社員「何度も言いますが、早川さんは事件があった日はウチで夜勤だったんですよ!」
都は華連と徹と共に、早川の派遣先の会社に来ていた
都「小さな事でも、ええから、何か無いん?」
都は社員に詰め寄る
社員「何度も言ってるでしょ…外に出たのは、食事休憩の時くらいで…あっ…」
社員は何かを思い出した様子だった
徹「『休憩時間に、外出した』って事ですか?」
社員「『建物の外に出た』っていっても…5分前後ですよ!」
そう言って、社員は窓を開ける
社員「ほら!ここから見える駐車場へ行っただけですよ…『眠気覚ましに、栄養剤を車から取ってくる』って、言って…」
――――――――――
徹「アリバイは完璧ですね!」
徹たち3人は駐車場に来ていた
都「アリバイが完璧すぎるのは、逆に怪しいさ!」
都はかなり疑り深くなっている
徹「でも…たった5分しかないですし…あの窓から、この駐車場は丸見えですから…」
徹は完全に考えが行き詰まったようで、頭をかいている
華連「2人共、頭固いなぁー!もっと簡単に考えれば、いいんだよ!」
都・徹「えっ?」
都と徹は華連の方を向く
華連「そんな難しいトリックとか、使わなくても、方法ならあるじゃん…ここで殺せばいいんだよ!!『栄養ドリンクを取りに来た』その時に、車のトランクの中で!」
都「その手があったべ!」
都は反射的に、華連の方を指差す
徹「でも…立証できるんですか?」
徹は弱気になる
華連「それなら、大丈夫!真壁さんたちが、早川さんの車を調べてくれてるから、そこからルミノール反応が出れば、イチコロだよ!」
しかし…
明智「残念ながら、ルミノール反応は出ませんでしたよ!」
警察署にて、明智が華連に説明する
華連「そんなぁーー…」
華連は石像のように固まる
徹「『先手を打たれていた』って事ですか?」
明智「おそらく、車のトランクにブルーシートを張っていたんですよ!!」
都「やっぱり、一筋縄ではいかないか…」
明智は華連の方を向く
明智「弘法にも筆の誤りですよ!他の証拠を探しましょう!」
石像のように固まった華連には、明智の言葉は届いていなかった
明智「ところで…華連さんに、井沢研太郎さんから伝言を預かっておりまして…」
―――――――――
徹と都は、研太郎に指定されたファミレスにいた
徹「華連さん、何にしますか?」
徹は華連にメニューを見せようとするが…
華連「食欲無い…」
自信満々だった予想が外れたため、華連は拗ねている
都「元気出しな!1回ミスしたぐれぇで、落ち込んでたら、はじめなんか今頃、燃え尽きて灰になってるさ!」
都には悪気こそ無いものの、徹はポカーンとしている
しばらくして…
店員「お待たせ致しました!」
店員がケーキを3コと、ジャンボチョコレートパフェを持ってきた
都「華連ちゃん、元気出しな!おごるから!」
華連「いらない!」
華連はそっぽを向いている
徹「華連さんの分は、特大のチョコレートパフェですよ!」
華連「パフェ!」
華連は急にハイテンションになる
そこへ…
井沢研太郎「悪い、遅くなって!」
ノートパソコンを持った研太郎が現れた
都「研太郎くん、遅いべ!」
都のとなりでは、口の周りがクリームだらけになった華連が、一心不乱にパフェをほおばっている
しばらくして、華連はパフェを食べ終わる
華連「あれ!研太郎くん来てたんだ!」
華連は今頃、気付いたようだった
徹「それで、井沢先生!僕たちに話っていうのは…」
研太郎「実はコレなんだよ!」
研太郎はノートパソコンの画像を見せる
2年前に、早川の母親が急死した時の記事だった
研太郎「こうなった以上、徹や華連にも、2年前の事件を、話した方がいい!」
都「あぁ、そうするしかないべ!」
研太郎と都は真剣な眼差しで、顔を見合わせていた
華連「代理ミュンヒハウゼン症候群…」
華連が研太郎のパソコンの記事に、目を通していた
徹「何ですか、それ?」
華連「あ、徹くんは知らなかった…アタシもハーバード行ってた頃に、学校の授業で知ったんだけど…」
――――――――――――
その日の夜…
雪影村の春菜の家では、春菜の母が双子姉妹を寝かしつけたところだった
そこへ、インターホンが鳴り、春菜の母は玄関に向かう
春菜の母「あなたは…」
春菜の母はその人物を、家に招き入れる
その人物は仏壇に線香をあげていた
春菜の母「遠い所を、わざわざ、ありがとうございます!」
春菜の母は緑茶を出す
凛の母「こちらこそ、夜分に恐れいります」
凛の母は緑茶を一口飲むと、仏壇に目をやる
凛の母「今井香(かおり)さんが亡くなってから、もう2年ですね…」
仏壇には、春菜の遺影に加えて、もう1人、20代半ばほどの女性の遺影が、飾られていた
春菜の母「その節は、お世話になりました」
春菜の母は頭を下げる
凛の母「頭をあげて頂けますか?」
凛の母は普段以上に謙虚になっていた
そこへ…再度、インターホンが鳴る
春菜の母が玄関に向かうと…
春菜の母「あなたたちは…」
春菜の母は来客の男性2人を、家に招き入れる
魚住響四郎「入間先生!」
来客は魚住と立石直也だった
