その中で【花柱】胡蝶カナエをこちら側に引き込もうと画策する。
ヘイト要素がとても高いですので注意。
「う…うぅん…?」
微睡の中胡蝶カナエは目を覚ました。
「ここは…?」
目を覚ましたカナエは辺りを見ると木造の部屋にいる事が分かった。
周りには高価そうな時計や陶器が置いてあり自身の乗っているベッドも装飾が彫られた高級そうな感じがする。
「蝶屋敷ではないわね… 確か…私は…?そうだ!」
自分は××山に【岩柱】の悲鳴嶼行冥と共に向かって隊士達を救おうと戦いあの男に敗北したことを思い出す。
「ここはもしかしてあのハイゼンベルクという人の住処…? そうだ!悲鳴嶼さんは!」
共に来た悲鳴嶼行冥を探そうとベッドから起き上がるが
「ぁぐっ…!」
ズキリと全身から鋭い痛みが襲う。
よく見るよ体中は包帯が巻かれ両手は腕を固定するギプスにはめられてる…。
「やめとけ。お前は瀕死の重傷だったんだ
治療したとはいえまだ動ける状態じゃあない」
「!? 貴方は…!」
声が聞こえてカナエは目を向けるとそこにいつの間にかハイゼンベルクが椅子に座っていた。
カナエは睨みつけるがハイゼンベルクは気にしなかった。
「そう睨むな。お前を殺す気はないさ。」
「信用できないわ。私をどうする気なの?」
「強いていうなら話でもしようかと思ってな」
ハイゼンベルクは飄々とした態度は崩さない。
カナエは睨みつけるが今の状態では抵抗することなど不可能で相手が自分を殺す気ならとっくの殺してるだろう。
目の前の男は殺す気はないと言ったから一先ずはそれを信用する。
「それで私に何を聞きたいの? 鬼殺隊の不利になる事は一切話さないわ」
例え拷問されても味方が不利になる事は一切話す気はない…。
それにそうしてる間に鬼殺隊はきっと自分を探してる。出来るだけ時間稼いで相手の情報を掴みたい。
「別にいい。お前らの事は良く知ってるし弱点なんざどうでもいい。
俺が話したいのは世間話みたいなものさ」
「えっ?」
カナエは想像した事と違い戸惑う。
鬼殺隊の弱点とかお館様の居場所とか聞いて来ると思ったがそれでは何を聞きたいのか?
「今言っただろう? ’お話’さ。
おい、入ってきていいぞ」
「失礼いたします」
入ってきたのは顔に大きな火傷をした男性ともう一人…
「! 鬼…!」
紅く染まった瞳に青白い肌…自分達、鬼殺隊が討伐すべき鬼が居た事にカナエは青ざめる…
「落ち着け。コイツらは俺の部下だ。手出しはしない」
「ご安心を。貴方に害する気はこちらにありません。
申し遅れました。私は原重重太郎と申します。
こちらはギンというものです」
火傷の男は原重と名乗り鬼の方はギンというらしい。
二人が揃った事にハイゼンベルクはカナエの方へ向きニヤリと笑う。
「よし…それじゃこれからの事を含めて話し合いと行こうじゃないか。」
カナエは得体のしれない者達に恐怖していた…。
一体何を話し合うのか分からない。
「さてカナエ。お前は今のままでいいのか?」
「どういう事ですか?」
「このまま鬼殺隊の為に自分の人生を使い潰すのか?
あんなろくでもない一族の
その言葉にカナエは目の前の男を睨む付ける。
尊敬するお館様を侮辱し自分の人生を下らないと言ってるこの男を…!
「ふざけないで…!
私は鬼殺隊に入った事に後悔は無いわ。鬼から人々を守り抜く事に誇りにしてる。
何よりお館様の侮辱は許さない…!」
カナエの家族は妹を残して鬼に殺された…。
辛うじて悲鳴嶼が来てくれたお陰でカナエと妹のしのぶは助かったがこの世には鬼がいて今も多くの人達を手に掛けている
その人達を守りたくて、もう自分達のような犠牲を出したくないからカナエは悲鳴嶼の反対を押し切って鬼殺隊に入った。
後悔なんてしてない。
「そうか。だがお前はそんな目にあったというのに何故鬼と仲良くしたい?
矛盾してないか?」
「確かにそうよ。鬼は憎いけど同時に哀れだからよ。出来れるなら救いたいとも考えてるわ」
当初は鬼が憎かったが鬼を狩っていく内に彼らが哀れな存在だと感じてきた
人しか食べられない、そうやって恨みを増やしていく鬼が哀れだと思うようになった。
その内鬼を救いたいと考えるようになった。
「だそうだ。おいギン…お前はどう思う」
ハイゼンベルクが後ろに佇んでいる鬼に聞く。
そのギンという鬼はカナエを見て睨みつけている。
「ズイブント虫唾ガ走ル事ヲ言ウナ…!
