「というわけで衣装作りを始めまショウ〜!」
「始めましょう」
どうもこんにちは。
唐可可の3分裁縫クッキングのお時間です。
本日は唐可可先生と助手の雨宮結でお送りします。
てれてってててて♪てれてってててて♪てれれってててててててんてれれれれん♪
あ、そういうノリじゃない?
だよね。
「結って裁縫出来るんだ」
「部屋は僕の好みで宝石系のアクセサリーばっかり埋めてたけど、リボンだってアクセサリーの一種だよ。もちろん手を出したことはある」
といっても、主に小物だけど。
それを考えみて今回は衣装を可可さん、小物のアクセサリーとドレスにつける特徴的な大きなリボンが僕、という采配になっている。
大雑把にいうと、ミシンをガンガン使う可可さんの横で僕は小物をチクチク手縫いするわけだ。
「そういうかのんは?」
「わたしは裾上げぐらいしか……」
「……前時代的な考えだけど、女の子が裁縫できないって珍しく感じるな」
「わかるけど、それをいうなら裁縫できる男子のゆいちんも珍しいんじゃない?」
まぁ確かに。
「僕らも大人になるんだし、そういう前時代的な考え方はもう廃れていくのかな」
「大人……あっ!」
『大人』という言葉に反応して何かを思い出したかのんが鞄の中を探る。
そしてその中から一枚の紙を出して僕らに見せた。
「なにそれ?」
「代々木スクールアイドルフェスの応募申請書。メンバーの名前とチーム名、あと顧問か引率者の名前を書かないといけないんだって」
スクールアイドルとはいえ部活動だからそういうのがいるのか。
確かに運営が事前に集めていないとイベントとして成り立たないもんな。
「メンバーは決まってるしチーム名は後でいいとして、大人の人は誰にしてもらうかっていうのを相談しておきたくて」
「普通に考えたら理事長じゃないデスか?」
「でも理事長はまだ私たちを部として認めてないし……」
「かののんのお母さんとかは?」
「それはダメ。部活のイベントだから少なくとも私たちの活動の関係者じゃないと」
うーーん……。と腕を組んで悩むみんな。
「僕がやろうか?引率。部活の関係者でしょ?」
「引率者は成人、つまり18歳以上じゃないとダメなの」
「ならゆいちんはダメだね……僕ら全員高1だから満17歳だ」
「いや僕はもう18歳だけど」
「…………え?」
「「「えええええええええええええええええっ!?」」」
全員の視線が集まる。
「ほら、学生証。18歳でしょ?」
証明に学生証を机の上に置くと全員が食い入るように見始める。
やめろよ。その写真緊張で写りが悪いんだよ照れるだろ。
「えええええっ!?ほんとに18歳だ……結って先輩だったの!?」
「ゆいちん僕と同じクラスだよね!?高1じゃないの!?」
「高1だよ。ほら、前に僕が中学生の頃いじめられてたって話をしたじゃん?その時に一年ほど不登校になっちゃって。お陰で高校受験に遅れが出てみんなよりひとつ上なんだ」
僕の言葉に絶句するかのんたち。
まぁ不登校の背景が暗いから仕方ないか。
「まぁ過去のことは引きずってないから安心しなよ」
「「「そういうことじゃない(デス)!!」」」
うわお総ツッコミ。
「というかゆいちんいじめられてたの!?まずそこからなんだけど!?」
あ、この話、夏樹には初めてか。
「夏樹はいつか僕の部屋に呼んでそん時に話すから」
「あの〜……」
「ん?なにかのん?」
「結先輩ってお呼びした方が……」
「いや同学年だって。先輩じゃないから」
こうなるから自分からは言わなかったんだよなぁ……。
「ほら!もう本題に戻るよ!まず衣装はこの案でいいかな?」
強引に話の流れを引き戻し、可可さんとかのんの2人に可可さんの持ってきた衣装案を見せる。
「うん、すっごくいいと思う!けど……」
「けど?なんでも言って」
「じゃあ……私、結のアクセサリーつけたいなって」
「僕の?」
かのんは不安そうにこちらをみながら子供がおねだりをするように語る。
「あの部屋に入った時、凄くいいなって、つけてみたいなって思ったの。だから……ダメかな?」
「ゆいちん、熱烈なラブコールですよ〜」
「いやいや!そんなんじゃないから!」
手を大袈裟に横に振って否定をするかのんをそっちのけで僕は考えていた。
あの部屋に置いてあったアクセサリーは基本的に天然石や花をレジンで固めた石を使ったもの。
僕自身が好みとしているため、リボンよりも勿論練度は高いのでかのんの心だってリボンでは動かなくても、ということはあるだろう。
だがしかし……
「今回の衣装と僕の作風はちょっとなぁ……」
合わないだろう。僕の天然石というのは煌びやかさの象徴だ。
一方今回の衣装は小さくとも温かな光のような、心細さの中にある強い意志がモチーフだ。
正反対すぎて浮いてしまう。
しまうが……
「正直な話……俺は凄く作りたい」
「結サン?」
かのんが前に進もうとしている所を見て、俺だけこのまんま、なんて嫌だ。
そんな思いがないわけではない。
「一度その案持ち帰っていいかな?この衣装にあうアクセサリー、俺が考えてみる」
なんにせよ挑戦自体はしてみるべきだ。そう思った。
決意を固めてそう提案すると可可さんと夏樹がポカンとしていた。
あ、あれ……?ダメなの?
