戦姫絶唱シンフォギアオルタナティブ   作:オルタナティブティガ

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第二話

天羽 奏side

 

「……ケイゴが死んだ?嘘だ、あいつが死ぬ訳……死ぬ訳ねぇだろッ‼︎」

 

「おねぇちゃん……」

 

親達に八つ当たりしてしまうが自分でも何処か腑に落ちないところがあった。

あんなに発掘が楽しみって言ってたやつが急に遺跡に入る直前にトイレに行くなんておかしいんだ。もし止めていれば別に後でもいいだろって言えば……けど許せねぇ、あんな怪物を倒せる実力があったのにどうしてケイゴだけを助けてくれなかったんだ。怪物を倒せればそれで良いのかよ、なんであたし達だけ助けたんだよ……

絶対にあの巨人に問い詰めてやる、話しが通じないかもしんねぇけどだがあの木偶の坊がした事を言って聞かせないとあたし達の気が済まねぇ。

 

天羽 奏 side out

 

真崎 磬護 side

 

「ふぇっくしょんッ、風邪か?」

 

『風邪にしては体調が良いので埃や塵もしくは噂ではないでしょうか?』

 

「え、迷信信じてんの?というか、名前聞いてなかったんだけど……」

 

『………言ってませんでしたっけ?』

 

「うん、言ってないというか何者かも聞いてないんだけど?」

 

『……ヴッヴン、えぇ地球警備団団長、ユザレの記憶を基に作られた人工知能です。人類に闇の勢力からの脅威を伝える為でしたがこれからは光の継承者である貴方のサポートをさせていただきます』

 

「真崎磬護だ、よろしくね」

 

『はい、よろしくお願いします』

 

「で、俺はどこ向かってんのこれ?」

 

『はい、今のところ一番反応が大きかったのは中国ですね』

 

「うん?どうやっていくんだよ、俺確かゴルザの爆発に巻き込まれて遺体がノイズのせいで残らなかったとされて葬式もう済んで墓も建ってるし戸籍もないんだが?」

 

『だから、帰ったらどうですかと言ったのですが』

 

「あの空気感で帰れる奴はKYなだけだと思うが」

 

ウルトラマン憎し、ノイズ許さん仇はとるぞォみたいにうちと天音一家が静かにブチギレてたのに

ウルトラマンに変身する人のお約束の「おーい」ってできる奴いるか?周りとの温度差で死ぬぞ俺が

『あの、いじめっ子も来てたのは面白かったですね』

 

「あ〜あいつね、一回喧嘩したら好敵手にされてしつこかったなぁ。まぁ丸くなっていい兄貴分になってたな。というかどうやって密入国するんだよ」

『輸送船に載ります』

 

「載る?乗るじゃなくて?」

 

『はい、載ります』

 

「マジで?」

 

『はい、マジです。輸送船にもデットスペースがありますそこで光学迷彩を使って隠れます』

 

「ぎ、技術の無駄遣いな気がする……」

 

『では、親に死んでません。実はあの銀の巨人で世界を滅ぼしかねない怪獣達を倒さないといけないんです。と言えばいいじゃないですか?だいたい贅沢過ぎます私達も当時は地球を守るため泥水を啜る覚悟でやってきたのです、その末裔である貴方ができないはずがありません』

 

「………はい、がんばります」

 

「さて、中国に不法入国している訳だが何処に反応があるんだ?」

 

『このまま20キロ先の山奥ですね』

 

「なんで無駄にそういう所にあるんだろ」

 

『元々、殆ど私達と戦って傷を負ったり伏兵にしようとして忘れられたりした残り物ですが闇の勢力が増してきたら別です……』

 

「山奥ね、てか何で俺の見た目があんな悪役っぽいままなのかねぇ」

 

『その事ですか、あなたの巨人の見た目は昔からそのままみたいです。その外見の邪悪さとティガに似ている所からイーヴィルティガと呼ばれていたとデータベースにはあります。まぁ、ティガが闇の巨人になってた時はティガの代わりとしてオルタナティブティガと呼ばれていたとか。

データが古すぎるのと本部のサーバー自体修復中という事もありこれ以上となると厳しいですね』

 

「つまり、俺の巨人はティガと常に真逆だってことか……他に巨人に適合している人はいない?」

 

