チャラ男小路清隆   作:ウェンバンヤマ

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審議でシンキング

 

 

 やってきました生徒会審議。

 

 須藤のキャリアとDクラスに残された僅かなクラスポイントをかけた審議が今、始まる...!

 

 そうして扉を開けるとお誕生席には高そうな椅子が空席になっていて、その傍にお団子が立っていた。

 

「おっ、俺が最後か」

 

 

 ガチャリ、と扉を開けて入ってきたのは...

 南雲パイセン!?どうして南雲パイセンがここに...!?いや、生徒会なんだから居てもおかしくはないか...

 くそう!緊張してきたぞ!

 

「よう綾小路。お前もこの審議に参加するんだな。期待してるぜ」

 

「南雲くん、肩入れはいけませんよ!」

 

「はいはい、分かってますよ。橘先輩」

 

 

 やばい、体の震えが止まらねえ。動悸も激しくなってきたぞ...

 

 そうしてビビり散らかしているオレを南雲パイセンはニヤニヤと見てくる。

 もうダメかもしれない...堀北、後は任せた。

 

 

 

 

「ではこれより、先日起こった暴力事件についての審議会を始めます。生徒会からは生徒会副会長の南雲雅及び、私、生徒会書記の橘茜が参加します。また、司会進行は私が務めさせていただきます。現段階で何か質問はありますか?」

 

 

 とうとう始まってしまった。緊張で吐きそうだ。

 あんまりアクションは起こさないでほしい。そう思っていたのに思わぬ人物が質問を飛ばした。

 

「では私から。副会長、どうしてお前か足を運ぶ。いつもなら橘だけのはずだが?」

 

「堀北会長は多忙ですし、俺が偶々空いてたんで来たってだけですよ。それに今回の事件、ちょっと興味があったんです」

 

 

 こっちを見るな。見ないでください。

 

「………なるほど。よく理解した。済まなかったな、時間を無駄にしてしまった」

 

 

 いつものように含み笑いを浮かべる茶柱だが、彼女は言外に『堀北兄はどうした?妹がいるのに』と言っている。

 こいつは本当に余計なことしかしない。帰ってほしい。

 

 橘書記は咳払いをひとつしてから事件の概要を説明していく。

 

 

 

「──以上のような経緯を踏まえ、学校側は『暴力事件』だと断定しています。双方の主張を客観的に聞き、どちらが正しいのかを見極めさせて頂きます」

 

「小宮くんと近藤くんの二人は、同じバスケットボール部の須藤くんに呼び出され、放課後、特別棟に出向いた。そこで喧嘩を売られ、一方的に殴られたと主張しています。被疑者の須藤くん、これは真実ですか?」

 

「そいつら...小宮たちが言っていることは嘘...嘘です。俺が彼らに呼び出されて行った...行きました」

 

 

 須藤も敬語を意識して、拙いながらもなんとか言葉を紡いでいる。

 あくまでこちらは被疑者側。少しでも心象を良くしなければならない。

 

「さらにお聞きします。須藤くんは今否定しましたが、実際はどうだったのですか? 詳しくお願いします。そして暴言でない限り、普段の言葉遣いで構いません」

 

 橘書記の言葉に、須藤は安心したようだ。

 いつもの口調で語り始める。

 

「俺はあの日、部活の練習の後小宮と近藤に特別棟に呼び出された。鬱陶しいとは思ったけどよ、普段からこいつらの態度にはムカついてたんで出向いてやったんだ」

 

「それが嘘です。僕たちが須藤くんに呼び出されて特別棟に行ったんです」

 

「ふざけんなよ小宮。テメェが俺を呼び出したんだろうがっ」

 

「身に覚えがありません」

 

 

 須藤は苛立ちのあまり、思わず手が出てしまい机を叩く。

 

「少し落ち着いてください須藤くん。今は双方の話を聞いているだけですので。小宮くんも途中で口を挟む行為は慎んでください」

  

「わかったよ...」

 

「双方共に呼び出されたと主張しており、食い違っています。ですが共通することもあるようですね。須藤くんと小宮くん、近藤くんの間には揉め事があったんですね?」

 

「揉め事というか、須藤くんがいつも僕たちに絡んでくるんです」

 

「絡む、とは?」

 

「彼は僕らよりもバスケットが上手いので、その自慢をしてくるんです。僕らも負けないように懸命に練習していますが、それをバカにされるのは気持ちの良いものじゃなかったので、そういう意味では度々ぶつかっていました」

