『植物図鑑』片手に過ごす辺境伯生活※現在十六話まで改訂済 キャラ挿絵追加 作:とおりすがりのふに族団長
唐突に明かされた事実と選択肢のない就任要請の受諾。
ちょっと落ち着いてアイリーンさんと話したかった所だが、ウチの屋敷の連中舞い上がって大急ぎでパーティの準備始めたり、アイリーンさんをおめかしする為に回収して行きやがった。
「どいつもこいつも歌いながら作業してるんじゃないよ」
●ィズニー映画じゃないっつーの。
「殿下。騒がしい連中で申し訳ございません。」
「いえいえ、僕の近衛兵も一緒になってるんで同罪ですよ。もうちょっと説明させて貰って良いですか?」
殿下の言葉に応えて席に着くと、急に騒がしい声が聞こえなくなる。殿下が風の加護を使って無音の結界を作ってるのか?
「ちょっと機密事項が入るので結界を張りました。父や兄様達の様な派手な使い方は出来なくて情けない限りです」
「そんな事無いと思うけどなぁ。ちなみに機密って?」
「はい、アイリーンさんの出自の背景にも関わる事なんですが、順番にお話します。」
殿下の話を要約すると、以下の通り
①この領土は、長く隣国との戦いで疲弊していた事。その中で爺さんは自身も高レベルの魔術師かつ家族&領民&王国軍と連携して一番上手い事戦っていた辺境伯として評価されていた。
②が、30年程前に一大決戦で相手の主力の殆どを撃退した代わりに爺さんは家族と信頼する部下の殆どを失てしまった。
③だからこそ、その後に生まれた唯一の娘は自身から離れた所で育てたそうだ。
④そしてここ数年は後任探しと西の国との決着の方法を国王と話し合うと事が多かったらしい。
「ん、じゃあアイリーンさんを雇ったのは?」
「それは分かりません。先代ははぐらかしたそうなので。後継者を見つけて去る前に顔を見たかったのかもしれませんね。」
「じゃあ爺さんの後任の話は?」
「丁度貴方が代行を始めた頃に、先代から貴方を正式に後任に推したいという提案が有りました。王国側は悩みましたが、今回の実績でほぼ本決まってて、最終的にはさっき僕が決めました」
侯爵にも近い『辺境伯』を王子とは言え12歳の少年に任せてしまうとは・・・やっぱこの子アイドル扱いされてるだけじゃ無いんだな。
「ん・・・ちなみに『遠征軍』は今どうなってるの?」
「ここだけの話ですが、もう終わりました。第一王子が率いる通常の進撃を囮に、国王率いる精鋭軍100人が相手の王都を占拠しました。」
あまりに突拍子もない殿下の返答にこの間アイリーンさん直伝の『アホの子』を見る目で見てやる。
「ホントの事言ってるんですからアホの子を見る目は止めて下さい!荒唐無稽に思われるのは理解しますけどね。」
「おおう、って事はマジなのか」
怖っわ!国王こっわ!?
「勝負を決めたのは父の武力ですが、それを支えた長年の諜報力あっての結果です。敵の本丸の正確な情報無くて少数精鋭での制圧は出来ません」
「てっきり邪神を崇めてるっていうから本丸墜とそうとしたらラスボスが出てきそうなのに」
完全に元の世界のRPGのイメージでしゃべってしまう。殿下は
「実際、世間一般の人たちのイメージは恭介と同じだと思いますよ。でも実際はちょっと違いまして」
曰くこの国も隣国も他の国も、信仰する『守護神』たる神様はそれぞれ属性が違うだけでその力に大差はないそうだ。
国を護る『神』に信仰を捧げることで『神』は『神格』を維持、その見返りに王族に加護、国王には神の力を現世で顕現する為の『宝具』を授ける。
この魔法は『神威魔法』と言い、個人で天変地異レベルの威力を誇るらしい。この世界における戦略兵器と言える。
それ以外で祈りをささげるのは主に『五穀豊穣』や『無病息災』などの国民全体へのざっくりとした祈り。偶に病に伏した要人の回復を祈る事もあるらしいが、範囲の狭い願いの成功率はイマイチらしい。
肝心の隣国さんはこれを他国の災いや呪いなどの『邪な願い』を繰り返し、通常の祈りでは成功率が低いとみるや国民を必要以上に動員して無理やり祈らせるそうだ。要は『邪悪』なのは神じゃなくて王家とその行為で恩恵を受けてる僅かな連中だけってことか。
「えぇ、なぜそんな道に走ったのかはまた歴史と『時渡り』の伝承が絡む長い話ですがら、『聖剣の勇者』伝承とその後を調べると良いですよ」
ちょうど気になる所で話を切る。後は自分で本を読みなさいという事らしい。
「イジワルしてるわけじゃありませんよ。綺麗になったアイリーンさんを見てあげて下さい」
指パッチンと共に結界が解除されて、後ろを見るまでもなく、かなりの人数の気配を感じる。
さっきと同じ動作で振り向くと、青いドレスに身を包んだアイリーンさんが居た。
「その、こういう席縁が無くて、お母様のお古でお恥ずかしいのです・・・」
まーた、顔真っ赤で俯いてる。
「おれだってじーさんのおさがりだからお互い様だって。それよりレディ。踊って頂けますか?」
殿下の話聞きながら一個しかないとっておきの青バラ中心に青い花で作ったちっこい花束を渡す。
喜んでくれたのが泣きそうになりながらやっと笑顔を見せてくれる。この夜の臨時就任パーティは、その場にいる人間で間に合わせでやったにしては楽しくて良いパーティになった。
ストックの美味しいフルーツ全部持って行かれるわ、メイド軍団の『エンダーァァ!!』が喧しいわ、近衛兵の方々のちょっと危険な下ネタ入りまくりの宴会一発芸祭りに最初は温厚に笑ってた殿下の視線の温度が徐々に下がり、アイリーンさんとのユニゾン魔法で『超冷風の刑』に処されたりと数々のドタバタ劇は、記憶力高い殿下によりしっかりと後の世に俺の伝記の1シーンで描写されることになり、泣いて黒歴史の描写の軽減を嘆願する数名の騎士と、ドS顔でどうしようかと嗤う『殿下』の姿が確認されたというが、それはちょっと未来の話。
~翌日~
「せっかく良いパーティで夜は『お楽しみ』確定のハズだったのに、何でそんなボコボコにされてるんですか!?」
「いや、途中まではパーフェクトだったんだけど、『つい最近に知らされるまでじーさんの子供とは夢にも思わなかったから何か似てる所あるかな?』って話になって正直に『むっつりスケベな所?』って答えたら殺されそうになり候」
「やれやれ、魔法で治してあげますけど、後で公開説教です!」
肝心な所でイマイチ決まらない俺だった。
神に祈ってトントンの世界で祈らなかったら自然災害とか疫病大変そう。(小並盛)