魔法使いが海賊になる話   作:柚村たか

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なんだか話がなかなか進みませんが……とりあえず2話目更新します。これも修正多くなるかと。


第2話

 店の注目を全て浴び、実に派手な登場を果たした俺は、魔法でガラの悪そうな奴らをバッタバッタと倒していった。失神させたり、石にしたりとなるべく流血が起こらない方法で。すでに店のテーブルとか食器とかが壊れてはいるが、血で汚れるのってそれとはまた別の嫌悪感があるからな……。

 

 緊急事態だったということもあり、ここがマグルの世界だということも気にせずバンバン魔法を使ってしまったが、ガラの悪そうな奴らを全員のしてから数秒後、店内が大歓声に包まれた。どうやら暴れていた奴らが倒されたという事実だけが注目され、俺がどうやって倒したのかということについては皆さほど重要ではないらしい。その辺はうやむやになってくれたようで一安心だ……。

 

 店の中に倒れている奴らを放置しておく訳にもいかないので、全員ロープでぐるぐる巻きにし、一番近くの海岸にオブジェっぽく置いて、ついでに持っていたお金をいただいた。ちなみにこれは断じて盗みではない。迷惑料を払ってもらっただけだ。

 

 オーナーにタダ飯を出してもらうという約束を果たしてもらうため、そのあとすぐにまた店内に戻ると、床に散らばっていた皿などは既に掃除されていた。俺が店に入った瞬間再び歓声がわき起こり、拍手で迎えられたことでかなり気恥ずかしさを感じたりもしたが、その中でも一番ニッコニコで迎えてくれたオーナーに促されカウンター席に座った。

 

 そしたら出てくる出てくる、美味しそうなご飯が!!

前菜から主食まで明らかに一人分ではない量が俺の前に並べられていく。まぁ人より食べる量が多いらしい俺としてはありがたいことこの上ない。忘れていた空腹感がしっかり戻ってきて、どんどんと食べ進めてしまった。

 

「うまっ! このパスタもうまっ!」

「ははっ! そんなに旨そうに食べてもらえると、こちらも振るまいがいがあるってもんだ!どんどん食ってくれよ。これはお礼だからな!」

「ありがとうございます!」

 

 俺の食べる姿に優しげな表情を浮かべたマスターが、カウンターの向こうから飲み物のおかわりを置きながら話を続けてきた。

 

「にしても、あんたすげェな。ありゃ最近ここで幅を利かせてた海賊だぞ。それをいとも簡単にのしちまうなんてな」

「…………海賊?」

 

 聞きなれない言葉に食べていた手を止めてマスターを見るが、マスターは特に冗談を言っているというわけでもなさそうである。

 

「ああ、今は海賊たちが海にゴロゴロ出ちまってるだろ? この島の磁気は特殊でな、定期的に磁気が強くなる。そうするとログが一時的に書き換えられて、この島に到達するってわけだ」

「……へぇ……」

 

 そんな気の抜けた返事だけはなんとかできたが、正直マスターの言っている言葉がほとんど理解できない。

 海賊? ログ? 磁気?

 

 海賊はわかる。けど、海賊がゴロゴロ海にいるってのは初耳である。それって映画とかの話じゃないのか? そもそもログってなによ。磁気ってなんの磁気? これについて深くつっこむべきか思案しているうちに、マスターは次の話題に移ってしまった。

 

 

「ところであんた、旅人かなんかか? ここいらでは見ねェ顔だが……」

「旅人……? あ、うん……旅人……」

 

 あ、やべ。無意識に肯定してしまった…。いやでも、ある意味旅人ではある。望んでないけど。国境越えて来ちゃってるわけだし、大きい意味では間違ってないような気がしないでもないので、ここはとりあえず旅人でやり過ごすことにする。

 

「やっぱりそうか。じゃあんたも磁力にあてられちまったんだな」

「え……?」

「ここのログは大体数日でたまる。それまではゆっくりしていきな!」

「………」

 

 “ログってなんですか?”

 ここでこの質問を口にするのは、旅人としてありなの? この国では常識らしいけど、俺は初耳なんだが…?

 いや、いつまで経ってもこの状況が続くってのは良くない! 恥を忍んでもここは解決しておくべきだ!

