魔法使いが海賊になる話   作:柚村たか

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視点がコロコロ変わるので、読みにくかったらすみません…。


第8話

 海賊たちと対峙した俺とウソップさんは、銃を回収した後すぐに攻撃をしかけた。相手の数が多く囲まれたりもしたのだが、俺の防御魔法とウソップさんの狙撃によりなんとか奴らを撃破することができた。

 ウソップさんの狙撃の腕は本当に素晴らしいもので、動く敵にも百発百中くらいの勢いで当てていた。流石だ。

 

 とはいえ、少し時間がかかってしまったことは否めない。進行を止められたことは良かったと思いたいが、俺にはずっと引っ掛かっていることがあったのだ。砂浜に寝転がっている海賊達をロープで縛ってから、そのことについて考えてみる。

 

 

「……なんか、おかしい……」

「おかしい?」

 

 俺が思わず呟いてしまった言葉にすぐウソップさんが反応する。顎に手を当てて思考を巡らせながら口を開いた。

 

「なんでこの人達は、砂浜を選んだんだろう……?」

「どういうことだ?」

「俺がもし逆の立場だったとしたら、絶対にこんな目立つ場所に戦車なんか下ろさないと思うんですよね。もっと気付かれないように侵略していくけどな……」

「言われてみれば……こいつらかなり大胆な行動だな」

「なんか……まるで見つけるように誘導されてるみたいな……」

 

 そこでハッとする。もしかしたら本当に俺たちは誘導されていたのかもしれない。元々奴らの狙いは島の中心にあるポロウ草だ。でも海岸、つまり島の外側で派手な行動を取ることで、そちらに俺たちが集まるように仕向けられていたとしたら……。

 

「ハルクさんが危ないっ!!」

 

 その考えに行き着いた時だった。

 

 

 ドォーンっ!!

 

 

「何だ!? 爆発!?」

 

 突然聞こえてきた大きな音は、ウソップさんの言うように爆発音のようだった。音がした方向には海に面した岩が並んでいるが、そこから煙が上がっている。目を凝らして良く見てみると、その岩の上には海賊たちの姿と、大砲が設置してあるのが確認できた。

 

「あいつら! とうとう撃ってきやがったのか!?」

「……いや……」

 

 砲弾は何処かと探した俺の目に映ったのは砲弾とは違う、黒い何か……。

 

「……あれ人だ!!」

「はァ!? 人ォ!? あいつら人間を弾にして撃ったのか!?」

 

 俺の目がおかしくなければ、あれは間違いなく人だ。というか、大砲で砲弾代わりに人を飛ばすって、とんでもなく残虐じゃない!?

 あの方向を考えると、人間砲弾を飛ばした目的地はやはりフェオ地区のようだ。

 

 ……待てよ?もしかしてあれは攻撃じゃなくて、移動手段だったりする? よくよく見たら飛んでる人が怪我をしているような様子もないし、元々ああやって移動するつもりだったのだとしたら、俺たちを海岸におびき寄せた理由もわかる。

 

 俺のその考えはどうやら当たりらしい。フェオ地区に近くなった人型の黒い物体は、布をパラシュートのように頭の上に広げて減速し、そのまま真下に落ちていく。

 

「おいフィン!! あいつらが降りてる場所ってまさか!?」

「そのまさか……ポロウ草のある場所です!!」

 

 顔を見合わせて頷きあった俺とウソップさんは、すぐにフェオ地区へと駆け出した。

 

 

 とはいえ、こんな島の端から走っていったとしても、砲弾となって大砲から飛ばされていく奴らの速度に敵うはずもなく。俺たちの頭上をどんどんと海賊達が飛んでいく。

 どうやらいろんな海岸から人間大砲を撃っているらしく、音は四方から聞こえてきていた。

 まさか大砲を使って移動するなんてね! 完全に騙されたよちくしょう!!

 戦車を壊して満足してしまった自分に怒りをぶつけながら走り続ける。

 

 俺たちが到着するまでの間ハルクさんの身に危険が迫っているかと思うと気が気ではない。

 迎え撃つ策はあるとか言ってたけど、さすがに一人じゃ無茶に決まってる。移動魔法が使えないことが憎い……!

