魔法使いが海賊になる話   作:柚村たか

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あと2話くらいでこの章終わらせたいと思ってたんですけど、なかなか話が進みません…。


第10話

 海賊達の殺気が鋭くなったドーム周辺。先程よりも人数は少ないが、絶対的支配者である船長の登場に危険度は増している気がする。

 ドームの上で戦い続けてくれていた麦わらさんは、俺の姿を見つけるとすぐに声をかけてきてくれた。

 

「あいつは大丈夫なのか!?」

「はい! トナカイさんがちょうど来てくれたので!」

「そうか! チョッパーが!!」

 

 攻撃を続けながらニカリと笑ってくれた麦わらさん。こんな状況なのに余裕そうに見える。

 

 かくいう俺は、用心棒として暴れる奴らの不意を突いて対抗することはあっても、こんな風に本気の戦闘というものが初めてに近いので、結構動揺しているというのが本音だ。

 自分がすべきことをやっているつもりだが、それだけでいっぱいいっぱいだったりする。麦わらさんを見習わねば……。

 

 そんな中で警戒を続けていると、目眩しが解けてしまったらしいウソップさんが慌ててこちらに走ってきた。

 

「おい! フィンてめェ! 消えるのに時間制限があるなら最初から言っとけ!!」

「え? あ、ごめん。俺もどのくらいもつのかわかってなくて……」

「危うく蜂の巣になるとこだったぞ!!」

「それは本当にごめん! でも無事で良かったです!!」

 

 腕に擦り傷が出来ているウソップさんに申し訳なく思った俺は、その傷の部分に傘の先を向けた。

 

「≪エピスキー≫」

 

 傘の先が当たっていた傷が治っていく。このくらいの傷なら治るということにホッとしている俺とは反対に、ウソップさんは傷があったはずの自分の腕を見て目を丸くしている。

 

「え!? 治った!?」

「あー……、あれですね。手品(マジック)です」

「いやいやいやいや!! さすがにそれで傷は治んねェだろ!!」

「こ、細かいこと気にしてる場合じゃないですよ!」

 

 無理矢理話を終わらせて向かってきた海賊達に魔法を飛ばす。

 まぁ正直擦り傷程度とはいえ、自分でも傷を治すのはやりすぎだという自覚はある。だが、こんなに手助けしてくれている人たちに対して、自分の保身の為に出来ることをやらないのは違うと思うのだ。

 

 あ、そういえば“あれ”の存在を忘れてた。ふとあることを思い出し、再びウソップに声をかける。

 

「ウソップさん! これを!!」

「うおっ!」

 

 ハルクさんから預かった鉄板のリモコンをウソップさんに向かってゆるりと投げ渡す。落とさないように慌てて受け取ってくれたウソップさんは、それを見ながら首を傾げていた。

 

「なんだこれ?」

「ドームから出てる大砲の操作盤です! ウソップさんなら操作できるかと思って!」

 

 ウソップさんが狙撃主というのは本人から教えて貰ったので知っている。なら、この場で一番大砲を上手く扱えるのはウソップさんに違いない。

 ドームから出ている大砲を確認しながらリモコンを操作するウソップさんは何かをぶつぶつと呟いていた。うん、きっと大丈夫!!

 

「大砲はお願いします!」

 

 一方的にウソップさんに託して、俺は別の敵に向かっていく。先程同様に突風を起こして人数を減らそうとしたとき、顔の前ギリギリを何かが通りすぎた。

 あっぶな……! あと少し反応が遅れてたら顔に当たってた!

 

 飛んできた方向に傘を向けると、殺気剥き出しでボーガンを構えるマスク男の姿が。

 

「おやおや、どこに行くんです? 君の相手は私でしょう」

「っ!!」

 

 再びボーガンから放たれた矢をギリギリ魔法で防ぐ。今のもだいぶ危なかった……。

 俺の数センチ手前で弾かれた矢を見て、マスク男は一瞬だけ動きを止めた。

 

「おやおやおや……、君は……武器だけが取り柄というわけではなさそうですねェ」

 

 俺の防御魔法のことを言っているのだろう。そりゃそうか。何もないのに矢を弾くなんて普通はあり得ないもんな。それにニヤリと笑ってみせる。

 

手品師(マジシャン)なもんで」

「なるほど……確かにその武器を手に入れるだけでは意味がなさそうだ……」

 

 それはどういう意味だろうか。俺と武器を手に入れるってこと? それとも俺から使い方を聞き出すってこと? もしくは俺と武器を壊すってことか……?

