俺氏、ループ系TS聖女様をいつの間にかメス堕ちさせていた模様   作:弐目

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やや品のないオチです。
下ネタが苦手な方はご注意ください。












復活の○○

 

 

 ――今日は、朝から身体の調子が良い。

 

 治療が進み、なんとなくだが予感があった。

 最近では珍しい事だが、一人で目を覚ますとベッドから身を起こし、体調をチェックする。

 

 うむ、大分良好――治ってるな。

 流石に完治とはいかないが、あと一息、といった処か。

 

 あんまり自覚なかったけど、()の戦争終盤といい、戻ってきてからの今までといい、やっぱ調子は良くなかったんやなぁ。

 健康体に近づいてきた今なら分かる。以前の俺は相当にガタガタだった。

 今思えば、再構成された肉体は味覚がほぼ完全に回復した状態だったのは幸いだったな。食が進まないと治療も進まないのは道理ってもんだ。

 

 うん……一区切りついた、というべきか。

 

 自身の状態を()()し終えて、しばし考える。

 結論は直ぐに出た。

 

 そうだ、お祝いに行こう。

 

 そうと決まれば、早速シアとリアに会いに行くか。

 完治祝いとはまた別だが、二人あっての快癒だからね。時間空いてるなら一緒に飲みに繰り出そう。

 あまりハメを外すのは良くないだろうが、こんな日くらいは外出して祝ってもえぇやろ。

 

 そう思い立って、意気揚々と寝床から飛び出すと部屋の窓を開け放ち、新鮮な朝の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――今日に限って、二人とも、お出掛けできませんでしたァ!!

 

 盛大に肩透かしを食った気分で、トボトボと一人、街を歩く。

 治療に注力してくれたのはいいが、そのせいで少し溜まり気味になっていたお仕事を今日中に一気に片付けるつもりらしい。

 

 そら邪魔できんわ。原因俺やし。

 

 いっそ隊長ちゃんや副官ちゃんを誘おうかとも一瞬考えたが――すぐに却下した。

 治療の功労者が本日は仕事漬けだし、今日予定していた祝いの趣旨は、隊長ちゃん達にはそぐわないだろうし。

 

 今日はやめておいて、後日でいいか。一人でお祝いとかソロのクリスマスパーティーの如き辛さだし。

 とりあえず、普通に街をブラつく感じでいいかな。と、俺は《武器掛け棚亭(ウェポンズ・ラック)》へと足を伸ばすことにした。

 

 

 

 

 

「おう、いつぞやの兄ちゃんじゃねぇか。真っ昼間っから飲みに来たのか?」

 

 扉を押し開けて店に入ると、出迎えたのは前に俺に絡んできたスキンヘッドのおっさんだった。

 とはいえ、派手に喧嘩したら後は引きずらないのは冒険者の流儀らしいので、お互いに含むものは無い。

 まぁ、そのつもりではあったんだけど……無理そうだなコレ。

 質問に答えながら、店内を見渡す。

 

 おっさんは脚の無い椅子を複数抱えていて、その背後に広がる店内は――前に俺が乱闘騒ぎを起こした時と同等か、それ以上にぶっ壊れていた。

 

 えぇ……この間、内装直ったばっかりじゃなかったっけ。また喧嘩で壊れたの?

 

「おう。昨日は丁度、高ランクのパーティー同士が同席してなぁ……あんまり仲の良い連中じゃなかったからよぅ」

 

 よりにもよって高ランク冒険者が複数で乱闘したんかい。店が倒壊しなかったのは奇跡だな。

 

「度が過ぎたら店主(マスター)から出禁食らっちまうからな。その辺は連中も塩梅を弁えてたんだろうさ」

 

 椅子というより折れた薪みたいになってる木切れを、店の片隅に纏めると嘆息しながら肩をぐるぐると回すスキンヘッド。

 

店主(マスター)も元は冒険者らしくてよぉ。現役引退したのは大分前だっつーのに、これまた腕っぷしが強くてなぁ……ここらで冒険者やってる奴は、店主(マスター)には頭の上がらん奴ばっかりよ」

 

 なるほど。如何にも古強者って感じの貫禄あるし、実際立ち振舞いに隙は無いし。元はさぞ腕利きの冒険者だったんやろな。

 俺は黙々と店内を片付ける巌の様な背中に視線を向けると、得心がいったと頷いた。

 うん。でもその頭の上がらない人のお店を破壊し過ぎじゃね?

