前回作品タイトル変えるかもみたいな話をしたところ『結とかのんのはじまり物語』とかどうよ?と意見をいただいたので採用させていただきます。今回は読者が混乱なさらないようこのままにしますが、次回からタイトルが変わります。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
第九話
翌日の放課後、僕がいつもの澁谷さんのカフェに寄ろうとすると一つのLINEがきていた。
要約すれば、今日から練習を始めるからこの場所に来て欲しい、と。
結ヶ丘の近くということは、僕はもうすでに通り過ぎたことになる。
仕方がないのでUターンしようと踵を返した時だった。
「あれ?どこ行くの?」
「結ヶ丘。なんかかのんが呼んでる」
「へぇ〜、結ちんの彼女?」
「そんなんじゃ……っておおい!!??」
夏樹!?なんでここに!?!?
「夏樹!?なんでここに!?って顔だねぇ!教えてしんぜよう!それは僕が暇だからであ〜るっ!」
「要は暇つぶしってことだろ!暇つぶしで僕のプライバシーを侵害するな!」
後ろ振り返ったらいたから心臓止まるかと思った……。
ストーキングを時間潰しに使わないでほしい。
倫理観はどこへ行ったのだろう。
「結ヶ丘!ちさとんに会えちゃうのか〜!」
「……連れて行かないぞ」
「やだなぁ冗談はいいよ♪」
「行かない」
「うんうん♪」
「行かないからな」
「うんうん♪」
「行かな……
「結の親友の時雨夏樹でぇ〜す!よろしくっ!ぶいっ!」
「ごめん千砂都さん……僕止められなかった……」
押し切られた……。というか逃げても逃げてもついてきた。
さながら逃走中。仕方がないのでここまで連れてきてしまった次第である。
すでにスポーツウェアに着替えたかのんと可可さんと千砂都さんの3人は僕の後ろでうろちょろしてる時雨に視線を向け続けている。
「あっはは……。かのんちゃん紹介するね。同じダンス教室だった時雨夏樹だよ」
「えっと、ちぃちゃんの幼馴染の澁谷かのんです」
「唐可可デス」
「よろしく〜!」
ブンブン手を振って友好の意を見せる夏樹。
「で、ゆいちんは何しにきたの?」
「知らないできたの!?」
千砂都さんもこうなるよね。
僕もそうなる。
「スクールアイドルの活動」
「ゆいちんアイドルになるの!?」
「僕は裏方」
「へぇ〜!スクールアイドルってアレだよね!サニパ!」
「お二人を知っているのデスか!?」
サニパの名前が出た瞬間食いつく可可さん。
その反応が良かったのか夏樹も
「そりゃそう!今若者の中で大人気!知らなきゃ嘘でしょサニーパッション!!ちなみに僕は摩央様推し!」
と続ける。
様って……同年代だろ……。
「じゃあHOT PASSIONハ!?」
「もち知ってる!記念すべきファーストシングル!僕初めて見たとき感動しちゃってさ〜!特にダンスはキレキレながらもファンサする余裕と絶やさない笑顔!もう天性のアイドルだね!」
「分かりマス分かりマス!可可もあのシングルは感動しまシタ!」
おーいそこ。意気投合するな。
可可さん取られると練習進まない。
むりやり夏樹をひっぺがして釘を刺しておく。
「もう……夏樹は邪魔すんなよ?」
「大丈夫大丈夫!興味本位で見にきてるだけだからさ」
それならいいけど……。
「それで、えっとなんだっけ?その条件ってやつ」
話によると、理事長と話し合った結果とある条件をクリアすると活動を認めてもらえるそうだ。
「この近くのスクールアイドルが集まって行われる、代々木スクールアイドルフェスで1位を取ること。それがだされた条件」
代々木スクールアイドルフェス……。
競争率の高い都内のスクールアイドルの中でさらにそのトップか……。
「確かに簡単に取れる舞台じゃないけど……」
だからこそ価値がある、か。
確かに条件としては十分。
生徒会長の猛反対があったと思えばチャンスを作っただけで大金星だ。
「うん、可能性はあるんだ。やってみようか」
いざ言葉に出してみると全員が気合の入った目つきに変わる。
「よし!それじゃあまずはランニングから行ってみよう!」
そう言った直後突如駆け出す千砂都さん。
彼女は先導だろう。ついてこい、ということだ。
彼女は意外とスポ根なのかも知れない。
千紗都さんに続けて可可さんとかのんが走り出す。
「じゃあ僕も走るか」
「あれ?ゆいちんは裏方じゃないの?」
「こういうのって一体感大事じゃん?仲間なら走った方がいいと思うんだよね」
制服の上だけを脱いでワイシャツになる。
カバンの上に雑にかけて置いて僕も彼女たちに続く。
「ふぅーん。ゆいちんも意外とスポ根なんだね。あ、結女って確か……」
こんにちはー☆
僕は時雨夏樹!
