魔法使いが海賊になる話   作:柚村たか

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次でこの章も最後になります。


第11話

「フィン!」

 

 俺が勝利を噛み締めていると、林から麦わらさん一味の美女2人が駆けつけてきた。どこからかの視線を感じていたが、どうやらこの2人だったようだ。

 

「お二人とも無事で何よりです!」

 

 特に怪我もしていなさそうな2人にホッとしたのも束の間、オレンジ髪美女さんに詰め寄られる。

 

「あんた! 今の何なの!? 消えたり現れたり!」

「……え?」

 

 あ、そうか。見られていたということは、当然移動魔法もバッチリ目撃されていたということになる。マスク男は後で記憶を消そうと思っていたが、この2人の記憶を消すのはなんか気が引けるな……。

 どうするのが正解かわからない中、俺が精一杯考えた言葉を口にする。

 

「…………手品です」

「嘘つけ!!」

 

 盛大につっこまれてしまい口ごもってしまった俺に気付いたのかはわからないが、黒髪美女が間に入ってくれた。

 

「一先ずそれについては後よ」

 

 その言葉でハッとした表情を見せたオレンジさんは、すぐに俺に視線を合わせた。

 

「そうだった……! 大変なの!! この島に海軍の船が近付いてきてる!!」

「……海軍? え!? 海軍!?」

 

 とうとう来てしまった! いつかは来るだろうと思っていたが、なんというタイミングなんだ……!

 目的はやはりハルクさんだろうか。もしそうだとしたら、俺のかけた魔法は効力がきれてしまったということになる。……もしかして記憶を弄ったことバレたのかな。

 つまりはその原因を探りにきた可能性もあるということだ。あれ?もしかして俺の立場って結構危うい……?

 

「……どうしよう……」

 

 小さく呟いた俺の言葉はどうやら2人には聞こえなかったらしい。焦りを含んだ声色でオレンジさんが続ける。

 

「みんなにも伝えなきゃ!! この際ルフィは後でもいいわ!」

 

 オレンジさんのその言葉で納得した。近くから大きな音が聞こえると思っていたら、どうやら麦わらさんが戦闘中だったらしい。

 困っているオレンジさんのためにも、居場所がわかっている人たちの情報だけでも伝えなければ。

 

「ウソップさんはあそこのドーム近辺にいるはずです。トナカイさんは、あっちの林の方で俺の友人を手当てしてくれているかと」

「わかったわ! ……あ! いた!」

 

 木の幹に隠れるようにしていたウソップさんを見つけると、オレンジさんはそちらに向かって走っていく。

 その様子を見ながら、黒髪美女さんも口を開いた。

 

「なら私は船医さんのところへ」

「トナカイさんですね、案内します!」

 

 俺が走り出すと後ろからついてきてくれる黒髪美女さん。それを確認しつつ、トナカイさんのいる方へ向かう。ハルクさんの容態も心配だったので丁度良かった。

 

 かけていた目眩ましの効果は既に切れていたようで、トナカイさんとハルクさんの居場所はすぐに見つけることができた。

 ただ、麦わらさんとウソップさんが暴れてくれていたおかげで、2人が見つかることはなかったようだ。

 

 

「トナカイさん!!」

 

 ハルクさんの治療を続けてくれていたトナカイさんは、俺の声に反応して顔を上げた。そしてすぐに問いかける。

 

「あの、ハルクさんは……?」

 

 目を閉じて動かないハルクさんに一瞬ドキリとしたが、呼吸で胸が上下しているのを確認してホッとする。

 

「一通りの治療は終わったから、あとは安静にしておけば大丈夫だ」

「良かった……」

 

 先程よりも顔色が良くなっているハルクさんの寝顔を見て、大きく息を吐く。大丈夫だとは思っていたが、やはり医者の言葉ほど心強いものはない。

 

 安心したのも一瞬で、すぐにここに来た理由を思い出した。

 