『今の所は確認できていないためわからないとしか……』

 

「あー、大丈夫。流石に闇の巨人と闘うことはまだ避けたいから人手は足りないし訓練はできないからどうしようかなって話」

 

「さーて森の奥地へ出発‼︎」と中学一年生になって少し経った男の子が声をあげて森の方へと向かっていく。

森の奥深くに入り辺りに人の気配がない場所を歩くしかしその足取りは、少し不安そうな感じだがしっかりと地面を踏み締め前に進む意志を感じる歩みだった。

 

 

奏side

アタシたちはあの事故からずっと巨人やあいつの死体をカケラも残さない原因になったノイズについて文献などで調べていた。

皮肉な事にウチの家族とあいつの両親はノイズ被害にも化け物による怪我が一つも巨人が守ってくれていたのかなかった。

父さん達は、他の遺跡を探したり伝手を使ってあの巨人の正体を探ろうとしたけどちょっとずつわかってきらしい。

その合間にノイズ研究していたら特殊捜査係2課から引っこ抜きにあって巨人の研究している場合じゃなくなっちゃったらしい。

だからアタシはアタシで図書館で調べてみたけど何一つ成果がないどころかそんな事は大人に任せなさいって言われた……アタシだってあの巨人について知りたいのに………

いや、そんな事でへこんでたらあいつ成仏できないか……でもその方がまだ、ってだめだめ最近気持ちが暗くなってるし気分転換しないと。

 

「って、あれ?」

 

アタシはさっきまで見ていた午後のニュースのスイーツ特集から変わって流れているものに惹きつけられていた。

『速報です。中国で巨大な生物が暴れ、死傷者が多数出ました。今の所確認できた全員命に別状がないとのことでしたが、全員が巨大な銀色の巨人を見たと証言しており現場には巨大生物の足跡の他に巨大な人の足跡の様な物も見つかったもようです。中国政府は事実を確認し調査しているとのことです。それでは次のニュースは……』

 

「そういうことか、あの巨人は化け物を探して世界中飛び回ってんのか。道理で見つからないわけだ、じゃあ先に化け物を見つけたら出会えるってわけか……待ってろ木偶の坊、ぜってぇあいつに謝ってもらうからな」

 

「おねぇちゃん、どうしたの?……今のニュースっえケイにぃを救ってくれなかったものなのかな」

 

「さぁな。どちらにせよ手掛かりがないよりマシだとっ捕まえるにしろな」

 

天羽 奏 side out

 

真崎 磬護 side

数日前

 

 

「反応は……ここあたりか」

 

そこは誰が見てもただの森と答える普通の森林だった。

 

「さて、何処に埋まってるんだ?てかこの辺人いないよな、いたら結構怪しまれるよなこれ」

 

ケイゴは辺りをキョロキョロと見渡し手がかりを探すがただの木や草花しかない。すると背の高い草がガサガサっと揺れる。音の鳴った方向を向きながらスパークレンスが入っている上着の内ポケットに手を突っ込む。

 

「………誰だ?」

 

『生体反応反応的には人だと思われますが……警戒する事は大事かと、もし現地の人なら話を聞いて見ましょう』

 

『………俺日本語と英語しか無理なんだが?』

 

『大丈夫です、すでに主要国のニュースなどで言語学習は終了しています』

 

「だからあの半壊した遺跡に戻っていろいろ準備したのか……バレない様にすんの死ぬ程大変だったんだが?」

 

『必要な事でしたのでそれより眼前の敵なのかわからない存在に意識を割くべきでは?』

 

「はぁ、わかってるよ」

 

草をかき分けて出てきたのはケイゴより少し歳下の子供だった。背中には籠を背負っており中には野菜や果物が入っており収穫が終わり家に帰るところだったのが分かる。

 

『セットアップが完了したので中国語に自動変換して会話を行えますよ』

 

「こんにちわ、どうかしたの?」

 

「あ、こんにちわ。おにーさんこそこんなとこで何してんの、ここ鎌龍様を祀ってるところで入っちゃダメって言われなかった?」

 

「あー、旅しながら珍しいのを見るのが好きでねバレなきゃいいかなぁってさ」

子供はどこか不審者を見ているような目をして、足がいつでも走り出せそうに力を入れているのがわかる。

 