 

 

「ウソップさん! なんか瞬間移動できる道具ないですか!?」

「あるわけねェだろ!! あったらとっくに使っとるわ!!」

「だよね!!」

 

 一応聞いてみたけど、期待する答えが返ってくるとは微塵も思っていない。思っていないけど、何かを口にしていないと嫌な方向にばかり思考が行ってしまいそうになる……。

 

 そんな時だ。空気を切るような音と共に、何かが俺の横を掠めたのは。

 

「うわっ!?」

「なんだ!?」

 

 俺とウソップさんの間をすごいスピードで横切った“何か”は、俺たちの数メートル先まで進むと、道を塞ぐようにピタリと止まった。

 

 

「……木馬?」

 

 その正体は、馬をリアルに模した木馬。最初は本物の馬かと思ったが、近付いて見てみるとすぐに作り物だとわかる。

 そもそも馬の走る音は一切しなかったし、足の部分にカーブ型の板が付いている時点で完全に木馬である。

 

「どこから来たんだ? これ……」

 

 ウソップさんがキョロキョロと辺りを見回しているが、俺はそのまま木馬から視線を外さず観察し続ける。

 誰も乗ってないのに、どうやって移動したんだろう……。そんなことを考えながら無意識に木馬に触れた。

 すると突然その木馬から風が吹き出したのだ。

 

 ……ちょっと待って、今の感覚って……。

 自分の頭に浮かんだ考えが正しいのかを確かめるべく、ウソップさんに声をかける。

 

「ウソップさん、ちょっとこの木馬触ってみてくれません?」

「こっ、こんな得たいの知れないもんに触るなんて……ってオイ!!」

 

 拒否されて長引くのも面倒なので、無理矢理ウソップさんの手首を掴んで木馬に触れさせる。だが、先程のように風が吹くことはなかった。

 

「何しやがんだてめェ!!」

「すみません、急いでたんで……」

「心の準備くらいさせろよ!!」

「すみません、急いでたんで……」

 

 怒り出したウソップさんに対して、俺は同じことしか言えないくらいには混乱している。先程頭に過った一つの仮定が確実なものとなってしまったからだ。

 

 この木馬、魔法道具だ……。

 え? もしかしてこの世界って普通に魔法道具が存在してるのか? 俺が思ってる以上に魔法使いは数が居て、この世界に魔法というものが浸透してるとか?

 

 ハルクさんの話や図書館で読んだ書物から推測するに、一応この世界での“魔法”の認識は空想上のものとされているはずだ。しかし、魔法道具を作ってしまえるほど魔法が浸透しているのだとしたら、その考え自体が間違っていたことになる。

 って、今はそんなことをゆっくり考えている時間なんてなかった!

 

 目の前で停まっている木馬は、まるで俺に乗れと行ってるように思えてくる。先程横切ったスピードを考えたら、走るよりは間違いなく速い。

 …………仕方ない。危険かもしれないけど今はこれしかない!

 

「ウソップさん! 乗って!!」

「はァ!? だ、大丈夫なのか!?」

 

 木馬に跨がってウソップさんに手を伸ばす。その瞬間なんとも言い難い感覚が訪れ、自分がこの木馬を操縦できることを確信した。なんだろう? 魔力が関係してるのかな。

 例えこれが何かの罠だとしても、取り敢えずハルクさんを助けられる確率が上がるならそれでいい。もしこれに乗ることによりウソップさんに被害が及びそうになったら、その時はウソップさんだけでも安全地帯に降ろそう。

 

「大丈夫です! 多分!!」

「で、でも何かの罠だったら……」

 

 心配そうにしているウソップさんの意見は最もだけど、罠かどうかは最早どうでもいいのだ。伸ばした腕でウソップさんの胸ぐらを掴みそのまま後ろに乗せる。乗せ方が荷物のようになってしまったが、緊急事態なので許してほしい。

 

「ぐほォェ!!」

 

 ウソップさんからすごい声が聞こえ、手荒い扱いをしてしまったことに申し訳なく思いつつも、俺は進行方向に顔を向けた。

 

「ごめんウソップさん!! ちゃんと掴まってて!!」

「はっ!? ちょ……ギャーーー!! おちっ! 落ちるーーー!!!」

 

 物凄いスピードで走り出した木馬。これは思った以上に早くハルクさんの元へ辿り着けるかも!

