オペレーターの冒険な日常   作:ヒオルカ

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ロドス・アイランド「罠部」

トラップ。

 

それは、私が傭兵になってからずっと使用している武装の一つ。

 

ある時は地雷を、粘着爆弾を。

 

後はランチャー、アサルトライフル、手榴弾くらいかしら?

 

昔ラテラーノの商隊を襲撃して集めた守護銃は、あらかたロドスに没収されてしまった。

 

あれをスカーモールで売り捌いたら結構な額になったと思うのだけれど...ちょっと惜しいことをしたかも。

 

もちろん自分で持っていてもあまり意味はない。傭兵は自分に合ったスタイルの武器を使うべきなのだ。特に、サルカズの傭兵は。

 

どこかのお偉いさんに飼われて、番号振らなきゃ誰のかも分からないお揃いの銃を携えるなんて、それは「傭兵」とは言えないのではないか。

 

【サルカズは自由であるべきである。】

 

愛読書の文言をボーッと思い浮かべている私「W」は、そのにっくきロドスで足止めを食らっていた。

 

ケルシーとの契約でちょっとドクターに力を貸した後、手続きをしてさっさとおさらばしたかったのだが、運悪くそこに天災の嵐が。

 

こんな場所長居はしたくないのだけれど、流石にこのまま外へ出て塵に還る訳にはいかない。

 

この大地に住んでいる以上、本当の自由なんて存在しないのかもね。

 

小腹が空いてきたので余りの携帯食糧を齧る。もちろん食堂になんて行くわけがない。

 

ロドスとは散々戦った仲だ。私に恨みを持つヤツも少なくない。

 

そんな女が呑気に食堂で定食を頼んでいたらどうだろうか。勿論恨まれることなんてどうだって良いのだけれど、居心地が最悪であること請け合いだ。

 

味気ないバーをお腹に収めて、また暇になる。

 

天災予報士によると明日の昼過ぎまで続くとのこと。流石にそれまでボーッとしてる訳にはいかない。

 

そうだ。ここの施設をお借りして、トラップの改良でもしようかしら。

 

子飼いのヤツらならともかく、飛び回るような傭兵はあまり荷物を持っていくことはできない。

 

手入れ用のちゃちな器具くらいは携帯しているのだけれど、ちゃんとした整備や改良ができる訳ではないのだ。

 

普段は傭兵のコミュニティかなんかにお邪魔して整備をさせてもらうけれど...なんならそこよりも良い設備がここにはあるんじゃないかしら?

 

さらにいえばこのロドスでトラップ系を扱うオペレーターがいた記憶はあまりない。罠系統の機材がある整備室はもしかしたら貸切かも。それは気楽で良い。

 

私はかつての記憶を頼りに、艦の端っこにある整備室へと向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここね...」

 

まず何から手をつけようか。粘着爆弾の威力を上げるか、地雷の感度を調整するか...いや、先にちゃんと整備をしよう。

 

そんなことを考えながら扉を開く。

 

「あ...こんばんは。」

 

「どうも。」

 

「.......どーも。」

 

先客がいた。

 

1人はアナティの陰気そうな女と...もう1人は帽子で種族のわからない無表情な女。

 

新顔かしら?罠使いを雇い入れるなんて、ようやくロドスも陰湿さを隠さなくなってきたのか。

 

「...君のそれは、地雷系のトラップか?」

 

「地雷...!?」

 

アナティの女が動揺する。

 

さっき思ったことは間違いだったようだ。ロドスはまだ甘ちゃんな体裁を保っているらしい。

彼女らがいじっているトラップはどれも殺傷能力のないものか狩猟用のものばかりで、お優しいことこの上ない。

 

「...そうよ?これを知らぬ間に貼り付けたり、敵を誘導して地雷原に集合させて...バーン!ってね!」

 

「え...」

 

つまり、こうやって脅してやると、いなくなってくれるかもしれないわね?

 

「え...映画みたい....!」

 

「...ん?」

 

映画?