「そうだ! 海軍!」

 

 俺の要領を得ない言葉に首を傾げたトナカイさんだったが、すぐに黒髪美女が補足をしてくれた。

 

「海軍の船がこの島に近付いているわ」

「かっ、海軍が!?」

 

 驚きを身体全面で表現をしたトナカイさんはとても可愛らしいと場違いなことを思いながら頷く。さすがにこの場面で言ってもいいことではないことくらいわかる。まぁそれは置いておくとして……。

 

 俺はともかく、麦わらさん達が海軍に見つかるのは不味いだろう。最近色々とお騒がせ海賊として名を馳せてきているのだ。海軍が捕まえないわけがない。

 

 どうしたものかと考えた末、ひとつの案が浮かんだ。……うん、この方法なら麦わらさん達は海軍に見つからないだろう。

 

 しかしそれを成功させるためには、重要なことが二つある。一つ目は、麦わらさん達の仲間が今どこにいるのかを把握すること。そして二つ目は、“その方法”をとるために島のみんなの許可を得ることだ。

 取り敢えず一つ目から解消していこうと、2人に顔を向けた。

 

「あの……麦わらさん、ウソップさん、オレンジ髪の女性の他に、お二人の仲間はあと何人いますか?」

 

 突然の質問であるにも関わらず、すぐに答えてくれたのは黒髪美女さんだ。

 

「あと2人よ」

「その2人の居場所わかります?」

「1人は北の海岸で別れたわ」

「海岸か……、もう1人は?」

 

 俺の問いに一瞬俯いたトナカイさん。すぐに顔を上げたが、そこには若干の焦りが見えた。

 

「実は……俺と東の海岸に向かってる途中ではぐれちゃって……」

 

 なるほど、つまり1人は居場所がわからないと……。まぁ島の外に出たってことはあり得ないし、なんとかなるかな、多分。

 俺がそんなことを思っていると、林の奥から人の声と足音が聞こえてきた。まさか敵かと身構えたが、聞こえてくる1人の声に聞き覚えがあり少し警戒をとく。

 

 

「こっちです! ……あ! フィンじゃないか!」

「工場長!?」

 

 現れたうちの1人は、ポロウ草加工工場の工場長だった。白衣を来て眼鏡をかけたその姿は、研究者のようでもある。

 

「ん? チョッパーとロビンじゃねェか」

「ゾロ!!」

 

 工場長と共に現れた緑頭の男性は、どうやら2人の仲間らしい。この人は、海岸で別れた人なのか、はぐれた人なのか……。

 俺がその質問をする前に次の会話でどちらかわかることになる。

 

「ゾロ! 見つかって良かった!」

「お前こそどこ行ってたんだ? 勝手にはぐれやがって。迷子か?」

「迷子!? おれが!?」

 

 微妙に認識がずれているような気もするが、つまりこの人ははぐれた方の人ということだろう。

 

 そうとわかればあとはもう1人の居場所を把握することと、島の許可を得ることだ。丁度良く現れてくれた工場長に向き直る。

 

「工場長! お願いがあります!」

「……それは、海軍がこの島に向かっていることと、この人達と関係があることかい?」

 

 眼鏡をキラリと光らせてそう言った工場長に頷いてみせると、笑顔を浮かべながら俺の肩に手を置いた。

 

「彼らを助けたいんだな?」

「……はい」

「なぜ僕が彼をドームに案内していたと思う?」

「え……?」

 

 質問の意味を考えて、まさかと思う。工場長が緑頭さんと一緒にいたのは、ドームまでの道のりを案内していたからだということは、もしかして俺と同じことを思ったからだろうか……。

 それが果たして合っているのかわからず、控えめに問いかけてみる。

 

「……つまり、麦わらさん達全員にあの場所を教えてもいいってことですか……?」

「もちろんだ! 僕たちの島を守ってくれている恩人を手助けしたいと思うのは君だけじゃないんだよ」

 

 力強く頷き笑顔を見せてくれた工場長に後光が差しているような錯覚を覚える。工場長ありがとう!!