「あ、待て待て逃げようとすんな。実際旅をしているがこの辺りにまず村があるのを知らなかったんだ……なんかここ入ったら呪われるとかそういうのなのか?」

 

きょとんとした顔をして子供はあ、と溢す。

 

「お兄さん、川から上がってきたでしょ‼︎道理で村の人と会わない訳だよ。うちの村、森の奥深くにあるし村の人も川にあまり近づかないから」

 

『半径四キロ圏内に多数の生体反応があります。その子供の言っている事は本当かと……』

 

「そうなんだ、取り敢えず真崎磬護だ。君の名前は?」

 

「李 奏、李書文の李に音を奏でるでそうって言うんだいい名前でしょ?」

 

ソウは子供らしい純粋な笑顔で名乗った。子供が名前を言っただけだがケイゴの脳裏にはあの姉御肌の幼馴染の笑顔が何故か浮かんでいた。

「ん?お兄さんどうしたの」

 

「ッな、何でもないさ。というか近くに村があるのかいそんなに野菜を背負ってどうしたの?」

 

「あ、畑から帰る途中にお兄さんを見つけて珍しいっと思ったら御神体がある方向に歩いて行ったから何するかわからないからついてきたんだ」

 

「御神体?」

 

「そう、ここら辺には鎌龍っていう龍神様の像があるんだ。ちなみに僕たちの村は鎌龍村っていうんだといっても普通の人は知らないし村の日も外部と関わろうとしないからあまり噂にもならないんだ」

 

「その御神体ってどこにあるのか知ってる?」

 

「昔、外から来た人が珍しくて持って行こうとして足の部分を欠けさせちゃってから教えないことにしてるんだ……」

 

そっかぁとケイゴは溢し脳内でユザレにサーチをかけるように頼んだ。その結果北に30メートル離れた崖の奥に闇の眷属の気配があると伝えてきた

 

『このまま、行ったら怪しまれるか……離れるふりして後でもう一度来よう』

 

「そっか、そんな事があったなら無理に見せて貰うのはやめる事にするよ。近くで休んでから他の場所で一夜を過ごすことにするよ」

 

「え、お兄さん外で寝るの⁉︎ここら辺には危ない動物はいないけど辛くないの?」

 

「そのまま寝るのは勿論大変だけど寝るところって案外簡単にできるし旅っていうのは辛いことや楽しいこともあるから面白いんだよ」

 

へぇ、とソウは変な物を見る様な顔をしていたが不審者を見る様な懐疑心ではなく仲のよい知人が奇行をしているのを眺めている様な優しい目をしていた。

数分他愛もない話をしてソウがそろそろ野菜を村に持って帰ると言い森の奥深くに行ったのを確認してからあたりの捜索を再び始めた。

ユザレの言った通りに進むと洞穴に何故か少し前に人が出入りしていた形跡のある場所についた。その洞穴に入ってみるとそこそこ広く、ある程度人の手が入っているのがわかる。

洞穴を道なりに進むと左腕がなく、確かに左脚のつま先に当たる部分が欠けている像があった。

その像は前に戦ったゴルザの様に腹から胸にかけて岩の様な体を持っており鎌龍の名の如く鎌の様な爪を持つ腕をした怪獣の石像があった。

 

「なぁ、これも古代の怪獣でいいんだよな?」

 

『はい、巨人像と同じく長い間持たせたり欠損がある場合は石化して周りの岩石や闇を取り込み再生させるところがあると考えられます』

 

「復活する前に壊すことはできるだろうけど壊しちまったらあの村のソウとかが悲しむのか……」

 

『誰か他の犠牲者が出てからは遅いのです。多少非道ですが壊しておくのが賢明かと……!?ケイゴ後ろッ‼︎』

 

「ッ何⁉︎ぐっ‼︎」

 

ケイゴは後ろから来た男に後頭部を殴られ一瞬で気絶してしまった、視界が暗くなるその一瞬巨像が少し嘲笑っている様に見えた。

目が覚め周りを見渡すと木製の柵と監視役と思われる大人二人が立っていた。

大人は柵の出入り口に立っておりもし出るとしてもその二人を倒さなければ脱出は厳しいのがわかる、それ以前にケイゴの腕と足には何か紐状のもので結ばれていてまずこれを解かなければならないという厳重な体制だった。