 

 酒と喧嘩は街での冒険者のスタンダートではあるんだろうが・・・・・・多いときは月イチのペースで店が悲劇的ビフォーアフターされてるって相当やぞ。

 なんということをしてくれたのでしょう。雑然としながらも活気に溢れていた酒場が、みるも無惨な廃墟のような有り様に!

 ――いうても、一回は俺も関わってるのでそんなに強くは言えないんですけど。けど。

 

「まぁ、そんな訳だからよ。今日はここで飲むのは諦めて別の場所を探した方がいいぜ? 今回、兄ちゃんは喧嘩に関わってねぇし、片付けを手伝う義務もねぇだろ?」

 

 モップを掴んで柄に顎を乗せると、恐面のおっさんは、俺達ぁ思いっきり混ざっちまったから暫くは片付け要員よ。と愚痴のようにこぼした。

 ご愁傷さまと言っておこう――しかし、面子は集まらんし、出かけた先での店も修繕中だし、今日は日和が悪いのかねぇ。

 スキンヘッドに張り合う訳ではないが、俺も愚痴混じりで盛大に嘆息してしまう。

 

「なんでぇ、今日は予定でもあったのかい?」

 

 おうともさ。今日はちょっとした快気祝い的なつもりだったのよ――人も場所も決まらんで諦めたけどね。

 大雑把に、以前は体調がよろしくなかった事と、大分復調したので軽くお祝いでもしようと思った事を説明すると、いつの間にやら片付けの手を止めて集まっていた冒険者連中から、揃って同情的な視線を向けられてしまった。

 

「そうかぁ、アンタも苦労してんだなぁ――若いのに」

「聖女様の従者ってのは正直羨ましいが……戦争中はさぞ激務だったんだろうな」

「一杯奢ってやりてぇ処だが、店がこんなんだしなぁ」

「そんな事よりNINJYUTU教えてくれない?」

 

 なにこれ唐突に暖かい(困惑

 重要な部分はばっさりカットして、適当に経緯を語っただけなんだが、彼らの琴線に触れる部分があったらしい。

 正確には俺の立場は従者ではなく傭兵なんだが……まぁ、周囲からみたらあんまり変わらんのだろ。戦争が終わった今は、特にね。

 あと最後の奴、俺はNINJAじゃねぇっつってんだろ。

 

 

 

「お前ら、半分は捌けていいぞ――そこの坊主に良い店でも紹介してやれ」

 

 

 

 やたら低くて渋い声で言ってのけたのは、店主(マスター)だった。

 深い皺と共に古い傷跡が無数に刻まれている、如何にも歴戦の強者と言った顔は仏頂面で固定されたままだったが、不機嫌というよりはこれがデフォルトっぽい。

 俺達が話し込んでいる間に破損した木材をさっさと片付け終えた店主(マスター)は、両手の埃を払いながらギョロリと俺に眼を向けた。

 

「坊主、お前はミラの弟弟子だな――あまりアレに心配をかけてやるなよ」

 

 うぇ?

 店主(マスター)の口から予想外も予想外な名前が出てきた。マジか、ミラ婆ちゃんと知り合いだったんか。

 素でびっくりしてる俺に、鼻を鳴らしながら「古馴染みだ」とだけ答えると、片付けに戻ってしまう。

 

 元冒険者が、聖教会の御意見番と古馴染みかー。なんか面白いエピソードがありそうだし、今度、機会があったらもっと話をしてみたいもんだ。

 奇妙な繋がりの発見に感心していると、冒険者の一人が「それなら」と手を挙げた。

 

「このあと行こうと思ってた店があるんだが、一緒にどうだ?」

 

 紹介だけかと思ったが、一緒に飲もうとまで言われるとはちょっと意外。乱闘の一件以来、多少認められた感はあったけど酒の席に誘われる程とは思ってなかった。

 俺はよっぽど意外そうな顔をしていたのか、声を挙げた男は頭をかきながらだってなぁ……と続ける。

 

店主(マスター)と関わりがあるって時点で、そう悪い奴じゃないってのは保証されたようなもんだし――聖女様の話とか聞いてみてぇし」

 

