ルフィさん達に伝えるべく、造船所に慌てて向かったわけだが、造船所の入り口は既にかなりの人だかりでまったく近づくことができない状態となっていた。
道すがら拾った新聞にはルフィさん、ゾロさん、そしてロビンさんの手配書と共に、市長暗殺犯の一味としてデカデカと記事が載っていた。なるほど、この騒ぎは間違いなくこの新聞のせいだろう。というかだ、ロビンさんが市長暗殺未遂の犯人って、何かの間違いだと思いたい⋯⋯。
一大事件で造船所の外は叫び声やら怒号のようなものがきこえてくるが、どうやら造船所内でも騒ぎが起こっているようである。だってさっきから破壊音みたいなのが聞こえるんだもの。もしかするとすでに何かしらの事件が発生してしまっているのかもしれない……。例えば、ルフィさんたちが犯人と疑われて襲われてるとか⋯⋯。
「二人は無事なのかな……」
俺がそう口にした瞬間、造船所で大きな破壊音と共に煙が上がった。うーん……、なんかこれ戦闘っぽいのが起きてないか⋯⋯。俺の予想は残念ながら当たってしまっているらしいかった。
何度か破壊音が続くもちゃんとした状況がわからず気持ちだけが焦る中、一際大きな爆発音のようなものが響き渡る。まるで大砲でも撃ってるかのようなその音の後、見慣れた2人が煙から飛び出して屋根の上へと登っていくのが見えた。
「ルフィさんとナミさん!?」
一瞬だったが間違いない。あの二人だ!すぐに姿が見えなくなってしまったが、取り敢えず無事ではあるらしい。
そのことに少しだけ胸を撫で下ろすも、のんびりしている場合ではない。二人を見失った今、次にすべきことは何かを考えなくてはいけない。
先程拾った新聞をもう一度広げてみる。この記事からわかることといえば、今回の市長暗殺未遂事件は、理由がどうであれロビンさんが関わっているということである。
急にいなくなってしまったロビンさんが最悪の状況で現れてしまったわけだが、俺には彼女をどうするかなんて決める権利はない。ただ、ブレない指針だけはほしいところである。
彼女をまだ味方とみて動くのか、それとも⋯⋯敵として扱うのか⋯⋯。
⋯⋯うん、やっぱりルフィさん達と合流したほうが良さそうだ。
ここまでの緊急事態だ。もう魔法を使うこと自体出し惜しみしている場合ではない。
もしかしたらまだ上にいる可能性もあるのでは⋯⋯と、ルフィさんとナミさんが登って行った屋根を見上げてみる。とりあえず動いてみるか。
人だかりから少し離れ、誰の目にもつかなそうな路地裏に入る。よし、ここなら見つかることもないだろう。もう一度二人の向かっていった屋根上を見あげてから、周りを警戒しつつ姿現しを使う。
お腹が引っ張られるような感覚から、バチンという音と共に地面に足が着いた事を確認。よし、無事に成功したようだ。姿現しもだいぶ安定してきている気がする。そんなことを思いながら屋根上を見渡すと同時くらいに、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「フィン!?」
「あ!ナミさん!!無事だったんですね!!良かった!!!」
隣の建物の屋根上で正座をしていたナミさんにすぐに駆け寄る。取り敢えず怪我などは無さそうだ。
「あれ?ルフィさんは一緒じゃないんですか?」
「⋯⋯⋯⋯」
俺の言葉に呆れたような表情を浮かべたナミさんは、とある場所に視線を向けた。その先には“ガレーラカンパニー”と書かれた建物、そして割れている大きな窓がある。