 最後の予想がかなり怖すぎたが、気を取り直してマスク男に傘を向けた。

 

「安心してください。この武器を渡す気はサラサラありませんから」

「おやおや、随分と強気だ。夢と現実は異なるということを理解する必要がありそうですねェ」

 

 夢と現実か……。それは何が夢で何が現実なのだろう。

 例えばマグルが夢だと思っている“魔法”というものは、実際には存在している現実だ。この世界に元々あるのかは知らないが、少なくとも俺という魔法使いは今ここにもいる。

 魔法を夢物語だと思っているのであれば、俺自身の存在は夢になってしまうということだ。なんか……自分でもよくわからなくなってきたな……。

 

 まぁ何が言いたいかというと、魔法使いであるということを知られていないアドバンテージは、かなりあると俺は思っている。理屈や法則が知られていないというのは虚をつくのに最適だ。

 先程は恐怖と焦りで考えなしに魔法を使ってしまったが、今こそ頭を使うべき場面である。冷静さは大事!!

 

 現実逃避になりかけた思考を戻してマスク男に向き直る。

 どうやら俺をご指名らしいので、湧き出そうな恐怖をなんとか抑えて、冷静に、と心の中で呟いておく。

 

 大丈夫! 俺はやる時はやる男なのだ!

 

 

「さて……それじゃあ、俺の人生初のマジックショーといきますか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 フィンとコザトが向き合っている頃、海賊達は相変わらずドームに近付けずにいた。ルフィ一人で守っていたドームだが、止まっていたはずの大砲からの攻撃が再び始まり、その攻撃の精度が先程よりも上がっているのだ。

 影に隠れながら大砲を操作するウソップの手腕である。

 

 一方ずっとドームを守り続けていたルフィはというと、ドームをウソップに任せ、敵の船長であるイザークと対峙しているところだった。

 ドームの横にある林の中で向き合う2人は、お互いを警戒しながら睨み合っていた。

 

 

「てめェのことは知ってるぜェ、麦わら……。最近随分と暴れてるらしいなァ」

「…………」

 

 イザークの言葉には何も返さず睨み続けるルフィは、呟くように口を開く。

 

「……お前か、この島を襲ってんのは」

 

 ルフィからの鋭い眼光を浴び続けるイザークだが、余裕綽々の表情で言葉を返した。

 

「まァな、ここはおれにとって宝の島よ。財源となるもんがある上に、政府の人間も中々辿り着くことはできねェ。こんな良い条件の島、おれのもんにしねェわけにゃいかねェだろ」

「……お前、この島の奴らのこと考えたことあんのか?」

 

 ルフィのその言葉に鼻で笑ったイザーク。

 

「この島の奴ら? そんなもん考えて何になるってんだ? どうせここはおれのもんになる。そうすりゃ自動的に島の連中もおれのもんだ! 下民どもに許可を貰う必要なんてねェだろ!!」

 

 最後は吠えるようにそういったイザークは、ルフィすらも嘲笑うように歯を見せて笑い続ける。

 

「大体てめェはなんでこの島に手なんか貸してやがるんだ? 海賊が人助けってか? くだらねェ!! 奪ってこそ海賊!! 弱者を従えてこそ強者だろうが!!!」

「……奪う?」

 

 ぴきりと青筋を浮かべたルフィだが、イザークはそれすらも楽しそうにしている。

 

「恐怖こそ一番の支配力だ! おれはそうやってこれまで何度も富を得てきた!! 力ってのはなァ、ほしいもんを奪うためのもんなんだよ!!!」

「“ゴムゴムの……”」

 

 イザークの話が終わる前に、ルフィは攻撃体勢に入り、ゴムゴムの実の力で両腕を後ろに伸ばした。それを見てイザークはすぐに防御の構えを取る。

 

