太刀川都の執念   作:水野大陽

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【太刀川都の執念〜後編〜】

 その日の夜…

 

 明智(徹の回想)「明日の正午には、弁護士が早川さんの身柄を引き取るとの事です…それまでは、早川さんのご自宅のカギは、華連さんに預けます…くれぐれも、タイムリミットは明日の正午である事を、忘れないように、お願い致します!」

 

 徹は自宅の食卓で、華連と共に、鑑識課が撮影した写真をチェックしていた

 

 揚羽「徹も華連さんも、少し、休憩したら…」

 

 揚羽はテーブルに、羊羹を置く

 

 華連「あ、ありがとう!」

 

 華連は徹よりも早く、羊羹を食べ始める

 

 揚羽「あれ、この靴…」

 

 揚羽は被害者のスニーカーの写真を見て、何かに気づいた

 

 徹「靴がどうかしたんですか?」

 

 揚羽「この前、森下麗美さんから教えてもらったんだけど…海外の靴職人のかたの、作品なの…だから、1足1足、オーダーメイドみたいなの…」

 

 徹「アパレル業界の社長さんは、スケール大きいですね!」

 

 徹は何気ない反応だったが…

 

 華連「揚羽さん、それ本当なの?」

 

 華連は揚羽に詰め寄る

 

 揚羽「え、えぇ…」

 

 揚羽は驚いたあまり、固まっている

 

 そこへ…

 

 館羽「兄さん!お風呂空いたよ!」

 

 風呂上がりの、館羽と瑠理が現れる

 

 瑠理「あ、靴が片方だけ汚れてる!」

 

 写真を覗き込んだ瑠理が、反射的に叫ぶ

 

 揚羽「瑠理、邪魔しちゃダメよ!」

 

 揚羽は瑠理を引き離す

 

 すると…

 

 華連「瑠理ちゃん、いい事言った!」

 

 華連は大声で叫ぶ

 

 華連「アタシのバカバカ!何でこんな単純な事に気づかないの…徹くん、善は急げだよ!」

 

 華連は写真をかき集めると、徹を引き連れて、近所の駐車場に停めてあった覆面パトカーに飛び乗る

 

 徹「どういう事ですか?」

 

 華連「早川由紀子さんは元々、旧家のお嬢さんで、自宅には古い池があるの…離婚調停になって別居してからは、早川容疑者が1人で住んでたけどね!」

 

 そう言って、華連はパトライトを装着し、エンジンをかける

 

 華連「事件前日に、『日課のウォーキング中だった由紀子さんを、早川容疑者が待ち伏せて、呼び止めていた』っていう、目撃情報もあったんだ!」

 

 徹「そのまま拉致して、殺したって事ですか?」

 

 華連「街の中だと、見つかりやすいから、『人目につきにくい、自宅へ連れていった』と考えた方が自然だよ!」

 

 華連は運転しながら答える

 

 華連「遺体の第1発見者から『ジャージの片足だけぐっしょりだった』って証言もあったんだ…そうなると、『殺される』と分かって逃げようとした時、『池に足を突っ込んだ』と考えるのが自然だよ!」

 

 徹「言われてみれば…」

 

 徹は華連の話に、驚いている

 

 華連「池に足を突っ込んだら、どうなる?」

 

 華連の言葉に、徹はハッとなる

 

 徹「池の底に、靴跡が残ります!」

 

 

――――――――――

 

 不動山市の郊外にある、早川邸では…

 

 巨大な照明器具がセットされて、数人の鑑識係が作業をしていた

 

 そこへ、華連が運転する覆面パトカーが到着する

 

 徹「はじめさん!」

 

 徹は明智や都と一緒だった、はじめの名前を呼ぶ

 

 明智「徹くんも華連さんも、お手柄ですよ!」

 

 華連からの連絡を受けた明智や鑑識係たちは、池の水を抜く作業の準備をしていた

 

 はじめ「魚住たちからの情報提供で、2年前の事件も謎が解けたよ!」

 

 都「早川のヤツ、廃棄処分予定のフグを、魚住くんたちから買い取ってたさ!」

 

 華連「そうか!トリカブト毒とフグ毒を、両方使ったとすれば、納得がいく!」

 

 徹「華連さん、それ、どういう意味ですか?」

 

