「無理に決まってます!絶対無理!」
現在我がDクラスはトイレについての議論の最中だ。
ビニールタイプの簡易トイレということで女子からしたら耐え難いものなのだろうが、陽キャだったらどうすべきだろう。
オレ的にはサバイバルって感じがして胸が躍るのだが、陽キャに清潔感は必須だ。
『簡易トイレでも平気ですー』なんて言ったら女子たちから軽蔑されるかもしれない。しかしここでトイレ購入派に回れば今以上に男子から顰蹙を買うことになるだろう。
さて、どうするべきか...
「やっほ〜」
Dクラスの剣呑な雰囲気をまるで感じないかのような呑気さでやってきたのはBクラスの担任の星之宮だ。
前々から陽キャっぽいなと思っていたが、どうやらただのKYだったらしい。こんな大人にはなりたくないな。
「あっ、綾小路くんじゃな〜い!久しぶり〜」
「どうも」
「どう?彼女はできたの?」
「いやぁまだっスね」
「え〜?いっつも女の子と一緒だから、誰かしらと付き合ってるんじゃないかと思ったんだけどな〜」
「ハハ、そういうのはちょっとまだ早いかもしんないっス」
「うふふ、告白とかするなら、こういう綺麗な海の前とか効果的かもよ〜?」
「おい。これ以上は問題行動として上に報告するぞ? それに、もう時間が無い」
…告白か。陽キャ的には外せないイベントだがオレにそんなことをする日は来るのだろうか。
この高校に来て多くの人と関わってきたが、未だに気になる女子なんてできない。友人という関係から発展し、さらに深い関係へと至る想像ができない。
皆そんなもんなのか?しかし現に平田と軽井沢は付き合っているし...
そういえばあの2人は恋人という関係だが、特別距離が近くなっているという印象は受けないな。
案外友人から恋人へと変わっていくハードルは低いのか?
だが平田がそんなホイホイ恋人を作る様な軟派男にも見えないんだよな...
陽キャにも色々あることをオレは学んだんだ。
全てを包み込む母なる陽キャ平田、危険な色気を放ちまくる龍園、そしてチャラすぎる南雲パイセン。
このお三方はオレの陽キャ街道を突っ走るためのいい道標となってくれることだろう。
リスペクトが止まらねえぜ。
なんて考えに耽っていたらもうAクラスとBクラスは移動を始めていた。
それに気づいたDクラスの面々も焦り出し、とりあえずキャンプ地を探すこととなった。
先ほどのトイレ論争によって生まれた溝は未だに男女を分けている。
この溝をものともしないのは最強の陽キャ平田か無敵ぼっちの堀北ぐらいだ。オレはとりわけ仲のいい男子なんて平田しかいないし、平田ほどコミュ力があるわけでもないので、男子の群れの中でモジモジしているだけだ。
ここでギャル達の方に行けたらなぁ...
しかし体の良い口実が思いつかないので近づけない。
仕方ない、ここは無難に堀北辺りに話しかけておこう。
「ねえ鈴音ちゃん、この試験はどうするのが正解だと思う?」
「…?あなた...誰?」
「!?この顔を忘れたの!?オレだ、綾小路だ!」
「ああ、いつものジャラジャラしたのが無かったから誰か分からなかったわ。それに、黒いし」
十数年間もホワイトルームに幽閉されていたせいで紫外線を知らないオレの柔肌はあっという間に焼け焦げてしまった。
ピアスも上陸の際に外すよう言われたし、堀北がオレだと分からなくても無理はないか...
ってなるわけねーだろ!
日焼けしてさらに陽キャ度を上げたはずなのになぜオレだと分からないのか...
堀北が無知無能なだけだと信じたい。
ふぅ...こいつと話しているといつの間にやらツッコミ側に回ってしまうな...
しかしなんだろう、堀北と話している時が一番スムーズに言葉が出てくる。
共に過ごした時間は平田たちの方が長いし、仲がいいのも平田たちの方なのに。堀北とはメッセージのやりとりすらしたことがない。
オレは堀北にこれっぽっちも好意なんて抱いていない。あるのはただの隣人という関係だけだ。
そう思っているのは向こうも同じだろう。
いや待てよ?オレはこういうシチュエーションを知っている...南雲パイセンと朝比奈のやり取りもこんな感じだった...!
そう、これは夫婦漫才だ!!!
別に仲が良くなくとも波長が合いまくっている男女の間で発生するヤツだ!
クク、まさか知らずのうちに南雲パイセンの域に片足を突っ込んでいたとは...
クク、なんか嬉しいな...あの堀北と波長があっていたなんて。読書の趣向も似てるし、最高だなぁ鈴音ぇ...!
「何?ニヤニヤと、気持ち悪い」
「いや、鈴音ちゃんの顔がいつもより赤い気がしてさ、何かあったのかなと思って」
「…気のせいよ」
クク、鈴音ぇも嬉しそうだぜ...
堀北が話してるシーン書いてる時が一番楽しいでござんす。
辛辣な女子って最高やないの。
彼女になるのは誰なんーだい!
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佐藤
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軽井沢
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堀北