『植物図鑑』片手に過ごす辺境伯生活※現在十六話まで改訂済 キャラ挿絵追加 作:とおりすがりのふに族団長
何でも出してくれる『植物図鑑』だが、例外が存在する。
所謂『品種改良品』に関しては基本的に消費する『体力』+『イメージ力』と『運』が作用する。確実に手に入る訳ではないのだ。
ただの図鑑に載っている標準的なイチゴ(図鑑の力のおかげか、それでも十分美味しい)を出す分には問題ない。(そもそも果物系はコスト高)
その先の銘柄品でより良いイチゴを出そうとすると、強いイメージが必要になる。たとえ銘柄品が表示されたとしても、この場合は確定ではない。寧ろハズレが出て来る場合もある。
成功確率は体感20%って感じで消費体力は成否に関わらず二倍程度になる。
単純計算するとイチゴ1パックのコスト10としたら、標準ならコスト100で10パック、高級品狙うとコスト100で1パック個作れるかどうか?という確率になるので、普段は標準のランクの果物しか出さない。
しかしある日、俺が自分で食べる為に美味しいイチゴ出してた所で唐突に背後に現れたアイリーンを筆頭としたメイド軍団に見つかりボコボコにされた。それ以来はちょくちょく『あま●う』クラスのイチゴを要求される俺であった。
そんな俺の苦労話を(背後から襲ってくるアイリーンの鉄拳を避けながら)殿下に披露しているのだが、残念ながら俺が用意した最高レベルのフルーツ盛にキラキラ目で夢中になっている彼には届いていなさそう。
そこまで大盛では無いが、メイドが盛り付けた最高級フルーツ盛を出されるなり、毒見役を振り切って食べ始めた殿下。
毒見役さんが役目を果たせなかったからか美味しそうなフルーツを食べれなかったからか、何とも言えない表情を見せる。ウチのメイドが『後で皆さんの分も用意してます』と書かれた手持ち看板をそっと近衛の皆さんに見せたら皆さん目が殿下同様にキラキラと光り出した。
「あー美味しかった。ご馳走様でした。こんな美味しい未知の味を独り占めしてたらそりゃ怒られますよ!」
「あ、ちゃんと聞いてた」
「もちろん聞いてますよ。でも、確率低いと言う割に複数種類の果物が有るのは何故なんですか?あまり体力を使ったようにも見えませんけど?」
「あぁ、それはこの機能だよ」
『図鑑』の末ページを見せる。図鑑は通常白紙だが末尾の1ページだけ縦横に線が引かれていて50個の果物が表示されている。これに裏があるので最大100個の出力結果を『キープ』できる。
「野菜不足が解消されつつあるから最近やっとストックを貯められるようになったんですよ」
「やはり『時渡り』のアイテムは凄いですね。我々の知る魔道具とはレベルが違い過ぎますよ」
この世界の魔法や魔道具は単純な効果の物が多く、ちょっと複雑な物は大体国家機密レベルの物になってしまう。
召喚魔法とかもあらかじめ自分が飼ってる動物を呼び寄せるとかが関の山で、「ドラゴン召喚とか出来ないの?」と聞いて、アイリーンさんにアホの子を見る目で見られた時は異世界なのにロマンの無さに涙で枕を濡らしたものだ。
「僕・・・というか王家と先代『辺境伯』の意志は貴方の力を生かしてこのままこの地を治めて頂きたいと考えてます」
ん!?聞き逃せない違和感を感じる。
「『先代』ってのはどういう事でしょうか?」
「言葉の通りですよ。『先代ヴァーデン辺境伯』は既にここを去りました。これからは別の国の知り合いの元で厄介になるそうで」
それでか・・・じーさん付きのメイドさんが居ないのは。というか国にすら居ないとは!?
「第一、貴族って世襲じゃないの?俺の『代行』って立場もおかしいんじゃ無いかと思ったりするんですが?」
「普通の貴族ならそうですが、『オンディーヌ王国・ヴァ―デン辺境伯領』だけは先代『辺境伯』の指名と中央の貴族院で過半数が認めれば継承が認められます。」
「マジで!?」
争いのある国と国境を接しているのはこの『辺境伯領』のみだからこんな独自ルールがあるのか?聞いてねーぞじーさん(泣)
「どうしてもと言うならば、『先代』の出した唯一の条件を断れば『辺境伯』にならずに済みますね」
「何だ、あるんじゃん選択の余地。さぁ早くその条件教えて下さいよ殿下!」
「『自分の娘との婚約』だそうです」
おいおいおい、あのじーさんいい年だぜ。娘とか言った確実に40オーバーやん。これは勝ったな。
「殿下、こう見えて俺は婚約相手へのハードルは高い方なんですよ」
「でしょうね。ちなみに好みを伺っても?」
「年齢がどうとかは言いませんが、容姿はアイリーンさんレベルで、胸もできればおっきい方が。後、話しててノリの良い子が好きです」
「要求多いですね~。婚期を逃す考え方ですよ。でも運が良い事にこの『娘』さんは全ての条件満たしてるから大事にしてあげてくださいね」
殿下の言葉に『いやいや御冗談を』みたいな顔でリアクションする俺。
「じゃあ恭介さんの後ろに立って貰ってますから挨拶して下さい」
殿下がそんなに言うなら仕方無い。幾ら容姿良くても絶対年齢的に話が合わないだろうけど、あいさつするだけしましょうか・・・あれ?
「///代わり映えしない顔で申し訳ございません。『アイリーン・ヴァ―デン』です。一応、恭介様の要求は全部満たしてると思います」
「いや、こちらこそ(?)」
顔真っ赤にしてぎこちない挨拶をするアイリーンさんに、それ以上にぎこちない挨拶を返して殿下の方に顔を向ける。
澄ました顔で紅茶飲んでやがるよおいィィ!!選択の余地なんぞあるかー!!