 

 そうと決まれば後は残りの1人の居場所を探し出し、ここへ誘導するだけだ。

 悠長にしている時間はない。

 

「工場長! 皆さんの案内をお願いします。ハルクさんも一緒に連れていってもらえますか?」

「任せてくれ!」

「ありがとうございます!!」

 

 取り敢えずドームに向かってもらおうとした矢先、俺の持っていた子電伝虫が鳴る。俺の勘が告げている。これは間違いなく良い報せだ。

 そう思いながら出ると、子電伝虫の向こうから聞こえたのはサムさんの声だった。

 

『フィンか!! 無事か!?』

「俺は平気なんですけど、ハルクさんが……」

 

 “怪我をしてしまった”という言葉を言う前に、サムさんがハッと息を飲んだのが聞こえ、そしてすぐに言葉を続けてきた。

 

『そうか……、ハルクが……いや、アイツはきっと大丈夫だ。こんなことでやられるたまじゃねェ!!』

「……あ、いや、えっと……」

 

 怪我をしたけど無事だと言うことを伝えられないまま、サムさんがどんどんと話を続けていく。まぁ取り敢えず後で伝えればいいかと、まずはサムさんの話を聞くことにした。

 

『とにかく伝えたいことがあって電話した! 今この島に海軍の船が向かってる!』

「はい! 麦わらさんの仲間から聞きました! だから俺たち今、ドームに向かおうとしてたところなんです! 工場長から許可を貰えたので、今度は俺たちが麦わらさん達を助けたくて!」

『なに!? そりゃ丁度良かった! 俺たちも同じ考えでな! さっきまで一緒にいたぐるぐるの兄ちゃんをそっちに向かわせたところだ!』

 

 そのサムさんの言葉に「サンジだ!」と反応したトナカイさん。“ぐるぐる”ってのかなり気になるが、取り敢えずその人が麦わらさん達の仲間であることは間違いないだろう。

 

「わかりました!」

「まだ海賊達が残ってるかもしれねェ! 気を付けろよ!!」

「はい! ありがとうございます! サムさん達も気をつけて!」

「おう! まぁこっちはぐるぐるの兄ちゃんが全員蹴り飛ばしてくれたからな! 大丈夫だ!」

 

 ぐるぐるの兄ちゃん強すぎない? サムさんの言葉に驚きつつも話を終えた俺は、周りで聞いていた皆さんに顔を向けた。

 

「ということなので、皆さんは先に行ってください! 案内は工場長がしてくれます! 俺は、その“ぐるぐるの兄ちゃん”を待ちますので!」

 

 俺のその言葉で動き出した皆さん。ハルクさんは俺が出した担架で運ばれながら、ドームに向かっていった。

 

 

 さて、北の海岸から来るということは少し移動しなくてはいけない。ぐるぐるの兄ちゃんをしっかり見つけられるようにしようと一歩を踏み出したとき、俺はあることに気付く。

 

 ……マスク男の記憶消してない!! 傘から放たれる魔法は見られたのは武器だと言い訳できるから良いとしても、移動魔法はさすがにまずい!

 

 慌ててマスク男を放置してきた場所へと向かう。おそらくぐるぐるの兄ちゃんとも出会えそうな位置なので安心だが、そうだとしたら彼が来る前に終わらせなければ!

 

 そんなことを考えながら急いで戻ったが、なぜかその場にマスク男はいなかった。え!? もしかしてもう目が覚めて歩いてどっかに行っちゃった!?