哀レダノ救イタイダノ自分ハ神ヤ仏ニナッタツモリカ…?」
「そのつもりはないわ。だけど本当にそう持ってる」
鬼は怒りを見せてカナエを批判する。
しかしカナエは本当に鬼を救いたいのだと言う
「フン…デハ聞クガドウヤッテ鬼ヲ救ウツモリダ?
何カ考エデモアルノカ?」
「それは…」
答えられない…。
具体的にどうするつもりなのかカナエ自身、それが分かっていない…。
ただ曖昧に彼らを救いたいと考えてるだけだ…。
「ソレガ答エダ。オ前ハボンヤリト考エテルダケ。
タダ
「…!」
そんな事はない!
…そう言いたかったけど言い返せないなかった…。
ギンという鬼の言う通りカナエは具体的にどうするのか考えていない…。
だけど自己満足のつまりは無い…無いが…。
「まぁお前がどう思おうが勝手だがそれでもボンヤリと考えているのは流石にどうかと思うがな
ギンからすればお前の考えなんて偽善そのものだぞ?
鬼と仲良くしたい? 鬼は哀れ? そう言って
ハイゼンベルクの言葉にカナエは何も言えない…。
でも人々を守るのにそうしないといけなくて…。
「ソモソモ何故俺タチ鬼ハ人間ヲタベテイケナインダ?」
ギンの言葉に怒りが沸いたカナエは叫ぶ。
「そんなの当たり前じゃない! 殺された人は何か悪い事をしたの!生き残った人がどんな気持ちで生きていくのが分からないの!」
「それでは
カナエの言葉に反論したのは火傷の男性、原重だった。
「えッ?」
「貴方の言い分では悪い事をした人間なら食べても良いという事ですかと聞いてるんです」
「それは…でも人間は食べていけないことよ!」
「だから何故それが駄目なのかと原重とギンはお前に聞いてるんだが?」
「それは…その…」
カナエはまた答えられない…。
でも人間を殺す事はいけない事だ…
「人間が人間を殺すのは重罪だがギンは鬼だ。この国の法律に
なら鬼が人間を食うのは法律違反じゃないし問題はないだろ?」
「そんなの!あまりにも横暴よ!」
「それにな、人間は毎日動物を殺してその肉を食ってるだろう?
それはいいのか?」
「でもそれは食べないと生けていけないからよ!」
「俺達鬼ハ人間シカ食ベラレナイ。ソレニ腹が減ルノハトテモ苦シイゾ。
ソノ餓エヲ満タスノニ人間ヲ食ベテ何ガイケナインダ?
ソレトモ何ダ? 鬼はズット餓エ続ケロト言ウノカ?」
「……」
「自分達の事は棚に上げておいて人間を食うなと言えたもんだな?
人間だから動物や魚は食って良いってか?」
ハイゼンベルクの煽る言葉にカナエはただキッと睨みつけるだけだった。
「私からも質問ですがカナエさん…もし貴方のご家族を殺したのは鬼では無く
貴方は熊を殺し続けるのですか?」
「……」
「そうです。もしも貴方のご家族を殺したのが熊だったのなら貴方は
原重の言葉にカナエは黙り込んでしまう。
言われてみればそうだ…。
もしも自分の家族を殺したのが熊だったなら「これは不運だった」と諦めていただろう…。
「熊なら諦めるのに鬼だったなら何故許せないんだ?」
ハイゼンベルクは畳みかけるようにカナエに質問する。
何故、鬼は許せないと思うのか?
「私は…」
また分からない…。
どうして?何が違うのか?
「ハァ…ハァ…」
呼吸が苦しくなる。
何も考えられない…だれかおしえてほしい…おしえて…
「俺から言わせれば鬼よりお前ら人間の方がよっぽど数多くの命を奪っているぜ
この世界から一体どれだけの種を絶滅に追いやったんだ?
「…ッ」
唇をギュッと噛んで俯くカナエ。
「話を変えようか。
お前ら鬼殺隊は産屋敷を随分と慕ってるがどうしてなんだ?」
「……
お館様は私達を救ってくれたし居場所がない私達に親身に接してくれた
あの人が居なければ私達は路頭に迷ってるわ。」
俯いてたカナエはゆっくりと顔を上げてポツリと話した。
鬼殺隊の長の産屋敷耀哉は身寄り無くした者達に居場所を与えてくれた。
長でありながら気さくに優しく寄り添ってくれた。
だから鬼殺隊の隊士達は産屋敷耀哉を親のように慕い命を投げ出す覚悟すらあるのだ。
「これはこれは…随分と
こうやって自分の手を汚さずに家で呑気に過ごせるわけだ」
「何ですって…!」
カナエはハイゼンベルクの言葉に怒りを見せて睨みつけた。
「可笑しなことを言ってるか?