 ウソップさんも叫び声は派手だが、意外とちゃんと掴まってるしこのままでも大丈夫そうだ。流石ウソップさん!

 俺は焦る気持ちを抑えることなく、そのまま木馬を操り目的地へと向かった。

 

 

 

 

 ……だから俺は気付かなかったのだ。

 

 

「あ~らら、一緒に連れていっちゃったか。長鼻くんだけでも()()()()()おこうと思ったんだけどなァ」

 

 

 一人の男が、俺たちの様子を窺っていたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 フィンとウソップが木馬に乗る少し前。東の海岸に向かっていたチョッパーとゾロは……見事にはぐれていた。

 

 というのも、チョッパーが少し目を離した隙に、いつの間にかゾロが居なくなっていたのだ。想像を絶する方向音痴であるゾロのことを考えるとこれが普通なのだが、この状況ではチョッパーにとってはたまったものではない。

 獣型で街中を走りながらはぐれたゾロを探していたチョッパーだったが、もう一人の探し人を見つけ駆け寄った。

 

「サンジ!!」

 

 買い出しに出ていたサンジは両手に様々な食材を持ち歩いていた。どうやら街中の様子が慌ただしくなったのは感じていたらしい。そしてそれはチョッパーの様子を見て確信に変わったようだった。

 

「……何かあったんだな?」

「うん! 大変なんだよ! 今この島が海賊達に攻め込まれてて!!」

 

 チョッパーの言葉に目を細めたサンジは、そのまま次の言葉を待つ。

 

「この島の中心にあるものを狙ってるらしくて! 今海岸に武器とか下ろしてるって!! それで、フィンに頼まれて! おれ達でそれを止めることになったんだ!! でもゾロがいなくなっちゃって……!!」

「あー……なるほど、大体わかった」

 

 知らない人物の名前が出てはきたが、先程から街を歩いている時に聞こえてきた会話と今のチョッパーの話で大まかなことを理解したサンジは、表情を変えることなく返した。

 

「取り敢えずあのクソ迷子野郎のことはほっとけ」

「でも……!!」

「アレは一人でも大丈夫だ。それよりおれ達はどの海岸に向かえばいいんだ?」

 

 その質問にチョッパーが答えるより早く、突然海岸の方から大きな爆発音が響いて来た。その瞬間、街中で悲鳴が上がる。

 

「もしかして連中が撃ってきやがったのか!?」

 

 砲弾が飛んでこないかとすぐに警戒を強めたサンジだったがその気配はない。続けて同じような爆発音が聞こえ、街中は益々混乱が広がるが、やはり砲弾が飛んでくることはなかった。

 

 

「……なんだあれは? なんか飛んでるぞ!!」

 

 街の人間の言葉にチョッパーとサンジは上を見上げる。その飛んでいる何かが人だと気付くのにそう時間はかからなかった。

 

「人が飛んでる……!?」

「まさか……大砲で撃ちやがったのか……!?」

 

 飛んでいる人間が向かう先は島の中心だ。その様子を見てすぐにサンジは指示をとばす。

 

「チョッパー! お前はすぐに島の中心に向かえ!!」

「わかった! サンジはどうするんだ?」

「おれは海岸の奴らを片付ける!」

 

 役割が決まったところでそれぞれが目的地へと走り出した。サンジはまず手荷物を船に戻すべく来た道を戻っていく。

 

 

「おい、あんた!!」

 

 

 しかしその脚は、島民たちによってすぐに止められることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 一方その頃ゾロはというと、根拠はなくとも自分の信じた道をどんどんと突き進んでいた。