 あ、テメェ自分ばっかきたねぇぞ! という声が上がって納得がいく。

 店主(マスター)の信頼度もそうだが、シアとリアの人気もあってのお誘いね。従者と思われてる俺なら、色々な聖女様のエピソードを聞けるかも、という感じか。

 目の前のいかつい連中が夢想する金銀の聖女様像からは斜め45度にぶっ飛んだ話ばっかりなんだが……夢を壊さない範囲で当たり障りの無い話くらいなら、まぁいいか。

 

 聖女様方の話を聞かせてくれるなら、奢るぜ。と期待に目を輝かせて言う男共――いや、女も混ざってるけど――に、奢りという言葉にも後押しされ、俺はこっくりと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そして、翌日。

 

 

 

 

 

 朝も早よから、俺は4人の女傑に囲まれて中庭に居る。

 

「えー、それではこれより、裁判を始めます」

 

 右には厳粛な面持ち――とは程遠い、微妙にやる気の無さそうな声で号を発する副官ちゃん。

 その隣では、リアがそわそわと何度も手を組み直している。珍しく、不機嫌そうな、何か言いたそうな表情だ。

 左には隊長ちゃん。こっちは笑顔ではあるが……纏う雰囲気からしてご機嫌とは程遠いのは一目で分かる。親指で刀の鍔を押したり戻したりして音鳴らすの怖いのでやめてください(白目

 

 そして正面。

 

 腕を組んで仁王立ちしたシアが、隊長ちゃんと同質の笑顔を浮かべながら俺を()()()()()()()

 

 ここだけ戦力の過密が酷すぎる。邪神軍の残党共の殲滅でも始めるの?

 

 

 

「――さて、極刑に処される覚悟は出来たか?」

 

 

 

 おいちょっと待って。この状況にも物申したいけど、ちょっと待って。

 始めるっていうたばっかりやん、なんで極刑って結論がもう出てんねん。

 

「被告人は許可があるまで口を開くな。殊この場において、お前に発言権なんてものは存在しない」

 

 辛辣ぅ!!

 抑揚に欠けた声で淡々と述べるシアが放つ空気に、勝手にお口がチャックされてしまう。

 ちらりと周囲に視線を巡らせれば、他の皆も程度の差こそあれ、概ね同じ意見っぽい。いや、副官ちゃんだけは割とどうでも良さげだけど。

 

 大聖殿内部、中庭という名の修練場にて。

 石畳の上に正座させられて後ろ手に縛られ、膝の上に重石を乗せられた俺は、唯一まともに動かせる首を上に向けて天を仰いだ。

 

 ――どうしてこうなった。

 

 最近、この台詞を吐き出す回数が増えてる気がする(白目

 

「ではまず、罪状のせつめーからしまーす」

 

 クッッッソどうでもいい。といった様子を隠しもせず、副官ちゃんが今回の謎の裁判()とやらの内容が書かれているらしき紙っぺらを読み上げる。

 

「まず、昨日。アンタは一人で街に出掛け、《武器掛け棚亭(ウェポンズ・ラック)》に入店。その後、中にいた冒険者と一緒に出掛けた先が()()()()だった事は既に判明してるわ」

 

 娼館という単語が出た瞬間に、他の三人から実戦時みたいな物騒な空気が放出される。近辺の木々に止まっていた小鳥達が凄い勢いで空に一斉に飛び立った。

 あ、何匹か逃げ遅れて地面に落っこちた。遠巻きに眺めてる他の連中、暇なら拾ったれよ。

 半ば現実逃避気味にそんな事を考えていると、副官ちゃんがめんどくせーといった様子で紙切れをひらひらと振った。

 

「たいちょー、もう面倒だから有罪で良くないですか? わたし朝御飯まだなんです」

「ごめんね。もうちょっと我慢してね、アンナちゃん――刑を執行するにしても、手順は必要でしょう?」

 

 おいぃ、それは流石に異議を申し立てるぞ! 今はっきりと面倒って言ったやろ!?

