魔法少女ドラフト ~我ら凄腕スカウト部~   作:ナメクジ次郎

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鏡の魔法少女2

「これは……」

 

 あれから数日が経った。ラビさんに言われた通り、スカウト部に戻って過去の映像をずっと確認していたが、ついにとんでもない映像にたどり着いてしまった。

 これ確かデビュー戦でルミナスの知名度も全然なかった頃だしというかこれ監視カメラの映像じゃない? なんでうちにあるの? 

 恐らくラビ先輩がやったであろう犯罪スレスレの行為にドン引きながらも、あのマスコットの優秀さに尊敬の念すら覚える。

 こんなもの見せられたら、スカウト部としては見過ごせないじゃないか。

 

「ベアー部長! ちょっと外回り行ってきます! それと……」

 

 ああ、こんなにいい原石が存在するんなら、自分の体で確かめないと損だよね。

 

「変身許可も出しておいでくださーい!」

 

 

 

 ▽

 

 

 

「すみません、私こういうものです」

 

 マジルミナスとマジミラー、二人の学校が終わる時間を見計らって声をかけた後、落ち着ける場所で話そうという事になり喫茶店へ向かう。

 そうして注文を終えた後、一呼吸置いてから名刺を渡したのだ。

 

「は、はぁ……スカウト部の、えっと、ルミナスは私じゃなくてこっちの子ですよ?」

「いえ、今日はあなたに話があって来たんですよ。マジミラー。単刀直入に言うとあなたをスカウトしに来ました」

「えっ……」

 

 おどおど、と言った様子で名刺を受け取りルミナスにパスしようとしたミラーに対し、私の目的をしっかりと伝える。

 信じられない、といったようなリアクションをしているけどそれも無理からぬことだろう、なんせ私だって今日までこの子の凄さを知らなかったんだ、他にスカウトなんて来ることも無かっただろう。

 それに、隣に引く手あまたのスーパーヒロインが隣に居たんじゃあ、自己評価も下がるか。

 

「やったじゃんミラー! アタシの言った通りでしょー? ぜっっったいにあんたの事認めてくれる人が出てくるって!」

「で、でもいいのかな……私、オシャレじゃないし、地味だし、ルミナスちゃんみたいに派手な戦い方はできないよ?」

「見た目はプロデュース次第でどうにかなります、専属メイクだって予算が出れば付きますし……戦い方に関しては、あなたの能力ならもっと派手に戦えるのでは?」

「む、無理ですよぅ……私の能力なんて、鏡を出すことしか……」

「それ、嘘ですよね?」

「えっ……?」

 

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするミラーちゃん、まあ隠したかったことかもしれないし踏み込むのは酷かもしれないけど、ここはやらせてもらおう。

 相方のルミナスちゃんも乗り気みたいだし、ここは好機とみるほかない。

 

「ミラーさん、あなたの能力って鏡の盾を出すだけじゃなくて、その盾に効果乗ってますよね? 例えばそう……反射、とか」

 

 そう、彼女はずっとルミナスと組んでいたせいで誰も気づかなかった。いや気づけなかった。

 光の能力を鏡が反射するのは当たり前だ、だけど彼女の能力は、それだけじゃなかった。

 

「少しだけ昔の映像を確認させてもらったんですが、確か一回だけ、魔獣の投げてきた巨岩をそのまま跳ね返してましたよね」

「うそ……なんでそんな昔の事……」

「うちの部署に、気持ち悪いくらいの情報通が居るもので」

 

 ほんと、なんであんな映像を持っていたんだか本当に謎だけど、今は最大限利用させてもらおう。

 

「それでその、急に来て不躾な話だとは思いますけど。一ついいですか?」

「え、えと、なんでしょう?」

「私にひとつ、その能力、受けさせてもらえませんか?」

 

 

 

 

 ▽

 

 

 

 

「準備運動は終わりましたか?」

「は、はい!」

 

 実際に戦って確認するために、二人を強化体育館まで連れて来て、怪我なんかがないように準備運動をしてもらっていた。

 ちなみに私はそういうの必要ない、そもそも今日スーツだし、私の体丈夫だし。

 

「それじゃあ早速やりましょうか」

「え、ええと、でも隆子さん生身じゃないですか、魔法少女の力受けても大丈夫なんです?」

「あぁ……そこはご心配なく、私も魔法少女なので」

 

 元、ですけどね。と付け加える加えながらも、変身の為に精神を集中させる。

 それにしても急に押しかけたスカウトを心配してくれるなんて、いい子だなぁ本当に。

 

「では……変身!」

 

 私の体が力と光に包まれ、その姿を変えていく。

 パンツスタイルだったスーツはスリットが入った神官服へと変わり、足元に空気を送り込んで来る。久しぶりのこの感覚はちょっと恥ずかしい。

 手には振り回すのにちょうどいい長さのメイスを、そして薄緑色だった髪は新緑に染まり、その上にベールが被せられる。

 それが、魔法少女としての私の姿。半年前のプロとして活動していた時の姿だ。

 

「愛の力が全てを壊す……マジバイオレンス、見参」

 

 正直、この姿は自分自身のトラウマを刺激するけれど。体を張って確かめると決めたのだから物怖じしているような弱気は無い。

 でも同期に完全に自分の上位互換が居たから埋もれたとかマジで笑えねー、マジパンチ許すまじ。

 しかし目の前に居る二人の能力は完全に個性的で且つ同期に被りが居ない、それはかなりのアドバンテージだ。

 