「“バズーカァァ”!!!」

「ぐっ……!!」

 

 防御をとったイザークだったが、ルフィの強力な攻撃を防ぎきることはできなかった。少しだけ体勢を崩され、口の端から血が流れ落ちる。

 ルフィはというと、怒りに満ちた表情でイザークを睨み付け、大きく口を開いた。

 

 

「お前みたいな奴が!! この島を奪っていいわけねェだろうがァ!!!」

 

 ビリビリと怒りを含んだルフィの叫び。それはイザークのみならず、近くに居た海賊達の動きを止めるには充分だった。

 その中で一番最初に動き出したイザークは、口の端の血を乱暴に拭った。

 

「……てめェはなんでそこまでこの島に手を貸す? なんの関係もねェだろうが……」

 

 その問いに、ルフィは鋭い眼光のまま答える。

 

「友達の大切なもんを守るためだ!!」

 

 ルフィのいう友達は、フィンのことであり、ハルクのことである。付き合いは短いが、ルフィはフィンやハルクの人柄を気に入っていた。この島を守る為に懸命に戦っているのを知っているからこそ、力を貸したいと思える。

 力強く言いきったルフィの言葉を、イザークは嘲笑うように言い返した。

 

「友達?そんな甘っちょろいもんの為に力を使うってのか!?」

 

 拍子抜けというような表情を見せたイザークは、コキリと首をならす。

 

「残念ながらそんなんじゃお前は何も守れねェよ!! 海岸には俺の部下がいつでも攻められるように待機してる! 別部隊は工場を既に占拠しているはずだ! この時点で俺の勝ちなんだよ!!!」

 

 

 そんな時、林から一人の男がボロボロの状態で現れた。かなりの傷を負いながらも、イザークを見つけると振り絞るように口を開く。

 

「せ……船長……工場前に、ロロノア……ゾロが……工場組は……全員やられました…………増員、を……」

 

 そう言い残しバタリと倒れた男。それを見て、イザークは青筋を浮かべる。

 

「……ロロノア……てめェのとこの海賊狩りか? なるほど、そっちも別部隊がいやがったのか」

 

 低く絞るような声色は、まるで怒りを抑えているかのようだった。

 

 イザークが状況を把握するのを止めるように、今度は林からバタバタとこちらに向かってくる足音が聞こえ、ルフィとイザークはそちらに意識を向ける。

 

「あ! ルフィ! ちょうど良かった!」

 

 そこに現れたのはナミだ。少し後ろにはロビンの姿もあり、彼女の悪魔の実の力であるハナハナの能力で海賊を失神させているところだった。

 息を切らせているところを見ると、かなり急いでこちらに向かってきたようだ。それを見て最初に反応したのはイザークの方だった。

 

「……てめェら、海岸で足止めされてたはずじゃ……?」

 

 イザークの姿を目に写した瞬間一歩後ずさったナミだったが、そこは流石海賊。恐怖に負けじとイザークに向かって言葉を返した。

 

「海岸にいた奴らなら、今頃全員やられてるわ!」

「なんだと……? はったりは止めろ小娘。あの数がそう易々と……」

 

 イザークが言いきる前に再びバタバタと足音が聞こえる。慌ただしくやってきた男は海賊の仲間の一人だった。男の様子から良い報告ではないと察したイザークのこめかみがピクピクと動く。

 

「船長! 大変です!!」

「…………」

「海岸部隊に連絡がつきません! 最後の連絡では、足技の男と島民が……攻め込んできたと……」

 

 イザークの怒りが増したのを感じた男は、段々と報告する声が小さくなっていく。

 あと少しで怒りの限界まで達しそうだと誰もが予想した中で、ルフィはイザークに向かって言い放った。

 

 

「この島は、お前なんかに負けねェ」

「!!」

 

 完全に怒りが頂点に達したイザークは、その勢いのままルフィに殴りかかる。

 それが合図のように船長同士の戦いが始まった。

 

 

 

「どうしよう……! まだ一番大事なこと伝えられてないのに……」

 

 激しい戦いが始まってしまったのを見て、ナミは焦りを含んだ声色でそう呟く。本当はルフィにすぐにでも伝えたいのだが、この戦いに割って入ることはできそうになかった。

 