 あと隊長ちゃんが怖い。鍔を押し上げてちょっと刀身だしたまま笑顔で応えないで下さい。

 

「隊長がそう言うならまぁ……それじゃ、被告人は言いたい事があるなら言ってみなさい」

 

 空きっ腹らしいお腹を擦りながら此方に向けて顎をしゃくる副官ちゃんに、俺はやっと自己弁護の機会が回ってきたと力強く頷く。

 

 ――はい! そもそも昨日行った店が娼館だって知りませんでした!

 

「アンナ、重石を追加しろ」

「あらほらさっさー」

 

 間髪入れずに告げられたシアの言葉に、副官ちゃんが気の抜けた声で応じて、俺の膝の上に石板を追加する。なんでや(白目

 

「今の流れでその台詞を信じる奴がいるわけねーだろうが!」

 

 ビシィ! っと俺を指差して声を荒げるシアの迫力に思わずハイスイマセンと言いたくなるが、ここで認めてしまってはホントに極刑になりそうなので、頑張って抗弁する。

 

 いや、マジだって。何年か前にお前と飲みにいった店やぞ! あのときだって娼館って知らなかったし、そのまま帰って来たじゃないですか! 

 

 これはマジだ。冒険者連中に『イイトコ』紹介してやるって言われてホイホイ着いていった先は、()の大戦が激化する手前くらいの時期に、二人で突撃した綺麗なおねえちゃん達がいる店だったのだ。

 

 

 

 その直前に起こった大規模な都市防衛戦は、シアにとっての重要な起点――ループする毎に少なくない数の知り合いをどうやっても喪う最初の難所だったらしく、どれだけそれを少なく出来るか、と言うのが今まで必死に繰り返して得た結論だったらしいのだが……。

 

 ループに同道してきてそう時間も経っておらず、心身共に好調だった俺は張り切った。ここが最初のコイツの魂が陰る場所だというなら、まずはここからだ、と。それはもう張り切った。

 

 鎧ちゃんを初手から完全起動して敵陣に先行してカッ飛んでいくと、魔力探知かけて強そうな奴を強襲しては首をスパーンして走り抜け、別の強そうな奴をスパーンする。

 途中、騎士っぽい名乗りを挙げて出てきた信奉者の幹部らしき奴を、名乗りを無視してうるせぇ死ね(首スパーン)してそのまま勢いに乗って首狩りを続行。

 ある程度続けていると囲まれてヤバそうになったので、敵の頭を足場にして踏み砕きながらぴょんぴょん跳び移って、そのまま包囲網を突破して。

 

 そのまま背中から魔力噴射しながら華麗な短距離走フォームで追撃をブッちぎってスタコラさっさと逃げ出した。

 そんで防衛陣を敷いていた都市に戻ってきて――そこで延々と完全起動してた反動で失血死しそうになってぶっ倒れたのだ。

 

 テンションに任せて無茶をした感はあったが、負荷分配機能があっても完全起動してれば継戦能力に難があるというのを体感できたので、結果的には悪くない――と思っていたのだが、後からシアとリアに鬼気迫る様子でガチ説教されたのは未だに覚えている。

 

 曰く、「皆が無事だったのに、お前がいきなり死にそうになってどうするんだ馬鹿」との事だ。

 

 どうやら、敵方の指揮官級は大体俺がチョンパしていたらしく、特に軍勢を率いていた総大将やその周辺は根刮ぎしていた様で、辛うじて集団の体を為していた烏合の衆を蹴散らす形で、防衛戦は大勝に終わった。

 犠牲者も流石にゼロではないが、殆どおらず、少なくともシアの知己は全員無事だったと知って、俺も第一段階の完全クリアに小躍りしたくなったものだ。

 

 もう防衛軍と都市は沸きに沸いたね。『聖女のもたらした奇跡の勝利』だって。

 凱旋パレードなんて派手なことする余裕は当時の人類側には無かったが、それでも聖都に戻ってきたときは多くの喝采と明るい称賛の声に街中が沸き立っていた。

 なんかシアが俺の事を功労者として押しだそうとしてたけど、それは却下した。聖女様の奇跡に因ってもたらされた大勝って方が聞こえも見映えも良いしね。

 俺が実際に敵の総大将っぽいのを獲ったときにやった方法といえば、名乗りガン無視からの首チョンパ。

 後は、その首がやたら頑丈な魔装の兜を被ってたもんで、頭飾りを掴んでフレイルの如く振り回し、邪神の軍勢の癖に慕われていたっぽい大将の首を打ち落とすことも出来ず、躊躇いで動きが鈍かった他の将らしき連中の頭を兜(中身入り)で爆砕して廻った。

