⋯⋯――ぃ⋯⋯オ⋯⋯!
薄っすらと意識が覚醒していく中で、なんだか聞き覚えのある声がしている気がする⋯⋯。あれ、俺って寝てたんだっけ…。その割には布団が固すぎるな……なんか揺れている気がするし……。
「オイ!!!フィン!!!」
ぼんやりとした思考を続けていると、今度ははっきりと自分の名前を呼ぶ声が耳に入ってくる。ゆっくりと瞼を持ち上げると、最初に入ってきたのは全く見慣れない天井だった。
なんだか全身が重い。そしてやはり床が固い。
……そうだ、だんだん思い出してきた。俺はあの細目男……ライと戦っていたんだった。そして、やられて今にいたると。情けなさすぎる⋯⋯。というかこんなに身体が重いとか、俺になんの呪文ぶつけたんだあの野郎……。
しばらくその体制のまま細目男への悪態を心の中でついていたが、今はそれどころではないのではないかと思い始める。天井を見る限りどうやらここはガレーラカンパニーの屋敷の中……ではなさそうだ。
「……どこだここは」
「目ェ覚めたのか!?大丈夫かよ!!」
動きづらい身体に力を込めて、何とか頭だけ声のした方に向けてみる。そこには、麻袋から顔だけ出し、身動きを封じられているウソップさんの姿があった。
「え……ウソップさん?何でここに?」
「それはこっちの台詞だ!何でお前ここにいるんだよ!?」
「いや、俺もまだよくわかってなくて⋯⋯そもそもここはどこですか?」
ゆるゆると頭と目を動かして周りを見渡してみる。どこかの物置だろうか?箱に入った荷物がいくつかおいてある。
どうやら俺は気絶したままどこかに移動させられてしまったらしい。そして、俺のこの格好をから推測するにそのまま捕まってしまったのだろう。だってウソップさんと同じように顔以外麻袋に入れられて、身動きを封じられているのだから。
「ここは海列車の中だ」
「海列車……って、灯台で見たあの?」
そう聞き返してみたが、今の声はウソップさんではなかったぞ…。芋虫のように動きながらなんとか上半身を起こした俺は、その声の主にようやく顔を向けた。
「あなたは……?」
「おれァ、ウォーターセブンの裏の顔!!“解体屋”フランキーだ」
「……フランキー?」
思わずギラリとそのフランキーとやらを睨みつける。こいつか、ウソップさんをあんな目に合わせたやつは!!!
「あんたよくもウソップさんにあんなことしてくれたな。この麻袋から抜け出せた暁には覚悟しておいてくださいよ」
「待て待て!実はいろいろあって、コイツともいったんは和解してんだ!!」
あんなことしてきたやつと和解って……何があってそんなことに……?それも気になるのだが、まずはこの状況を整理するためにあることを先に確かめることにした。
「ここにいたのって俺だけでした?」
そうなのだ。あたりを見回してもほかの麦わらの一味がいる様子はない。俺だけ捕まっているってことは……ルフィさんたちはあそこからちゃんと逃げられたのだろうか。くそ、何で気なんて失ってたんだ俺は……!!
いや待てよ、もしかして俺が捕まった理由って……“魔法使い”だからなんじゃないか?え、どうしよう。その可能性の方が高い気がしてきた……。
その可能性をさらに高くするように、ほかには誰もいないとウソップさんが教えてくれた。
「おれ達がここに連れてこられた時には、もうすでにお前はこの状態でそこに倒れてたんだ」
「なるほど……」
連れてきたのは十中八九あのライとか言う細目男だろう。いちいち余計な事してくれるな…。
「……あれ?というかなぜウソップさんはここに?」
「いや、それが……」
真剣な顔で口を開いたウソップさんの話はこうだ。
報復のために麦わらの一味を探していたフランキー一家。そのフランキー一家に見つかったウソップさんは、フランキーに人質になるよう声をかけられた。だが、自分はもう麦わらの一味を抜けた身であることを話し、なんやかんやあってメリー号と共にフランキー一家の隠れ家的なところに連れて行かれたのだとか。そこでメリー号を修理しつつフランキーと話をしているとあの殺し屋集団がやってきて、やはりそこでも一悶着があった末、捕まってしまったようなのだ。
そして、その政府の諜報部員である奴らの目的についても知ることができた。
「“古代兵器”の設計図⋯⋯そんなものがこの世に存在するのか⋯⋯」
そう、やつらはどうやら市長さんが持っているであろう古代兵器の設計図を手に入れるため、長いことこのウォーターセブンに潜伏していたようなのだ。確かに、軍事力を手に入れたいとするならば、“古代兵器”なんて喉から手が出るほどほしいものなのだろう。いや、俺はいらないけどね、怖いから。
⋯⋯というか、その設計図をもしかしたらこのフランキーという男が持っているかもしれないって⋯⋯。
「⋯⋯⋯⋯」
「何ジロジロ見てやがるんだ、お兄ちゃん」
「別に」
この人が本当にそんなものを⋯⋯?まぁ余計な詮索はやめておこう。別に知りたくもないし、俺、まだウソップさんの一件でこの人のこと許せたわけじゃないし。
そんなことを考えていると、急に先ほどよりも騒がしいことに気付く。
「……?何か急に隣の車両が騒がしくなりましたね……」
「ん?……確かに。何だァ?」
俺の言葉に反応したウソップさん、そして同じように訝しげな顔をしたフランキー。3人同時に騒がしくなった隣の車両に顔を向けた。なんか……戦闘してるっぽい気配を感じるんだけど、なんでだ?仲間割れとか?