「さあ、あなたも変身を」

「はい……変身!」

 

 光と共に、彼女も姿を変えていく。

 その姿を一言で表すのならば、騎士。

 フリフリやふわふわが多い魔法少女達の中では珍しく、肌なんかは出ているところがあるがそれでもまだ硬質なイメージを持たせる軽鎧姿。それがマジミラーの変身であった。

 そして最後に、両腕にバックラー型のミラーシールドが装着され、変身は完了する。

 

「あまねく災禍を防ぐ力を……マジミラー。け、見参!」

 

 なるほど確かに、この子が見た目の事で自信がないのも頷ける。

 マジルミナスもそうだけど、人気の魔法少女は派手だったり可愛い衣装の子が多い。マジパンクとかマジラビットとか。

 でもこれ系の見た目でも人気の魔法少女もいっぱい居るしこれならこれでさっき言ったようにプロデュース次第だ。私の見立てでは、この子は可愛い系とカッコイイ系を両立できる。

 まあ、入った後の話は後で考えてもいいし、その辺はスカウト部の領分じゃないんだけど。

 それはともかく、今は本題だ。

 

「じゃあ反射の能力を実際に受けてみるわけだけど……ちょっとそこで盾構えて立っててくれる?」

「えと、はい。こうですか?」

「オーケーオーケー、能力の発動は自動かな? 任意だったらタイミング合わせるけど」

「あ、えと、自動、です」

 

 それなら安心だ、タイミング間違えて若い体に傷をつけることもないし。

 あと必要なのは私の心の準備だけ、まあそれも既にできているし。

 それじゃあ。

 

「思いっきり行きますからねー。反射しきれないってことはないと思いますけど、念のため踏ん張っててね」

「えっ、も、もしかして?」

 

 どうせ私にはこれしかできないんだし。あとは全力で、構えてもらったあの盾めがけて。

 メイスをフルスイング! 

 

 

 

 ▽

 

 

 

「それで? その後思いっきりぶっ飛ばされて気絶して運ばれて来たバカがお前、という事ラビね?」

「はい……」

 

 結論として、私の全力はもうそれは見事に反射され、宙を舞った。

 体の丈夫さには自信があったんだけどなー引退したからかなーなどと現実逃避をしながらも、ラビ先輩の視線はバッチリ刺さってきて痛い。

 まあ、スカウト部が、社会人が高校生に迷惑かけるなって話ですよね、はい。

 これに関しては本当に、反省しなくてはいけない。

 

「……で、どうだったラビ?」

 

 珍しくしっかりとしょぼくれた私を見かねてか、先輩の方から話を振ってきた。

 ほんとこの人気遣い上手いな腹立つけど。

 

「そうですね……能力の反射は私の全力を完全反射できましたし、本人にダメージがあった様子もない。すぐにプロの現場で働けるスペックの能力だと思います。もちろんマジルミナスとコンビでなくとも」

「そうか……で、他は?」

「後は、反射系能力者に欲しい度胸、勇気の面ですけどもそこも大丈夫だと思いますね。まあ今回の事を加味しなくても普段からルミナスの攻撃を受けて反射しているんですから当然と言えば当然ですが」

「……他は?」

「本人は変身後の見た目の事を気にしていたようでしたが、能力的にはヒーロー路線……マジパンチやマジメテオのような方向性で行けるかと」

「……」

 

 沈黙が怖い、何か気に障るような事を言っただろうか。

 というかこの人なんで自分に無理やり任せといてこんなに偉そうなんだろう? 

 

「うん。天下りのヘボスカウトだと思ってたラビけど、ちゃんとやる事やれたラビね。及第点をやるラビ」

「え……えと、ありがとうございます?」

「なんだ、煽り抜きで褒めてるんだからもっと喜ぶがいいラビ」

「すいませんちょっと意外というかちょっと気持ち悪くて」

「ナチュラルに失礼ラビねお前!?」

 

 だってこの人がシリアスに褒めるなんて初めてだし、まあそれだけ私が手のかかる新人という事かもしれないが。

 

「ま、後はボクに任せとくラビ。お前がしっかり取ってきたデータを売り込んでマジミラーを一本釣り、順位は低くなるかも知れんラビけど待遇もよくしとくラビよ」

「えっ、そんないいんですか?」

「うんうん、だからお前はしっかり休んで痛めた体を癒すといいラビ。あっ一応労災申請はしとくラビよその辺煩いから」

 

 なんかさっきの褒めからして何か怪しいなと思ったら、さらに優しくなってきた。

 ん? というより今このうさぎなんて言った? 

 後は俺に任せとくラビ? 

 

「ラビ先輩」

「何ラビ?」

「もしかして先輩、手柄横取りする気じゃありません?」

「んなっ! そんなことはないラビよ?」

「それ、嘘ですよね?」

 

 流石にこれはわかる、嘘だ。

 このマスコット野郎、なんて卑怯な事を。

 

「この情報はボクが隆子ちゃんに流したんだから別にいいでしょ~」

「それには感謝してますけどそれとこれとは別ですよー! せめて半々でしょうがあなたは体張ってないだから! あっこら逃げるな、マスコットの歩幅で逃げられるとでも?」

 

 なんてドタバタしながらも、魔法少女組織「カウンシル」のドラフト部は、優秀な魔法使いを獲得したのであった。

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