あなたはポケモントレーナーである。   作:あなポケ制作チーム

2 / 2
ノマルタウン
どんな色にも染まれる町。


ポケモントレーナーのアルンが、勝負をしかけてきた!

 研究所の目の前でポケモンバトル、とはいかず、あなたとアルンは昔からよく使っている公園へと場所を移した。十メートルほどの距離を空けて(にら)()ったあなたとアルンは、互いにポケモンの入ったモンスターボールを構える。

 

「お願いっ、イーブイ!」

 

 ポケモントレーナーのアルンは、イーブイをくりだした!

 

 それに応じて、あなたもボールを投擲(とうてき)し、イーブイを繰り出す。

 あなたもアルンも、トレーナーズスクールでバトルの練習はしたことがあった。スクールのポケモンを借りて、バトルの基礎を実戦方式で学んだのだ。

 

「いくよ、『たいあたり』だ!」

 

 アルンの指示を受けて、アルンのイーブイが地面を駆け、あなたのイーブイへと迫ってくる。事前に『ポケモン図鑑』を使ってイーブイの(あつか)える技を把握(はあく)していたあなたは、冷静に『なきごえ』を指示した。

 あなたの言葉に、あなたのイーブイはやや(ひか)えめながらも確かな鳴き声をあげる。それを聞いたアルンのイーブイは、少し驚いた様子で勢いを()がれつつもあなたのイーブイへと体当たりする。

 

 技を()らったあなたのイーブイは軽く弾かれ、砂埃(すなぼこり)と共にあなたの居る方向へと飛ばされる。しかししっかりと四つの(あし)で踏みとどまった。あなたはイーブイへと心配の声をかけるが、イーブイは砂を(はら)うために(かぶり)を振って、強気に鳴いて応える。

 

「その調子だよ、イーブイ! もう一回『たいあたり』!」

 

 先制したアルンは再び同じ技を繰り出すように指示を出し、今回はあなたも同じく『たいあたり』をするように采配を振るう。

 

 ぶつかり合うイーブイ達。その技の威力は互角かに思えたが、わずかにあなたのイーブイの方が勝っていた。『なきごえ』によってアルンのイーブイは攻撃することに少しばかりの躊躇(ちゅうちょ)が生まれ、『たいあたり』の威力が下がってしまっていた。

 

 今度はアルンのイーブイが主の元へと下がることになり、その隙にあなたはイーブイへと『しっぽをふる』の指示を下す。その挑発するような動きに、アルンのイーブイは防御への意識が少し薄れてしまうことになる。

 

 そのまま戦いのペースを握り続けたあなたは、トレーナーとしての初バトルに見事勝利するのだった。

 

 ポケモントレーナーのアルンとの勝負に勝った!

 

 

「あーあ、負けちゃった! やっぱり、()めてばっかりじゃダメなんだね」

 

 バトルを終えて、自身のイーブイの手当てをしつつ、アルンは(くや)しさを(にじ)ませながらも笑顔で言う。その腕の中でアルンのイーブイが気落(きお)ちした様子で耳を()らすが、アルンはそんなパートナーを元気づけるように頭を()でる。

 

「今回は負けちゃったけど、また次がんばろっ! ね、イーブイ!」

 

 そうアルンに励まされ、アルンのイーブイはやる気を取り戻したように鳴き声を上げた。

 

 あなたもまた、バトルで傷ついたイーブイに『キズぐすり』などを使って手当てをしていた。あなたのイーブイは控えめながらもバトルの勝利を喜んでいる様子で、どこか嬉しそうだ。(ねぎら)いの意味も込めて頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細めた。

 

「それじゃ、一回家に戻ってママ達に挨拶して来ないとだね! それに、イーブイ(キミ)のことも紹介したいし」

 

 アルンはイーブイを胸元に抱えたまま立ち上がった。その言葉に頷きながら、あなたも腰を上げる。あなたとアルンは自宅へと()を進め、家の前で別れてからイーブイと共に玄関を抜ける。

 あなたのおかあさんはリビングで家事をしていたが、一旦(いったん)手を止めてあなたを振り返った。

 

「おかえり。無事にポケモン図鑑とポケモンは貰えた?