何が起きたのかと隣の車両の方向を見つめていると、急にすごい勢いで扉が開いた。そして、すごい勢いで人が飛んできた。
「っあぶな!!!あと少しで当たるところだった……!!」
「な、なんだ!?何で人が飛んでくるんだよ!?」
芋虫状態で何とか飛んできた人を避けた俺達。飛んできた人自体は俺達を通り越し、そのまま気絶している。しかも口から血を流しているということは、攻撃されたのだろう。やっぱり仲間割れ……?そんなことを思っていたら……。
「“
そういってまた一人蹴り飛ばしながら車両にやってきたのは⋯⋯、なんとサンジさんだった。
「サンジ!!お前が何で“海列車”にいるんだ!!?」
うん、なんでいるんだ。そういえば、チョッパーさんと一緒にいたはずなのに何であの時一緒に来なかったのかとは思っていたが、どうやら単独行動をしていたようだ。
驚くウソップさん、そして俺とは反対に、冷静に煙草をふかしているサンジさん。ウソップさんの言葉に、こりゃまた冷静に返す。
「そりゃあ……………こっちが聞きてェよ。そこの……あー名前など存じませんが、そこのキミ」
「わっざとらしいなてめーコノ……」
本当にわざとらしいな、サンジさん。だがある意味正直で良い。
「お、そうだ、フィン。何でお前まで捕まってんだよ」
「いやー……ちょっといろいろありまして……」
呆れたようにそういったサンジさんに苦笑いで返す。戦って負けたから、とかあんまり言いたくない……。それからすぐに俺の拘束を解いてくれたサンジさんにお礼を言って立ち上がる。やっと解放された……!
確認するように腰に手を当ててみたが、そこにいつもの傘はついていなかった。ま、そうだよね。そりゃ武器は取られるよな。正直それは想定内だ。次はポケットに手を突っ込んでみる。……よし、こっちは気づかれなかったみたいだ。
気絶する前、もう呪文を避けられないと踏んだ俺は、瞬時に傘から杖だけを抜き出して、慌ててポケットに入れていたのだ。しかもおれのズボンのポケットはもともとちょっとした魔法をかけているので、どうやら気づかれなかったらしい。良かった、これで無能にならずに済む。
俺がそんなことをしているうちに、なぜかサンジさんがフランキーをぼこぼこにしていた。あ、ずるい。俺がやる予定だったのに。
「てめェがフランキーかクソ野郎!!!よくもあん時ァウチの長っ鼻をえらい目に!!!何枚にオロされてェんだコラァ!!!」
「いやいや、ちょっと待て!!あれから色々あったんだ!!!!こいつは一時メリー号を助けてくれたし」
「てんめェ~!!!この縄解けたら憶えてろォ!!?」
ちょっとした騒ぎが置きかけた中、ウソップさんは自分で口にしたメリー号のことで急にひどく落ち込み始めた。あれ?さっきフランキーのとこにメリー号を非難させたっていってたけど、何かあったのだろうか……。
「おいおい待て。今しんみりしてる時か」
そんなムードの中きっぱりとそういったのはフランキーだ。
「とにかくお兄ちゃん、頼む。縄を解いてくれ」
「誰がてめェの縄を解くか!一生捕まってろタコ!」
「てんめェ!人が下手に出てりゃいい気になりやがって」
おおっと、なんかヒートアップしてきたな。これって見つかっちゃうんじゃないのか?
