結とかのんの始まり物語   作:cinnamon

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第十六話 僕とタキシードとキミ

 

 

「……僕は退院早々何を見せられてるの」

 

翌日12時。僕は無事退院の手続きを終えて病院を出るとかのん達から放課後に千砂都さんのたこ焼き屋にくるように連絡が来ていた。

 

と、いうわけで実際きたのだが……

 

「なんでかのんがたこ焼き焼いてるの」

「たこ焼きって作ってる間見られることが多いでしょ?つまりずっとお客さんの視線を感じながら作業するようになるわけ」

「それがかのんの歌えない状況の突破口になると」

 

えぇ……?いや……そんなわけないよな?

 

「このプレッシャーの中でちゃんと作れるようになれば……」

「歌えるように……!」

「歌えるように!」

「歌えるヨウニ〜!」

「歌えるようにっ!」

 

 

 

 

 

 

 

なりませんでした。

はい。そりゃそう。

ただたこ焼き焼いただけで解決するなら楽すぎる。

 

「やあい、うたあべつみはいえふね」

 

可可さん、一回食べ物飲み込もう。

何言ってるか分かんないから。

 

「そんな簡単じゃないか……」

「でもこれおいひ〜よ〜!結ちんもどうぞ〜!」

「あ、サンキュ。…………ってうわぁビックリした!?」

 

夏樹!?急に出てくるな!

 

「なんで声かけてくれないのさ〜!結ちんったら酷いよ!」

「ごめんって。てっきり誰か呼んでるものかと」

「たこ焼きに誘われてきてなかったら僕バブられてたじゃ〜んっ!」

 

たこ焼きを頬張りながら駄々をこねる夏樹。

 

いやお前も食べながらしゃべるな。汚いだろ。

 

「で、なんでかののんがたこ焼き焼いてるの?」

「人前で歌う練習なんだと」

「…………どゆこと?」

「そうなるよな。人目に慣れるためにたこ焼き焼こうってことだよ。案の定ダメだったけど」

 

たこ焼きを食べ終わった夏樹は水を飲んでクールダウンしたあと、顎に手を当てた。

 

「う〜ん……僕が思うにかののんが歌えないのはひとえに自信がないからだと思うんだよね〜」

「自信……それなら可可に名案ガ!」

「おっクーちゃんも思い付いた?多分僕と一緒〜!」

 

可可さんと夏樹が同じ考え?

僕にはさっぱりわからないが自信をつけるために何かするんだろうか。

 

ひとまずなにか2人で話し合った後可可さんと夏樹は僕らの手を引っ張ってとある場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「衣装!?」

「そそ!可愛い衣装を来て自信を持てればきっと人前でも歌えるはず!」

「そんな上手くいくのかなぁ……」

「可可のオススメを試着してみまショウ!」

 

渡された衣装をもって試着室に入るかのん。

 

まぁたこ焼きを作るよりは信憑性はあるかもしれない。

半分私欲な気もするけど……。

 

少しするとかのんは試着室から頭をだけをだした。

 

「どうしマシタ?」

「いや、衣装、可愛いなーって……」

「デショデショ!?」

「早くみたい!」

「……まだ着てない」

「ナゼ!?」

「あっ!アクセサリーとかもほしいんだ!」

「ナルホドです!」

 

多分違うと思うぞ。

 

心の中で何度もツッコんでしまう。

直接ツッコめない理由?

あ〜……今僕がその状況にあるからかな。

 

「結ちんやっぱスタイルいいよね〜!次こっちのボトムス着てみてよ」

「着せ替え人形か僕は……」

 

店に入ったさい、「そういえば夏服買ってないな……」とか口走ったばっかりに夏樹が手を引いて僕を着せ替え人形にしたせいで別行動になっている。

と言っても互いに横の試着室なのであまり別行動感はないが。

 

 

「おぉカッコいい!結ちん、背は高いし自毛は茶髪寄りだし、素材はこれ以上ないよね〜!」

 

 

僕がこのファッションショーに付き合っているのは夏樹のセンスが想像以上によくて本気で買ってもいいなと思ってるからだ。自分がカッコよくなって行くというのは存外、気分がいい。

 

コイツの親父は有名ファッションデザイナーだったっけ。家がデカいことばかりに目が持っていかれたが、コイツも血は受け継いでるわけだ。

 

「ゆ、結……助けて……!」

 

ごめんかのん。無理。僕これちょっと楽しくなってきた。おしゃれ面白っ!