その割れた窓から聞こえてきた声に、すぐに状況を理解した。
「赤いベストに麦わら帽子だ!!!」
「アイスバーグさんを守れー!!」
「⋯⋯なるほど」
つまりルフィさんはあの中にいると⋯⋯。敵陣に自ら突っ込んでいくとか、さすがの行動力である⋯⋯。
ナミさんの横にしゃがみ込んで、聞こえてくる喧騒を聞きながら口を開いた。
「ルフィさんは、市長さんのところへ?」
「うん、なんでロビンを犯人だと言ったのか聞いてくるって」
⋯⋯今のところルフィさんは、ロビンさんのことをまだ味方であると信じている、ということだろうか⋯⋯。
ほんの少しの間沈黙が流れたが、赤い何かが屋根上に現れたことですぐに破られた。
「ルフィさん!!!」
「ルフィ!」
ガレーラカンパニーから無事に帰還したルフィさんは、険しい顔をしたまま俺とナミさんを交互に見た。
「⋯⋯もしかして話せたの?アイスバーグさんと」
ナミさんのその問いかけの後、ストンとその場に腰を下ろしたルフィさんは、変わらず険しい表情のまま口を開いた。
「本当にロビンを見たって⋯⋯」
「そんな⋯⋯どうしてロビンがそんな事⋯⋯」
動揺しているナミさんの言葉を聞いているのかいないないのか、ルフィさんはそこにはない別の何かを見据えているように前だけに視線を向けて、力強く言い放った。
「おれは信じねェ!!!!」
◆
紆余曲折を経てゾロさん、そしてチョッパーさんと合流した俺たちは、なんとか追っ手を巻いて少し喧噪から離れた建物の屋上へとやってきた。
そこでチョッパーさんから聞かされた事実に、ルフィさんは確認するように声を荒げた。
「本当に言ったのか!!?ロビンがそんな事!!!」
コクリと頷いたチョッパーさんに、全員口を開くことができない⋯⋯。
チョッパーさんの話によると、サンジさんと一緒にロビンさんを探している中で、どうやら本人と会うことはできたらしい。ただ、感動の再会、というわけにはいかなかったようだ。
ロビンさんは、新聞に書かれていたことは本当で、自分が市長の屋敷に侵入したこと、自分には一味が知らない“闇”があること、その“闇”はいつか一味を滅ぼすこと、そして、この事件の罪を麦わらの一味に被せて逃げるつもりでいることを二人に告げたらしい。
最後には、もう二度と会うことはないという別れの言葉と共に⋯⋯。
その事実を受け止められずにいる一味の沈黙を破ったのは、これまでずっと冷静でいたゾロさんだった。
「全員⋯⋯覚悟はあったハズだ⋯⋯」
先程教えてもらった通り、始まりは敵として現れたロビンさん。そのロビンさんを船に乗せたことで起きた今回のこの騒動だ。もしかしたらいつかは起こることだったのかもしれない。
「落とし前つける時が来たんじゃねェのか?⋯⋯あの女は“敵”か“仲間”か⋯⋯」
この場ですぐに答えが出ることはなかったが、どんな答えが出ようとも、俺はルフィさんの考えについていくと決めている。それまでに、どんな状況になろうとも動ける心構えだけはしておく必要がありそうだ。
まだ情報が少ない中で、一旦ロビンさんをどうするかの判断は置いておくことにはなったが、今後の俺たちの動きについては認識を合わせておく必要がある。ということで、ロビンさんが言っていた言葉から、俺たちはある結論にたどり着いた。
―――今夜また、市長暗殺が決行される。
