「えーっと、ご多忙中でお熱いところ、お二人さん、お久しぶりぃー」
んんっ何っ?この聞き覚えある声……
後ろを振り返ると、見慣れた人物が一人ちょこんと右手を上げつつ、にこやかにこっちを見て佇んでいた。
「わわわっ、なずな、帰ってきてたの?よくここが分かったね」
士郎さんと二人だけと思ったから士郎さんに寄り掛かっていい雰囲気にしようと思ったんだけど、見られてたか!
なずなはそのあたりにはツッコまず、私の問いに答えてくれる。
「そーよ、今しがたね。みちるの場所は市役所で聞いたら教えてくれたよー。はー、シルヴァスタ家からアニマシティのはずれのここまで来るのに宇宙港、ハイヤー経由だったから疲れたわー」
あ、そういや私の居場所って市役所で分かるようにしてたな。何かあったら迎えに行けるようにって。
それよりも。
「えっ?なずな、あんた今シルヴァスタ家にいるの?」
ちょっと旅に出てくるわーと言い残し、しばらく前に(といっても数十年も前だけど)アニマシティから離れていたなずな。今頃何をして過ごしてるんだろうと思ってはいたが、なずなのことだ、どうせ気ままに元気でやってるんだろうと、ここ10年近くはすっかり忘れていた。
なずなも私と同じく、獣人化処方の開発に協力した身分、そうかシルヴァスタ家に居たのか。
「えへん、今はシルヴァスタ家専属の家庭教師をやってるの。シルヴァスタコーポレーションは世界の主だった工業分野全部で上位に入るコングロマリット。世界制覇は目前よ」
その話を横で聞いていた士郎さん、なずなを見て一言。
「そうなるとだ。ヤツもまだいるはずだ。シルヴァスタがまたシティの獣人たちを貶めるようなことをしたら、俺はお前も倒さなければならないということかな?」
目つきが鋭くなった士郎さんの問いに、なずなは
「えーっ私たち悪役って決定事項なの?獣人化処方薬剤の最大手なのにー。銀狼教だって今も向こうで続いててデェスルゥベ様、絶賛展開中なんだよー」
と、いなす。
あ、あれまだやってたんだ。
「アランは今、南の島で牧場やりながら悠々自適に独身貴族してるわね。ようやく牧場の動物が僕を見て逃げなくなったとか言ってたわ。そういえばアラン、大神君は匂いから僕を獣人と見抜けなかったようだけど、ここの動物たちはちゃんと僕を人間じゃないと分かっているようだから、彼よりもいい感覚してるんじゃないかな?って言ってたなぁ」
島民からはいつの時代でも同じ人がいるってんで島の七不思議の一つになってるようだけど、そうなずなは付け加えた。
「それは、匂いじゃなくてヤツの動き自体が怪しいからだろ。動物たちが逃げなくなったのは、ようやくヤツが数百年かけてまともになったということだ」
ふん、と士郎さんも負けじと反論。
アランさんも相変わらずだし、士郎さんの昔の反応も見れて、私となずなはくすっと笑った。
アランさんもまだ元気なようだ。また何か企んだりしないでね。
「んじゃ、今日は何用でシティに?」
と私は聞いてみた。
「今日はね、獣人の都と言われたアニマシティをシルヴァスタの後継者に見学させようと思ってね、事前調査に来たのよ。なにせ、設立初期から現在までのシティの歴史を生で体験した私だから、獣人の迫害から栄光までの歴史をリアルに教えることができるからね。そのおかげでシルヴァスタ家に居候させてもらえてるってとこかな」
なずなも私と同じ変身ができる。ということで彼女もまた
そういえば、どれだけでも生き続けられることを知ったなずなは
「わーっ、ずーっと生きられるー♪あんなことやこんなこともできそー。高齢者年齢になったらそれ以降年金だってもらいたい放題で楽できるわー」
とはしゃいでいた。
そんな彼女に私は、
「いや不死じゃないから。年金だって最初出ても年齢おかしいってなって途中で止められちゃうだろうし。ご飯食べなくちゃ死ぬから、ずっとお金も稼ぐ必要あるよ」
とツッコみ。
すると、なずなは私にスリスリしてきた。
「うーん、そ、こ、を、市役所のみちるちゃんがなんとかしてさぁ」
「あんたはマリーさんか。保険年金課は私の担当外!てか年金相談は年金事務所へ!」
そんなやり取りも懐かしい。
あの頃のアニマシティを知っているのは、もうこの三人と南の島の一人の四人だけになってしまった。
はてさて、この先どうなるやら……あ、三角関係だけはごめんだからね!!
「三角関係?」
やばっ、なずなに聞こえてた?!
「えーっ、士郎さんって私たちの3倍以上年上だよねぇ。私としては、やっぱり二十歳(はたち)ぐらいのピチピチでないと」
「えらい言われようだな……」
「あのぉ、なずな、自分の歳考えて言った方がいいんじゃない、ピチピチとか普通にドン引くわ……(自分も昔言ったことあるのは置いといてぇ)」
「そお?」
まだまだみんな元気そう。腐れ縁は続きそうだ。
余計に追加しました。もう二人が出てこないことにはと思い。