何らかの劣等感、もしくは羨望を抱いていたのでしょう。

それを娘である貴方に託そうしてる訳だ」

 

「ッ…! とんだ迷惑ですよ…! 伯父様は伯父様で私は私です!

自分の思いを私に託すなんて冗談じゃない!!」

 

怒りを見せる鈴子…。

父が伯父にどんな感情と思いを抱いていたかは分からないがそれでも娘の自分にそれを託すために鬼殺隊というこんな異常者の集まりに放り込むなんて…!

 

「鈴子殿が家に戻る為にはどの道、父君をどうにかしないとなりませんな…」

 

彼女の父親は先ほども言ったが正気ではない。 戻ろうとしたら逆に娘を殺そうするだろう。

もしも鈴子が家に戻るには父親を排除しなければならない。

 

「それは…」

 

鬼影の言葉に鈴子は戸惑う…。

 

「鈴子殿も分かっておられるでしょう?

家に戻るためには父君を()()()()()()()()()()()()()と?

話を聞いただけですが貴方の父君は自分の兄の思いと産屋敷の忠誠心が混ざり有って最早正気ではない…。」

 

「…」

 

鬼影の言葉に鈴子は黙り込んでしまう…。

いや…言われるまでもない…。それは彼女が一番理解していた。

 

「父君を生かす殺めるか…。いずれは決断しなければなりませんぞ?」

 

非情な言い方だが鈴子が家に戻るためには避けて通れない事だ。

 

「私は…「危ない!!」」

 

何か言おうとするがそこに何者かが割り込んでくる。

 

「早く逃げるんだ!

向こうに行けば他の隊士達がいるから保護してもらえる!!」

 

そこにいたのは鬼殺隊の隊士だった。

彼は鈴子が鬼に食われそうになってると思い鬼影に日輪刀を振るう。

鈴子を自身の背後に庇うように鬼影と相対する。

 

「全く…まだ話の最中だったというのに」

 

「黙れ! 生き汚い鬼め!!」

 

隊士は鬼影に殺気をぶつけるが鬼影はそれを何ともないように涼しい顔で受け流す。

 

「まぁ任務に殉じるのは結構だが…拙者に構ってばかりで宜しいのですかな?」

 

「何をいって…」ドス「えッ…?」

 

隊士は訳が分からなかった。

鬼に襲われている候補者を助けたというのに…痛みがゆっくり襲ってくる…。

視線を下に向けると自身の胸から鋭い刃物が突き出ていた。

ゴボリと口から血を流しながら後ろ振り向くと…

 

「まず一人…」

 

無表情で手に持つ刀で己の胸を貫いている少女が見えた

 

「な…何で…?」

 

「…」

 

鈴子は隊士の問いに答えず日輪刀を少し回して胴体を横に切り裂いた。

グラリと訳が分からないまま隊士は斃れ息絶えた。

 

「…これが人を斬る感触…」

 

「大丈夫ですか? 無理せず拙者が彼奴等を片付けますが…?」

 

初めて人間を斬った鈴子は呆然とする。鬼影は心配になり声を掛ける。

 

「大丈夫です…。私は覚悟が出来てますから…。」

 

「…そうですか。ですが無理はなさらずにして下さい」

 

コクリと首を縦に動かして鈴子は死んだ隊士が言っていた方向を見る。

 

「さて、向こうに隊士共が集まっているそうですが…行けますかな?」

 

「大丈夫です。コレが私の始まりなんです。逃げる訳にはいかない」

 

「では参りましょうか。出来る限り補佐しますぞ」

 

鈴子と鬼影は鬼殺隊隊士が居るであろう場所に駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身軽を生かした速さで胡蝶しのぶは目の前の異形、ゾルダートに突貫する。

ゾルダートは腕に取り付けられた巨大なドリルを振りかぶり、しのぶに向けて振り下ろした。

 

(遅い!)