 

『腕輪は外されていない、バックは流石に回収されたか……さてと見えているだけでも二人の見張りこどっちかがやられたらその隙に応援を呼ばれるだろうしユザレ』

 

『はい、脱出経路ですね貴方が運ばれている時の道を記録済みで「脱出はしない」……す。運ばれた時に頭でも打ちましたか?それとも雑に運ばれた時の振動で脳にダメージが……狭い社会で過ごすのは良くないですね。それよりも貴方がもし戦えなくなったら幾ら倒せる存在とはいえ多数の犠牲が出るのですよ』

 

「そりゃあそう、だけどてかあとどれくらいで復活すると思う?」

 

『早いと明日の朝頃、遅くとも明後日には石化が解けるかと』

 

うーん、思ったより早いなぁとケイゴが溢したその時檻のドアを開けて覆面の男が入ってきた。

 

「なんだ?もう自由にしてくれるのかッグ⁉︎」

 

男は無言のままケイゴの首を持ち右腕を引いていた、そのまま引いた右腕でケイゴの腹を殴りつけた。

 

「ゴハァッ、ゲホッゲホッ、ハァー」

 

「何が目的だ」

 

冷たく無機質な声で男が質問してくる。

男は黒い色の服装で全身が隠れているが鍛えられているのがわかるほど筋骨隆々だった。

 

「吐かないのであれば拷問は続けるだけだが?」

 

「た、ただの旅行客で逸れただけだ」

 

「逸れたぁ?旅行客は全員パスポートと財布を持っている。それがない時点で貴様は旅行客ではない違うか?」

 

馬鹿そうに見えて証拠を元に推理されケイゴは鳩に豆鉄砲をくらわせたかの様な顔をした。

 

「見た目にあわねぇ……」

 

「……….フンッ‼︎」

 

ドゴッとまたケイゴの腹に若干さっきより重い一撃が入る。

「ガァッ⁉︎」

 

「煽って怒らせ冷静じゃなくして抜け出そうという魂胆か……良い線だが俺には通用せんからな。

さあ、選べお前の目的を吐くかまた血を吐くか」

 

フッとケイゴは鼻で笑い今度は顔面に拳が突き刺さった。殴られた勢いのまま牢獄の壁に激突し固い地面に崩れ落ちた。

 

李 奏side

 

「ただいま戻りました、ってどうしたのお父さん?」

 

「何だ奏か……神託が来たんだよ。奏を、村の外にいた奴が持ってきた物と一緒に捧げろってッ」

 

「…‥そう、何だ。村の人はなんて?」

 

「『光栄なことじゃないか、鎌龍様に命を捧げてしかもそれで鎌龍様がお力を取り戻すらしいよかったな‼︎』って……ふざけんなッ‼︎こんな村に外のものが入るのは誰のおかげだと思っている!

奏だ、奏のおかげでこんなど田舎の村なのに医療品や嗜好品が少数でも手に入るというのに……クソがッ」

 

「……ねえ、お父さん。僕が、僕がさ。鎌龍様に捧げられれば村の人は幸せになる?」

 

「………まぁ、そうだろう。ここは狂信者達の村だから村の人達は皆お前の犠牲を当たり前だと思ってる、そんな奴らの為に大切な娘を渡せるわけないだろ」

 

「お父さん‼︎そんな事したら異端審問されて殺されちゃうよ‼︎」

 

「それでもいい、これ以上奪われてたまるか」

 

「お父さん……もう行くね」

 

「ま、待て!行くな」

 

ガシッと腕を掴んで出ていくのを止める。だが、少女の苦笑が亡くなった妻にそっくりだった。

あの時手を掴めず喪ってしまった彼女の面影が少女にあった。次第に掴む力が弱くなり手をダランとさせ後ろを向く。

 

「そうだったな、君も奏も誰かの為に動ける人だったか……俺には勿体無さ過ぎるな。引き止めて悪かった、奏は奏のやりたいことの為に頑張れ」

と言い残し実際の年齢よりくたびれた男は座り込んだ。

 

「行ってきます」

 

「……ああ、いってらっしゃい」

 


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