 人類側が聞いたら士気が下がりそうな畜生戦法なので仕方ないね(残当

 

 

 

 ――うん、話が逸れた。

 兎に角、防衛戦が終わってからのシアは……もう凄いテンションが高かった。

 はしゃいで、喜んで、俺の部屋に突撃してきて、此方の首に腕を引っ掻けて上機嫌に言ったのだ。

 

「よし、良いトコに飲みに行くぞ!」ってね。

 

 そのまま引きずられる様にして連れていかれたのが、件の高級娼館――と、先刻知った店だった。

 お店では、シアは大人気だったわ。

 風俗関連の職業は、俺達の世界ほど下げた眼で見られたりはしてないが……それでも偏見などが無い訳じゃない。

 そういった類いの店でも「日々、戦う者達の心の潤いになっている立派な職業だろ」と公言していた金色の聖女様は、それはもう下にも置かぬ扱いでちやほやされていた。

 

 なんか立派な事言ってる風にしとるが――お前これアレやろ、中身男だから綺麗なおねーちゃん達に囲まれてウハウハできるのを喜んでるだけやろ。

 違うと言うなら肉体的には同性なのを利用して、おねーちゃん達のおっぱいの間でパスされているその締まりの無い顔をどうにかしろ。気持ちは分かるが。おっぱいおっぱい。

 視察に来て下さった聖女様に同伴してきた護衛さん、みたいな感じで俺も割と丁寧な扱いを受けつつ、二人でハメを外して痛飲したのは懐かしい思い出だ。

 まぁ、普段はあそこまではっちゃけないので、よっぽど嬉しかったんだろう。

 

 

 

 以上の事柄を要点をつまんで主張すると、シア以外の三人から、呆れたような視線が当人に注がれる。

 リアが「あぁ……あのときの……」と呟けば、

 副官ちゃんに至っては「おぉ…もぅ……アンタ馬鹿なの?」と普通にストレートな罵倒が飛び出す。

 

「うぐっ……し、仕方ないだろ! あのときはほんっと嬉しかったし……当時は信頼できるダチと飲みに行く、って感じだったし……クソッ、あの頃のオレを殴りたい……!」

 

 一転して矢面に立たされたシアが、頭を抱えて悔恨の表情で呻く。

 それを横目で見ながら、隊長ちゃんが平坦な口調で話を差し戻した。

 

「……まぁ、そこの残念聖女の自業自得な話はいいんです――それより先輩」

 

 ずいっと、俺に顔を近づけて

 

「聞いていると、先輩も相応にその店で()()()()様ですが、今回はその先にまで及んでいない、という確証が欲しいんですが」

 

 しょ、証拠っスか。

 参ったぞ――口でどういっても悪魔の証明にしかならんし……いや、あるにはあるんだが、()()()()()()()()()()()()()()()悩むし、困る。

 

 口ごもっていると、リアがそぉっと寄ってきて、正座させられてる俺の前にしゃがみ込んで上目使いで見上げてきた。

 

「――あの、にぃちゃん?」

 

 ……おぉう? 最初から何か言いたそうにしとったがなんやろか。

 暫しの間、見つめ合うとやがてリアはちょっと目を逸らして、言い難そうにポソリ、と呟いた。

 

「……その、やっぱりにぃちゃんも……おっぱいが大きい女の人の方がいいの?」

 

 おい、カメラ止めろ(錯乱

 誰だぁ!? うちの(おとうと)分に変な事吹き込んだ奴ぁ! 鎧ちゃんフル起動でお話してやるから出てこいやぁオラァ!!

 あんまりにも予想外な台詞がリアの口から飛び出して発狂した俺は、虚空に向かって雄叫びを上げる。

 下手人がいたら――あまつさえソイツが男だったりしたら、俺はそいつの腹をかっさばいて腸で縄跳びをしてやる自信しか無い。

 

 叫んだ後に、首を巡らせて皆の同意を得ようと顔を見ると――何故か全員、興味あります! といった感じで俺の顔を見返していた。

 ……アルェー!? ちょっと待って、コレ俺が答えなきゃダメな流れ!?