立石「島津だって、東京で戦ってるのに…俺らだけ、指くわえて見てるなんて、絶対納得できねぇべ!」
2人共、真剣な顔つきになっている
魚住「実は…2年前の医療事故の半年前…」
立石「あきらかに不審な男が1人…『廃棄処分予定のフグを、譲ってほしい』って、魚住に詰め寄ってたべ!」
『フグ』と聞いた瞬間、凛の母は何かに気付いた表情になる
凛の母「その話、詳しく教えてくれる?」
――――――――――
数日後…
不動山市のインターネットカフェのトリプルルームでは…
都「絶対、早川のヤツが、点滴にトリカブトを入れたに違いねぇ!」
都は怒りの炎を燃やす
華連「おじいちゃんに頼んで、当時の詳しい資料をFAXしてもらったよ」
華連は徹に、FAXのプリントアウトを手渡す
徹「あれ…容態が急変する2時間前に、早川さん本人が、面会に来ていたって事は…『この時に、犯行に及んだ』って事はないんですか?」
都「アタシもそれは考えたさ…だけど…」
華連「トリカブト毒は、即効性だから…毒を注入されて数分で効果が出るから…そこが問題なんだよね」
都と華連は難しい顔をしている
都「だから、一番最後に、患者に接触していた、香さんが『点滴に毒を入れた殺人の容疑』で、逮捕状を取られてしまった…って事さ!」
華連「入間さんが『代理ミュンヒハウゼン症候群』の診断書を提出してくれた事で、辛うじて、不起訴になったらしいんだけど…」
凛の母にとっても、苦肉の策だったようだ
都「香さんは、責任を感じて…病院の屋上から、飛び降り自殺してしまったさ!」
華連「おじいちゃんが調べてくれたんだけど…早川さんはお母さんが亡くなる2ヶ月前に…総額で2億円近くの生命保険をかけてたらしいんだ!」
都「ぜーってぇ、早川の仕業に決まってるさ!」
話を聞いた徹は頭を抱える
徹「あれ…でも、島津さんが激怒したのは、どうして…」
都「香さんが自殺する前日、ダンナが話も聞かずに、記入済みの離婚届だけ置いて、蒸発したさ…そんで、香さんの忘れ形見の『綾花』と『冬美』を、春菜の母さんが引き取って…」
そこへ、徹の折りたたみスマホに、はじめから着信が入る
徹は電話に出る
はじめ「徹!今、都と華連と一緒か?」
徹「はい、都さんも華連さんもいますけど…」
すると、都は徹からスマホをひったくる
都「はじめ…何かあったのか?」
はじめ「詳しい話は後でする…とにかく華連にすぐにでも、白金署に来てほしいんだ!」
都「分かった!車を飛ばせば、10分ぐれぇだ!」
都は電話を切る
都「白金署へ急ぐべ!」
華連「任せて!」
都と華連は、雰囲気のみで見事に意思疎通しており、徹は呆然としていた
都は急いで支払いを済ませると、徹を覆面パトカーの後部座席に押し込む
華連「徹くん、シートベルト忘れないでね!」
華連はエンジンをかけると、屋根にパトライトを装着する
―――――――――
しばらくして、白金署に到着するが…
弁護士1「どういうつもりだ!」
弁護士2名が、真壁や警官数人に対して、激怒している
明智「失礼致します!本庁の明智です!詳しい話を教えて頂けますか?」
玄関で華連たちと合流した明智が、弁護士2人にたずねる
華連「同じく、白狐村所轄の川原です!」
華連も警察手帳を出す
弁護士2「どうしたもこうしたも、あるか!」
そこへ…
警官数名に付き添われて、手錠を着けた早川が来るが…頭に包帯を巻いていた
都「一体、どういう事さ?」
弁護士1「『トイレに行く』と言って、取り調べ室から出た時、付き添っていた警官に、階段から突き落とされたんだよ!」
都「アホぬかせ!そんな事するヤツが、どこにいる!」
徹「都さん、落ち着いてください!」
都は今にも掴みかかりそうだったため、徹は都を引き離す
そこへ…はじめと島津も現れる
徹「はじめさん!」
徹ははじめに駆け寄る
弁護士1「大体、何で、部外者を取り調べに同席させる?」
弁護士2「しかも、その男は2年前の事件の…」
明智「落ち着いて下さい!」
明智に制止され、弁護士は口をつぐむ
はじめ「島津、都!こうなったら、徹たちにも話した方がいい…」
島津「仕方ねぇべ…」
島津は難しい顔をする
徹「一体、どういう事なんですか?」
はじめ「2年前に自殺した看護師の今井香さんだよ!」
はじめは徹に話し始める
はじめ「徹、前に話した波多野春菜の父さんの事、覚えてるか?」
徹「えぇ!」
はじめ「春菜の両親が離婚したのは…今井龍也さん、春菜の父さんが…」
島津「『亡くなった親友の一人娘を、引き取るため』だったんだ…」
島津はゲンコツで壁を叩き、もう片方の腕で顔を隠していたが…涙がにじんでいた
徹「もしかして、その『娘さん』って…」
はじめ「あぁ、『今井香』さんだ!」
徹は驚いたあまり、固まっていた
都「香さんは春菜たちの事を知って、命の尊さを人一倍熟知してるからこそ、看護師になったさ…それだけじゃねぇ!!双子のオナゴを妊った事知った時だって…「名前は『綾花』と『冬美』にする!」って、頑なに譲らなかったさ…だから、『点滴に毒を入れる』なんて、絶対あり得ねぇっ!」