 

 

 部活中の詳細は分からないが、須藤の青筋立てた表情を見れば作り話であることは明らかだった。

 

「小宮の話は全部嘘だ。そいつらは俺の才能に嫉妬してやがったんだよ。こっちが黙々と練習してる時に、邪魔してくるのもしょっちゅうだ。そうだろうが」

 

「双方の言い分がこれでは、今ある証拠で判断していかざるを得ませんね」

 

「僕たちは須藤くんに滅茶苦茶に殴られました。一方的にです」

 

 

 ———来た、この事件のウィークポイントだ。仕掛けるならばここ。

 しかしどうしてだろう。発言の許可を求めようとしても唇は震え、声帯はまともに働かない。

 格上陽キャの南雲パイセンがこちらを試すような目線を止めてくれない。

 

 自己紹介の時はスッと言えたのにな...

 ある程度見知った顔がいると余計に緊張してしまうものなのだろうか。

 

「私から質問させていただいてもよろしいでしょうか」

 

 

 そんな時手を挙げたのは堀北。

 

「いいぜ、許可する」

 

「先程、あなたたちは須藤くんに呼び出され、特別棟に行ったと言いましたが、須藤くんは一体誰を、どのような理由で呼び出したんですか?」

 

 

 今更どうしてそんなことを、と小宮たちは顔を見合わせる。

 

「答えてください」

 

「俺と近藤を呼び出した理由は知りません。ただ、部活が終わって着替えている最中に、今から顔を貸せって言われて...俺たちが気に入らないとか、そんな理由じゃないでしょうか。それがなんだって言うんですか」

 

「では、どうして特別棟には石崎くんもいたのでしょうか。彼はバスケット部員ではありませんし、無関係のはず。その場にいるのは不自然だと思いますが」

 

「それは...用心のためですよ。須藤君が暴力的だと言うのは噂になっていましたから。体格だって俺たちより大きいですし。いけませんか」

 

「つまり暴力を振るわれるかもしれない、そう感じていたと?」

 

「そうです」

 

 

 まるでその質問をされることを想定していたかのような、スムーズな返答だった。

 CクラスはCクラスで、この会議への対策をしっかりと考えていた。

 

「なるほど。それで中学時代、喧嘩が強かったと言う石崎くんを用心棒代わりとして連れて行ったんですね。いざと言う時は対抗できるように」

 

「自分の身を守るためですよ。それだけです。それに、石崎くんが喧嘩が強いと言うことで有名なんて知りませんでした。ただ、頼りになる友達なので連れて行っただけです」

 

 

 堀北もまた、個人で様々なシミュレーションをしていたのか、冷静に話を聞く。

 そしてすぐに次の一手を繰り出していく。

 

「多少ではありますが、私にも武道の心得があります。だからこそわかるのですが、複数の敵と相対した場合の戦いは乗数的に厳しいものになります。喧嘩慣れしている石崎くんを含めたあなたたちが、一方的にやられたことが腑に落ちません」

 

「それは、僕たちに喧嘩の意思がなかったからです」

 

「喧嘩が起こる要因は、自分と相手の『エネルギー』がぶつかり合い、その間合いを超えたときに発展すると客観的に見ています。相手に戦う意思がない場合や無抵抗な場合、3人がそこまで怪我をする確率は非常に低いはずです」

 

 

 堀北の考え、ルール、根拠に基づいた、正に客観的な意見だった。

 

「その一般的な考えが、須藤君には当てはまらないということです。彼は非常に暴力的で、無抵抗なことをいいことに、容赦ない暴力をふるってきました。それがこれです」

 

 

 頬に貼っていたガーゼを剥がし、その傷を露出させた。どれだけ堀北が上手く理を積み重ねても、その怪我という根拠は強力だった。

 

「以上でDクラスの主張は終わりか?」

 

 

 南雲パイセンからの何かを促すかのような一言。

 堀北はこちらを一瞥し、おもむろに手を向けてきた。

 その手はオレの脇腹へと突き刺さり、そのまままさぐられた。

 

「たうわ!?」

  

 

 まるで生娘かのような声がオレから飛び出す。

 

「ちょ、な、や、やめっ!?」

 

 