「あの、二人ともちょっと落ち着きましょう。声のトーンを落として……」
「そうだ!!おいてめェら、やめろってのに!!グズグズしてたら見つかっちまうだろうがァ!!!」
「…………」
一緒に止めてくれるウソップさんの存在はかなりありがたいが、その止める声が大きいよ……。あーあ、何かいやな予感がするな……。
「皆さん落ち着きましょう。間違いなくもうバレてます」
「…………」
「とりあえずサンジさん、このフランキーってやつも解放しましょう」
「コイツを解放!!?」
「正直俺も許せたわけではないけど、当事者であるウソップさんが“和解”したって言ってるんです。ここは敵地、戦力は多い方がいい」
しぶしぶではあるがなんとか首を縦に振ってくれたサンジさん。すぐにそのままウソップさんとフランキーの拘束を魔法で解く。
「……何だ今の!?勝手に縄が解けた……!?」
「俺、手品師なんで」
俺の魔法に驚くフランキーに軽く返してから、なるべく小声で続けた。
「で、どうします?多分どの車両に行っても敵だらけ、ですよね……?」
「ああ、とにかくだ。まずは先にやることがある」
そういって近くにあった電伝虫を手に取り、車両の窓に手をかけたサンジさん。外は嵐という大荒れの中、サンジさんはそのまま窓をあけ、そこから上に登り始めた。なるほど、上ならこの車両の中にいるよりは敵に見つかりづらいか…。
同じように列車の上へと登ってみたが、この大荒れだ。風も強いから飛ばされそう……。
同じく車両の上に登り始めたウソップさんに手を貸していると、サンジさんはそのまま電伝虫を使い始めた。
「ナミさんナミさん、聞こえるか!?」
『うん!!サンジ君ね!?』
そんな中飛ばされそうになっているウソップさんをフランキーとともに慌てて助けていることには気にも留めず、サンジさんはそのまま続ける。
「こちら、ちょっとアホ三人のせいでマズイ事になってきた」
え、アホの中にもしかして俺も入ってる……?なんでだ、捕まってたから……?それについては聞かなかったことにして、俺はサンジさんに近づいた。
「ナミさん!俺も一緒です!!!」
「フィン!!あんた無事だったのね!!!」
「はい!そちらは皆さんご無事ですか!?」
「ええ!みんなピンピンしてる!!!」
良かった……。あの後の状況がわからずで不安だったが、そうだよな。あんなに強いこの人たちがちょっとやそっとで負けるわけなかった。
『サンジ君!!?フィン!!!ロビンの行動の理由と私達の今の状況を全て話すからよく聞いて!!』
そこから語られたナミさんの話を聞いて、俺は正直かなり驚いた。その驚きの理由は、ロビンさんが背負っているものがあまりにも重すぎたからだ。
ロビンさんがなぜあいつらと一緒に行動していたのか、なぜ市長暗殺などという事件を起こしたのか……。それは、“麦わらの一味を守るため”だったというのだ。
元々ロビンさんは政府に追われる身の上だった。それはサンジさんから聞いたから俺もなんとなく知っている。そんな中で、あの政府の諜報部員である“
一つ目は、暗殺の罪を“麦わらの一味”にきせる事、そして二つ目は、その後政府に身を預け従う事……。
そんな条件をのんで、ロビンさん自身がただで済むわけがない。それなのになぜそんな話にのってしまったのか。それは、CP9は麦わらの一味に対してとんでもない戦力を向けることのできる“バスターコール”というものの発動を許可されていたのだ。その“バスターコール”が発動すると何が起きるのか。なんと海軍本部の中将5人と軍艦10隻を一点に招集する緊急命令なのだとか。つまりは戦争が起きてもおかしくない軍事力が麦わらの一味に向くことになるわけだ。
それが自分を救ってくれた“仲間”に向くことが耐えられないと感じたロビンさんは、“自分を除く麦わらの一味7人が無事にこの島を出航する事”を約束させ、先ほどの条件をのんだというのだ……。
正直その人数の中に俺が入っていることは驚きではある。今の俺はいわば居候のようなもので、麦わらの一味だなんて自分で名乗るのは烏滸がましすぎる……。だが、ロビンさんは守る対象の一人として数えてくれていたらしい。
そして、俺はまたあの海岸でのロビンさんの横顔を思い出す。
————「……もし科学者さんが言っていた通り、あなたの存在が皆に迷惑となる状況が訪れたら……」
なるほど、あの質問に答えてしまった俺の言葉も、覚悟を決める一つになっていたということか……。くそ、足しか引っ張ってないじゃないか、俺は……。ロビンさんの背中を悪い方で押して、あげく戦闘中に気絶して捕まったとか……迷惑しかかけてない。
サンジさんが言う通り、俺はやはりアホの中の一人だったのだ。
なんとも言えない気持ちになってしまった俺だが、ナミさんの話はまだ終わっていない。
『でもロビンは、今その海列車に乗ってるのね!?』
「ああ、間違いない」
「……え、あっそうだんですか!?え、ロビンさんと同じ列車に乗ってたの!?」
急に言われた事実に驚きを隠せずにいると、「やっぱ気づいてなかったか」と呆れたようにサンジさんが呟いた。し、しょうがないじゃないか!さっきまで気絶してたんだから!!
