ついに...!ついに完成した!
日に日に積み重なっていく書類の山。
崩しても崩しても、我らのCEOによって補充されていくこの山脈...
遂にこの山を攻略することができるのだ。
「おめでとうございます、Dr.。」
私はこの超高性能AI「PRTS」と共に、あるプログラムを完成させた。
PRTSには自動指揮といって、私の指揮を再現するという機能が存在する。
その再現度はかなり精度であり、難易度の高い作戦であっても遂行を可能にする優秀なシステムなのだ。
「ドクター。SPが1足りなくて2回目のデストレッツァが打てない。」
「爆弾変なところに出たわねw」
...たまにズレたりもする。
ともかく、その再現を応用することによって完成したのがこの、「自動書類処理システム」だ。
ああ...ようやく仕事の山から解放される...
書類を捌きながらPRTSと頭を捻ったあの日々を思い出す。あの苦難の時間は、AIであるPRITSの信頼度を200にした...そのような気がしている。きっと今後は自動指揮のズレも減少するだろう。
そんなことを考えながら、右アームにはペンを、左アームにはドクター印のハンコを装着し、PRTSのシステムと接続させる。
「頼んだぞ、PRTS!」
「お任せください。」
全てのセッティングが終了した。後をこのボタンを押すだけで...!
「ドクター?」
「ッ!あ、アーミヤ!?」
「その...様子を見に来たんですが、この機器は一体...?」
ま、まずい...PRTSをこんなことに使っていることがアーミヤにバレたら...!
「ち、違うんだアーミヤこれは...その、ケルシーの肩こりを治すマシンというか」
「私の自動指揮機能を転換してDr.の書類仕事を代行する機械です。」
PRTS!?私たちの絆は何処へ!?
「ドクター...PRTSは自動指揮もそうですが、ロドス本艦のシステムも担う重要なAIなんです。すみませんが、そういったことに利用するのは...」
そ、そんな...ここまで来たというのに...
あれよあれよと「ドクター君mk.Ⅱ(仮名)」は連行されていく。
後から聞いた話では、ロドスの療養施設「ロドス健康アイランド」で絶賛稼働中らしい。
肩叩きマシーンとして。
「さあドクター。今日もお仕事、頑張ってくださいね。」
またも積み上げられていく書類の山、山、山。
終わりだ。きっと私はもうこの部屋を出ることは一生叶わないだろう。
「ドクター。まだ休んじゃダメですよ。」
うう...誰か助けてくれ...!
眩暈がして、焦点も合わなくなってくる。アーミヤが分身し始めた。
「ドクター。」「ドクター。」「ドクター。」
「「「まだ休んじゃダメですよ。」」」
うわあああああああああああ!!!
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「ドクター?大丈夫ですか?」
...はっ!
「あの...うなされていたようですが...」
見慣れたコータスの少女がこちらを覗き込んでいる。
今のは夢...か?
「あ、ああ。大丈夫だよアーミヤ。」
随分ひどい夢を見たようだ。まさかアーミヤがあれほど仕事を寄越してくるなんてことあるわけ...ないよね?