 オレの顔はきっと真っ赤になっていることだろう。

 こんなにも動揺し、泣きそうになったのは産まれて初めてだ。

 ……とりあえず堀北への復讐を固く誓った。

 なにせあの南雲パイセンの前で恥をかかされたのだから。許さない、絶対に。

 

「しっかりしなさい綾小路くん。あなたが戦わなければこのまま敗北よ?」

 

「っ......」

 

 

 しかし堀北のおかげで意識は晴れやかだ。

 南雲パイセンが声を上げて笑っているが、気にしたら負けだろう。

 

「……失礼しました。先程のCクラスの発言に誤りがありましたので訂正させてください」

 

「誤り?そんなのあったか?」

 

 

 南雲パイセンが上手いこと回してくれる。

 

「はい、彼らは須藤くんに一方的に殴られたと主張しましたが、それは誤りです」

 

「それは苦しいでしょう。事実を捻じ曲げるのはいけませんよ、綾小路くん?」

 

 

 坂上先生が勝ちを確信しているのか舐め腐った言い方で指摘してくる。

 

「これを見てください」

 

 

 そう言い、オレは須藤のシャツを捲る。

 

「こ、これは!?」

 

 

 Cクラスの生徒たちも動揺を隠せず、思わず口走る。

 

「ご覧の通り、須藤くんも暴力を受けています」

 

「そんなもん、後からいくらでもつけれんじゃねえかよ!」

 

 

 当然、Cクラスは殴っていないのだからそうツッコむ。

 

「Dクラスはどうしてこの怪我のことを今まで申告しなかったんだ?」

 

「須藤くんの経歴に傷をつけたくなかったからです。バスケット部でレギュラーに選ばれそうということもあり、問題を起こしたくありませんでした」

 

「そうか。だが現状、Cクラスの言う通り後からその怪我を負わせた可能性もある。その件はどうする?」

 

「それでしたら、この事件の目撃者がいます」

 

 

 なんと、そんな話は聞いていない。もしかして佐倉の説得に成功したのだろうか。

 

 そうして佐倉がやってきたが、中々話し出せない。

 昔のオレなら愚かだと一蹴しそうなもんだが、今のオレなら彼女の気持ちがよく分かる。

 アレは辛いよな...!証言が終わったらめちゃくちゃ労ってやろう。

  

 坂上先生がすごい佐倉をいじめている。この学校の教師はみんな意地悪なんだな。

 

「証拠なら...あります!」

 

 

 そう言って佐倉の示した画像データにはアイドルみたいな子が写った写真がいっぱいあった。

 

 

 ……佐倉は陽キャだったのか!?

 あの自信たっぷりな表情、自らの可憐な容姿を良く理解しているポージング。

 

 

 ———素人技じゃないな...

 彼女は陽キャだった。もう間違いない。

 普段は1人で行動し俯きがち、しかし一度そのヴェールを脱げば可憐なアイドル。

 正に陰陽を司るウロボロスだな。

 

 

 と、だいぶ話が逸れてしまったが、その写真の中には小宮たちが須藤に殴りかかっている決定的な瞬間を写したものもあった。

 

「こ、これは!?」

 

 

 またしても動揺を隠せないCクラス一同。

 

「なるほど、確かに仕掛けたのはCクラス側らしいな」

 

 

 南雲パイセンの冷静な一言。

 

「それじゃ、そろそろ判決に移りましょうか」

 

「ま、待ってください南雲くん。今回は双方に非がある。ここは喧嘩両成敗という形で...」

 

「そう、これは喧嘩です。一方的な暴力事件ではない。ならば虚偽の申告でここまで大事にしたCクラスには須藤よりも重い罰が必要ですよね?」

 

「そ、それは...」

 

「という訳で小宮、近藤、石崎の3人には停学2週間。須藤には停学1週間だ。それに応じてクラスポイントも多少引かれるだろうな」

 

 

 よし、完璧な着地点だ。本来なら須藤の方が重く罰せられるはずだったところを逆転できた。

 これ以上ない結果と言って良いだろう。

 

 須藤は若干不服そうにしているが、我慢してもらうしかない。

 

 

 

 ロン毛はどんな顔してんだろうな。ちょっとは動揺してるんだろうか。

 何はともあれ今回の審議はオレたちDクラスの勝利だ!

 

 

 

 

 




なんか締めが上手くいかないんだよね

彼女になるのは誰なんーだい!

  • 佐藤
  • 軽井沢
  • 堀北
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