点呼にてバカでかい声で返事をし、大して味もしない川魚を食い支度を終える。
無人島生活2日目。
今日からがオレの本領、スポットでのポイント稼ぎタイムだ。
「いくらリーダーを引き受けた私のせいとはいえ憂鬱ね。あなたと一日中無人島を歩き回らなければいけないなんて...」
「大丈夫大丈夫!歩けないぐらい疲れちゃったらオレがおぶって行くからさ!」
「結構よ。そんな屈辱的な行為をするぐらいならそこら辺でのたれ死んだ方がマシだわ」
「ハハ、武士みたいなこと言うね」
オレの本領とは言ったがスポットの認証・更新はリーダーが行わなければならない。
そのため今日からは基本堀北と二人行動だ。
甚だ遺憾だが、これも己の武勲のためなら仕方ない。
なにせオレが昨日見つけたスポットの数、実に12箇所!
全てのスポットを毎回更新できればその恩恵は計り知れない。
しかし他のクラスと狙いが被ったり、どうしても最短の8時間おきでの更新に間に合わなかったりで十全にそのスポットを活かすことはできないだろうが、それでも大きな収穫であることに間違いない。
クラスのためを思い身を削って奮闘する。正に陽キャじゃないか...!
そんなことを考えながらスポットを巡っていく。
「それにしてもすごいわね、こんなにもたくさんのスポットを見つけるなんて。一体どんな手を使ったの?」
「野生の感...ってやつかな。この青々と茂る森と一体化するんだ。そうすればおのずと見えてくるものがあるんだよ」
「そう...野良犬みたいね」
「は?」
「できればその自慢の鼻で高円寺くんも見つけ出して欲しかったのだけど」
それを言われると黙るしかない。
腹立たしいことだが高円寺のリタイアで30ポイントという大きなマイナスをクラスに与えてしまった。
これは高円寺と二人組で動いていたオレの責任である。
いやそんなことはないよな?誰があの陰でも陽でもないモンスターを制御できるというのか。
森の中なら尚更だ。
シティボーイならぬルームボーイなオレにいきなり逃げ回る森の賢者を捕まえろなんてミッションを課す方が悪い。
そう、リーダーの立場を悪用し、オレに不当な労働を強いた堀北が悪いのだ。
しかし普段の堀北対応マニュアルを作成済みのオレなら簡単にヤツの罵詈雑言、もといネチネチ陰キャリーダーハラスメントを聞き流せたはず。
…そう、あの時は平田が近くにいたんだ。
クラスメイト想いの平田を悲しませまいとオレは堀北に従ってしまったんだ。
…良くないと自分でも思う。
何でもかんでも平田の顔色を伺った行動しかとらないオレに自分の意思は無い。
平田を傷つける覚悟が必要なのかもしれないな...
今回ばかりはその勉強代ということで堀北からの暴言は甘んじて受け入れよう。
「……」
「……」
…堀北の暴言が...止んだ?
オレも堀北も沈黙を苦とするタイプの人間ではない。
そのため授業中のペアワークでは早々に課題を済ませ後は黙りこくって教科書に目線を落とすことがほとんどだ。2人だけとなった時に雑談で無理に間を埋めようとはならない。
堀北がオレに向けて放ってくる言葉は大抵心無い悪口か、試験等の相談ぐらいだ。
オレたちの会話量はかなりのものだと自負しているが、ろくに世間話もしていないとは不思議な関係だとつくづく思う。
しかしやはりおかしいのだ。
堀北の暴言が止むには早すぎる...そう、コイツは人を貶させたら右に出るものはいない悪逆非道の徒。
慣れない無人島やリーダーの業務で溜め込んでいるであろうストレスをオレというサンドバッグにぶつけないはずがない。
…やはり気のせいでは無かったか!
この無人島に上陸する少し前から普段より顔が赤いなーと思っていたんだ!
堀北はオレに恋をしているな!?
しかも無自覚に!!
無理もない...日焼けして色気がギャンギャンに増した陽キャのオレ、そして星之宮も言っていたがこの綺麗な海に森という非日常感...
おそらく初恋もしたことのないであろう堀北には刺激が強すぎたんだ...!
——という展開がラブコメ小路なら待っていたんだろう。
実際のところは普通に体調不良で軽口をたたく余裕もないのだろう。
夏風邪でもひいたか、堀北よ。
せっかくのイベントで体調を崩すとは...マイナス10000陽キャポイント。
オレとの差は広がるばかりだ。危機感を持った方がいいぞ堀北。
風邪の中無理をさせて申し訳ないがこれも必要な犠牲なのだ。
全ポイント消費の陽キャウィークを断念したからにはガチでポイントを稼ぎに行くぞ。
平田の、もといDクラスの笑顔のためだ!
