第1話
「あ……れ……?」
おかしい……。絶対におかしい。
俺の目の前に広がるのは一面の青。青い空に青い海が広がって……って、そんなわけあるかよ。俺はさっきまで仕事終わりで家に帰ろうとしてたはずだ。それがどういうわけか、美しい水平線を眺めている……。
そもそも仕事終わりなんだから夕方の筈なんだが、空は真っ昼間のような明るさだ。
「どうなってんだ……?」
全く状況を理解することができず、気づけば砂浜に座り込んで、ぼんやりと波を見つめていた。
俺の名前はフィン・ルイス。イギリスに住む普通の18歳だ。
まぁ俺からしたら普通だが、俺の正体を知ったら普通とは思わない人間も中にはいるだろう。
なぜなら俺は、“魔法使い”というやつだからだ。
俺は生まれた時から、魔法というものが普通にある生活をしてしていた。両親は共に魔女と魔法使いだったし、親戚もほとんどが魔法を使えることが当たり前で、そんな生活が当然の中ですくすくと育っていた。一方で、魔法を使えない人間がいることは知っていたし、俺たちのような魔力を持った人間の方が少数であることも理解していた。
魔法界ではそんな非魔法族、俺たち種族の間ではマグルと呼んでいた人間たちとは距離を置いたり、なんなら魔力がない分見下したりする奴らもいたが、俺の両親はマグルとの交流もどういうわけか盛んだったことで、俺自身もマグルの友人が何人かできたりもした。(もちろん自分が魔法使いだなんて言えないが……。)
とまぁそんなわけで、魔法族という狭いコミュニティだけではなく普通に生活していた。
そういった環境で育つなかで、11歳になってからは全寮制の魔法学校で魔術を学び、青春を謳歌しちゃったりなんかして、卒業後は本が好きだからという安易な理由で魔法界の書店で働く日々を送っていたわけだが……。
今日も1日仕事を頑張り、さて帰るかと移動魔法を使ったところ、普段なら自宅の前に到着するはずがなぜかこの状況に陥ってしまったのである。
「おっかしいなぁ……、失敗した……?」
そう口に出してみたものの、本来俺の使用した“姿現し”は自分の知ってる場所にしか行くことはできない。だが、俺はこんな場所知らない……。そもそも失敗したら身体がバラバラになったりするはずだったが⋯⋯?
とりあえずもう一度やってみようと、俺は自宅の前を思い描きながら魔法を使ってみることにした。
バチィッ!!!
「うわっ!!」
しかし、まるで何かに弾かれたような大きな音がしただけで、なぜか移動することができない。え、まじか。これつんだ!?!?
もしや魔法が使用できないのではないかと、他の魔法を使用してみたところ、なぜか使用しにくいながらもなんとか成功。とりあえずこれでただ杖を持った無能ではなくなって一安心である。
さて、だからといって安心ばかりもしていられない。これからどうするべきか……。
これはあれだ。きっと何かしらが作用して、知らない場所に飛ばされてしまったに違いない。魔法界ではたまにそういうことはあり得るし、クディッチという魔法界きってのスポーツ中に突然姿を消して、数ヵ月後に全く別の場所で発見されたなんて例もある。
ということは、だ。まず、ここがどこなのかを把握する必要がある。最悪自力で帰ればいいわけだからな。
まずは情報収集のために、人の気配がする方に向かって歩きだした。
◆
海岸から続いていた道をてくてくと歩き続けること数分、わりとすぐに人がいるところにたどり着いた。かなり活気のある街のようで、様々な店が建ち並んでいる。ここであれば充分な情報が集まりそうだ。
しばらく街並みを見ながら歩いていて気づいたのは、ここはマグルの世界であるということである。魔法を使ってる人は一人も見当たらないし、魔法を使用して演出している店は一軒もない。
そして、言葉がわかるところからここは英語圏の地域ではあるが、店員と客のやりとりを盗み見たところ、通貨はポンドではないらしい。つまり、英語圏だがイギリスではないということだ。
俺、国境渡っちゃってんのか……。今更だが一大事じゃないか……。
姿現しは使えないし、残念ながら金もない。家に帰るどころか、このままではホームレスまっしぐらである。
まぁ最悪魔法でなんとかすればいいのかもしれないけど、人を騙すようなことはあんまりしたくないしなぁ……。
ガッシャーン!!!