 

 周りをキョロキョロしながらマスク男を探す俺の耳に、突然穏やかな声が聞こえる。

 

 

「何か探し物かい?」

「!!」

 

 色々警戒をしていたからだろうか、少し気の抜けたような声色にも関わらず、一瞬にして全身から汗が吹き出したように緊張が走った。すぐに声のした方に傘を構える。

 

「そ~んな警戒しなくても大丈夫だよ」

 

 構えた先にいたのは、黒いローブに身を包む男。グレーっぽい髪をセンターで分け、笑顔を浮かべているがその細い目はあまり笑っているようには見えなかった。

 俺が一向に警戒を解かないことに肩をすくめた男は、変わらず穏やかな口調で続けた。

 

「あれだよね? 君が探してるの、ペストマスクの海賊でしょ?」

「…………」

「大丈夫、アイツはおれが海岸に運んどいたから。もうすぐ海軍が来るからねェ」

 

 え、それは困る……。まだあの男から俺が移動魔法を使ったことに関する記憶を消してないのに。しかし、次のローブ男の言葉で余計に焦ることとなる。

 

「あ~、安心しなよ。アイツの()()()()()()()()からさ」

「え……」

 

 小さく呟いた俺になぜか笑みを深くしたローブ男に、俺の勘がこいつはヤバイと告げている。

 

「あんなに派手に手品(マジック)なんかしてくれちゃって、後処理するこっちの身にもなってよ、手品師くん?…………いや……」

 

 そこで言葉を止めたことでより緊張が高まる。ゴクリと唾を飲み込んだ自分の音が、かなり大きく聞こえた。

 

 

「……()()使()()くんって言った方がいいかな?」

「…………」

 

 ローブ男の言った言葉に、かなり動揺してしまったが、変に動きを見せたら余計に怪しまれると、なんとか無表情を貫く。俺が下手に動かなければ有耶無耶にできるかもしれない。

 しかし、現実はそんなに甘くはなかった。

 

「ん~、残念ながら君が隠そうとしても無駄だよ。だっておれは、君が魔法族だって確信してる」

「……なんでそう思うんですか?」

 

 俺が初めて言葉を発したことに満足そうな笑みを浮かべた男は、ローブに隠れていた腕を前に出した。その手には、短剣が握られている。

 攻撃されるのかと警戒を強めたが、男は俺の予想とはかけはなれたことを口にした。

 

「だって、おれも同族だし」

 

 そう言った次の瞬間、男は自分の持つ短剣を俺の足元に向ける。短剣の先から放たれた光線は、俺の足に忍び寄っていた大きめの蜘蛛に直撃し、蜘蛛は失神をして動かなくなった。

 え……今のって……完全に魔法では……?

 

 驚きながら男に視線を戻すと、意外そうな表情をしていた。

 

「あれ~? まるで初めて魔法族に会ったみたいな反応だな。もしかして他の魔法族に会ったことないとか?」

「あ、えっ……? 他の……?」

「……待って、冗談のつもりだったんだけど、まじなの? ……君、どこのド田舎地区の出身……?」

 

 待ってほしいのはこっちの方だ。今の話から推測するに、魔法族ってやっぱりこの世界で普通に存在するのか……?

 会話の中であることを思い出し、気付けばそれを口にしていた。

 

「……もしかしてさっきの木馬って……」

「あ~、そうそう、あれはおれの。乗り心地良かったでしょ?」

「乗り心地は……最高でしたけど……」

 

 混乱のあまり普通に感想を伝えてしまった。いやいや、そんなことを言ってる場合か!