この仮定を正しいものとした場合、彼らは“その現場に行く”という行動を選択することにしたようだ。目的は、ロビンさんを捕まえて真相を確かめること。ロビンさんが一緒にいたという仮面の人物は誰か、そいつに暗殺を無理やりやらされているのではないか、それとも⋯⋯そいつが本当の仲間なのか⋯⋯。
段々と風が強くなってきたなかで、辺りも薄暗くなり始めた。そういえば高潮が来るって言ってたもんな、この風はその前兆なのだろう。
そんな中俺たちは、作戦決行のためガレーラカンパニー本社から少し離れた木の上に上り、屋敷の様子をうかがっていた。
わかってはいたけど、ガレーラカンパニーの周りはものすごい数の護衛が配置されている。そりゃそうだよね、市長暗殺未遂があった日だもんな⋯⋯。
「こりゃあ下手に突っ込んだら大変なことになるぞ!!」
「え!?ルフィさんにもそういう思考あったんですか!?」
「⋯⋯⋯⋯どの口がそんな事言うのかしら⋯⋯」
ルフィさんの意外な言葉に俺とナミさんは思わずツッコミを入れてしまう。ナミさんはどちらかというと呆れてる感じだけど。
動きを一切見逃すなというゾロさんのお達しの通り、チョッパーさんは望遠鏡でガレーラカンパニーの方を覗いている。
かく言う俺も目は良い方なので、裸眼ではあるが目を凝らして様子を伺っていた。
「あっ!!!」
俺とチョッパーさんの声が重なる。それもそのはず、ガレーラカンパニーが急に爆発したのだ。
「⋯⋯暗殺ってもっと静かに始まるものかと思ってた⋯⋯」
静かに俺の言葉に同意してくれたナミさんは、苦笑いを浮かべている。
「あれ?ルフィは?」
「えっ!!?」
チョッパーさんの言葉に全員がルフィさんがいたはずの場所に目を向けたが、いつの間にやらルフィさんがいなくなっていた。
なるほどね!なんとなく気が付いていたけど、ルフィさんはトラブルを作り出す天才ってやつなのかな!?麦わらの船長とんでもねぇな!!!
慌てて俺たちもガレーラカンパニーに向かうことにしながらも、逆にこれはチャンスなのではないかという見解に至る。ルフィさんのことだ、真正面から乗り込んだに決まっている。ということは、だ。正面のガードは手薄になっているのではないだろうか。
全員一致でその解釈となった我々は、ルフィさんに続き真正面から入ることに決めたのだ。
―――その結果。
⋯⋯とんでもない数の護衛が真正面に構えていましたとさ。
ちょっと!!!ルフィさんは一体どこに!?!?
「ロロノア・ゾロだァ!!!」
「とうとう姿を現しやがった!!!」
「あの女も昼間見たぞ!!!」
「絶対逃すなァ!!!麦わらの一味だァ!!!」
追いかけてくる護衛集団から必死に逃げる俺たち。だがこのまま逃げ続けていても状況が変わることは無さそうだ。
俺がそう考えたと同時くらいに、ゾロさんが逃げることをやめて後ろに振り向いた。
「くっそォ⋯⋯!!もうこうなっちまっちゃ、どの道おれ達ァ“現行犯”みてェなもんだ⋯⋯⋯!!」
「それは俺も同感です!」
俺もゾロさんにならい、追いかけてくる人に向き合う形で傘を構えた。
「え!?ちょっとあんた達何すんの!!?」
「屋敷の周りを逃げ回ってても仕方ねェ!!正々堂々正面から突入してロビンを探す!!」
「だけど相手は船大工だぞ!!敵じゃないんだぞ!」
ナミさんとチョッパーさんがとめる声に、大丈夫だと返したゾロさん。峰打ちだと自信あり気に向かっていき、バッタバッタと船大工達を倒し始めた。⋯⋯ちょっとやりすぎ感は否めないが、やっちまったもんは仕方ない!俺も後に続かせてもらおう!