 あら、そのイーブイがあなたのパートナーね」

 

 あなたが頷くのと、あなたの足元でイーブイが挨拶でもするように鳴き声をあげたのが(ほとん)ど同時だった。早くも息の合った様子を見せるあなたとイーブイに、おかあさんは嬉しそうに微笑(びしょう)する。

 

「もう仲良くなったのね、素敵だわ。

 これから旅に出るんでしょ? なら、これを持って行きなさい」

 

 そう言われてあなたにが差し出されたのは、一つの携帯端末。スマートフォン、と呼ばれるものだ。ポケモンの攻撃にもある程度は耐えられることや、森や洞窟でも電波が途切(とぎ)れづらく、冒険に最適、というのがウリとなっているシリーズで、手に取ってみると中には電話や地図のアプリが入っている。他の地方には『ロトム』というポケモンが中に入った『スマホロトム』というものもあるらしいが、ロトムの確認数が少ないエティー地方では普及していなかった。

 スマホをしっかりとカバンに入れるあなたに、おかあさんは(うれ)うような視線を向ける。

 

「気が向いたらでいいから、たまには連絡してちょうだい。

 あなたが旅に出ることには賛成だけど、心配でもあるの。あなたはまだ子供だし、無理をし過ぎてはダメよ?」

 

 おかあさんがそう釘を刺すと、あなたはしっかりと頷き返した。その返事に、おかあさんはニッコリと笑う。

 

「その様子なら、大丈夫そうね。

 行ってらっしゃい! くれぐれもケガには気を付けるのよ!」

 

 笑顔で背中を押してくれるおかあさんの言葉に、あなたは再び頷いて相棒(イーブイ)と共に玄関へ駆け出した。

 

 

 あなたが自宅を出ると、隣の家からアルンが元気いっぱいに飛び出してきた。その顔に浮かぶのは、これからの旅へのドキドキやワクワクだ。

 アルンはあなたに気付くと、イーブイを(ともな)ってこちらへ駆けてきた。

 

「ねぇ、キミもスマホ、もらったでしょ? 番号交換しようよ!」

 

 そう言って、あなたのものとはカラーの異なるスマホを取り出すアルン。エティー地方はかなり広いため、旅立つ子供にスマホを持たせるのは(なか)ば常識となっていた。以前はポケギア、というツールが流行っていたという話を思い出しながら、あなたはアルンと電話番号を教え合う。おかあさんに続いて、二人目の連絡先だった。

 

「えへへ、これでどこに居てもお話できるね!

 そうだ、博士の番号も教えてもらおうよ! 旅で困ったとき、何かアドバイスもらえるかもしれないし」

 

 アルンの提案に、あなたは少し迷ってから首を縦に振る。博士の研究を邪魔してしまうのではないか、という懸念(けねん)があったあなただが、そもそも博士の手伝いという理由もあって旅に出るのだ。ついさっき、おかあさんに「無理をし過ぎないように」と(ねん)()しされたのもある。

 

 あなたとアルンが再び研究所に足を向けると、ちょうどテルル博士がこちらにやってくるところだった。

 

「良かった、まだノマルタウンを出てなくて。

 これ、私の電話番号。うっかり教えるの、忘れちゃってたわ」

 

 申し訳なさそうに苦笑しつつ、テルル博士は自身のスマホをあなた達に向ける。そこには、彼女の連絡先が書かれていた。前に見たことのある研究所の番号とは違うため、恐らく彼女個人の電話番号なのだろう、とあなたは察した。

 

「ちょうど、博士に番号を教えてもらおう、って話してたんだ! ナイスタイミング!」

 

 エティー地方で知らない人はいないほどのポケモン博士と連絡先を交換できたためか、少し興奮気味にアルンが喜んでいる。これであなたのスマホに登録された番号は三つになった。

 

「私にかけてくれれば、図鑑の完成度を評価したり、アドバイスしたりできるから、遠慮無く電話してね!

 それじゃ、今度こそ、良い旅を!」

 

 そう言ってやや足早に立ち去るテルル博士。きっとまだやることが残っているのだろう、まるでテッカニンのようなスピード感だった。

 

 テルル博士が去ってから、アルンはポツリと呟く。

 

「あんなに忘れっぽくって、大丈夫なのかなぁ?」

 

 そう首を傾げる幼馴染みの言葉にあなたは同意した。あの人の物忘れの多さは、少し心配になるほどだった。

 

「あっ! ボク、『キズぐすり』買い足すの忘れてた!