 意を決してマスターに視線を定めた俺は、なるべく小さい声で問いかけた。

 

「あの……ログってなんですか……?」

 

 俺の蚊のなくような声はしっかりとマスターに届いたようで、目を丸くして俺を見つめてきた。

 

「あんた、ログポースを知らないのか!?」

「え、あ、はい……」

「じゃあどうやってここまで辿り着いたんだ!?」

「いや、なんか、なんとなく気付いたら着いてたっていうか…」

「…………」

 

 あんぐりと口を開けて驚くマスターの反応は、俺の選択が間違っていたことをありありと示してくれていた。すみません、マスター。非常識な人に見えるかもしれないけど、無断で国境越えてるもんでこの国のことなにも知らないんですっ!! という気持ちを込めて見つめ返してみる。

 

「驚いた……。あんた旅人なのにログポースも使わずこれまで島を転々としてきたのか…?」

「あ……まぁ、そうなります、かね?」

 

 “島を転々”という言葉に違和感はありつつ、とりあえず肯定してみる。

 

「今まで生きてこられたのが奇跡だよ、あんた……」

「え、そこまで重要だったの? ログポースって……」

「いいか? ログポースってのは、このグランドラインを航海するには必要不可欠なコンパスだ。グランドラインの島々はそれぞれ特殊な磁気を帯びていてな、島同士が引き合う磁気をログポースが記憶することで、次の島の航路を指し示す。ログがたまる期間は島によりけりだ。だからそれまではその島で過ごして、ログがたまったら次の島に向かうってのが航海してるやつらの常識だ」

 

 ほぉ~、そういうことか。仕組みがわかったぜログポース。今の話から、この国の移動手段はどうやら船らしい。

 

 確かに海岸に船が何隻も停まってたもんな。ただ、マグルの世界ってもっと最新ぽい船に乗ってるもんだと思ってたけど、木製の随分古風な感じだったのは少し気になる。

 

 そして、また謎が現れてしまった。“グランドライン”って何だ……? そもそも、今までに世界について学んだことはあるが、特殊な磁気を帯びた島のある地域ってのは聞いたこともない。

 

 それを聞こうとした時、マスターが他の店員に呼ばれて行ってしまった。マスターも俺にばかり構ってられないのは当然だ。残りのご飯を掻き込んで、新たな情報収集のために移動することにした。

 またカウンターに戻ってきたマスターにタダ飯のお礼を告げ、そういえばとポケットに入れていたものを差し出す。

 

「マスターこれ、さっきの奴らが持ってたお金。店の修理代と迷惑代頂戴してきたんで、使ってください」

「っ! なにからなにまですまねェな! 本当に助かった。元々はこっちのミスだったんだが……」

「いやいや、それはそれ。マスターはちゃんと謝ってたわけだし。暴力で解決しようとして、店で暴れたあいつらはまた別の問題ですよ」

 

 店員に横暴な態度をとるやつっているよね。なんでそこまで自分が偉いと思えるのかは謎だが、俺はそういうのがあまり好きではないし、今回は間違いなくあいつらがやりすぎだった。

 

「そうだマスター、この辺に書店かもしくは図書館ってあります?」

「書店ならこの店を出てまっすぐ進むと右側にあるぞ。図書館は大きいのが丘の上にある」

 

 そういってサラサラと地図を書いて渡してくれたマスターに丁寧にお礼を言って、店の出口に向かった。そういえば大事なことを聞いてないことに気づき、もう一度マスターに振り返る。

 

「マスター、そういえばここってなんて島なんですか?」

「そういや旅人なのに歓迎の言葉を言えてなかったな」

 

 マスターがそう言ったと同時に、店員たちが全員俺に笑顔を向けて、右手を胸に当てて声を揃えた。

 

 

 

「辿り着けた者だけが楽しめる安らぎの場所、“ポルカポロウ”へようこそ!」

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 マスターが書いてくれた地図を頼りにやってきた図書館は、見張らしの良い高台にでかでかと建っていた。入り口に島一番の書庫数を誇っているというような張り紙がしてあっただけあって、かなりの本の数だ。本好きの俺としては毎日でも通いたい場所である。

 

 興味深い本はたくさんあるが、まずは情報収集だ。この島のことが書いてありそうな本や、マスターがいってたグランドラインについて書いてありそうな本、その他役に立ちそうな本を数冊見繕って、空いている席に座り読み進めてみた。

 

 そして数十分後、俺は絶望することになる…。

 

 

 

「これは夢だ……」

 

 そんな現実逃避チックな言葉しか出てこなかったのは仕方ないと思う。この島のことを調べるうちにどんどんと違和感を感じ、なんとなく世界地図を広げて見てみたところ、そこには俺が今まで見てきた世界地図とは全く違うものが描かれていたのだ。

 

 イギリス、アメリカなんて文字が全く見当たらない地図。

 四つに分けられた海、ノースブルー、サウスブルー、イーストブルー、ウエストブルーと巨大な大陸レッドライン。その大陸から垂直に流れる海流グランドライン……。

 そうか、マスターがいってた“グランドライン”ってのはこの海流のことだったのか。それが解ったところでなんの意味もないけどな!

