魔法少女ドラフト ~我ら凄腕スカウト部~   作:ナメクジ次郎

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鏡の魔法少女

隆子(りゅうこ)ちゃん、いや、マジバイオレンス。もしうちの組織がキミをスカウトしたとしても、絶対来ちゃだめラビよ」

 

 私の目の前に立つウサギのぬいぐるみのような姿をしたマスコットが、そう告げる。

 

「ど、どうしてですか!? 私だって魔法少女なんです! それに実績だってちゃんと……」

「キミの力じゃあプロの世界じゃ絶対通用しないから、だよ。 実力の伴わない人気を持った魔法少女ほど哀れなものはないラビ」

 

 納得いかない、さっきの戦いだって無傷で魔獣達を倒したし。市民のみんなにも喜ばれていた。

 それに他の組織だって私に声をかけてくれてるんだよ? それを通用しないだなんてこのマスコットの目は腐っているの? 

 

「だったら! 実際にプロになってあなたの言った事間違いだったって認めさせてやりますよ! 覚えててくださいね!」

 

 このマスコットを絶対に見返してやると、その時鈍く光る私のモーニングスターに誓ったのだ。

 

 

 

 ▽

 

 

 

「輝く世界を守る為、マジルミナス……見参!」

 

 派手な変身バンクとエフェクトによって、少女達は姿を変える。出現した人類の脅威から人々を守る為の姿へと……。

 百年前、突如出現した人類に敵対する謎の存在——魔獣。それに対抗するための力を備えた新たな人類が、魔法少女だった。

 思春期の頃の少女達が覚醒するその存在は、次々と数を増やしていき、現代はまさにそう……大魔法少女時代。

 そして魔法少女が増えれば必然、それを仕事として管理し、そして魔獣との戦いに送り出す組織が必要になってくる。

 そうやっていくうちに、今や20の魔法少女組織が生まれた……そして私が所属しているのがその中の一つ、中堅組織「カウンシル」

 華々しくプロ魔法少女としてデビューした私は、今はその組織の。

 スカウト部門に居るのだ! 

 

「おぉ~、すっごい。最近の子は派手な技使うな~。ほとんどプロじゃない」

 

 などと、随分と枯れた事を言ってしまうがこれも仕方がない。

 プロになって二年足らずで現役引退した私は、もはや魔法少女としての誇りやなんかはすっかり抜けてしまったのだから。

 それでもこうやってスカウト部署に残っているのだから、未練はあるんだろうけど。活躍なんてとてもとても。

 

「ラビ~? 隆子ちゃんな~に見てるラビか~?」

 

 お仕事の魔法少女ウォッチングに夢中になっているところに、ぴょんこぴょんことコミカルな音を響かせてこちらを覗き込んで来る姿が一つ。

 同じ部署のスカウトマスコット、ウサギのぬいぐるみ型のラビ先輩だ。

 正直、この人に対してあまりいい印象はない。いっつもふらふらしてると思えば勝手にこっちの管轄エリアに入って来るし、デリカシー無いし。

 それに私に対して酷い事言うし! プロになるなとか! 

 でも、その審美眼がやっぱり本物で。この人? の言う通り私はプロを長続きしなかった。

 そういうなんでもお見通しです、みたいなところがムカつくんだけど。

 

「なんです? 先輩もルミナス見に来たんですか? お生憎様ですけど私が目を付けてたんですからね」

 

 なんて、言葉に少し棘があるような言い回しになってしまったけど、他意は無い、本当に無いんです。

 

「マジルミナスゥ~? えっ、マジで言ってるラビ? はぁ~、どんだけ見る目無いんラビかあんたは」

「あ? どういう事ですか? 即戦力に目を付けるの何か間違ってます?」

 

 マジルミナスと言えば今話題のスーパールーキー! 

 見た目良し実力良し能力の見栄え良しの三拍子揃ったまさに魔法少女の中の魔法少女! 