 

 4対の視線に突き刺され、逃げ場の無い状況に嫌な汗が吹き出す。

 いや、これ何て答えてもダメな質問じゃない? 大丈夫? 終わった後で俺生きてる?

 再度皆を見渡すが……質問のスルーは無理そう。(女)神は死んだ(白目

 

 何を言っても地獄なら……せめて正直に言うか! 虚偽では無い分ワンチャンあるかもしれん。

 

 リアさんや……まず大前提として……おっぱいに貴賤は無い!

 

「」

 

 目を点にして絶句する妹分に、俺は力強く持論を唱える。

 

 ちいさくとも大きくても、おっぱいというだけでそれは尊いものなのです。はい。

 ――だが! だがしかし! である!

 大きなおっぱいが重力に引かれる様、男の魂は大きなおっぱいに惹かれる様に出来ているのもまた事実……!

 例えちっぱいが好きと公言している男であっても、林檎が樹から落ちるのと同じ様に、そこにでっぱいがあるなら視線が向いてしまうのは……摂理っ……! 圧倒的な現実っ……! 否、法則と言い換えても良いっ……!

 

「アンナ、重石を追加しろ」

「アンナちゃん、重石を減らしてあげて」

「分かりました、隊長!」

 

 俺が語り終えると同時に、シアと隊長ちゃんからオーダーが掛かり、副官ちゃんが即答して俺の膝上から石板を一枚取り除く。

 

「おいコラ、アンナ! お前どっちの味方だよ!」

「愚問ね、私はいつでも隊長の味方よ!」

 

 一瞬と掛からずに切り捨てたシアに悪びれもせず、副官ちゃんは「隊長の為なら陛下のおヒゲだって毟ってみせらぁ!」と胸を張って断言する。皇帝は泣いて良い。

 

「ちぃッ、アンナを審判役にしたのは人選ミスだったか……!」

 

 これだから富める丘の連中は……! と歯軋りしてシアが二人の胸部を睨み付けている傍らで、リアが自身の胸元をふにふにと押しながら「今からマッサージすれば望みはあるかなぁ……」なんて呟いている。

 

 本来なら目を瞑って耳を塞いで、後に訪れる自身への惨劇を回避するであろう話題も、後ろ手に縛られた今では黙って聞き入れるしかない(白目

 心を無にしろ、と己に念じながら、一連の会話を努めて聞かなかったフリをして平静を保つ。

 知ってるよ、この手の話題に迂闊に口出すと、きけんがあぶないんだ、おれはくわしいんだ。

 

「――えぇい、もういい! じっくり聞き取りしてやろうと思ったけど・・・・・・本題にいくぞ!」

 

 透明な心と表情を保って四人の会話を右から左に受け流していると、シアが焦れたように叫んで俺の顔を両手でぐわしっ! と掴んで自身の顔を近づけ、迫真の表情で凄んだ。

 

「単刀直入に聞いてやる――ヤったのか?」

 

 額がくっつく程の距離で問われた質問は、ひでぇ内容だった。

 えぇ……と思わず呟いた俺に、シアは何故か必死さすら感じる様子で怒声をあげる。

 

「すっとぼけた反応してんじゃねー! 娼館に行って、他の女とシたのか聞いてんだ!!」

 

 掴んだまま俺の頭を激しく揺さぶって、シアは頭に血が上ったままに言葉を続ける。

 

「ざっけんな! そんなモン利用しなくても、オレが……オレがいるだろうが! ()()()()()()()()、何処の馬の骨とも知れない奴に先を越されるなんてあってたまるか!!」

 

 興奮か、怒りか。俺を揺さぶって喚くシアの顔は赤く紅潮し、瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。

 

 表情は見てとれるが、生憎何いってるかは耳に入ってこない――人の頭をガチでシェイクしすぎなんだよォ! オップ、ちょ、やめ朝飯食って無いから胃液でちゃオブッフ。

 

 ヒートアップして俺をがっくんがっくん揺さぶり続けるシアに、耳から脳味噌が飛び出しそうな危惧を抱いた俺は相手の言うことも聞こえないままに必死に身の潔白を訴える。

 

 ヤってねーって! 酒だけ飲んで帰ってきたって!