「結!一人称!一人称!」
耳元で囁くかのん。
一人称……?あっ、やべ。
「ゆいちんってそんなキャラだっけ?」
「可可、初めて見ました」
「2人とも忘れて」
「「イヤデス」」
完全にミスったぁ〜!
千砂都さんだけには隠し通そう……!
「それじゃあ作り始めようか!」
結局話の脱線が悪い。
そう思った僕はまた衣装の話に戻すことにしようとした。
しかし、
「イエ、今日はこれで帰りマショウ」
と突如そう言い放ったのは可可さんだった。
「なんで?材料は多分揃ってるよ?」
「そうではなク、結サンのアクセサリーに合うように、可可もデザインを考え直したいのデス」
「僕のためにそこまでしなくとも……」
「可可も結サンのアクセサリー、つけたいデス」
それは……
「ダカラ最高の形でつけたいのデス。ダメですカ?」
「いや……」
むしろ……最高だ。
これは、絶対に完成させるしかない。
ただ一つ……心配事がないわけではない。
でもこれは……
「早速帰っていろいろ考えてみる。3日後にまたここでいいか?」
「うん!」「大丈夫デス!」「僕ちんはいつでも〜!」
言わない方がいいだろう。
さぁ、忙しくなるぞ。
「ただいまです!」
「お〜おかえりぃ〜。どうしたそんな急いで」
「アクセサリー、作ろうと思って!」
19時。すっかり日が落ちきったころ、僕は駆け足で自宅で帰った。
家に入るやいなやテレビを見ていた叔父さんが驚いてこちらを振り向く。
「アクセサリーぃ!?お、おう、それは……よかったな……!?」
過去のこともあってから褒めるべきなのかそうでないのか困ったような声を出す。
そんな叔父さんを放っておいて僕は一目散に階段を駆け上がり自室に入る。
即座に机に向かって座って紙を引っ張り出して考え出す。
まず前提として煌びやかなのはダメだ。
ピアス、ネックレス、ブレスレットは除外。
そうなると1番分かりやすいのは何かに埋め込む形だ。
埋め込むとしたら頭の髪飾りだろう。可可さんなら大きなリボン、かのんなら……
いやまて、チョーカーにつけるのもありか?いっそに胸につけてライトが当たると反射するのも演出として綺麗かもしれない……!
あ、まてよ。この型も……!
いくつか案を纏めてデザインを描いていく。
その中で1番最初にできたデザインを前にため息を漏らす。
「うん……すごいい感じだ……!」
即興とは思えない。
自分でもブランクありの出来とは思えず驚く。
いやむしろ……
「やっぱブランクの間も……作りたくて作りたくて……いま爆発しちゃったのかな……?」
自分で言ってておかしくなって笑ってしまう。
やっぱ俺、こういうの好きなんだな。
「よし、一旦試供品作るか」
一度実物を見て訂正を繰り返そう。
こういうのはトライアンドエラーだと昔から決まっている。……というのは僕の持論だけど。
「そうとなれば……道具、どこに置いてたかな……」
引き出しの奥にしまっていて埃かぶっているがまだ使えるであろう加工道具の入った箱と、埃かぶっていて汚い天然石を見つけた。
この天然石はいつかの僕が買ったものの、使い忘れていたものだろう。埃で本来の綺麗な色ではないが……。
どうせ試供品なのだからこれにしよう。
まずは既に完成されたリングの型と同じ大きさに天然石を削る。
加工道具の箱の中から削り出す、ノミのような道具を取ろうとして手が止まる。
あ、あれ……?
何やってんの僕?大丈夫、箱から出すだけだから。なにも危険なことないからビビらなくていいって。なぁ……しっかりしろよ僕。
無意識に手が震える。
「…………ッ!」
無理矢理体を動かして削る道具を手に取る。
その瞬間、鼓動が早まった。
『助けて!コイツ、俺を殺そうした!』
違う……!
『凄い血……結くん何したの!!!!』
違う違う……!!!!
視点が定まらない。呼吸が出来ない。
違うんだ。俺は……!俺は……!
『やっぱりコイツは普通じゃない!近寄るな!』
僕は!僕じゃない!僕は何もしてない!!!
何も…………してないんだ……ッ!
「カッ……ハッ……ヴォエ"ッ!」
足になにか液体が落ちた感触がする。
同時に喉が焼けるように熱い。
意識が…………僕は……
「ごめん……なさ……」
バタッ…………!!!
「おーう結、アクセサリー作り順調かー?晩飯出来たぞ〜。…………無視するなよ。部屋入るぞ。いいか?…………開けるぞ〜!…………結お前いい加減に……結?おい結!どうした!!!!返事しろ!おい結!!!結!!!!!!」
次回、4/27 水曜日