 光を操るその能力はまさに強力無比でその光景はアマチュアながらにSNSでバズりにバズって既に知名度も最高潮。

 なのに、それを見る目が無いとはどういう了見だろう。

 

「ビビビビビ~! 天下り魔法少女は即戦力にすぐ飛びついて愚かラビねぇ~! そもそもこんな超有名魔法少女、他の組織だって目を付けてるんだから争奪戦になるのは目に見えとるラビよぉ~?」

「うぐっ、それは……」

 

 確かにそれはそうだ、こんな実力を持った魔法少女は、どうせ他の組織も狙っている。

 魔法少女ドラフト、それは年に一度行われる組織同士の満18歳を超え、プロ入りに志願した魔法少女の奪い合い……というのは昔の話。

 一時期は裏金、囲い込み、手段を択ばないところは快楽漬けにしたり闇堕ちさせたりとやりたい放題だったらしいけど、今は国から手が入ったりして公平性が担保されたドラフト制になっている。

 だけど公平だという事は、逆に競争相手が多ければ多いほど目当ての魔法少女を組織に入れるのはやはり難しくなってしまう。

 でも魔法少女は戦って夢を売る仕事なんだし、少しくらい夢を見たって……。

 

「隆子ちゃぁ~ん? 夢売る商売って言ったってボクらスカウトは現実見なきゃいけない事くらい早く理解して欲しいんラビがねぇ~? 魔法少女やってる時に現実に負けたんだから早く切り替えるラビよマジで」

「ちょっと! 魔法少女やってる時の事は関係ないでしょう!?」

「大ありラビよ? アマでちやほやされたからってプロ入りして地味な絵面の暴力しかできなくて夢売れなかったマジバイオレンスさ~ん?」

「ぐぬぬぬぬ」

 

 このマスコット、めちゃくちゃ煽って来る! 嫌い! 

 

「じゃあルミナスが目当てじゃないっていうなら何を見に来たんですかラビ先輩は! 私をバカにする為に来たんじゃないでしょう?」

「はぁ~、隆子ちゃん。ルミナス目当てじゃなかったらもう見るものなんて決まってるラビよ? コンビを組んでるあの魔法少女が見えないラビか~?」

「コンビって……あの、マジミラーの事ですか? いっつもサポートに徹してる鏡の?」

 

 マジミラー。確かにルミナスとコンビを組んでいる魔法少女だけど、彼女の印象は正直なところ「地味」と「扱いにくい」に尽きる。

 その能力は鏡、生み出した鏡の盾によって光を反射する、そういったものだ。

 確かにルミナスと一緒に戦った時のシナジーはとんでもないものになる、しかし世間一般の評価はドラフト圏外だ。

 だってそうでしょう? ルミナスを取ることができなければ彼女の能力は鏡を出すだけ、戦闘向きの能力じゃないんだし……。

 

「でもラビさん、彼女の能力ってその、戦闘向きじゃないですよね? どこに目を付ける要素があるんです?」

「っはぁ~、隆子ちゃん? そりゃ聞けば早いラビよねぇ? でもキミも入社半年のスカウトウーマンなんだから、もうちょい考えなきゃダメラビよ?」

「それは……そうかもしれませんけど」

 

 このマスコット、煽る上にちょくちょく正論ぶつけてくるから質が悪い。

 そもそも私はミラーに目は付けてないんですけど? 

 

「まあここはキミの担当だから助言ぐらいはしたるラビ、一つはスカウトらしく昔の映像を当たることと、今見えてる常識を疑う事ラビよ」

「常識を……?」

「ま、無能なスカウトじゃなきゃすぐ気づく事だと思うから精々情報当たるといいラビ。判断するのはそれからでも遅くない……手柄は譲るから選択だけは誤らんことラビねぇ~。プロ入りした時みたいに」

「魔法少女時代の話はもういいでしょ!? わかった、わかりましたよ。ちゃんと調べればいいんでしょ全くもう」

 

 ぴょんこ、ぴょんことまたコミカルな音で去っていくラビ先輩を見送ると、また魔法少女達に視線を戻す。

 迸る閃光が魔獣を焼いていく、そしてその中から逸れたものをミラーが反射し攻撃を漏らすことなくぶち当てていく。

 

「う~ん、確かにサポートとして気は回る立ち回りだけどそれだけじゃあね」

 

 しかし私の中でのこの評価は、この後にひっくり返ることになる。

 あのうさぎ、一体どこまで「見えて」いるんだろう、そう思わざる思えないほどに。

 

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