「《エクスペリアームズ》!」
船大工たちに武装解除をかけながら突き進み、ゾロさんの活躍もあり取り敢えず屋敷の中に入ることに成功した俺達。さて、計画通りとはいっていないが、まずは第一段階クリアだ。
ゾロさんが結構な数の人に致命傷を与えていく中、俺は気を失って血を流している人たちにうっすら治癒魔法をかけつつ、元気に向かってくる船大工達を足止めしながら突き進む。
道中ゾロさんがとんでもないくらいの方向音痴であるというなんとも言えない情報を入手したりと、騒がしく屋敷の中を走り続ける俺達4人。そんな中で、ナミさんの誘導の元なんとか市長がいるであろう部屋の扉が見える距離までやってきた。
「あそこ!!あの正面の扉で間違いないわ!!」
部屋の前には横並びで5つの椅子が置いてあるが、そこには誰も座ってはいない。その代わり⋯⋯。
「人がいっぱい倒れてるぞ!!」
チョッパーさんの言うとおり、おそらく部屋の前の護衛をしていたであろう船大工たちが全員気を失って倒れていた。
その様子には気にもとめず先頭を走るゾロさんは、スピードを落とすことなく走り続け、そしてそのまま扉をぶった斬った。⋯⋯⋯⋯うん、派手な入場だ。
だが、その派手な登場を果たしたのは俺たちだけではなかった。時を同じくして別の壁を突き破って市長の部屋に入って来た赤い影の姿に、全員が口をそろえた。
「ロビンはどこだ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「ルフィ!!!」
どうやら無事だったらしいルフィさんに安堵しつつ、麦わらの一味ってみんな登場派手だな⋯⋯なんてどうでもいいことに気付く。まぁ、みんな個性的だもんね。
だがそんな呑気な感想を浮かべられたのも一瞬で、俺の目に信じがたい光景が入ってきた。
「ロビン!!!!やっと見つけたぞーーーーー!!!」
そう、ルフィさんのその言葉の通り、そこにはロビンさんの姿があった。見慣れないマントに身を包んだロビンさん。その傍らには血塗れで倒れている人が一人⋯⋯おそらく暗殺されそうになっていた市長だ。そしてそれを囲むように見たことない連中が立っている。
その光景はまるで、ロビンさん含むその連中が、市長を手に掛けようとしているかのような⋯⋯。
ルフィさんと一緒にこの部屋へとやってきたゴーグルをつけた男は、周りを見渡して目を見開いている。
「アイスバーグさん⋯⋯こりゃ⋯⋯一体何がどうなってるんですか!!!」
叫ぶようにそう言ったゴーグル男が続けた言葉で、何となく状況を理解する。今まさに市長暗殺を目論んでいたらしいこの連中は、どうやらゴーグル男の顔見知りのようだ。ルフィさんが言うには、この造船所の船大工なのだとか。
肩に鳩を乗せた一際黒いオーラを放っている黒髪の男は、無表情のまま言葉を紡ぐ。
「パウリー⋯⋯⋯⋯実はおれ達は政府の諜報部員だ。まァ謝ったら許してくれるよな……?共に日々……船造りに明け暮れた仲間だ、おれ達は……。突然で信じられねェならアイスバーグの顔でも……踏んで見せようか…………!!!」
仲間だと思っていた人間達にこんなひどい形で裏切られるなんて……。パウリーと呼ばれたゴーグル男は、怒りと戸惑いを感じさせる表情でハト男に言い返すと、市長の静止も聞かずに攻撃をしかけ始めた。
ゴーグル男……もといパウリーさんの放つナイフ付のロープはまっすぐハト男に飛んで行ったが、次の瞬間にはハト男がパウリーさんの肩に指を突き刺し、そのまま倒れるように膝をついていた。
……待て待て、早すぎて何が起きたか全然わからなかったんだが……!?っていうか指って人間の肩を貫通するぐらい固いものだったか!?