そんな思考を巡らせつつ街中を観察しながら歩いていた俺の耳に届いたのは、ガラスが破壊されたような大きな破壊音だった。
なんだ、喧嘩か?
音のした店に近づくと、若干の野次馬たちが窓から中の様子を伺っている。その野次馬に混じってこっそり中を覗くと、ガタイの良い男が暴れているようだった。そいつの周りにはこりゃまたガラの悪そうな男たちが数人、ニヤニヤしながら一人の男性を取り囲んでいる。囲まれているのはどうやら店員らしく、顔を真っ青にして恐怖に震えていた。
うーん……、これは……助けた方が良さそうか……?
◆
ガシャーン!!!
先ほどまで賑やかだった店内は、とある海賊たちの行動により一瞬にして静まり返った。
料理が並んでいたテーブルはガタイの良い一人の海賊により破壊され、全ての料理は食器と共に床に散らばる。
「コラァ! どういうことだこれはァ!!」
ことの始まりは、頼んだ料理に髪の毛が入っていたことから始まった。運ばれた先は運悪くも最近停泊している海賊で、そんな料理に激怒し暴れだしたのだ。店のマスターは怯えながらも何度も頭を下げるが、海賊の怒りは治まらず、料理や食器を踏みつけ唾を飛ばしながら怒鳴り続けていた。
「髪の毛が入ってるような飯をここじゃ当たり前に出すのか!? おい!!」
「申し訳ございません! い、今すぐにお取り替えしますので……! もちろんお代も結構です……!」
「ふざけんなコラァ! そんなんでおれの気が治まるとでも思ってんのか!?」
いよいよ我慢ならないといった風の海賊は、怒りで顔を真っ赤にし、持っていた銃をマスターに向かって構えた。
店中の客は巻き込まれまいと遠巻きに見ていたのだが、この光景にいよいよ数人が悲鳴を上げた。
「≪ステューピファイ≫」
「ぐほぇ!!」
呟くような声が聞こえた次の瞬間、海賊は急に宙を舞い天井に激突。そのままドスンと大きな音を立てて落下した。
突然の出来事に、店にいる全員が固まっている中で、最初に動き出したのは海賊の仲間たちだった。
「お、おい! 大丈夫か!?」
「だめだ……、気を失ってやがる……」
「誰だ!? こんなことしやがったのは!!」
誰もが壁にぴったりと張り付いて海賊達から距離をとっているが、入り口で堂々と佇んでいる男が一人。30cm程の木の棒のようなものを前にかざしたブラウンの髪に全身黒い服を身に纏っている青年は、店内の全ての視線を集めたまま、ニヤリと口角を上げてマスターに問いかけた。
「マスター。こいつら倒したら、タダ飯食べさせてくれません?」
「へっ……?」
突然話しかけられたマスターは、未だに怯えきっていてしっかりとした言葉を紡ぐことはできなかったが、まるで反射のように首を縦に振った。
「交渉成立!!」
「おい! 何勝手に話進めてんだ!!」
仲間がやられたことで一気に戦闘モードになった海賊たちが、一斉に青年に武器を向ける。
青年はそれに怯むことなく、手に持っていた木の棒をしっかりと握り直した。
誰もが無謀な戦いだと思っただろう。しかし、意外な勝者が決まったのは、それからすぐのことだった。
【フィン・ルイス】
・18歳
・イギリスの魔法使い
・ホグワーツ卒業生
・魔法界で書店員として働いていた。
フィンはホグワーツのどこの寮出身だと思いますか?試しにアンケート使ってみたかったのです。
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グリフィンドール
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スリザリン
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ハッフルパフ
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レイブンクロー