なんとか正午を回る前に全てのスポットで認証ができた。堀北はもうお疲れのようなのでとりあえず拠点へと戻ってきた。
「すごいよ2人とも!もうこれで12ポイント獲得だ!それに占有しているここも合わせれば13ポイント...怖いくらいに順調だね!」
———ふぅ...!!!全身を陽キャエネルギーが駆け巡る...
堀北によって蓄積させられた負の感情が、長いこと歩いて溜め込まれた乳酸が洗い流され、全身に力が満ちていくのを感じる...!
早く8時間後にならないかな...また平田に褒められたい...
「いや~随分と質素な暮らししてんだなDクラスは。さすが不良品の集まりだ」
…幸福感で満たされていたオレの脳はすっかり怒りに支配されてしまった。
あいつらは確か...小宮と近藤だったか。
オレの脳内陽キャフィーバーを邪魔した罪は重い。骨も残らないと思え。
「龍園さんからの伝言だ。夏を満喫したかったら今すぐ浜辺に来いってよ!」
うおおおおおお!!!!!!!!!!!!
「待ちなさい」
「…え?」
「今にも走り出しそうだったわよ。私たちにはスポットの更新という役割がある。体力は温存しておくべきよ」
「…Cクラスの拠点に行くことが体力の回復になるとしたら?」
「はぁ?」
「オレは行くよ。いや、行かなきゃならないんだっ!」
「ちょっと!待ちなさいってば!」
堀北の静止を振り切り最早慣れ親しんだ森を駆け抜ける。
うおおお!!!待ってろよマイサマーメモリー!!!
長い森を抜けるとそこは天国であった。
ビーチバレー、BBQ、水上バイク...ありとあらゆる夏の贅を詰め込んだような空間がそこにはあった。
…これだ...オレが求めていたものはここにあったんだ...!ここがオレのアナザースカイだ...!
「——ぃ...!おい!龍園さんが呼んでるぞ!」
「…あぁ、今行くよ」
涙と鼻水でぐしょぐしょになった顔を整え、この楽園の主の元へ向かう。
ビーチパラソルの下に鎮座するその御姿には後光が指している気さえする。
「よう綾小路、どうだ?ウチの拠点は」
「…恐れ入ったよ。まさかここまで気が合う人がいたとはね...」
「あ?」
「オレたちは親友ってことだよ」
「…お前、この暑さで頭やられたのか?」
「ああ、親友じゃ不満だった?そうだな、ならオレたちは兄弟だ。血は繋がっていなくても、それよりもっと強くて深い絆で結ばれているんだ。趣味嗜好だって瓜二つだ。酒を煽るかのように炭酸水を飲むよね。あれすっごくいいよ。オレの求める理想像にピッタリ重なる。あと船でつけてた磁気ネックレス。あれもいいよね。オレよくサウナに行くんだけどさ、なんかすごくそれっぽいんだ。きっと翔も同じなんだよね。いやそれは翔に失礼か。翔は生まれながらのナチュラルボーンパリピ陽キャだもんね。養殖モノのオレとは比較するのも烏滸がましいか。しかしその違いはなんだろうな。育った環境か?その環境と生まれ持った素質で全てが決まるのか、性格が決まってしまうのか?そんなはずはない。限りなく近い遺伝子、限りなく近い身体的構造をしていても個体差は出る。なら何だ。なぜオレは変わらないんだ。第二次性徴と環境の変化。これほどの刺激があってもオレはあの頃ままなのか?いやでも趣味嗜好なんて目じゃないぐらいにオレたちは運命的な繋がりがあるんだ。なんとオレたちは同じ日に生まれたんだよ!10月20日。一回り、二回りの語呂合わせになってるんだ。すごいよね。オレたちは輪廻転生の循環を一回り二回りしてようやく巡り会えたんだ。分かるよね?つまりオレたちの繋がりは生前からのものってわけ!話は変わるけどさ、翔ってオレの父親に似てるんだよね。野心家なところとか特にさ。つまりこれってそういうことじゃない?そうか、なら納得だ。オレが今オレとして真っ白なオレから太陽の下で輝くオレである理由は父親もオレと同じだったからなのか。今まで輪廻がどうのこうの言ってきたけどガチの双子説あるんじゃない!?だとすれば納得だよね、ここまでオレたちが似てるのって。本当にありがとう翔。翔のおかげであんなに嫌いだった父親のことをすこし好きになれそうだよ。本当にすごいなあ翔は。オレの拗れに拗れた親子関係まで解消できるなんて。あ...オレの、じゃなくてオレたちの———」
「…………………あ〜?」
「Jesus」
チャラ男小路は別に涙も鼻水も出てません。暑い中めっちゃ走ったのでいっぱい汗かいただけです。
彼女になるのは誰なんーだい!
-
佐藤
-
軽井沢
-
堀北