ピチピチの高校1年生!
さて今僕はどこにいるでしょう!?
正解はー!!??
ここ!結ヶ丘女子校の『生徒会室』前でしたー!
なんでそんなところにって?
それはね、結たちが走りに行った後、何もすることがない僕はここの存在を思い出したからです!
え、そういうことじゃない?分かってるよそれぐらい。
だから本当の理由は、
この扉の向こうでお話ししてあげる。
横引きの扉を静かに開けてその向こうにいる人物に僕は話しかける。
「久しぶり。小学生以来だね」
突如現れた僕にその人物は目を見張るがすぐ落ち着いて問い返す。
「なぜあなたがここに?夏樹さん」
「昔みたいにナツ、って呼んでくれてもいんだよ?恋」
葉月恋。僕の……。
「結構です。それよりこちらの問いに答えてもらっていませんが」
「僕はただ友達の付き添いだよ。なんでも面白いこと始めるらしいから」
「面白いこと……?」
「『スクールアイドル』」
「…………!」
彼女の顔が歪む。
「なんでも意地悪な生徒会長が活動を許してくれないんだとか。ねぇ?」
「…………あなたには関係のないことです」
「わぁ、聞きしに劣らない見事な意地悪さ!」
調子に乗って茶化すとギロリとこちらを睨む恋。おぉ怖い。
「で、なんでそこまで認めないの」
「ですからあなたには」
「お母さんのこと?」
「….………」
沈黙。時に雄弁。
それだけで僕には既に十分確信めいた理由に思い当たれた。
「恋、そういうの早めに決着つけたほうがいいよ」
「……….納得いかないのです」
「そう」
「私は、私のやり方でこの学校を守ります」
「……ご勝手に」
これ以上は押し問答。
互いに言葉を濁しあって改善はしない。
僕はそれを察して生徒会室を出ることにした。
「はぁっ……はぁっ……千砂都さんすっご……」
肩で息をする僕の隣で勝ち誇ったように呼吸を乱さず笑う千砂都さん。
「うぃーす!何やってんのー?」
「夏樹……はぁ……帰ってきたか……ぜぇ……今までどこに……はぁ……いたんだよ……」
「うわすごい息荒い!普通にお散歩してただけだよ。そっちこそ何してたのさ?」
説明したいけど……息が……!
そんな僕を察したのか横からかのんが口を挟む。
「可可ちゃんが動けなくなったから休憩の間にまだ体力に余裕があるちぃちゃんと結でストリートダンス対決するってことになったんだ」
「で、結果は?」
「見ての通り」
惨敗だった……!
得意分野なら勝てると思ったのに……!!
「だろうね。ゆいちん、疲れてるところ悪いけどこれ」
「ん?」
顔を上げると夏樹の手の中に小さく輝くアクセサリーが見えた。
「これって……」
「前言ったじゃん。生徒会になったらあげるって」
あぁ……確かにそんな約束したような……。
スクールアイドルで手一杯で忘れていた。
ありがたく夏樹の手の中から拾い上げポケットにしまう。
にしてもなんかテンション低いな。
悪い出来事でも散歩中にあったのか。
「あ、アクセサリーで思い出した。衣装作り!」
「あー、確かにそろそろしないと間に合わないね」
かのんのいう通り、直近の大会に決まったことで既に衣装作りに取り掛からないといけない。2人はダンスの練習で必死だろうし、基本の作業は僕になるだろう。
「まずは衣装デザインから考えないと……生地とかどうしようなぁ……」
「あ、それなら僕の家にくるといいよ!」
夏樹の家?
「きっと役に立つと思うよ!」
そう言って不敵に笑う夏樹をみんな不信には思うものの、その日は実際夏樹の家に行く日だけを決めた。
僕らはこの時知らなかった。それがあんな事態を引き起こすとは……。
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