 ゴメン、すぐに買ってくるね! 町の北口で集合しよう!」

 

 そう言うや否や、アルンはフレンドリィショップへと走り出した。先程のバトルの後に使った分を補充(ほじゅう)するのだろう。ポケモンセンターで回復して貰うこともできたが、アルンが治療行為も含めて相棒(イーブイ)との交流を深めたい、と言うのであなたもそれに習ったのだった。

 

 幸い、あなたは余分に『キズぐすり』を買っていたため、更に買い足す必要はあまり無い。けれど、あって困るものでも無いため、アルンの後を追っても良いだろう。暫くこの町を離れるだろうし、ノマルタウンを見て回るのも良いかもしれない。トレーナーズスクールの学友達や先生方には前もって挨拶を済ませていたが、もう一度顔を見せるのもアリだろう。

 あなたは少し悩んで、町を見て回ることにした。イーブイと散歩しようと思ったのだ。パートナーのことをもっと知るには、連れ歩くのが一番に思えた。

 

 あなたはイーブイと共に、見慣れた町を改めて回ることにする。自宅から西にテルル博士の居るポケモン研究所、あなたの学び舎でもあるトレーナーズスクール。住宅街を超えた町の南側には、レイタウンやブルムシティに繋がる道がある。そこに出れば海を見ることもできるが、そんな時間は無さそうだった。

 トレーナーズスクールより東に向かう一本道の先にはポケモンセンターがあり、その中にアルンの向かったフレンドリィショップも併設されている。あなたのイーブイは目立つ赤い屋根に少し驚いた様子だった。手持ちのポケモンが『きぜつ』したときにもすぐわかるよう見つけやすくしているのだと伝えると、理解したのかしていないのか曖昧な鳴き声が返ってきた。

 

 そのまま集合場所である北口に向かおうとしたところで、ポケモンセンターの前で「科学の力って、スゲー!」と感動した様子の、太り気味の男性が居た。少し怖いのであなたは()()()く距離を取った。イーブイも同じ気持ちのようだった。

 

 北口を出た先にあるのは、エティー地方で最も大きな森林、『ビギストの森』だ。その面積はノマルタウンよりも広く、様々な種類のポケモンが生息している。ノマルタウンに近い区域にはむしタイプやくさタイプのポケモンが多く生息しており、それが旅の始めにビギストの森に向かう理由でもあった。

 

 むしポケモンは成長の早いポケモンが多く、また、他のポケモンよりも進化までに必要な経験値も少ないため、新人のトレーナー向きなのだ。ノマルタウンのトレーナーズスクールで知識を身につけ、ビギストの森でむしポケモンを捕まえる、というのが、エティー地方の多くのトレーナーが通った道だった。

 あなたとアルンもそれに習い、まずビギストの森へ、そこでポケモンの捕獲と育成を行って、その先の『トルシティ』に居るむしタイプのエキスパートへと挑戦するつもりだった。

 

 北口に辿り着いて一分も経たない頃に、アルンとイーブイがやって来た。待っている間、自身のイーブイと戯れていたあなたは、足音に気付いたイーブイがそちらを向いたのを見て振り返った。

 

「ごめん! 遅くなった!」

 

 開口一番にアルンは謝罪した。あなたは気にしてない、と首を振る。なによりまず謝る幼馴染みのまっすぐさを、あなたは昔から好意的に思っている。

 荒い息で肩を上下させるアルンは、心配した様子の自身のイーブイに大丈夫、と笑いかけた。アルンのイーブイに疲れた気配が無いのは、元々持久力があるのか、ポケモンだからなのか。

 

「運送のトラブルがあったみたいで、店員さんと女の人が揉めてたんだ。せっかくのボクらの旅立ちの日なのにさー!」

 

 呼吸が戻ってきたことで思い出してきたのか、唇を(とが)らせながらアルンは軽く不満を吐く。しかし、すぐに普段のような笑顔に戻った。

 

「ごめんごめん、ボクらしくなかったね。

 それじゃ、行こっか!」

 

 アルンがビギストの森へと身体を向けるのに合わせて、あなたもしっかりと前を見据えた。二匹のイーブイも、やる気に満ちた鳴き声をあげる。

 そして、あなた達は冒険の第一歩を踏み出した。




イーブイ Lv.5 ♂
親:アルン
特性:にげあし
技:てだすけ なきごえ たいあたり しっぽをふる
わんぱくな性格。ノマルタウンでLv.5のときに出会った。体が丈夫。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。