 

「あ...その、ちょっと前の映画なんですけど、隠密のスパイものなのに爆発しまくる名作映画があって...」

 

アナティの女はそう言って携帯端末に映ったポスターを見せてくる。

 

「そ、そう...」

 

当然知らない。というか、映画なんて生まれてこの方一度も見たことがない。

そもそも戦乱の最中なカズデルに、営業をしている映画館などあるのだろうか。

 

「これは...見たことのない構造だな。本来の規格とは別々の物を組み合わせているのか?」

 

見ただけで分かるなんて、こっちの女は中々良い目をしてるじゃない。

傭兵は補給のないところで戦うことも日常だ。あり合わせのパーツで武器を作ることも珍しくはないのよ。

 

いや、そうじゃなくって...

 

「あ、急にごめんなさい。私はロビンって言います。」

 

「Frostという。よろしく頼む。」

 

「え、ええ...Wよ。」

 

流れで名乗ってしまった。この名を聞いたら恐れ慄いて逃げ出したりしてくれないだろうか。

 

「Wさん。あの、よければトラップの整備見せてもらえませんか...?」

 

「私も興味がある。頼めるか?」

 

なんだがグイグイくる。少なくとも、彼女らは私の悪評を知らないようだ。

もしかして、あまりいないトラップ使いを見つけて興奮しているのかしら...?

 

まあ時間は余ってるし?見せてやってもいいか...

 

「しょうがないわね...ちょっとだけよ。」

 

 

 

 

ーーーーー

 

爆弾をいじりながら2人に解説をしてやる。

 

「ここはねぇ、元々の規格の線より、この企業の線を持ってきて繋いでやると3割増しくらいの威力が出るのよ。」

 

「なるほど...」

 

「あ、この外枠見たことがあります...!確かシーズン3に出てたような...カジミエーシュの、ロアーガード製の...!」

 

「よく知ってるじゃない。でもこれはセンサーだけ替えてあって...」

 

話し終えてからようやく気づく。私は何を呑気に自分の武器を解説しているのだろうか。

罠なんてものは、敵に手の内がバレてはいけない武器ランキング上位入賞間違いなしなのだ。

警戒されず不意を突くことで最大の効果が引き起こされるもの。

ただ、今まで苦労して作ったものに対する反応が、死体になって何も喋らなくなるか、効果なしで何も言われることがないかのどちらかだったので、なんだか変な気分だ。

とにかく、もし今後この2人と敵対することになれば、間違いなく酷く不利な戦いとなってしまうだろう。

 

...片方は目を輝かせ、もう片方も興味津々に観察している姿を見ていると、どうでも良くなってきた。

 

...よし。

 

最後に、戦闘の衝撃で断線しかけていた導線を取り替えて整備は終了した。

 

時計を横目で見てみるが、大して時間は経っていない。道具が揃い過ぎていてトントン拍子で整備が進んでしまった。

 

また暇になってしまうけれど...まあここにいる理由もない。

 

「これで終わりよ。じゃ、私はもう行くわ。」

 

「あ、あの!」

 

呼び止められた。

 

「私達はこれから映画を見るんだ。実際の武器を模したものが多く出てくる作品で...」

 

「そうなんです。Wさんも一緒に...どうですか?」

 

「な、なんで私が...」

 

私がロドスのオペレーター達と仲良く映画鑑賞?冗談でしょう?

 

でも...別にやることもないし...

 

映画...

 

「ま、まあ...付き合ってあげても良いけど...」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

見せられた映画は...なんというか、形容し難いお話だった。

 

確かに武器についての描写は目を見張るものがあった。

登場したものはどれも正規品と同じ見た目で、炸裂するシーンも実際に使用されているかのような映像になっていた。

 

戦術についてもよく練られているように感じられた。不安定な足場に仕掛けられた爆弾を、重さの違いによって判別する場面にはビックリしたわ。

 

そういえば、リゾート地でアイツが設置した足場に、爆弾を先に置いて足場を沈めるイタズラをしてやった時のアイツの顔を思い出して笑っちゃったわね。

 

まあとにかく武器についてのこだわりは伝わってきたのだけれど、お話は唐突で

伏線回収もせず放り投げられた感じだった。

 

B級?というヤツらしい。よく分からない

 

そういえば、前にロドスで見た特殊オペレーターの女が1人出演していた気がした。ここは映画の俳優まで雇っているの?この企業はどんだけ多角化するつもりなのかしら。

 

そんなことを考えているうちに、2枚目の記録媒体が機械に差し込まれる。

 

ま、まだ見るの?

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

ふぁ...