 今のところ俺に対して敵意があるようには見えないが、信用して良いとも言い切れない。

 まずはこの正体不明の男が何者で、俺に接触してきた目的を知る必要がある。答えてくれるかはわからないが、何もしないよりは良いだろうと質問してみることにした。

 

「あの……」

「なに?」

「あなたは何者なんですか?」

「あ、おれ? ライ」

「いや、名前を聞いたわけじゃなくて……」

 

 名前がわかったところで何の意味もない。でも、なんと聞くのが正解かわからずにいるうちに、ライと名乗った男の方から答えてくれた。

 

「ん~、そうねェ。君が善良な民なら味方といえるし、政府に楯突く悪党なら敵とも言える。まァそれは君が魔法族じゃなければの話だけど」

 

 つまり、この人は政府側の人間なのか。ハルクさんが言っていた通り、やはり政府は魔法の存在を認識しているようだ。

 ただ世の中に魔法の存在が知られていないということは、隠したいことなのだろう。

 

「……俺が魔法族だとどうなるんですか」

「そりゃ捕まえることになるよ。魔法族と非魔法族の盟約、知らないわけじゃないでしょ?」

 

 ……ごめんなさい、この世界の盟約は知らないです。とは流石に言えない。

 薄々感じていたが、この世界に魔法は存在するものの、それは元々この世界で生まれ生活している人たちのことだ。きっと俺みたいに別世界から来た者はいないのだろう。

 ……でも、それにしてはさっき男が使った失神魔法が、俺の知る元の世界の魔法と同じなのは気になるな……。

 

 そんなことを考えていたが、そういえばこの男は言った。“捕まえることになる”と。やばいじゃん! 流石に捕まりたくないです! 自由に行動したい!

 

 俺が更に警戒を強めたのを確認すると、男は手に持っていた短剣をローブの中に隠した。

 

「あ~大丈夫、君を捕まえる気は今のところないから」

「……でもさっき捕まえるって……」

「……言ったっけ?」

「言いましたよ! ついさっきね!!」

 

 なんだこの人は……! 思わず突っ込んじゃったじゃないか。

 ペースを乱されたことに若干イラつきながら、そのまま口を開いた。

 

「本当に……捕まえる気はないんですか?」

「うん、今のところは。だって君は別に悪いことしてないし。今回に至ってはポロウ草とこの島を守るために動いてくれた善良な民だよ? 讃えることはあっても、捕まえることはないでしょ~」

「魔法族は別だってさっき言ってたじゃないですか」

「……言ったっけ?」

「だからさっき言ったんですって!! もっと自分の言葉に責任持ってくださいよ!!」

 

 本当に何なんだこの人は! 今のところ悪い人ではなさそうだが、会話をしていると何だか腹が立つ。この適当な感じがそう思わせるのだろうか。

 

「まァそういう訳だから、今のところは安心しなよ。麦わら達も、今回は借りができちゃったからねェ。何か策があるなら海軍が来る前に目立たないように言っといて」

「……政府の人が海賊を見逃すんですか?」

「う~ん……正直今回の目的は麦わらじゃなくて君だからなァ」

「……俺が目的……?」

 

 なぜだ。俺の存在は既に政府に知られていると言うことだろうか。原因はおそらく、海軍の記憶を改竄したことだろうけど……。そんな大事になってるとは思っていなかった。

 

「あ~、まァそんなに固くならないでよ。この島に魔法族がいるかもしれないって気付いたのは、おれともう1人くらいだからさ」

「……だから捕まえに来たと?」

「いや、だから捕まえる気はないんだって。様子見だよ、どんなやつなのかなって」

 

 そう言いながらなぜか俺の周りをゆっくりと周り始めた。警戒を弱めることなく傘は構え続ける。

 

「う~ん、うん!」

 

 大きく頷き俺の前で足を止めた男は、細い目でじっと見つめてくる。そしてにっこりと笑った。

 

「やっぱり今回は見逃すことにしよう!」

「…………」

「でも、次にもし派手なことしたら、おれはもう庇えないから、その時は自業自得ってことで大人しく捕まってね」

「は……」

 

 バチンという大きな音と共に男が姿を消した。……今のは間違いなく姿くらましだよな。

 

 取り敢えず捕まらなかったことにホッとしつつ、様々な謎が増えて頭が混乱する。

 

 

 しばらくその場でじっとしていると、林の中から人の気配を感じた。

 

「……誰だ? クソ海賊どもの仲間か?」

 

 俺の姿を見てそう言ったのは、金髪にぐるぐる眉毛の男性だ。あ、この人がぐるぐるの兄ちゃんか! ぐるぐるって眉毛のことね! そうだ、おれはこの人をドームに案内するためにここに居たんだった!

