「——綾小路くん、須藤くんたちは集まった?」
「え?集まってないけど」
「なら集めなさい。死に物狂いで」
「昨日言ったよね?万策尽きたって」
それにオレは平田との勉強会で忙しいんだ!大人数で勉強会、とても陽キャを実感する。
「あなた、彼らが退学してもいいと思ってるの?」
「そんなわけないでしょ。ただオレは適任じゃなかったってだけだよ。これに懲りたら人選はよく考えることだね」
「……」
かつてないほど堀北がキレてる。だからってオレは動じないぞ。こうなったオレは梃子でも動かないんだ。
「そう...分かったわ。もう私も彼らには関わらない。いいわね?」
「…?いいんじゃない?」
何の確認だ?別に勝手にすればいいのに。
今日の勉強会も終わり、すっかり日も暮れた。
いつの間にか女子たちとメッセージのやり取りをするのが習慣になってしまっているな。
気づけばもう日をまたいでいる。
何となく寝つけそうになかったので、身体を起こし外に出る。
自販機でジュースを購入していると制服姿の堀北が目に入った。
何となく気になったので後を追ってみる。
「鈴音、ここまで追ってくるとはな」
「もう、兄さんの知っている頃の私とは違います。追いつくために来ました」
「追いつく、か。Dクラスになったと聞いたが、3年前と何も変わらないな。ただオレの背中を見ているだけだ」
随分と辛辣なやつだな。さすがは堀北の兄だ。
それにしても、こんなに弱気な堀北は初めて見たな。なんだか変な気持ちになってきたぞ。
「兄さん———私は———」
「お前は上を目指す力も資格もない。それを知れ」
堀北の身体がぐっと前に引かれ、宙に浮く。直感的に危険だと判断したので、兄貴の右腕を掴み取り動きを制限する。
「———なんだ?お前は」
「あ、綾小路くん!?」
「今、鈴音ちゃんを投げ飛ばそうとしましたよね。兄妹だからってやって良いことと悪いことがあるんじゃないっスか?」
「盗み聞きとは感心しないな」
「いいからその手を離せ」
「それはこちらのセリフだ」
「やめて、綾小路くん...」
そう言われ、渋々兄貴の手を離す。その瞬間とてつもない速度の裏拳がオレの顔面めがけて飛んでくる。
「っぶね!」
当たれば一発で意識を失ってしまうであろう威力。堀北兄は僅かに疑問の表情を見せながらも次々と攻撃を繰り出してくる。
もの凄い連撃だ。こういうのって1,2発で終わるもんじゃないのか?
…っまだ続くのかよ!こいつの拳から怒りをヒシヒシと感じる。なんでキレてるんだよ。
さてはシスコンだな...?オレに堀北が取られて悔しいんだろ!
そんなことを考えているとやっと拳が止んだ。
「…ッ!はぁ、いい動きだな。何か習っていたのか?」
この野郎、大人気なくバカスカ殴りやがって...
「ダンススクールに通ってましたよ。一曲踊って見せましょうか?」
陽キャならダンスの1つぐらい踊れなきゃな。もしクラブに行くなんてことになって踊れなかったら大変だ。
「まともに答えるつもりはない...か。気に食わん奴だ」
「それはどうも」
「鈴音、お前に友達がいたとはな。正直驚いた」
「彼は......友達なんかじゃありません。ただのクラスメイトです」
「えぇー、オレたち友達じゃなかったの?」
「フン、だろうな。お前たちが合うとはとても思えん」
心なしかホッとしてるような表情を見せる堀北兄。やっぱりシスコンじゃねえか。
「上のクラスに上がりたかったら、死に物狂いで足掻け。それしか方法は無い」
そう言い残し堀北兄は去った。堀北は壁際に座り込んで俯いてしまっている。
「大丈夫?鈴音ちゃん」
「……」
「お兄さん、生徒会長だったんだね」
「そうね。でも私はDクラスよ...」
すっかり自信を喪失してしまっているらしい。あの堀北が自虐をするなんてな。
「この後どうする?オレの部屋来る?」
「どうしてそうなるのよ...」
うーん、傷心中の女子は口説きやすいって聞いたんだが、上手くいかないもんだな。別に堀北に気があるってわけじゃないが。
「じゃあオレはそろそろ行くよ。今夜は冷えるし、あったかくして寝るんだよ〜」
なんて言ってみたが、オレの格好はパジャマだ。
カッコつかないな...
学「鈴音...心配だよ鈴音ぇ...」
彼女になるのは誰なんーだい!
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佐藤
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軽井沢
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堀北