 驚いた徹がたずねる

 

 明智「テトロドトキシン…俗にいう『フグ毒』は、トリカブト毒と反発し合う特性があるんですよ!!そのため、毒の効果が出るまで、3〜4時間ほどかかるんです!」

 

 はじめ「つまり…早川は点滴にトリカブト、飲み薬のカプセルにフグ毒を混入したって事さ」

 

 そこへ…

 

 鑑識係「川原警視、水を抜く準備が整いました!」

 

 明智「ありがとうございます!では、水抜きをお願い致します!」

 

 鑑識係「はっ!」

 

 鑑識係はポンプのスイッチを入れる

 

 水が完全に抜けると…

 

 都「出た…」

 

 池の底に、スニーカーの靴跡がくっきりと浮かび上がった

 

 明智「大至急、被害者の靴との照合を…」

 

――――――――――

 

 白金署の取り調べ室にて…

 

 都「待たせたな!出たべ…物的証拠が!」

 

 華連と徹と共に、取り調べ室に入ってきた都は、早川に鑑定結果の書類を突きつける

 

 真壁「鑑定の結果、被害者の靴跡と完全に一致したそうだ!」

 

 早川は難しい表情をしていたが

 

 早川「あ…そういえば、以前、池に落ちた事あるって言ってたな…」

 

 真壁「ぐっ…」

 

 真壁は怯むが…

 

 華連「それはあり得ないんだよね…実はこのスニーカーは、海外の職人さんのオーダーメイドだから、地球上に一足しかないシロモノなんだ!」

 

 都「シューズショップの店員に確認したら、『被害者が遺体で発見された前日に、引き取りに来ていた』って事だったさ!」

 

 華連と都の言葉に、早川は反論できずに口ごもる

 

 真壁「つまり、お前は被害者を拉致した後、自宅へ連れていったが、逃げられそうになって拘束した…その後、夜勤のバイトに行き、車のトランクに監禁した被害者を、休憩時間に駐車場まで行き、刺殺した…そんな所だろ!」

 

 華連「検死されたら、当然、死亡推定時刻が出るから、アリバイ作りのために、あえて、すぐには殺さずに、夜勤の最中に殺したってトコだね!」

 

 都「そんだけ、悪知恵が働くんだから、2年前の事件も、アンタの仕業なんじゃないか?」

 

 しかしながら、早川は沈黙を貫く

 

 すると…

 

 徹「一つだけ、きいていいですか…『お金』と『ご家族の命』、どっちが大事なんですか?」

 

 徹が前に出て、たずねる

 

 早川「金だ!」

 

 早川は不気味な笑みを浮かべて答える

 

 真壁「なっ!」

 

 真壁は驚いて、固まる

 

 都「コイツ…」

 

 都は殴りかからんばかりの、勢いだったが…

 

 華連「ダメだよ!」

 

 華連に制止される

 

 しかしながら…

 

 徹「ふざけるなよ!」

 

 徹が別人のような形相で、早川に掴みかかる

 

 徹「アンタみたいな輩がいるから、20年前、僕の父さんは冤罪逮捕されかかったんだ…」

 

 真壁「徹、落ち着け!」

 

 真壁は徹を羽交い締めにする

 

 真壁「こんなヤツ、殴る価値もない!」

 

 真壁の言葉で、徹は正気を取り戻す

 

 徹「すみません!」

 

 その頃、別室では…

 

 明智「どうですか?」

 

 研太郎「バッチリ撮れてますよ!」

 

 研太郎は取り調べ室内の防犯カメラの映像を、自分のメモリースティックに保存する

 

 明智「入間さんの予想通りでしたね」

 

 明智は横にいる凛の母の方を向く

 

 凛の母「徹くんなら、やってくれると思っていましたから…小野寺将之さんと同じように…」

 

 凛の母の目つきは、普段とは別人のように、鋭くなっていた

 

 明智「無いとは思いますが…万一、徹くんが傷害容疑で訴えられた際は、頼みましたよ!」

 

 凛の母「えぇ、いざとなったら…この私が弁護証人を引き受けますから…」

 

 研太郎「俺も、証言しますよ!」

 

 そう言って、研太郎はノートパソコンの電源を落とした

 

 

 

 

 

 

 

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