 

「麦わらさんの仲間の方ですね! 俺はこの島の者です! あなた達を海軍から隠します! ついてきてください!」

「あ……?」

 

 急にそんなことを言われて訝しげに俺を見てきたぐるぐるさんだが、ここで悠長に説得している暇はないのだ。

 

「怪しむのは尤もですけど、取り敢えず着いてきてください! こっちです!」

「あ、おい!」

 

 俺が走り出すと、怪しみながらもなんとかついてきてくれる。良かった、他の仲間の人に会いさえすれば信じてくれるだろう。

 

 

 あとは、麦わらさんだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ルフィとイザークの戦いは、あちこちの木々をなぎ倒すほど派手なものとなっていた。

 お互いにボロボロではあるものの、少しルフィが優勢のようにも見える。ドームに向かった麦わら海賊団の一行は、ドームの上からその様子を眺めていた。

 

 同じくドームに向かうフィンとサンジはというと、その戦いによって足止めされていた。

 激しい船長同士の戦いに歩を進めることもできず、自分達の身を守りながらもその様子を見つめていた。

 

 

「麦わらさん……」

 

 見るからに怪我をしているルフィに対して、無意識に名前を呟くフィン。その心配そうな様子を見て、サンジはフィンが敵ではないと確信する。

 

 

 

「麦わらァ!! いい加減ボロボロじゃねェか!!」

「うるせェ!! さっきから変なもんばっかり投げて来やがって!!」

 

 ルフィが言う通り、イザークは自分が攻撃を仕掛ける前に爆弾やら何やらを投げて、相手の隙をついてくるような戦いをするのだ。

 そのお陰でルフィに攻撃を当てることができていると言っても過言ではない。

 

「これがおれのやり方よ! おら! また行くぞ!!」

「こんのっ!!」

 

 投げられた丸い玉を吹き飛ばそうとルフィが触れた瞬間、その玉が破れ中から何かが現れた。その何かはカチャリと音を立て、ルフィの腕にしっかりと付けられる。

 

「っ!?」

 

 気にせずにイザークを殴ろうとしたルフィだったが、ガクリと膝を付いてしまう。

 

「??? なんだ……?」

 

 自分の身体から力が抜けていくような突然の感覚に理解ができないルフィに向かって、イザークは勝ち誇ったような顔を浮かべた。

 

「うまく動けねェか? そりゃそうだろうなァ…! テメェの腕に付いたその手錠は海楼石ってもんで出来てるらしい。海と同じエネルギーを発してるそうだ。能力者のお前には“最高の”手錠だな!!」

「ち……ちくしょう……力が入らねェ……!!」

「やっぱりこれは裏ルートで手に入れておいて正解だったな。能力者もこうなりゃ只の人間だ!!」

 

 弱ったルフィを蹴り飛ばしたイザーク。殴り飛ばした靴には爆弾が仕込まれていたようで、衝撃と共に爆発する。

 

 

「ルフィ!!」

「麦わらさん!!」

 

 それを見ていたサンジとフィンの声が重なる。

 

 続けてルフィに攻撃をしようとしていたイザークに向かって、サンジは得意の蹴りを入れようと走り出す。

 一方フィンは、手錠のせいで動けずにいるルフィの方へと向かっていた。

 

「なんだァ? ネズミどもがうろちょろしてやがるなァ!?」

 

 サンジとフィンを視界に捉えたイザーク。まずは自分に向かってきたサンジに右手を向けると、仕込んでいた武器からから小さな砲弾の様なものが飛び出した。攻撃体勢に入っていたサンジは避けることが出来ず、その砲弾が直撃する。