汚れ仕事はお前らみたいな何も知らないガキを
「貴方は何も知らないわ。
お館様は亡くなった隊士の一人一人の名前を憶えているのよ。
毎朝、あの人は隊士達のお墓参りだって一日も怠った事もない」
当主である産屋敷耀哉は亡くなった隊士の名前を忘れておらず墓参りだって一日も怠った事もない。
そんな産屋敷耀哉を侮辱を許すわけにはいかなかった。
「で?それが何だ?」
しかしハイゼンベルクはくだらない事のように煽る。
「死んだ隊士の名前を憶えている? 墓参りをちゃんとやってる?
それが何だ?なんの価値があるんだ? そんな事をしてる暇があるなら隊士の犠牲を減らす事を考えた方がずっと建設的じゃねえか?」
馬鹿にするようにハイゼンベルクは言う。そんな事をしてる暇があるなら何か戦術を考えた方が良いだろうと。
「カナエさん。産屋敷耀哉が亡くなった隊士の名前を憶えていたり毎日墓参りするのは結構ですがそもそも隊士達の殉職率が高いというのに何も対策しないのはどうかと思いますがね…
鬼殺隊の首領として鬼という人間を凌駕する生物相手に刀一本で立ち向かえという戦術を何とかするべきと思いますが」
鬼殺隊の戦法は日輪刀という刀一本で鬼を倒すという前時代的な戦い方で戦国時代といった昔ならともかくこの大正時代でそんな戦い方するのはどうかしてると言う原重。
「それによ…そんな風に隊士達を、命を大切に考えてるなら何であんな
「えっ?」
「おいおい。お前だってその試験をやっただろう?
しかも監視役もいない有様だ」
「で…でもそれは任務の性質上即戦力となる隊士が必要だからよ…!
監視役だって…その…鬼殺隊は人手不足だから…」
「お言葉ですが隊士候補の中には今は開花してないだけで将来有望な者だっているでしょう?
試験の監視役は助ける為だけではなくそういった者を見極める為でもあるのです。
そして人手不足? そんな非合理で意味がない試験などやっていればそうなるに決まってるでしょう。
それ以前に監視役が居なければ誰が優秀な者かも分からないでしょうが…」
鬼殺隊に入るためには年中鬼が嫌う藤ノ木が生えている山の中で行われるのだが隊士候補に「七日間、食料も水も持たされず餓えた鬼達が居る中生き延びろ」という軍隊ですらやらない頭のネジが飛んでるとしか言えない試験なのだ。
更にいざとなった助けに入ってくれる監視役すらいないのだ。
ハイゼンベルクも前世で原作の最終試験の内容に「頭がおかしいじゃないか?」と思ったほどだ。
「しかも毎年やってるそうだが大体30人ぐらいが受けて2~3人生き残れば良いらしいな
ハッキリ言って鬼より殺してんじゃないか? そんなんでよく隊士の事を考えているとかほざけたな」
「ぁ…」
ハイゼンベルクと原重の指摘にカナエは弱々しく呻く。
言われてみればそうだ。自分は鬼を倒したい一心で乗り越えたが冷静に考えてみればあまりにもおかしい試験だった。
「疑問に思ったな?
本来ならお前を始めとした
「カナエさん…貴方を始めとした
ハイゼンベルク卿から聞きましたが貴方達【柱】は鬼殺隊の首領である産屋敷耀哉と同等の関係らしいですがそれなら
経験豊富な隊士を監視役として送り込むとか
その経験豊富な隊士達と一緒に行動させるとか
もしくは先輩達の訓練をし合格か否か判断させるとか
考えなかったのか?
