そうして始まった目撃者探しはかなり難航している。
中間テストでは須藤救済に躍起になっていた堀北だが、今回は乗り気じゃないらしい。
曰く須藤も加害者だから...とのこと。
確かに須藤本人に罪の意識がない以上、ここで救ったところであまり意味はなさそうだ。
しかし堀北、その持ち前の観察力で同じクラスの佐倉が目撃者であることを看破した。
それだけつぶさに人のことを見ているならぼっちになることなんてなさそうなもんだが、不思議でならない。
「佐倉さんっ、聞きたいことがあるんだけどいいかな?須藤くんの件で——」
「ご、ごめんなさい、私...この後予定あるから...」
櫛田が佐倉にアタックしているが、佐倉はそれを受け付けない。
彼女でも厳しいとなると他にいけそうなやつはいないだろう。
オレ?オレは目を合わせたこともないし、何ならこっちを見てくれたことすらない。
みーちゃん達にすらビビられているのだから佐倉なんてもっての外ですよね。
おっ、佐倉のカメラが壊れたらしい。これを取っ掛かりになんとかできないものだろうか。
さて、オレは今回の件で全く役に立っていない。
櫛田や平田のようにクラスに呼びかけることもなければ、堀北達のように目撃者探しに勤しむこともない。
このままではオレの立場は無い。平田や軽井沢の庇護下にいるものの、オレのことを白い目で見る者も多い。
ここらでいっちょオレは頼れるやつだというところを見せつけなければならない。
というわけでオレは事件現場である特別棟に足を運んだ。確かにここは人気も監視カメラもないし、事件を起こすにはうってつけだ。
む...先客がいるらしい。犯人は現場に戻ってくると言うし、Cクラスの生徒かもしれない。
「おいそこのお前、何してる」
そう言ってこちらを睨みつけてくるロン毛。
剣呑な雰囲気を放っているが、彼は陽キャなのだろうか?
グラサンをかけた黒人や髪を刈り上げているやつもいるし、きっとイケイケなグループなのだろう。是非ともお近づきになりたい。
「オレは1年Dクラスの綾小路。事件現場を見学に来たんだ」
「ハッ、不良品が知恵絞ったところで何になる?時間の無駄だろ。女の尻でも追っかけとけよ」
「その口ぶりからして君はCクラスの人だね。もしかして何か不安なことでもあるのかな?」
「雑魚が一丁前に口利いてんじゃねえよ。テメェにできることなんて何もねえ。さっさと帰るんだな」
うーん、刺々しい。オレと仲良くなる気はないのか。危なげな雰囲気を放っているし、きっと仲良くなれると思ったんだが。
「ここなら監視カメラもないし、喧嘩をするならうってつけかもね」
「そうだな。それで須藤もここを選んだんだろう。汚ねえやつだ」
「でも須藤くんが言うにはCクラスの人に呼び出されたそうだ。実際のとこ、どうなの?」
「仮にウチのクラスのやつが呼び出したとして、馬鹿正直に答えると思うか?虚偽の申告をしたとなれば、大問題だぜ?」
「君たちがもし審議で勝つことを目的としてるなら、だけどね」
「何だと?」
———こいつらは審議で勝つことが目的ではない。でなければ嘘をついてまで審議をふっかけてくる筈がない。
恐らく生徒間でのトラブルが起きた際のペナルティについて調べているのだろう。
審議で須藤にのみ罰を与えられなくとも、痛み分けでも構わないと言う姿勢で臨んでくる。
ならばこちらが対抗して躍起になったところで無駄だというものだ。
「おい、お前らは先に帰ってろ」
取り巻きの不良達を帰らせた。彼らに反抗の意思がないことからも彼が絶対的なリーダーなのだろう。
オレとサシで話をするつもりのようだが、一体どんな話題だろうか。
好きなラッパーについてとか?ロン毛だし、きっとHIPHOPが大好きなのだろう。
オレも陽キャのよく聞く曲ということでしっかり勉強した。
やはりオレたちは仲良くなれそうだな...!
「テメェの目的は何だ?まさかただ見物に来たってわけじゃねえよな?」
「いや、本当にただ見学に来ただけだよ。先客がいて驚いてたところさ」
「嘘つけよ。この間のテストといい、Dクラスでコソコソ動き回っているのはお前だよな、綾小路」
なる程、それが本題か。
それにしても警戒し過ぎだと思うけどな。
「この間のテストって、過去問のこと?それなら洋介くんが皆に配ってくれたんだ。いやー、本当に助かったよ」
「フン、あのいい子ちゃんにあんな裏道が思いつくとは思えねえ。やっぱり何か隠してるな?」
「その言い方だとオレがいい子じゃないみたいに聞こえるんだけど」
「冗談言うなよ。刺青入ってんだろ?とてもマトモなやつとは思えねえな」
は?オレの刺青って他クラスにも知れ渡ってんの?どうりで廊下を歩くたびチラ見されると思った!
誰がバラしたんだよ!って女子の情報網の恐ろしさはもう知ってる。きっとそれだ。
「クク、女子の間で行われた遊んでそうな男子ランキングでは堂々の1位、それも俺を抜いてな。よろしくやっていこうぜ、綾小路」
「は?」
なんだこいつ!?オレが言うのもなんだが、すごい馴れ馴れしいぞ。
ていうかそんなランキングがあったのかよ。全然知らなかったぞ...
そもそもなんでこいつがそんなこと知ってるんだ?オレはかなりギャル達と遊んでるのにまったく耳に入ってこなかった。
それなのにこのロン毛は知っている...
くそっ、格付け完了ってか!?
「オイ、何間抜け面してやがる。目的はなんだって聞いてんだよ」
「——その話はどこで聞いた?」
「あ?」
「ランキングのことだ!」
「——ッ!?」
やばい、熱くなって思わず胸ぐらを掴んでしまった。
「ハッ、やっぱりテメェは狸だったな。今の面は明らかに場慣れしてる奴の面だ。喜べよ綾小路、テメェは今から俺の獲物だ。この事件の顛末、楽しみにしてるぜ」
「えっ?」
行っちゃったよ...
オレは今初めて目が点になるという事を経験している。
しかしオレの屈辱、劣等感そして怒りが払拭されたわけではない。
ロン毛のお望み通りこの事件、オレが解決して見せようじゃないか。
Cクラスのやつらには吠え面かかせてやらないとな。
龍園さんは自己紹介とかしないタイプなんだね
彼女になるのは誰なんーだい!
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佐藤
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軽井沢
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堀北