ぼくらはカセキホリダー ~氷漬けの少女と恐竜好きの少年の出会い~ 作:幻想猫
第一話 カセキホリダーの少年は氷の発掘場へ訪れる
崖の上に、手足を鎖で繋がれた少女が立っていた。
少女の体には、打撲痕や切り傷が出来ていた。これらは全て、暴力という形で人間に付けられたものである。
「…………」
少女は虚ろな瞳で空を見上げていた。
『お前のせいで妻は…妻はぁ……!』
『知ってる?その名前を持つ人はな、災いを齎すんだってさ!』
『お前は……良い子だ……だからどうか…わたしの分まで……』
少女の頭の中で、多くの出来事や感情が浮かんでは消えてを繰り返した。
(どうして私は…こんな目に遭ってきたんだろう。私は何も…悪い事してないのに……)
少女の言っている事は事実である。
彼女自身は本当に何もしていない。
周囲の人間達の身勝手な都合のせいで、現在に至るまで迫害を受けて来たのだ。
(このまま死ぬなんて絶対嫌だ…ここで終わる位だったら……)
少女の目に、薄っすらと憎悪が宿り始めていた。
「いつまでそこに立っているつもりだ」
背後から男の声が聞こえたと同時に背中に衝撃が加わる。
男が少女の背中を手で押したからだ。
(憎くて仕方のない人間達を……殺したかった…………)
地の底へ落ちていく少女はその言葉を最後に、意識を失った。
それから数百年後、少女は目を覚ます事となる。
一隻の船が、氷山を舞台とした発掘場へ向かおうとしていた。
「…………」
発掘上へ向かう船に乗った少年は、やる気のない目で空を見ていた。
(……一体いつになったら目当てのものは見つかるんだよ)
今の彼はイライラしていた。
昨日も一昨日も、同じ発掘場へ足を運んでは目的のものを発見できず、日が暮れたら帰るという行為を何度も繰り返しているからだ。
(博士の奴、オレに嘘吐きやがったな?帰ったら小型の肉食恐竜を2体以上連れて部屋を滅茶苦茶にするとしようか)
そんな事を考えていると、船内アナウンスが聞こえた。
『乗船されたカセキホリダーの皆様。大変お待たせしました。まもなく目的地、コゴエル氷山へ到着いたします。その名の通り、非常に寒い環境となっております。暖かい格好で降りる事をお勧めします』
「はぁ……やっと着いたか」
アナウンスを聞いた少年はため息を吐きながら席を立ち、出口まで歩いていく。
「待ちな小僧。そんな薄着で寒くねぇのか?」
「はぁ?良いだろ別に。どんな格好をしようがオレの勝手だろ」
船の操縦士は少年の半袖短パンの恰好を見て心配していたが、彼は男の言葉に聞く耳を持たずそのまま発掘場まで行ってしまった。
(周りに人は…いないな。昨日と同じか)
『コゴエル氷山』と書かれた看板を見た後に少年は辺りを見渡すが、彼以外に人はいなかった。
「別に良いさ。いつも通り見た事無い化石を掘ったり、目当てのものを見つけられれば問題ねぇし」
そう言って少年は歩みを進めた。
次回へ続く