 

小柄な体を生かした速さでそれを苦も無く避ける。攻撃が避けられたゾルダートは続けさまにドリルで横に薙ぎ払おうするがしのぶはそれも難なく避ける。

そして

 

「ハァ!」

 

得意とする刀の突きでゾルダートの胸に突き刺すが…

 

ガギィン…!

 

「!?」

 

「■■■!!」

 

しかしその突きは僅かに刺さっただけだった。

ゾルダートは唸り声を上げてドリルを振り回す。

 

「くっ!」

 

しのぶは一旦後ろに下がる。

 

(ッ! 胸…いえ、胴体の中に何か仕込んでいる…!)

 

僅かに聞こえた音から察すると金属だろうか?

敵を見ると僅かに肉が裂けており血も出ていない。

 

「胴体が駄目なら…!」

 

しのぶはもう一度、突貫してゾルダートの攻撃を避けて攻撃の射程内に入る。

 

「ここならどう!」

 

彼女が狙ったのは敵の首だった。一寸狂いもなく正確に敵の喉元に刀の切っ先が飛ぶ。

だが…

 

ギィン!

 

「!? 首まで…!」

 

またしても刀が僅かに進んだだけで止まってしまう。

 

「■■…!」

 

予想が外れてしまい僅かに硬直してしまったしのぶにゾルダートはしのぶの髪を鷲掴みにする。

 

「は…離せ!!」

 

髪を鷲掴みにしたゾルダートはそのまましのぶを持ち上げる。

 

(ま…マズい…!)

 

このままでは殺られる…!

しのぶはジルダートの肉体のアチコチと突き刺すが何処も金属音が響いて弾かれしまう。

自身を掴んでいる腕にも刺すが効果が無かった。

 

「■■■■!!」

 

咆哮を上げてゾルダートはをしのぶの胴体、心臓に狙いを定める。

 

「うぅぅぅ…!!」

 

必死に足搔くしのぶだがゾルダートの拘束から逃れる事が出来ない。

 

「■■■■!!!」

 

足搔くしのぶにトドメを刺す為にゾルダートはドリルで突き刺そうする!

しかし…!

 

ドボォ…!

 

「■…? ■■!?」

 

「…!!」

 

しのぶがイチかバチか狙ったのはゾルダートの口だった。

彼女の刀はゾルダートの口内を通り抜けて喉を貫いていた。

 

「■■…■■■■!!!!」

 

自分の口に刀を突っ込まれたのかゾルダートは暴れる。そしてしのぶの心臓を目掛けたドリルは機動が大きく外れてしまう。

 

ガガガガガガガ

 

「う…!アアアァァァァァ!!!!」

 

ドリルは心臓からは逸れたが完全に外した訳ではなかった。

大きく軌道がズレたドリルはしのぶのわき腹を抉った…!

 

「■■■!!」

 

口内に異物()が刺さってるのが効いてるのかゾルダートはしのぶを投げ捨てる。

 

「ああぐ…!! う…ァァァァァ…」

 

何とか敵の拘束から逃れることが出来たが大きな代償を払ってしまったしのぶ。

激痛に悶える中、しのぶは抉られた傷口に指で触る。

 

「ッ…!! (ううぐ…!!な…内臓までは抉られていない…だけど出血が酷い…このままだと死にますね…)」

 

傷の具合を確かめたしのぶは歯を食いしばりながら何とか立ち上がるが呼吸は酷く乱れ両足は力が入らずガクガクと震えてしまう。

 

「■■■…」

 

口内に刀を突っ込まれて少しの間、行動不能になっていたゾルダートだが元の調子を取り戻ししのぶを睨みつける。

それだけではなくさっきまで様子見していたのか動かなかった他のゾルダート達もしのぶの方へと向かって来る。

 

(…! いけない…この出血を止めずに戦うのは自殺行為…。何とかこの場を一旦離れて手当しないと…)

 

そう考えしのぶは一旦離脱を考えた。

しかし…。

 

(駄目! そんな事をしたらこいつ等はカナヲの所に向かってしまう!)

