ばっ!という音と、目の前を一陣の疾風が走ったかと思うと、そこにはシャオチンの投げたカードは無かった。
慌てて疾風の走った先に目を移すと、そこには全身真っ黒な鳥のドリリーがいた。
「クロセーヌ!!」
「こんな所で何をしているのだね?」
重い、深い声が突然訪ねてきた。
そこには、厳しさで有名な体育の先生、ウーモォがいた。
「全く、これだから若いもんは...。」
「返して下さい!そのカードはシャオチンの物です。」
「レイニャンくん...だったかな?ドリリーカードを学校に持ち込むのは校則違反、年長の君が知らないはずは無いだろう。」
「...!」
「二人にはどうやら罰則が必要なようですね...!」
「やめて下さい!ウーモォさん。」
凛とした声が響いた。
「シュウセン先生!」
「私は、二人がドリリーで遊ぶのを知っていながら放任しました。ですから、過失があるというなら私も同じですっ。」
「全く、これだから若いもんは...。
職務を果たさないような教師が、いつまでこの学校に居られるか...お分かりですね、シュウセン先生。」
「...はいっ...。」
その後、俺とレイニャンさんはシュウセン先生に叱られた。通知表にもペナルティを付けられるらしい。
「俺、悔しいよ。だって、レイニャンさん怖がってたじゃないか...!」
レイニャンさんは何も言わない。
「いつか強くなって、あいつを懲らしめてやるんだ。」
「シャオチン、これは私が間違ってたのよ。だから、きみが怒るようなことじゃ...。」
「違うよ!!」
シャオチンは泣いた。
彼は知ったのだ、己が非力さと、虫のように容易く心を潰される悔しさを。
翌日、シャオチンの席は誰も座っていなかった。
‟天縁地方"、‟花夏省"の一角にある、広い庭園とオリエンタル様式が特徴の"小人小学校"。
そこから少し離れた空き地で、シャオチンは不貞腐れていた。
「あんな奴を庇うレイニャンさん、俺は嫌いだよ!」
積み上げられた土管の日陰で俯く彼を、小犬のドリリー、ミニハチがなだめる。
どかっと、後ろの土管に身を投げるように座る音がした...かと思うと、何者かが包装紙をめくって、柔らかい物を食い散らかす音が、頭上でシャオチンを苛立たせた。
振り返って様子を確かめると、歳はレイニャンさんと同じ位だろうか、ブルーブラックのコートを着た癖毛の男が、カフェのテイクアウトを食べていた。
そう言えば、学校では昼御飯の時間だろうか。
「疲れると甘いものを食べて、苦いものを飲みたくなるのさ...ま、お子様の君には分からないか。」