チャラ男小路清隆   作:ウェンバンヤマ

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9.5巻パワーで書けました。


猿→類人猿→ホモサピエンス→陽キャ

 

綾小路清隆——職業 陽キャ

 

 休み時間は友達とのおしゃべりに費やし、放課後はオサレなカフェやファミレスで友達とおしゃべりに勤しんだりしているパーリーピーポーだ。

 

 

 そんなオレは今、宙を舞っている。

 これまでの十余年の人生で感じたことのない疾走感に包まれながら目の前の野蛮人を追いかけている最中だ。

 

 …一体なぜこんなことになってしまったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——綾小路ボーイ。君にはここがどんなふうに見えているのか聞かせてもらえないだろうか」

 

「…どんなふうにと言われてもな...オレには自然の雄大さしか感じられないよ」

 

 

 こいつは一体何を言っているのか。

 突然話しかけてきたと思ったらどう見えているかだぁ?

 ただでさえ人の気持ちを考えないコミュ障堀北への怒りで脳のリソースの大半を占められているんだから余計なことを言わないでほしい。

 このままでは陽キャマインドが失われてしまうではないか。

 

 

 

 

「フッ、なるほど...少し難しい質問だったかな。まぁいい、私はもうしばらく探索を続けた(のち)リタイアさせてもらうよ」

 

「…は?」

 

「では、アディオス!」

 

 

 そう言うと高円寺は木々を伝ってあっという間に先へ行ってしまう。

 

 …すげー。確かあいつは大企業のお坊ちゃまだったか。

 富豪の間では子どもにターザンごっこをさせるのが流行っているのかもな。

 

 ってくだらないこと考えてる場合じゃないな。早く追いかけなければ。

 

 見様見真似で力強く繁茂する木の枝を掴み、身体を弓のようにしならせその反動を活かして前へ飛ぶ。

 

 

 

 …よし、コツを掴んできたぞ。一度ノってしまえば後は身を任せるだけだ。

 それにしても高円寺はすごいな。オレはただ高円寺の通ったルートを追うだけでいいがあいつは木々の距離や高低差を考えながら飛ばなければならない。

 にもかかわらず全くの迷いもなく進んでいけるのは何故だろう。

 

 野生の感、と片付けるのは簡単だがそんなはずもない。

 

 …とターザン初心者のオレが物思いに耽りながら熟練者について行けるはずもなく、ジリジリと距離は離れていく。

 

 よし、諦めよう。クラスの皆には悪いが30ポイントは高円寺の豪華客船満喫代として使うことにする。

 

 

 しかし収穫はあった。

 先の高円寺の質問、そして実際に木々を飛び回って感じた違和感。

 それらを統合して導き出した結論。

 

 

 この森はおそらく人工的に作られた、もしくはかなり整備されているということ。

 

 等間隔、とまではいかないがある程度一定の距離で生えている木。

 それに高い視点から見ると思ったよりも木々が入り組んでおらずはっきりと道として捉えられるぐらいには舗装されていると思われる。

 

 

 

 

 

 その道に沿って歩を進めていく。

 そうするとどうだ、整えられているはずの森で整えられていない部分、或いは整えられすぎている部分が見えてくる。

 

 

 そこにあったのはスポット、スポット、スポット!

 

 一度違いを認識できれば簡単なものだ。バカみたいにスポットが見つかる。

 

 

 こうしてオレは時間も忘れてスポットを探しまくった。

 

 

 

 

 

 

「…!綾小路くん!やっと戻ってきた!みんな心配してたんだよ!?」

 

「いやーごめんごめん。探索に夢中になっちゃってさー...でも狼煙のおかげですぐここが分かったよ」

 

 

 出会い頭にオレの身を案じる平田。この思いやりの塊のような男ももはや懐かしくすら感じるな...

 野生に帰っていたはずのオレの体が一気に人間、そして陽キャへと戻って行く。

 全身の細胞が久しぶりの陽キャオーラに歓喜している。

 

「あぁ...焚き火は池くん達がやってくれたんだよ。なんでもキャンプの経験があるみたいでね、大活躍してくれているんだ。…そういえば高円寺くんはどうしたんだい?一緒に行動していたよね?」

 

 

 キャンプの知識で大活躍だぁ...?そんな小手先のもので平田からの評価を得ようとは...

 

「それが高円寺くんとは途中ではぐれちゃったんだ。こう...木の上を飛んでいっちゃってね...」

 

「木の上を...?ま、まぁそれはしょうがないか...高円寺くんなら一人でも戻ってこれるだろうし」

 

 

 実際のところはリタイアするってのを見過ごしたわけだが...それは黙っておこう。

 そもそもあれを止めるなんてのは不可能だ。オレのせいではない。

 

 

 

「そうだ、あの子はCクラスの伊吹さん。どうやらこの試験の方向性でクラスの人と揉めたみたいでね。さすがに野宿させるわけにはいかないし、Dクラスで受け入れることにしたんだ。勝手に決めてしまって申し訳ない」

 

「なるほど...受け入れるのには賛成だよ。行くあてがないのはかわいそうだしね」

 

 

 伊吹ね...まぁ十中八九スパイだろうが困っている女子は助けるのが陽キャだろう。

 

 …いや伊吹を追い出したのは話の流れ的にCクラスの王である龍園だよな?

 

 追い出したのは陽キャ、受け入れるのも陽キャ。

 

 

 

 

 この二律背反、一体どういうことだろうか。

 陽キャにも様々な種類があることは分かっている。

 しかしここまでかけ離れているどころか全く逆の性質を持っている二人の陽キャ。

 

 どちらが正しいのか、いやそもそもオレの認識が間違っているのか...

 

 

 

 そんなことを考えていたらいつの間にか日が昇っていた。

 夜更かしは陽キャのたしなみと言うがお肌によくない。

 陽キャならスキンケアぐらいバッチリこなさなければならないというのに...

 

 

 いや、こうしてウジウジ一人で悩んでいること自体陽キャらしくない、か...

 

 

 

 目の前の問題に囚われるあまり大切なものを見失うところだった...

 

 やはり陽キャは奥が深いな。

 




 プールではテンションが上がって高円寺のことを名前呼びしていたチャラ男小路。
 しかしよくよく考えると仲良くないし仲良くなりたいとも思わないので苗字呼びに戻りました。

彼女になるのは誰なんーだい!

  • 佐藤
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