 

欠伸をする。

 

気がついたらもう昼前。

 

他2人も眠りこけている。

 

最後に見た映画は...あまりよく覚えていない。

龍門を舞台にした作品だったのだが、主演の2人がロドスで見た術師と重装オペレーターだった。

というか出演者の3割くらいがロドスの人間だったし。

 

本当に映画作ってたのねこの企業...

 

爆竹がどうとか、龍門の都市全体を変形させてロボットに...とか、訳のわからない間に終わってしまった。

 

続編を匂わせながら終わったのだが、続きはまだ作られていないらしい。まあ...当然ね。

 

「...ふぁ...おはよう、Wさん。」

 

「.......おはよう。」

 

聞きなれていない挨拶に、返事が遅れてしまった。

 

「...もう昼か。食堂で昼食をとりに行いこう。」

 

いつの間にか起きていたFrostがそう言った。

 

「そうだね...行こう?Wさん。」

 

...え?

 

「え、いや...私は...」

 

「...?ほら、あっちで映画の感想とか...話そう?」

 

ロビンに腕を引かれ、Frostに後ろから押される。

 

ま、まって...食堂は...!しかもこんな時間に...!!

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「2個めの映画のアレ、やっぱりあの企業が隠してた爆弾の...」

 

話が入ってこない。

 

お昼時ど真ん中の食堂は予想通りの混雑模様。

 

視線を感じるのは、絶対に気のせいじゃない。

 

「あの武装はクルビア特有の技術が使われているのか?特にあの構造の...」

 

「ああ...そうね...うん...」

 

目線を下に落とす。

 

この私が、お行儀よく列に並んで注文した日替わり定食。

 

大きなハンバーグと、可愛くカットされた焼き野菜。ふかふかのパンに、根菜のスープ。

 

今日の料理当番はムキムキのフォルテと、ウルサスの少女だった。

 

そういえば、前に彼女がフライパン片手に戦場へ出ていたのを見かけた気がする。

銃撃の最中にも彼女は料理をしていたような...彼女のような人を「自由」というのかしら。

 

訳のわからない状況に頭が混乱してきた。少なくとも今この時点での私が、自由とは程遠い存在であることだけは確かだ。

 

死んだような目でハンバーグを口に運ぶ。おいしい...

 

その時、混雑する食堂に新しく誰かが入ってきた。

 

げっ

 

アイツだ。

 

アーミヤに連れられて、ドクターが食堂へとやってきた。

 

最悪だ。この状況を一番見られたくない相手なのに...

 

必死に目を合わせないようにしていたが、抵抗虚しくアイツはこちらに気づいたようだ。

 

アイツは何かを考え込んだ後、無言で親指を立てサムズアップしてきた。

 

今度絶対爆破してやる....

 

涙目になりながら定食を食べ進める。

 

もう...どうにでもなれ.......

 

私の地獄のランチタイムは、ゆっくりと過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

天災が治まった。

 

私は荷物をまとめて、出発の準備をする。

 

なんだか荷物が増えた気がする。映画のキーホルダーとか、お手製のジャーキーとか。

 

...とんでもなく疲労感を感じる一日だった。敵対した傭兵グループと三日三晩寝ずに戦闘した時と同じくらい疲れているかもしれない。

 

出口でぐーっと背伸びをする。

 

この艦より不便で、碌なものがない外へ飛び出すのだけれど、きっと今の私は自由だと感じられる。

 

さあ行こう。私には「W」として、やるべきことがまだまだ沢山あるのだから。

 

「あ、あの!」

 

ふと振り向くと、あの2人がいた。

 

「またこの艦に来ることがあったら、また映画を一緒に...見ましょう!」

 

「また新しい構造の罠を見つけたら、教えてくれ。」

 

2人が笑う。

 

よく考えればこの2人に関わったせいで、めちゃくちゃ面倒な時間を過ごすことになったのよね...

 

もう...ほんと最悪。

 

 

 

「...しょうがないわね。でも、映画はもっとマトモなのを仕入れておきなさいよ!」

 

次、三人が運良くまだ生きていたら...ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「だぶち...ロドスでおともだちを作れ...」

 

「何目線?気持ち悪いよドクター。」

 

「酷い...しかし、あの時のWはそんな面白...大変な状況だったのか。」

 

「...そういえば、Wってロドスにいる時はアスカロンの監視が付いてなかったっけ?」

 

「...今回の話で一番ビビってたのはアスカロンかもしれないな。」

 

 

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