 

「ッ! 本当なんだろうな! 嘘だったら本気で怒るからな!」

 

 変わらず揺さぶられながら目眩がしてきた視界の中で、シアが涙目で歯を食いしばってるのが見えて―― 

 

 

 

 

 

 ――嘘じゃねーって! なんぼ()()()()っていってもまだ実戦使用出来るまで回復しとらんわっ!!

 

 

 

 

 

 咄嗟に叫び返してしまった。

 

「……はぇ?」

「え」

「――?!?!?」

「んん?」

 

 四者四様の、どこか間の抜けたリアクションが返ってくる。

 

 オッフ……つい言ってしまった。元は同性だったシアとリアはともかく、他の二人がやべぇ。セクハラにならないよねこれ?

 

「……え、は? え、と……え?」

 

 先ほどまでの激情がどっかにすっぽ抜けたように――顔だけは紅潮したままだったが――呆けた様子で俺をまじまじと見つめてくるシア。

 

「……え……か、回春祝い?」

 

 おう。

 

「……誰の?」

 

 俺です。

 

 もうぶっちゃけてしまったので、諦めて普通にカミングアウトする。

 

 端的に言ってしまえば、治療が進んだお陰で長らくストライキを起こしていた俺のジョンが通常勤務を開始しました。

 これに関してはまぁ、しゃーない。()の割と初期の方からの症状だったので、再構成されて新調された身体でも影響があったままだったんだろう。

 

 鎧ちゃんの負荷分配機能は、保持すべき優先事項の為に肉体に掛かった負担や負傷を別の箇所に転化させる――所謂《傷移しの呪法》に近い。

 当然、戦闘機能の保持が最優先されるので、戦力の低下を招く様な不具合が身体に生じた場合、戦闘に関係の薄い箇所へとその負担が転化され、代わりにその部位機能が削ぎ落とされていく。

 純粋な戦闘力の維持という名目だけで判断すれば、生殖機能なんてほぼ真っ先に転化の対象だからね、仕方ないね。

 

 昨日の朝は懐かしい感覚を感じて、思わず感動したものだ。朝の『生理現象』なんて久々でした。

 

 という訳で、そもそもヤろうにも無理なんです。なんせ辛うじて朝だ「ぅぴゃあああああああああああああああああああああああ!?!!?」

 

 訥々と語っていた処で、シアが聞いた事も無いカン高い奇声をあげて飛びすざった。

 

「ば、ばばば馬鹿野郎、朝っぱらからなんて話してんだこのアホーーーーッ!!」

 

 紅潮した顔からブワっと汗が噴き出し、滅茶苦茶挙動不審になりながら視線がせわしなく上下左右に泳ぐ。

 はは。もうセクハラ案件なのは確定なので、今さら恐れるものはありませんよ(諦観

 にしても、お前まで下ネタにそんな反応なのは予想外やなぁ。以前は何度か馬鹿話で盛り上がった事もあるだろうに。

 

「う、うるさい! 誰がいつキョドってるってんだよいつだよ証拠みせてみろよ勝つぞ! オレは!」

 

 おーい、落ち着けー、何言ってるか全然分からんぞ。

 

「……こ……!」

 

 んん? こ? 

 

「これで勝ったと思うなよいつかみてろこのアホ野郎ーーーーッ!」

 

 何故か負け惜しみの如き捨て台詞を吐きながら、シアが中庭から走り去って行った。

 いや勝ったって何にやねん――あ、すっ転んだ。

 なんだかよく分からんが、ひどく動揺しているらしいシアは、中庭から渡り廊下に入る段差で蹴躓いて派手に顔面から転倒していた。

 遠巻きにしていたギャラリーが心配そうに近づいてるが……おぉ、すげー勢いで立ち上がってまた走り出した。

 その背が見えなくなるまでなんとなく見送ると――残った三人に声を掛ける。

 

 えーと……そんな訳でワタクシの無罪は証明されたかなーとか思うんですが……如何でしょうお嬢さん方。

 じゃあ次はセクハラ発言についてだ、と言われないかビクビクしてたんだが、隊長ちゃんは極めて冷静な様子でふーっと深く息を吐いた。

 

「そう、ですね。変な疑いを掛けて申し訳ありませんでした、先輩」

 

 解散して、朝食にしましょう。と続けると隊長ちゃんはシアが走り去った方向――渡り廊下に向けて歩き出す……ナンバ歩きで。

 ギクシャクと右手右足、左手左足を同時に出しながら歩いていた彼女は、そのまま渡り廊下の段差を丁寧に乗り越え――

 ――腰にぶら下げた剣の鞘がガンッ!と手摺にぶつかって引っ掛かり、そのままシアと同じように顔から床にダイブした。

 

 おーい、すげー良い音したけど大丈夫かー?