常人では考えられないハト男の動きに戸惑いを隠せない俺のことなどお構いなしに事態はどんどんと動き出す。膝をつくパウリーさんにとどめを刺そうとしたハト男の攻撃は、ルフィさんの蹴りによって止められた。
しばらくルフィさんとハト男の激しい攻防が続いたあと、いまだ膝をつき動くことができなかったパウリーさんをなんとかぎりぎりの所で助けることに成功したようだ。もちろん、ルフィさんが。
俺は状況になんとかついていくのが精一杯で、一歩も動けていない⋯⋯。情けない限りだ⋯⋯。
自分の不甲斐なさに苛立ちを覚えつつ、精一杯整理した現状を改めて考えてみることにした。
パウリーさんの今の心境は、きっと荒れに荒れていることだろう。一緒に船大工をやっていた仲間だったはずなのに、今はその仲間だったやつらが、自分を、そして尊敬すべき対象である上司を殺そうとしている。
突然そんな事態を突きつけられて、はいそうですかとすぐに受け入れられるはずがないのだ。
そんな裏切りがあるとは思っていなかったからだろう、どうやらルフィさんとパウリーさんの間で、市長を殺そうとしている奴等をぶちのめすという約束をしていたらしい。
なるほど、だからさっきからルフィさんは彼を守ろうとしていたのか。意味のない行動はしないルフィさんだから、きっと何かしら理由があるだろうと思っていたが、そういうことだったらしい。
まさかそのぶちのめすことになる対象が、自分の身近な人間であり、長いこと信じて疑うことのなかった仲間だったなんて。しかも実は政府の諜報部員で暗殺者だなんて、荒唐無稽もいいところだ。だが、実際に今そんな嘘のような事実が繰り広げられている⋯⋯。
パウリーさんを守るようにして戦っていたルフィさんの行動は、そんな裏切りを現在進行中のハト男には理解できないようだ。しかし、そんなことはどうでも良いというようにルフィさんが大きく息を吸い込んだ。
「おいロビン!!!何でお前がこんな奴らと一緒にいるんだ!!!!出ていきたきゃちゃんと理由を言え!!!」
「そうよ!!こいつら政府の人間だって言うじゃない!!どうして!!?」
ルフィさんとナミさんの言葉に表情一つ変えることのないロビンさん。お別れはサンジさんとチョッパーさんに伝えたはずだと冷たく言い放つ。
そんなロビンさんを見て、俺はなぜかポルカポロウの海岸で見たロビンさんの横顔がよぎった。
全員が納得できないとロビンさんに詰め寄る中、やはり冷たい表情のままロビンさんは口を開いた。
「私の願いを叶える為よ!!!あなた達と一緒にいても決して叶わない願いを!!!……それを成し遂げる為ならば私は、どんな犠牲も厭わない!!!」
ロビンさんの言葉にそれぞれの思いを抱える中で、一番最初に口を開いたのは、やはりずっと冷静なゾロさんだった。
「それで……平気で仲間を暗殺犯に仕立て上げたのか?願いってのは何だ!!」
「話す必要がないわ」
「正気の沙汰じゃねェ……!!」
少しの沈黙の後、息も絶え絶えにそう言葉を発したのは、床に倒れ血を流している市長さんだった。
「気は確かかニコ・ロビン!!!お前は自分が何をやろうとしているのかわかっているのか!!!」
「あなたにはもう……何もいう権利はないハズよ。黙っていなさい!!!」
そのまま倒れている市長さんからふわりと現れた何本かの手が関節技を決める。そうだ、ロビンさんは悪魔のみの能力者だった…。そんなことを再確認したままロビンさんに目を移すと、一層眉間にしわをよせていた。
「誰にも邪魔はさせない!!!!」
麦わらの一味はそれでもやはり納得はできていない様子だ。ロビンさんが本当に敵となってしまったのか……それを決定づけるまでにはいたっていないらしい。かくいう俺も、やはりまだロビンさんのその行動には疑問符が浮かんだままである。
あの海岸で見たロビンさんの表情、そして今。……これは単純な理由ではなさそうだ……。
そんな中、ハト男が突然「この屋敷はあと2分で炎に包まれる事になっている」とか言い始めたものだから、俺達が息をつくことはまだまだできそうにない。既にあいつ等からすると、俺たちは完全に用済みとなっているのだろう。
「どうやらおれ達を消す気らしいな。『ニコ・ロビン』も向こうにいたい様だが……ルフィ。お前ロビンの下船にゃ納得できたのか?」
ゾロさんが刀に手をかけながら静かに放った言葉に、ルフィさんは大声で返す。