「海軍の船がこっちに向かってるのに……」

「海軍が島に上陸するまでには、私たちも身を隠した方が良さそうね」

「うん……船はサンジくん達に頼んできたから大丈夫だとは思うけど……」

 

 不安そうなナミと冷静に分析をするロビン。そんな二人の耳に、ルフィが戦っているものとは違う音が聞こえてきた。

 バチンという大きな音や、発砲音。戦闘音であろう方へゆっくりと向かうと、やはりそこには戦っている人物たちがいた。ナミとロビンが最初に目にしたのは、ペストマスクを被った男が銃と剣を持ち“誰か”に攻撃をしているところだった。

 その“誰か”の正体を確認したナミは、思わずその名前を口にする。

 

「あれって……フィン!?」

 

 フィンだと認識したナミは、目に写ったその光景に目を丸くする。それは隣で見ていたロビンも同じだった。

 

 彼女たちの前では、マスク男が剣を振り回しているのが確認できる。そして、攻撃をされる側であるフィンはというと、剣が自らに当たろうとした瞬間にはバチンという大きな音と共にその場から姿を消し、少し離れた場所にまた姿を現すという信じられないことをしていたのだ。

 

 ナミとロビンがフィンだとすぐにわからなかったのは、姿を消したり現れたりするフィンをすぐには確認できなかったからである。

 

 何度目かの“妙な技”を発動したフィンは、姿を現した瞬間に手に持つ傘から攻撃を放った。傘から放たれた光線は直接マスク男目掛けて放たれたが、次の瞬間には木々や葉など近くにあるものを操り、マスク男に攻撃を仕掛けていた。

 

「何、あれ……どういう仕掛けなの……?」

 

 フィンの信じられない“技”に驚きを隠せないナミ。そんな中、ロビンは何かを考えるように呟いた。

 

 

「彼は……もしかしたら……」

 

 そこで言葉を切ったロビンの口から、その続きが紡がれることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 マスク男と対峙して、初めてのマグルとの戦闘となった俺だが、魔法を使わないという選択肢はまずありえない。

 そもそもずっと使って攻撃しているわけだし、今更使わない意味もないしね。というか、使わないと勝てないと言っても良いくらいだ。

 

 理由としては、マスク男のスピードが速すぎるからである。先程蹴られたときに思ったが、あのスピードは俺にとってかなり不利なものだった。

 

 基本的に物理攻撃に弱いというのが魔法使いの弱点であり、それを補うために防御魔法を展開したり、攻撃魔法で相手の物理攻撃を相殺したり、姿くらましや姿あらわしという移動魔法で物理攻撃を回避したりするわけだ。

 

 防御魔法や攻撃魔法は元よりパワーアップしているので問題はないが、相手のスピードに対抗するには移動魔法が最適だ。しかし、こちらの世界に来て最初に試した時は、残念ながら使用することができなかったのである。

 

 ただ、俺はある一つの予想を立てていた。前回移動魔法を行う際に自分が行きたいと考えた場所は、別世界にある自分の家。ならば、こちらの世界の中で行きたいと思った場所への移動魔法を使用したらどうなるのだろうか。

 ……もしかして、同じ世界の中なら移動できるんじゃね?

 

 ということで、ぶっつけ本番で試してみることにした。

 マスク男が剣を振り上げてきた瞬間、男の後ろに移動するために移動魔法を使う。馴染みのある引っ張られるような感覚がやってきたことで、姿くらましが成功したことを悟る。そして無事にマスク男の後ろに移動することができたのだ。

 やった! 出来ないと思ってた魔法が出来たときの喜びやばい!!