二人の指摘にカナエは真っ青になっていく。
本来なら柱階級である自分達が真っ先に改善をお館様に言わなければならない立場だったというのにお館様に何も言わず鬼狩りばかりに勤しんでいた事に気付く…。
人手不足なら尚更改善しなければいけないというのに…。
人命を救ってるハズなのに逆にその最終試験で人命を多く散らしてる鬼殺隊の実態にカナエは自身が信じていた正義がガラガラと崩れていったのだった…。
「最終試験もそうだが胡蝶カナエ・・・お前自身も産屋敷家と同じく大勢の人々の人生を狂わしてるからな」
「えっ…?」
ハイゼンベルクの言葉にカナエは意味が分からず呆ける。
「お前は鬼によって孤児となった子供を保護してるが、それでその子供達の人生を台無しにしてるという事さ」
「な…! どういうつもりそんな事を言うの!! そうしなければあの子達は路頭に迷ってしまうでしょう!! 私は間違った事なんかしてない!!」
カナエは青筋を立ててハイゼンベルクの言葉に反論して睨みつける。
自分は間違った事はしていない確信してるかのように。
「確かにそのままじゃあ路頭に迷うのは確実だな」
「だったら…!」
「だけどな、何で蝶屋敷に連れてくんだ?市内の孤児院でも良いじゃねえか?」
「何を言って…?」
「分からないのか? そんな所に連れていったらそいつらは
お前はそいつらを鬼殺隊に入れたいから市内の孤児院ではなくて蝶屋敷に連れて行くんじゃないのか?」
「ち…違う…!そんな事は…」
「カナエさん。子供は親の影響や周囲の環境で自分が何処に行こうかと決めていきます。
蝶屋敷は謂わば鬼殺隊に影響が大きい場所ですよ? そこに居れば世間を知らない子供は十中八九、鬼殺隊に入ります」
「つまりだ。蝶屋敷に連れて行けば
お前はそういったガキ共を保護するという名目で産屋敷の為に捨て駒を補充してた事さ」
「そ…そんなはずは…」
勿論カナエ自身はそんな気は一切なかっただろう。間違いなく善意で保護してたのだ。
だが改めて指摘されれば保護した子供達は皆鬼殺隊に入っていったのを覚えている。
自分の継子のなると言う子供も居た。
「さっきギンが言ってた事を覚えているか?
お前は自分は良い事したと酔いしれてだけだ。自己満足だったんだよ、
お前の善意はな」
「ち…がう…」
「違わないさ。お前がやって事はそう言う事だ。
もっと言えばお前はそいつ等には幸せになって欲しかっただろうが
長生きも出来ない
ハイゼンベルクと原重の指摘と言葉の責めにカナエは青ざめた顔で小さくも息を荒げていた。
自分のやってきた事は全部意味が無かった事と幸せになって欲しいと言いながらも幸せがない死地に送り込んでいた事も…
「もう一つ教えてやるよ
産屋敷がどうして無惨を殺したいのかをな」
カナエの様子を見たハイゼンベルクはトドメとばかりに真実を教える。
カナエはまだあるのかと絶望した表情をする。
「産屋敷は無惨と
「……ぇ…?」
ハイゼンベルクから聞かされる衝撃な発言にカナエは理解するのが出来なかった。
「1000前、何者かに無惨は鬼にされたのさ
だが何の原因なのかは分からないが産屋敷一族は呪われちまった。そのせいで長生きが出来なくなったんだ。
その
「…ま…さか…お館様が無惨を討つ事に執着してたのは…!」
「そうさ。産屋敷一族は世の中の為とか日本を救うとか人々を救うとかそんな大層な理由で無惨を殺したいんじゃない。
ただ
「無惨…とお館様が…血縁関係…?
そんな事お館様は一言も…!」
「
それでお前ら鬼殺隊には自分の都合が良い事しか話してない。
言ってることが分かるか? 所詮、
お前らそれを知らず産屋敷を聖人如く崇めて犬死にしてるんだよ
それによお前らは鬼殺隊は鬼は生き汚いとか言ってるが
「ぅ…ぁ…」
この世の終わりかのように体が震えて目を見開き絶望するカナエ…。
「ここまでいってな鬼殺隊に戻って産屋敷の為に命を懸けるなら止めはしねえさ。
お前が決めた事だしな」
話す事がもう無いと言うのかのようにハイゼンベルクは立ち上がり部屋から出ていき原重とギンも彼と一緒に部屋から出ていく。
一人残されたカナエはハイゼンベルクに告げられた真実にショックを受けてただ固まっていた。
(自分達が長生きしたいだけ…?)
カナエは刀を振り数多くの鬼を斬ってきた。
それは世の為で人々を救う為だと信じてきた…。
お館様だって人々の為に無惨を討つと皆に告げた。
(でも…それは嘘だった…)
(私は何の為に…!)
ドクンドクンと心臓の鼓動が早くなっていく。
(私がやってきた事…私が信じたもの…)
全部…全部…!
「無駄だった…意味が無かった…」
何もかも無駄だった…! 何もかもが無意味だった…!!
「アハっ」
何故だろうか可笑しくて仕方がない。
「アハ…アハハハハハハハハハハハ!!!」
カナエは笑った。大粒の涙を流して…
「アハハハハハハハッハハハハッハハハハハ!!!!!」
カナエは泣きながら嗤い続けた。愚かな自分を…。
「アハハハハハハハッハハハハッハハハハハ!!!」
暫くして
ようやく泣き止んだカナエは頭がスッキリしてた。自分が為すべきことも分かっている
「やる事なんて決まってる。
いえやらなけば駄目よ。これ以上犠牲を出すわけにはいかない」
やらなけばならない…。人々の為に…世の中の為にも…!
「鬼舞辻無惨を殺す…!
そして
私達を騙して利用する産屋敷も殺す…!!!」
その瞳には憎悪の炎が激しく燃え盛っていた。
次回 ゾルダート計画