...覚えているうちに、ドクター君Z(仮名)の設計図を書き残しておくべきだろうか。
不思議そうにこちらを見る彼女の頭にポンと手を置く。
「えへへ...あっ、そうではなく、今日の分のお仕事は終わったので、無理せず休んでください!」
なんと。やはりさっきの夢とは大違いで、我らがCEOは素晴らしいお人なのだ。
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ひとしきりアーミヤを撫でくり回してから仕事部屋を後にする。
休憩。休憩だ...何と素晴らしい響きだろうか。
ルンルン気分で廊下を歩く。
とりあえず夜食でも買おうかと、クロージャの運営する購買部へと立ち寄った。
この購買部は軽食から洋服、はてはオペレーター指名権までなんでも販売されている売店だ。
「やあクロージャ。やってるかい?」
「おっドクター。よく来たね。何か入り用?」
彼女と他愛もない会話をしながら品物を物色する。なぜか私専用の携帯食になっている砂虫スナックも悪くはないが、今夜は豪勢に行こう。
ふと向こうの通路を見てみると、電気がついていないことに気がつく。
「向こうで何かあったのか?」
「ああ...ちょっとあるものを修理したんだけど、電力使いすぎちゃってあの区画ショートしちゃったんだよね...またケルシーに長々とお小言を言われちゃうよ。」
「そんなにエネルギーを使うものだったのか?」
クロージャはこの艦のエンジニアのトップだ。その彼女がショートするほどの電力を使って修理したというのだからよっぽどのものなのだろう。興味がある。
「聞きたい?ふふーん、それはね...じゃん!」
目の前に大きな機械とゴーグルのようなものが置かれた。
「これはこの艦の奥底に眠ってた機械なんだけどね。なんと思念を読み取るアーツが込められていて、それを再現してくれるんだよ!」
思念を再現する...すごい機械であることはわかるが、どうしたら活用することができるのだろうか。
「例えばここで起動すれば、君の知らない、オペレーター達の日常が見られるんだ!」
!それは...とても興味がある。
オペレーターを良く知るということは、そのまま戦闘指揮のやりやすさにも繋がるのだ。
それに...私生活を見てみたいオペレーターは沢山いるのだ。
例えば?ウタゲとかシデロカとか...
「だが、それでは見てはいけないものも見てしまいそうな気がするぞ?シルバーアッシュとかシージとか、後で大変なことになったり...」
「あんまり気を張ってる時の読み取りはできないみたいだし、見れるのはあくまで日常周辺だから安心して。」
そうか、ならば安心だろう。
「あ、本当にプライバシーな奴は自動でカットされるから。女の子のそういうのは無理だからね?」
そうなの...安心ですね...
「それで、どうする?」
「ああ、使わせてくれ。」
オペレーターの中にはかつての私と知り合いだった人もいる。ただえさえ記憶喪失なのだから、できる限りオペレーターのことを多く知っておきたい。もしかすると記憶が戻るキッカケになるかもしれない。
「オッケー。じゃあお代は...」
え、金取るの?
「ゴニョゴニョゴニョ...」
そ、そんなに...!?もうすぐ限定求人の時期だというのに、これほどの出費は許容し難い。限定求人ってなんだよ。
「うーん......そうだ。」
名案を思いついた。理性MAXのドクターの頭脳が光る。
私は彼女にあるメモを手渡した。
「ん?ドクター君ZZ(仮名)...なにこれ?」
「これは書類を...いや、私の開発した肩叩きマシーンの設計図だ。」
「へぇ...これは凄いね!常人には出せないスピードで左右のアームを稼働させられるんだ...でも君、肩こりに悩んでたっけ?」
「いや、その辺はちょっと事情があって...とにかく、それをケルシーにプレゼントすれば、あの区画の停電も許してくれるんじゃないか?」
「なるほど!いいアイデアだね。じゃあこの設計図と引き換えということで...!」
「交渉成立だな。」
早速椅子を引っ張り出してきて、先程購入したランデン修道院のビールを片手にゴーグルを装着する。
「それじゃあいくよ?スイッチオン!」
機械から駆動音が鳴り響く。
一体どんなオペレーター達の日常が見られるのだろうか。
今夜はいつもより楽しい夜になりそうだ...
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「クロージャ。これは一体どういう事か、説明してもらおう。」
「待ってケルシー!最近肩こってない!?高性能肩叩きマシーン、νドクター君(仮名)とかどうかな!?プレゼントするよ!」
「...君の好意をありがたく頂戴しよう。受けた恩はたとえどのようなものであっても返すべきだ。そうは思わないか?クロージャ。これは私からの返礼と考えてもらって良い。Mon3tr、彼女に肩叩きを。」
(嬉しそうに身震いする)
「待ってMon3tr!メルトダウンしないで!ぎゃああああああ!」