ハイスクールD×D〜転生して作る物語〜   作:傘理

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六話

時が止まった。

そう認識する前に一方通行(アクセラレータ)は電極のスイッチを入れた。

 

「一方通行。気づいていたか?」

 

アザゼルが聞いてくる。

 

「……失敗した」

 

「何がだ?」

 

黒いローブを着た魔術師達が窓の外にいるのを確認しながら一方通行は呟く。

 

「会談が始まってから奴らの視線には気づいてたが、まさか時を止めて襲撃してくるとは思わなかったぜ」

 

「恐らくはあの吸血鬼ハーフの……おっと、赤龍帝の復活だ」

 

アザゼルの言葉で辺りを見回してみると、動いているものと止まっているものに分かれている。トップ陣営、グレイフィア、ヴァーリ、そして。

 

「眷属で動けるのは私とイッセーと、祐斗、ゼノヴィアだけのようね」

 

リアスの言うように、グレモリー眷属も動いている者がいる。

 

「イッセーは赤龍帝を宿す者、祐斗は禁 手(バランスブレイカー)に至り、イレギュラーな聖魔剣を持っているから無事なのかしら、ゼノヴィアは直前にデュランダルを発動させたのね」

 

ゼノヴィアは持っていたデュランダルを空間の歪みに戻す。

 

「時間停止の感覚は体で覚えた。停止させられる寸前にデュランダルを発動させて盾に使えば防げると思ったのだけれど、正解だった」

 

「何があったんですか?」

 

「テロだよ」

 

一誠の問いにアザゼルが答える。

 

「外、見てみろよ」

 

アザゼルに言われ窓の方に近づた瞬間、新校舎が揺れ閃光が広がる。

 

「攻撃を受けているのさ。いつの時代も、和平を結ぼうとすると必ず邪魔が入る」

 

アザゼルが指をさす先には魔術師達がこちらへ魔力の弾に似た攻撃を放っている。

 

「一応、俺とサーゼクスとミカエルで強力無比な防壁結界を展開して攻撃を防いでいるからな。おかげでここから出られないが……」

 

暫く黙っていた一方通行がアザゼルに問いかける。

 

「時間が停止したのはグレモリー眷属のハーフヴァンパイアの力か?」

 

「なんだ、知っていたのか。恐らく、力を譲渡できる神 器(セイクリッドギア)か魔術でそいつの神器を強制的に禁手状態としたんだろうな。一時的なものだろうが、まさか視界に写したものの内部にいる者にまで効果を及ぼすとは……」

 

リアスはそれを聞いて紅いオーラをほとばしらせる。

 

「ギャスパーは旧校舎でテロリストの武器にされている……。私のかわいい下僕が会談襲撃の戦力にされているなんて……ッ!これほど、侮辱される行為もないわッ!」

 

アザゼルが手を窓に向ける。すると空から無数の光の槍が雨のように降り注ぐ。

テロリスト達は防御障壁を展開するが、光の槍はそれを難なく貫き魔術師達を一掃していく。

 

「とにかく、今はここから好きに動くことは出来ない、かといって、何もしないわけにはいかない。そこでまずはテロリストの活動拠点となっている旧校舎からギャスパーくんを奪い返すのが目的となるね」

 

サーゼクスがそう言うと、

 

「お兄様、私が行きますわ。ギャスパーは私の下僕です。私が責任を持って奪い返してきます」

 

強い意志を瞳に乗せてリアスが進言する。サーゼクスはふっと笑い。

 

「言うと思っていたよ、妹の性格くらい把握している。

だが、旧校舎までどうやって行く気だい?」

 

自分達がいる新校舎の外は魔術師達が大量にいる。通常の転移では魔法に阻まれてしまう。

 

「旧校舎ーー根城の部室には未使用の『戦車』の駒を保管していますわ」

 

「なるほど、『キャスリング』か。これなら相手の虚をつくことができる。何手か先んじえるね」

 

キャスリングは『王』と『戦車』の位置を瞬間的に入れ替えることができる。これは『戦車』の駒があれば可能な技なのでリアスは旧校舎に瞬間転移が可能なのだ。

 

「よし、だが、一人で行くのは無謀だな。グレイフィア、『キャスリング』を私の魔力方式で複数人転移可能にできるかな?」

 

「そうですね、ここでは簡易術式でしか展開できそうもありませんが、お嬢様ともう一方ならば転移可能かと」

 

「リアスと誰かか……」

 

「サーゼクス様、俺も行きます!」

 

サーゼクスが一誠の方へ向いた後、すぐにアザゼルへ視線を向ける。

 

「アザゼル、噂では神器の力を一定時間自由に扱える研究をしていたな?」

 

「ああ、そうだが、それがどうした?」

 

「赤龍帝の制御は出来るだろうか?」

 

「………………」

 

アザゼルはサーゼクスの問いに対し暫く黙り込み、やがて懐を探り出す。

 

「おい、赤龍帝」

 

「俺は兵藤一誠だ!」

 

「じゃあ、兵藤一誠。こいつを持っていけ」

 

アザゼルは見知らぬ文字が刻まれている手にはめるリングらしきものを一誠へ投げつける。慌ててキャッチした一誠はリングを訝しげに見る。

 

「そいつは神器をある程度抑える力を持つ腕輪だ。例のハーフヴァンパイアを見つけたらそいつを付けてやれ。多少なりとも力の制御に役立つだろう」

 

「でも、これ二つあるけど……?」

 

「もう一つはお前のだ。『赤 い 龍(ウェルシュドラゴン)』の力を使いこなせないんだろう?なら、はめろ。短時間なら代償なしで禁手状態になれる」

 