 

「まったく……チョッパーのやつ、勝手にはぐれやがって」

 

 どうやらゾロの中では迷子になったのはチョッパーのようで、呆れたようにそう呟いた。

 

 海岸を目指していたはずなのだが、住宅街を通り、いつの間にか人気の無さそうな場所に出ていたゾロ。

 一向に海岸にたどり着かないことに多少の苛立ちを感じ始めた頃、林の中から人がやってくる気配を感じた。

 

 

「イテテ……やっぱりあの移動砲は改善するべきだな……」

「おいらも着地に失敗してさっき腰打った……」

 

 腰や首を擦りながら現れたのは、2人の男達だった。気を抜いたように歩いていた彼らだったが、ゾロの姿を視界にとらえた瞬間に武器を構える。

 

「だれだ!? いつからいやがった!!」

「っ! こいつ海賊狩りのゾロだ!」

「なにィ!? 麦わらの一味がこの島に手を貸してるってのは本当だったのか!!」

 

 ペラペラと話し出した男達に、ゾロは警戒をしながら言葉を返す。

 

「お前らがこの島を襲ってるっていう海賊か?」

「はァ!? だったらなんだってんだ!?」

「どんな野郎でも敵ならやっちまうだけだ!!」

「……そうか、なら」

 

 男達の言葉にそう呟いて、刀に手を掛け確認するように呟く。

 

「斬ってもいいってことだな?」

 

 ゾロの放つ殺気に怯んだ男達だったが既に遅い。攻撃体勢を取っていたゾロから逃れることは出来なかった。

 

「“鬼斬り”!!」

 

 あっけなく斬られた男達は、その場にバタリと倒れる。大したことのない奴らだと心の中で感想を送った時、ゾロの耳にはどこからか怒声や金属のぶつかり合うような音が聞こえてきた。

 

 音を頼りにそちらに足を進めると、まず目に入ったのは金網のフェンス。そしてその回りには武器を持った人間の姿があった。

 よく見ると、金網の向こう側では作業服のようなものを着た人間達が恐れを含んだ視線で金網の外を見ている。

 そんな金網の内側にいる人間達に向けて、武器を持つ男達は怒声を浴びせていた。

 

 

「開けろコラ!!」

「ぶっ壊せこんなもん!!」

「ダメだ!金網に電気が流れてて迂闊に近付けねェ!!」

 

 金網から少し離れた位置で武器を構えていたのは、どうやら電流を警戒していたからのようだ。

 状況から察っして、金網を取り囲んでいる連中が例の海賊達だと当たりをつけたゾロは、すぐに刀を構えた。

 

「“二刀流・鷹波”!!」

 

 斬撃は男達を斬りつけ、衝撃によりその勢いで何人かは電流の金網に激突する。そしてあっという間に金網を囲んでいた男達が地面に倒れた。

 

 

「大丈夫かお前ら!?」

 

 金網の内側にそうゾロが声をかけると、一人の男性がすぐに言葉を返してくる。

 

「大丈夫です!助かりました!ありがとうございます!」

 

 深々と頭を下げた男はそのまま続ける。

 

「あなたが手助けしてくれるという麦わら海賊団の方ですね。本当に頼もしい……!!」

 

どうやら麦わらの一味のことは既に話が回っているらしく、金網の中にいる人間達は期待に満ちた目でゾロを見つめていた。

 

「ここは何なんだ……?」

 

 金網の向こう側にある工場地帯のような雰囲気を目に映しながらゾロが疑問を口にすると、先程と同じ男性が説明をしてくれた。

 

「ここはポロウ草の加工工場です。採取したものを様々なものに変えるんです。我々が生み出した独自の加工技術もあるので、それを知ろうと襲ってきたのでしょう……」

「ポロウ草ってのはそんなに特別なもんなのか?」

 

 チョッパーの説明で簡単には聞いていたが、実際のところポロウ草がどんなものなのかはよくわかってはいないゾロ。良い機会だとそれについて質問をした時だった。

 

 