 そしてそのまま爆発した衝撃で飛ばされてしまった。

 

 だが、決してその行動は無駄ではなかったといえる。イザークがサンジに意識を向けている間、フィンがルフィの元にたどり着いていたのだ。

 ルフィの腕に付いていた手錠にフィンが傘を向けると、カチャリとその手錠が外れた。

 

「外れた……!」

「俺の前では手錠なんて只のオモチャですよ!」

「助かった! ありがとう!!」

 

 フィンに向けてニカリと笑ったルフィは、すぐに鋭い視線をイザークに向ける。

 

 

「おい!眼帯!!」

 

 いつの間にか手錠が解けているルフィに驚くイザークは、眉根を寄せて問いかけた。

 

「テメェ……手錠はどうした……?」

 

 その問いには答えず、ルフィはイザークに近付いていく。

 

「“ゴムゴムの”」

「懲りねェ野郎だなァ麦わらァ!!」

 

 武器の仕込まれた腕をルフィに向け砲弾を放つイザーク。また隙をついて攻撃する算段だったが、それは叶わなかった。

 

 砲弾はルフィに当たるが、それでルフィが怯むことはなかったのだ。隙を全く見せず攻撃をやめるこをしないルフィに、イザークは焦りで顔を歪ませた。

 

「麦……!待っ……!!」

「“ガトリングゥゥ”!!!」

 

 やむことのないルフィの攻撃は、全てイザークに当たる。

 

「うおおおーーーー!!!」

 

 全ての力を振り絞るように拳を打ち続けるルフィに対し、既にイザークの意識はなくなっていた。

 

 ルフィの最後の攻撃により宙高く舞い上がったイザーク。ボロボロの状態で重力に逆らうことなく落ちてくる。そしてそのまま地面に叩き付けられた。

 

 

 

「麦わらさん!!」

「ルフィ!!」

 

 それを見届けたフィンとサンジがすぐに駆け付けてくる。攻撃を食らったサンジも、大きな怪我はしていないようだった。

 

 

「麦わらさん!! 大丈夫ですか!?」

 

 かなり血を流しているルフィを見て心配そうにそう言ったフィンだったが、本人はというと何ともなさげに言葉を返した。

 

「ああ! それより!! 約束通り一緒にアイツらをぶっ飛ばしたぞ!!」

 

 最初にフィンの頼みを承諾した時にルフィが言った言葉だ。その言葉で島を守れたという実感がじわじわと沸いてきたフィンは、力強く頷いた。

 

「……うん!!!」

 

 フィンはルフィのことをまるで太陽みたいな人だと思った。きっと彼等の仲間は、この男の不思議な魅力に引き寄せられて仲間になったんだろう。

 だがそれも一瞬で、すぐに海軍のことを思い出して慌てるように口を開いた。

 

「そうだ!海軍がこっちに向かってるんだった!!」

「海軍!?」

「皆さんを海軍から隠します! ついてきてください!!」

 

 ルフィとサンジを引き連れてドームに向かうフィン。ドームに近付くと、その上からルフィの仲間達が3人を急かすように呼び掛けてきた。

 

「急いで! 海軍がもう上陸してこっちに向かってる!!」

 

 ナミはそう叫びながら手招きをし続ける。3人がドームに到着すると同時にドームの上がエレベーターのように沈み、またそのエレベーターが戻り元のドーム型の形状に戻った頃には、麦わら一行の姿は無くなっていた。

 

 

 

 

 ポルカポロウ島襲撃事件。

 犯行に及んだポット海賊団は、“島民たちの反撃により”襲撃は失敗。及びポット海賊団は海軍により連行。

 

 

 負傷者数名。

 “死者一名”。

 

 

 海軍はこの通りの報告を上げ、この事件は幕を閉じたのだった。

 




【ライ】
・目が細い
・政府容認の魔法族
・サイファーポールのどこか(1~8)所属らしい
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