 

チラリと目を向けると離れた場所で三体のゾルダートに押されつつもカナヲは懸命に戦っていた。

目を凝らして見るとカナヲは所々、致命傷ではないが傷を負っていた。

カナヲもゾルダート達に刀が通じず防戦一方だった。

そんな状況に更に敵が追加されたらカナヲが持たない。

 

(どうすれば…!!)

 

柱として鬼との数々の戦いを乗り越えてきたしのぶだったが、銃を持った怪物(菌根兵)や目の前に居る機械仕掛けの怪物に今までの経験が通じない事に焦燥に駆られてしまう。

必死に打開案を考えるが有効な手立てが思いつかない。

 

「■■■」

 

「■■…」

 

「■■!」

 

それぞれ唸り声を上げて三体のゾルダートがしのぶに迫る。

 

やるしかない…!

覚悟を決めたしのぶはふらつきながらも日輪刀を構えるがもう満足に動けない有様だった。

 

「フン…柱ダロウト攻撃ガ通ジナケレバ無意味ダ。

蟲柱ハ此処デ終ワリダナ。アノ傷デハ満足ニ動クコトガ出来マイ。

モウ一人ノ女モナ。」

 

戦いを観察していたギンはしのぶの状態を見て彼女は終わりだと結論した。

もう一人の少女も直ぐに後を追う事になるだろう。

 

「■■■■!!」

 

「…!」

 

ゾルダートは腕に取り付けられたドリルを振りかぶりしのぶ目掛けて振り下ろす。

 

(駄目だ…体が動かない…避けられない…

カナヲ、葵、皆さん、先に逝きます…ごめんなさい…。

姉さん…貴方を助ける事が出来なくてごめんなさい…)

 

避けられない死にしのぶは姉とカナヲ、蝶屋敷と鬼殺隊の者達に心の中で謝罪する。

遠くからカナヲが叫んでいる…。

しのぶは目を瞑り死の瞬間を覚悟する。

 

「そこまでだ」

 

突如、男性の声が響く。

 

ザシュ!

 

ゾルダートの体が斬られる。

 

「■■■…!!」

 

体内の仕込んだ鉄板のおかげで奥深くまで斬られなかったもののゾルダートは大きく怯む。

 

「えっ?」

 

しのぶは呆けた声を出して目を開けるとそこには…

 

「無事か、胡蝶」

 

「と…富岡さん…?」

 

そこにいたのは水柱の富岡義勇だった。

 

「直ぐに手当てしろ。こいつ等は俺が相手をする

カナヲも方も安心しろ。伊黒も来ている」

 

そう言われてしのぶはカナヲの方へ見るとそこにはカナヲを守るように伊黒が前に立っていた。

 

「よ…よかった…」

 

疲れか痛みでしのぶは座り込む。

そして包帯を取りだして傷の手当てを行う。カナヲもこっちの方に向かって来ている。

 

「■■■■!!」

 

「■■■…!!」

 

「■■■!」

 

突如現れた新たな敵にゾルダートは咆哮しドリルを突き付ける。

 

「オ前ハ…水柱ノ富岡義勇ダナ?

ギリギリ間ニ有ッテ良カッタナ。ダガ…オ前デモコノ”ゾルダート”ノ相手ニ出来ルカ」

 

「…」

 

ギンの言葉に義勇は何も言わない。

 

「ム…? 何ヲ黙ッテイル?」

 

「鬼に話すことなど無い…」

 

「ソウカ。ナラサッサト死ネ。行ケイ!!”ゾルダート”達ヨ!

アノ、ガキヲバラバラニシロ!!」

 

「「「■■■■■!!!!」」」

 

ギンの言葉にゾルダートは辺りに振動させる咆哮をしながら富岡義勇に突撃する。




次回 竈門炭次郎
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