「なんだ!?みんなやられてるぞ!?」

 

 どうやら海賊達の仲間が援軍を送ってきたらしい。林の中から現れたのは武器を持つ男達だ。それを見て島の人間達に再び緊張と怯えが訪れる。

 しかしそれを汲み取ったゾロは、守るようにしてフェンスを背にし、刀を構えた。

 

「お前らは中で守りを固めてろ」

「は、はいっ!!」

「要はこの金網の中にコイツらを行かせなけりゃいいんだろ?」

 

 次々と林からやってくる海賊達を見てニヤリと笑ったゾロは、力強く言い放った。

 

「準備運動には丁度良い……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 俺とウソップさんを乗せた木馬は、特に危険ということもなくぐんぐんとフェオ地区に近づいていた。いいな、この乗り物。どこかに売っているならほしいくらいである。

 相変わらずウソップさんの悲鳴は響き渡っているが、ロープでウソップさんと木馬を固定したので落ちる心配はないだろう。

 

 ドーム型防壁まであと少し! 焦りから知らぬうちにかなりのスピードが出てしまっていたようで、突然前方から飛んできた何かにぶつかりそうになってしまった。

 

「あぶなっ!」

「どぅおォ!!」

 

 ギリギリでなんとか避けられたけど危なかった……。というか、もしかして今の人だった?

 チラリと後方を確認すると、先程飛んできたであろう人が地面に叩きつけられた瞬間だった。どうやら気絶しているらしい。え、人が飛んでくるとか怖っ……。

 

 そのままスピードを落とすことなく予想より早く到着できた防壁。

 そしてたどり着いた先の状況を見て、俺はなぜ人が飛んできたのかすぐに理解することとなった。

 

 

 防壁の回りには海賊達が囲むようにして武器を持っている。おそらく大砲で移動してきた奴らだろう。

 そしていつもただ丸いだけの防壁は、至るところから大砲が飛び出し、海賊達に狙いを定めて攻撃をしていた。なるほど、ハルクさんが言ってたのはこれのことか……。

 

 そのハルクさんはというと、防壁の上で何かを操作しているようだった。あとなぜか麦わらさんも一緒にいる。同じく防壁の上から腕を伸ばし脚を伸ばし、悪魔の実の能力フル稼働で戦ってくれている。

 先程飛んできた人は、ハルクさんか麦わらさんにやられたのだろう。

 

 

「お、落ちるかと思った……」

「あ! ごめんウソップさん!!」

 

 到着してから状況を把握するために周りを観察していたら、完全にウソップさんを木馬に縛ったままであることを忘れていた。まぁウソップさんはそもそも動く気はなさそうだったけど。慌てて魔法でロープを消す。

 

 へなへなとウソップさんが木馬から降りた瞬間、その木馬は逃げるようにしてどこかに行ってしまった。あわよくば自分の物にしたかったけど、やはりそれは許してはくれないらしい。残念……。

 

 

「お!フィン!来たか!!」

 

 防壁の上から俺を見つけたハルクさんは、操作をやめることなくそう声を掛けてきた。見る限りは元気だし、怪我もなさそうだ。一先ず安心である。

 

「無事みたいで良かった!」

「まぁな!麦わらが良いタイミングで助けてくれた!!」

 

 やはり麦わらさんがハルクさんを守ってくれていたらしい。こちらに気付いた海賊達に魔法を飛ばしながらお礼を言おうとした時だった。

 

 

「っ!!危ねェ!!!」

 

 それはあまりに一瞬の出来事だった。麦わらさんのその声が聞こえてきた時には、“それ”はすでに起きていてたのだ。

 

 

「……え?」

 

 そう呟いたのは無意識だ。まるで周りがスローモーションのように動きがゆっくりと感じる。なぜか水の中にいるように全ての音がくぐもっているようだった。それはきっと、信じられない光景を目の当たりにしているからだろう。

 

 まず俺の目に映ったのは、どこからか飛んできた矢のような棒。

 

 

 そして……その棒が腹に刺さり倒れ行く、ハルクさんの姿だった。

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