「できるかァ!!!!」
……だよね、それでこそルフィさんだ。そのブレない姿勢に安堵して、俺はロビンさんを逃すまいと傘を持つ手に力を込める。
「じゃ私は先に行くわ」
「ああ、役目は果たした。ご苦労」
ロビンさんとハト男のそんな会話に割って入るルフィさんだったが、ロビンさんは「さようなら……」という言葉を残して歩き出してしまった。
それを止めるべく動き出したルフィさん、ゾロさん、そして俺。まずはロビンさんの動きを止めようと傘を振り上げた時だった。
「っ!?」
急に魔力が飛んできたことを感じて慌てて防御魔法を展開する。危ない……間一髪だった……。反射で飛んできた方向に顔を向けると、そこにはあまり見たくない顔があった。
「残念だよ、こんな形で再開することになるなんて。手品師くん」
そこには細目の魔法使い、ライの姿があったのだ。こんな時になんなんだよ……!その気持ちを隠すことなくライをにらみつけた。
「……良く会いますね、最近」
「それは君が派手な行動をとるからじゃない?こちらとしては穏便に済ませたかったけど……」
そう言ってスッと表情を消したライは、手に持っていた剣を構えて戦闘態勢に入る。
「こうなっちゃ、捕まってもらうしかないね」
どうしよう、この世界に来て初めて魔法使いと対峙している。しかも、訓練された政府おかかえの魔法使いと、だ。急にやってきたこの状況に冷汗が流れるのを感じながら、傘を持つ手に力を込める。
ノーモーション、無詠唱で急に飛んできた攻撃魔法を、防御魔法を展開したりよけたりしながら何とかかわす。……早い!!!今までホグワーツで授業中に決闘をしたことはあるが、実戦で魔法使いと戦うことなどはじめてに近いのだ。それをまさかこんなところで体験することになるとはね……!!!
「……型がちぐはぐだね。どうやら本当にド田舎出身みたいだな……」
俺に攻撃をしかけながら小さくそう呟いたライの言葉の意味はわからないが、そんなことを考えている余裕など今の俺にはない。隙をみてなんとか攻撃を仕掛けてみるが、軽々と防がれてしまうというのを繰り返し続けているのだ。このままじゃ勝てる気がしない……!!
俺の周りでもルフィさんやゾロさんが戦っている気配を感じるが、それを気にした瞬間やられることは目に見えているのでそちらのフォローをすることなんてもちろんできるはずもなく。
しかし、ハト男が急に姿を変え獣人のようになるのが横目で見えてしまったことで、俺は一瞬そちらに気をとられてしまう。
「あ……」
そう口を開いた時にはもう遅く、ライの放つ攻撃魔法がすぐ目の前までやってきていた。避けられない……!
そこで俺の意識はぷつりと途切れたのだった。
◆
「フィン!!!」
突然現れたローブの男と戦い始めたフィンだったが、男の放った“魔法”があたりバタリと倒れる。それを見て、ナミとチョッパーは焦りながら仲間の名を叫んだ。
「フィンっ!大丈夫か!?!?」
「おっと、それ以上近づかれちゃ困るなァ」
チョッパーがフィンの容体を確認するため一歩を踏み出した瞬間、その足元に火が放たれた。それは、ローブの男⋯ライの放った魔法である。
「なんだアイツ!?剣からフィンみたいな攻撃してくるぞ!!」
「多分、アイツもフィンと“同じ”なんだわ⋯⋯」
ナミのその言葉を聞いたライは、細い目を少しだけ見開いた。
「へェ⋯⋯君たちは“これ”がなんなのか知ってるんだね」
「⋯⋯⋯⋯」
イエスともノーとも言わず、口をとざしたまま警戒を続けるナミとチョッパー。しかし、そんな状況もすぐに破られることとなる。
ライは2人が向かってこないことを確認すると、未だに倒れて動かないフィンを担ぎ上げ、そのまま鼻の長い男に声をかける。
「んじゃ、おれは一足先に失礼しますよっと」
「何じゃ、そいつを連れて行くのか?」
「まァね、だって彼、おれと同族だし」
そう言ってニコリと微笑んだのを最後に、バチンという大きな音と共にライの姿は消えてしまった。
「えっ!?!?何で!!!フィンは!?!?」
急に消えてしまった仲間に動揺を隠せないチョッパーとナミだったが、その後次々と仲間たちがバラバラとなったことで、ガレーラカンパニーでのロビン脱却作戦は⋯⋯⋯⋯失敗に終わったのだった。
リハビリを兼ねて、ちょっと短めだし全然話進まなかった⋯。