 

 おかしいと思う場面は何度もあった。海賊が普通にうろついているのは大昔かフィクションの中だけの話だし、いくらまわりが海とはいえ移動手段が木製の船だけってのも違和感がある。

 ここの通貨単位はベリーだが、今までそんな通貨は聞いたことがない。

 

 そんなわけで集めた情報をまとめると、一番あり得ない、だが気付いてしまうとしっくりくる考えに行き着いてしまうのだ。

 

 ここは俺の知る世界じゃない……。

 

 これはやばい。とにかくやばい。むしろやばいなんてもんじゃない。国を越えたとかそんなかわいいレベルの話ではなかった。そもそも世界が違うかもしれない可能性が出てきてしまったのだ。

 というか、多分、おそらく、認めたくないけど……確実に別世界だ。

 

「嘘だろぉ……」

 

 両手で顔を覆って項垂れた俺は、端から見たら泣いているように見えたかもしれない。いや、実際ちょっと涙が出た……。

 

 どうすればいいんだ。元の世界に戻る方法なんて思い付くはずがない。そもそもここに来てしまった理由すらわからないのだ。

 

 しばらくその体勢でぐるぐる思考を巡らせていたが、結局辿り着いたのは「よし、本を読もう」という現実逃避に近いものだった。

 

 こうなってしまった以上仕方がない。わからないなら調べるまでだ。そのために偉い人たちは知識という本を残してくれているのだから。半ばやけくそ感は否めないが、とりあえずこの世界のことがわかりそうな本を片っ端から読み漁ることにした。

 知識は財産だからな。蓄えることに得はあっても損はない! はず!

 

 

 

 それから図書館が閉館するまで情報を集め続けたが、残念ながら元の世界に戻れそうなことは何一つわからなかった。

 だが、今の俺にとってはかなり有力な情報を手に入れることはできた。

 

 まず一つ、どうやら俺のように別の世界から来てしまったやつが少なくとも一人はいるらしい。誰かの日記のようなものにこんなことが書いてあった。

 

 

 “グランドラインは何が起こっても不思議ではない。天候や生物、全てにおいてデタラメである。今までの経験を常識として当てはめてはならない。私の知る冒険家の一人が言うことには、空間に歪みが生じて、いきなり知らない場所へ飛ばされてしまうこともあるらしい。彼と酒を酌み交わしているとき、ほろ酔いで笑いながら彼が言ったことをしっかりと覚えている。自分はここではない違う場所から来たんだと。あの時は冗談だと思い笑い飛ばしてしまったが、今となってはあの言葉は嘘ではなかったのだと思う。なぜなら…”

 

 

 この続きはどういうわけか破られていて読めなかったが、きっとこの冒険家は俺と同じで、別の世界からきた人間なのだろう。もしこんな状況じゃなければそれなんてファンタジー? なんて著者同様俺自身も笑い飛ばしていただろうが、今の俺にはなんともありがたい情報である。

 

 そしてもう一つ、使えそうな情報が手に入った。それは、“悪魔の実”というものについてだ。

 

 悪魔の実は別名“海の悪魔の化身”とも言われる不思議な果実で、一度口にするとその実に宿る特殊な力を手に入れることができるらしい。色や形は様々だが、唐草模様が入っているのが特徴らしい。そんな万能感溢れる悪魔の実だが、それを食べたものは能力を得る代わりに一生海に嫌われ、カナヅチになってしまうようだ。

 

 なぜこの情報が使えるのかというと、これに乗っかって俺の魔法はこの悪魔の実の能力だってことにしちゃえばいいんじゃね? と思ったからだ。実の名前は聞かれるまで答える必要なんてないし、人前で海にさえ入らなければバレないだろう。多分。

 

 全ての本を読めたわけじゃないから確実ではないが、おそらくこの世界に魔法という概念はなさそうだ。だったらこの世界に馴染めそうな話をでっちあげればいい。ただの嘘じゃない。これは優しい嘘なのだ。

 

 なんとなく方向性が決まった時に図書館を追い出されてしまったが、先程よりもだいぶ足取りは軽い。状況が把握できたことと、様々な情報や知識を手に入れたことで、かなり心に余裕ができた。

 るんるんと来た道を戻るが、先程と違い外は既に夕方だ。俺がここに来てから一体どれだけの時間が経ったのだろうか……。

 

 夕日が沈む景色がなんとも綺麗で自然と顔が綻んだが、急にあることに気付き歩みを止めた。

 

 

「俺……どこで生活すればいいんだ……?」

 

 

 人生はそう甘くはなかったようだ……。

フィンはホグワーツのどこの寮出身だと思いますか?試しにアンケート使ってみたかったのです。

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