ほんの少しの恥ずかしさを感じていると、ナミさんが言葉を続ける。
『良かった⋯⋯!!!今私達も“海列車”でそっちに向かってるの!!』
「海列車って、2つあったんですね」
『まァ、私達が乗ってるのは“失敗作”だけどね⋯⋯』
少々不安げにそう言ったナミさん。さっきから電伝虫から小さく『撃てー!!』とか聞こえて来るところから考えるに、こちらの海列車よりはスリリングな感じなのかもしれない。
大丈夫かな、と少し心配になっていると、今度はルフィさんの元気そうな声が電伝虫から聞こえてきた。
『サンジーーっ!!そっちどうだ!?ロビンは!?』
「ロビンちゃんは……まだ捕まったままだ。ナミさんから今事情を聞いたとこさ……全部聞いた……」
『そうか……』
少しの沈黙の後、再びルフィさんの力強い声が続く。
『いいぞ、暴れても!!!』
そのルフィさんの言葉に、どうやらゾロさんが意義を唱えているようだ。うっすら聞こえていたゾロさんの声が、今度ははっきりと聞こえてきた。
『おいコック聞こえるか!!その列車にはヤベェ奴らが』
『いいってゾロ!!お前ならどうした。止めたってムダだ』
……相変わらずルフィさんは格好いい。それでこそ船長である。
そう思ったのは俺だけではなかったらしい。にやりと笑ったサンジさんが再び電伝虫の受話器を自分の口元に寄せた。
「わかってんなァ。おうマリモ君、おれを心配してくれてんのかい?」
『するかバカ』
「だが残念。そんなロビンちゃんの気持ちを聞かされちゃあ……たとえ船長命令でも、おれは止まる気はねェんで!!!!」
力強くそう言い切ったサンジさんは、そのまま電伝虫の受話器を握りつぶしていた。サンジさんも格好いいなおい。でも……電伝虫を壊すことはなかったんじゃないだろうか……。
いったんそれにツッコミを入れることはやめて、この事情を俺以外の“アホ二人”に話す必要がある。列車の上でなんとか飛ばされないように捕まっていたウソップさんと、それを支えているようなフランキーは、サンジさんの呼びかけにすぐに近くに寄ってきた。そして、今ナミさんから聞いた話をそのまま伝える。
「おれが一味を抜けてる間に……そんな事が起きてたのか……!!」
「ロビンちゃんはメリー号の件もルフィとお前が大喧嘩した事も……何も知らねェ。だから“お前を含めた”おれ達7人が全員無事でいられる様にと、ロビンちゃんは自分の身を犠牲にしてあいつらの言いなりになってたんだ、おれ達の為に」
「ぎゃーーーーーーあうアウアウ⋯⋯」
かなり真剣な話をしていたのをぶった切って奇声のような声とともに大量の涙を流しているのはフランキーだ。「いい話じゃねェかァ~~~~~!!!!」とか言っているのをみると、どうやら感動しているらしい。この人の情緒どうなってんだ……。
「チキショー何てこったァ!ニコ・ロビンってのは世間に言わせりゃ冷酷非道の“悪魔の女”のハズ……それがどうだその“ホロリ仲間慕情”……!!!!」
すげぇ泣くじゃん、この人。寝転がってジタバタしながら涙を流し続けるフランキー。……確かに、ただ悪い奴というわけではなかったらしい。
そんなフランキーを見て見ぬふりをしたサンジさんは、先頭車両に体を向けた。
「ロビンちゃんは目と鼻の先にいる!!とにかくおれは救出にいくぞ!!!」
「サンジさん、もちろん俺も行きます!」
俺もこの一味の役に立ちたい。それに、ロビンさんをこのままいかせるわけには絶対にいかない。
俺が意気込んだと同時くらいに、先ほどまですごい顔で涙を流していたフランキーが自信たっぷりの顔で割って入ってきた。