 

 ちょっと心配になるレベルで派手に顔面からいったので、正座して身動きの取れない俺は、倒れたままの隊長ちゃんへと声を張り上げる。

 うぉ、声をかけたら一瞬で跳ね起きた――さすが人外級の前衛。床の方が凹んどる。

 

「――大丈夫です! 平気です! ぜんぜん問題ありません! はい、わたしならいつでも大丈夫ですから!」

 

 シアに続いて芸人の天丼ネタみたいな転び方をしたのがよっぽど恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしてこちらに声を張り上げると、隊長ちゃんは普通の歩き方に戻って今度こそ渡り廊下の奥へと消えていった。

 

 で、残る二人なんだが。

 

 リアが副官ちゃんに抱きついてそのお胸に顔を埋めたまま、唸り声をあげていた。

 

「うぅ~……」

 

 ちらっと俺を見て、また直ぐに顔をうずめてしまう。

 オッフ……そういえばこんな露骨な下ネタはリアの前では話したことなかったな……す、すまんな。嫌だったよな? 今度から気を付けるから……。

 

「いや、多分違うと思うけど」

 

 リアの頭を撫でながら、副官ちゃんが呆れた様な口調で呟く。

 

「まぁ、とにかく。これで裁判も終わりって事でいいんじゃない? やっと朝ご飯食べにいけるわ」

 

 おう、そうか。無事、身の潔白を証明できて何よりだ。

 

「代わりに私は、朝からひっどい内容の話を聞かされるハメになったけどね」

 

 それに関してはまっこと申し訳ありません。いやホントに。

 正座で固定されたまま、平身低頭で謝る俺に、副官ちゃんはリアを撫で続けたまま肩を竦めた。

 

「結果的には無罪だったし、アンタも今回は災難だったわね――私もいい加減、食堂に行くとするわ」

 

 アリア様も、朝ご飯たべに行きましょう? と優しくアリアの肩を抱いて、二人は仲良く並んで歩き出す。

 二人とも綺麗な銀髪なので、その光景は、まるで本物の姉妹の様――おーい、シアさんやーぃ、姉力で副官ちゃんに負けとるぞー。

 そのまま歩き去るかと思われたが、数歩進んで副官ちゃんは歩みを止め、ちょっとだけこっちを振り返った。

 

「うん、まぁ――一応、おめでとうとは言っておいてあげる」

 

 あ、はい。なんかスイマセン。ありがとうございます。

 

 微かに頬を赤らめてぶっきらぼうに告げる副官ちゃんに、微妙に気恥ずかしい心地を味わいながら俺は返答した。

 そのまま二人を見送り、なんとか穏便に終わったことに安堵のため息を漏らす。

 

 あー……何事も無く終わって良かった。

 

 この手のパターンって、大体無事に終わらないからね。肩の力が抜けたわ。

 やれやれ、なんてこぼしながら、俺も朝飯を食いにいこうかと考え――。

 

 

 

 ――あれ、俺ひょっとしてこのまま?

 

 

 

 人気の無くなった中庭で、自分が拘束正座のままだということを思い出して白目を剥いたのだった。

 

 どうしてこうなった(天丼

 

 

 

 

 








(悲報)主人公、未だ童○(朗報?)

レティシアさん

あれだけ啖呵切っておいて、実はパンツすら下ろせてない糞雑魚ナメクジであることが判明。
きっと後で隊長ちゃんあたりに死ぬほど煽られる。


ミヤコさん

色々と取り乱したが、総合的にみると自分にとって得になる事ばっかりだった。やったぜ、とガッツポーズ。


アリアさん

こっそりとバストアップ体操を始める。
現時点でも姉よりは若干マシなので望みはあるかもしれない。


アンナさん

朝から疲れた。朝飯くらい落ち着いて食わせろ。




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