驚愕している一誠へアザゼルは言葉を続ける。

 

「副作用で一時的にお前に施されている封印も解ける。確か、『兵士』の力を封じられているんだろう?」

 

アザゼルがどこでその情報を知ったのかは知らないが、確かに一誠はリアスによって力を抑えられている。

 

「駒配分的にドライグが七、お前が一ってところか?どちらにしても、封印の開放ってのはドライグの力を解き放つってことだな、リアス・グレモリー?」

 

アザゼルの問いにリアスは目を細めるだけで何も答えない。

 

「そのリング、使うのは最終手段にしておけ、鎧装着中は体力か魔力を激しく消費させるからな」

 

腕輪について一誠が納得しているときにアザゼルはさらにダメ押しを口にする。

 

「よく覚えておけ、今のお前は人間に毛が生えた程度の悪魔だ。強大な神器を有していても宿主が役立たずでは意味がない。今のお前でもドライグの力を振りまくだけなら相手が未熟な者に限りなんとかなる。だが、それはお前が神器を使いこなしているわけじゃない。使いこなせないのはそれだけ弱味の塊なんだよ。力に振り回されるだけでは、いずれ死ぬぞ」

 

「わ、わかっているよ」

 

一誠がアザゼルの言葉を噛み締めているとミカエルが嘆息しながらアザゼルへ訊く。

 

「アザゼル、神器研究はどこまでいっているのですか?」

 

アザゼルは不敵な笑みを浮かべている。

 

「いいじゃねぇか、神器を作り出した神がいないんだぜ?少しでも神器を解明できる奴がいた方がいいだろ?」

 

すると一方通行がポツリと呟く。

 

「……研究しているのがオマエだから問題あるンだろォがよ」

 

「「「確かに」」」

 

アザゼル以外のトップ陣が同意する。

 

「お前らいつか絶対後悔するぞ……」

 

などとブツブツ言っているが誰もアザゼルを援護しない。

 

「お嬢様、しばしお待ち下さい」

 

「急いでね、グレイフィア」

 

リアスはグレイフィアに特殊な術式を額から受けていた。一誠達が準備中の中、アザゼルはヴァーリと一方通行に指示を出す。

 

「おい、お前ら」

 

「あァ?」

 

「なんだ、アザゼル」

 

「お前らは外で敵の目を引け。お前らが前に出てくれば野郎どもの作戦も多少は乱せるだろうさ。それに何かが動くかもしれない」

 

「会談の時から俺らのことを見てたンだぞ?俺らがここにいるのは奴らも知ってンじゃねェのか?」

 

「だとしても、『キャスリング』で赤龍帝が中央に転移してくるとまでは予想してないだろう。注意を引き付けるのは多少なりとも効果はある」

 

「ハーフヴァンパイアごと旧校舎を吹き飛ばした方が早いんじゃないかな?」

 

ヴァーリはごく自然にそう言うがアザゼルが止める。

 

「和平を結ぼうとしているときにそれはやめろ。最悪の場合それにするが、ここで魔王の身内を助けられるならこれからのためになる」

 

「チッ、面倒くせェな」

 

「了解」

 

一方通行は舌打ちをしながら、ヴァーリは息を吐きながらも同意し、背中に光の翼が展開する。

 

禁 手 化(バランスブレイク)

 

Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!!!!(バニシングドラゴンバランスブレイカー)

 

ヴァーリの体を真っ白なオーラが覆い、白い光を放つ全身鎧になっていた。

 

ヴァーリは会議室の窓を開き空へ飛び出す。

 

ドドドドドドドンッ!

 

外で爆風が巻き起こり白い光の軌跡が敵の群れへ飛び込み一騎当千の様相を見せていた。

 

「ンじゃ俺も行くぜ」

一方通行はそれだけ言い残しヴァーリと同様に窓から飛び出す。

魔術師達は地上にも現れ、窓から地上へ落ちてくる一方通行へ向けて様々な魔術を放つ。

 

だが、放たれた弾丸は跳ね返され炎に包まれても吹き散らす。一方通行は地上へ足をつけた瞬間、勢いよく地面を踏みつける。

 

ズガアアアアアアアアア‼︎

 

一方通行を中心に放たれた衝撃波は魔術師達を飲み込み全方位へ広がっていく。

 

音がやむ。

 

周りにいた魔術師達は全員が地に倒れ伏しており、若干名息のある者もいるが、這って進むことすら出来ない。

 

「……グッ……!ッ……!バ、バカな……!全滅だと⁉︎貴様の力は反射をするだけではないのか⁉︎」

 

「オイオイ、甘すぎンぞ、テロ起こすぐらいなら相手の情報をそのまま鵜呑みにしてンじゃねェよ。」

 

嘆息しながら一方通行は校舎へ向けて歩き出す。

 

ヒュン‼︎ ズガン‼︎

 

一方通行の反射によって魔力の弾が跳ね返る。それと同時に悲鳴が聞こえる。

剣を振りかざして襲ってくる者もいた。身体に当たると同時に剣が折れて戦意が喪失する。

直接殴ってくる者もいた。腕が当たると逆の方向へ折れ曲がり、地べたへ這いつくばる。

 

もはや敵の方を振り返ってすらいない一方通行はただ歩いているだけ。それだけで敵の戦力は減っていく。

 

いよいよ地上の魔術師達も底が尽きたのか誰も来なくなった。会議室へ戻ろうと屈み込み、跳ぼうとした瞬間、

 

 

 

 

一方通行の身体が真横に吹っ飛ばされた。

 

 


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