 

 移動魔法が使えるとわかれば、マスク男のスピードも不利ではなくなる。残念ながら移動できる距離は最長でも3mくらいのものだが、使えると使えないでは雲泥の差がある。

 

「くっ!! 小賢しいっ!! 妙な技は武器だけではないようですね!! 悪魔の実の能力者だったんですか!?」

 

 俺が消えたり、物を動かして攻撃したりすることに対してそう言ったマスク男。どうやら攻撃が当たらないことにかなりイライラしているらしい。

 

「悪魔の実の力じゃなく、手品(マジック)ですよ! まぁタネも仕掛けもありませんけどね!!」

 

 落ちていた木の枝を魔法で纏め、マスク男に勢いよくぶつける。持っていた剣でそれを切りつけたマスク男は、ギラリと俺を睨み付けた。

 

「これが手品!? おちょくるのもいい加減にしなさい!!」

「失礼な! 俺はいつでも本気ですよ!!」

 

 そう言いながら武装解除呪文をぶち当てると、マスク男の手から剣が弾き飛ばされる。さすがに一度で両手の武器は飛ばせはしなかったが、武装解除が成功したことに安堵した。武器使う相手で良かった!

 

 突然何かに弾かれたように自らの手から飛んでいった武器に驚きをみせたマスク男だったが、すぐに背中に背負っていた槍のような武器を手にとって構えた。いや、武器背負いすぎでは……?

 

 これ以上長引かせたくないと少しだけ焦ってしまった俺に、マスク男が槍を付き出してきた。姿くらましが間に合わずなんとかギリギリでかわすことが出来たが、そのまま槍の柄の部分で殴られる。やっぱり俺、物理攻撃に弱すぎ……。

 

 しかし最初に蹴られた時の二の舞を踏むわけにはいかないと、痛みを堪えて間髪いれずに傘を構えた。

 俺も結構ボロボロだが、マスク男も見た目は同じくらいボロボロである。俺の魔法攻撃でしっかりダメージを与えられているようで何よりだ。

 

 

「……マスクが結構傷ついちゃってますけど、さっきみたいに怒らないんですか?」

 

 挑発するようにそう言うと、少しふらついている様子のマスク男は、それを隠すように槍を構えた。

 

「……それを気にしていられないほど私も真剣だということですよ。光栄に思ってください」

 

 なんという上から目線なんだ……。自信があるのは羨ましいけど、このマスク男を格好良いとは思えないな。

 光栄には思えないのでその言葉は無視することにして、傘を握り直す。

 

「そろそろ俺のマジックショーも終わりにしたいんですけど、どう思います?」

「名案ですね。私も君の奇術には飽き飽きしてきたところです」

 

 

 一瞬、周りの音が全て無くなったように感じた。俺の神経は全てマスク男に向けられ、今なら少しの動きも見逃さないだろうと感じる。

 

 数秒間、お互いの出方を探るように動きを止めた俺たちは、ほぼ同じタイミングで口を開いた。

 

 

「≪ペトリフィカス・トタルス≫!!」

「“槍衝(そうしょう)”!!」

 

 俺の魔法は真っ直ぐ男のマスクに向かって進む。しかし、男はそれを避けながら俺の左肩目掛けて槍を付き出してきた。まぁ避けられるのは想定内です!

 ギリギリで肩に防御魔法をかけ、槍の動きが止まったところで刃の部分をがしりと掴む。俺のその行動は予想外だったのだろう。マスク男の動きが一瞬止まった。これを待ってました!!

 

「≪ステューピファイ≫!!!」

 

 俺の放った失神呪文は、動きを止めたマスク男に綺麗に当たり、その衝撃で宙に舞った後、地面にどさりと倒れた。すかさずマスク男を縄で縛り動きを拘束する。

 

 動かなくなったマスク男を警戒しながら近付くと、ちゃんと魔法の効果はあったようで気絶しているようだった。

 

 

「…………勝った、のか……?」

 

 気絶しているマスク男をしばらく眺めてから、ようやく自分が勝てたことに気づく。その瞬間、槍を掴んだ左手から流れる血の生暖かさと激痛に襲われた。

 

「痛っ!!」

 

 やばい! 気が抜けた瞬間めっちゃめちゃ痛い!! そして思った以上に血が出てる!!

 さすがにこの怪我を綺麗に治せる程の技術はまだないので、止血だけしておこう。

 

 

 最終確認としてマスク男を爪先で軽く揺らす。うん、ちゃんと気絶してるな!!

 

「……よしっ、取り敢えず勝った……!」

 

 

 こうして俺の初めての命をかけた戦闘は、なんとか白星を飾ることができたのだった。

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