「よし!!!!この“フランキー一か”棟梁フランキー!!!手ェ貸すぜマユゲのお兄ちゃん!!手品のお兄ちゃん!!理由あって実はおれもニコ・ロビンが政府に捕まっちゃあ困る立場にあんのよ!!!!」
そう言い切ったあとに再び泣き始めたフランキーは、ずんずんとこちらに近づいてきた。
「何よりそんな人情噺聞かされちゃあ………グス……おい!!長っ鼻!!!行くぞ!!!」
フランキーの後ろでなぜかさっきから動かなかったウソップさん。声をかけられたウソップさんは、立ち上がりはしたものの、こちらを振り向きはしなかった。
「おれは…………いいよ」
「!?」
いいよって……どういう意味だ……?期待していた返答ではなかったことで混乱する俺達だが、ウソップさんはやはりこちらを振り向こうとはしない。
「もう……おれには関係ねェじゃねェか。いよいよ“世界政府”そのものが敵になるんだったら、おれは関わりたくねェし……ルフィ達とも合流するんだろ……!?」
だんだんと語気が強くなってきたウソップさんの言葉に、俺たちは動けないままだ。
「あれだけの啖呵きって醜態さらして!どの
最後は絞り出すようにそう言ったウソップさんは、俺達とは逆方向に歩き出してしまった。
「おれは一味をやめたんだ!!じゃあな」
「ウソップさん!!?」
「じゃあなって、お前どこにも逃げ場はねェぞ!!」
俺とフランキーの声には足を止めることなく、後方車両へと歩き続けるウソップさん。俺はすぐにサンジさんに顔を向けると、険しい顔でぼそりと呟いた。
「いいよ、ほっとけ」
「ほっとけって……」
……あー……こんな時、俺の立場としてはどうすればいいんだろうか……。まずは状況の整理から始めてみるか。
ウソップさんのことは確かに心配だけど、きっと今引き留めてもあまり意味はない気がする。決意があんなに固いのだ。
それならば、今優先すべきはロビンさんの奪還。なんだかんだウソップさんも強いことは知っている。狙撃の腕は一流だ。ひとまずサンジさんの言葉通り、ウソップさんのことはあとから考えよう。
そういえば、俺たちが列車の上に来てからそれなりに時間が経ったように思うが、まだ見つかってはいないっぽい……?このまま見つからない場合は、ロビンさんの車両まで行ける可能性もあるかも。
そんなことを思ってしまったからだろう。ついに一人の海兵が、窓を伝って上を覗き込んだのだ。
「あ!!わ、見つけた……!!」
「しまった」
俺の心を代弁するようにそうつぶやいたサンジさん。俺はすぐにポケットに入れていた杖に手をかけた。しかし……。
「“メタリック・スター”!!!」
「うわァ!!!」
突然飛んできた攻撃が、見事に海兵を打ち抜いたのだ。
「誰だ!!!」
すぐに攻撃が飛んできた方に体をむけ、警戒を強める。そこには、マントと仮面をかぶった男が腕を組んで立っていた。
「話は全て彼から聞いたよ。お嬢さんを一人……助けたいそうだね」
強い風でバサバサとマントをはためかせているその男は、俺たちの言葉を待たずに続けた。
「そんな君たちに手を貸すのに理由はいらない。私もともに戦おう!!!」
力強くそう言い切った男の姿をまじまじとみて、あ、と思ったと同時くらいに、その男は自信満々に名乗ってきた。
「私の名は、“そげキング”!!!!!」
…………いや、うん。そう名乗ってきた男に対しての感想は正直それしかなかった。
ドン!という効果音が付きそうな登場を果たした“そげキング”と名乗る男に俺達3人は微妙な表情を浮かべていた。
それもそのはずだ。
なぜなら、“そげキング”というその男は、どこからどう見てもウソップさんだったのだから……。