 

「2人とも……!」

「「はいどーぞ!!」

 

かのんの悲痛な懇願も虚しく、無邪気にアクセサリーを渡す可可さんと千砂都さん。

 

「そういうことじゃあなくて……」

 

「結ちん次これ着て〜!タキシードぉ〜!」

 

「可愛い服すぎて……」

 

「僕の夏服買う話だったよな?コスプレ大会じゃないよな?」

 

「わたしには無理だよぉ〜っ!!!」

 

「突撃ぃ〜っ!」

 

「あ、ネクタイこれね!ベルトもはい!ほら着て着て!」

 

 

あーもう収集つかなくなってきた。諦めよう。

 

僕は無理矢理押し付けられたタキシードを持って試着室に入った。

なんかかのんの悲鳴が聞こえたけど気のせい気のせい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったぞ〜。着方これで合ってるの?タキシードとか初めて分かんないんだけど」

「結ぃ〜!!」

 

試着室からタキシードを着て出ると既にかのんは着替え終わっていて涙目になってこっちに助けを求めていた。

 

……そこのカメラを構えてる3人組から察するに、撮影会でもしてたんだろう。

何やってるんだ本当に。100歩譲って可可さんと千砂都さんはいいとして夏樹は僕を待ってろよ。

なんで一緒になってかのんを撮ってるの。

 

 

「千砂都さんも可可さんも夏樹も全員そこまで。流石にやりすぎだ」

 

ローアングルからかのんを撮っていた全員の頭をポカリと軽く殴っておく。

 

「おぉ〜っ!結ちんカッコいい〜!!!」

 

ぱちぱちぱちと拍手を夏樹からもらう。

普通に嬉しいなコレ。

嬉しいけどタキシードが似合う男ってちょっと恥ずかしくない?

女々しかったりするかコレ?

 

「結くんすごく似合ってるよ!」

「男でなかったラ、一緒にスクールアイドルしたいぐらいデス!」

 

お、おう……!

そんな褒められると……こう……むず痒いな。

 

「かののんはどう思うよ〜!?いいでしょ結ちん〜!」

「えっ?あっ、うん」

 

えっ、何その反応?

 

「あ、あれ……?僕ダメだった……?やっぱ似合ってない……?」

「いやいやいや!そうじゃないの!ただ……凄くカッコよくて……なんていえばいいか分かんないっていうか……」

 

………………なにそれ。

その…………そっちが照れながらいうと……僕もマジで恥ずかしいというか……!!

 

「…………結くんもまぁまぁだと思ってたけどかのんちゃんもだね」

「えっ、なにが!?」

「ナツキ、こういうのを日本語で何と言うのデスか?」

「『天然たらし』、かなぁ……」

 

外野うるさい!

 

「ま、まぁ褒められたのは嬉しい」

「結ちん耳赤い」

「うっさい!!!!!」

「結落ち着いて……」

 

誰のせいでしょうね!

まったく……タキシードなんて2度と着ない。

 

 

「ねね、結くん」

「ん?なに千砂都さん」

「かのんちゃんはどう?」

「どう……?」

「可愛い?」

「ちぃちゃん!?」

 

あ、そうか。

着替えたのって僕だけじゃなかった。

こういうのって女の子はちゃんと褒めないと機嫌を損ねるらしい。

そこを千砂都さんは配慮したのだろう。

 

あらためてまじまじ見ると新鮮味がある。

いつも会う彼女は制服姿で、私服姿であってもパーカーなどの露出は少なく、クール系のファッションが多い。

 

今回のような暖色でまとめた肩出しファッションにスカートなんてのはかなり珍しい。

 

総評すると……

 

「可愛いと思うよ」

 

口に出してみるとかのんは照れだし他3人は拍手し始めた。

 

やめろ。誓いの言葉じゃないんだぞ。

 

「ホント?どの辺が?」

「えっ」

 

かのんが引かない……?

照れながらも具体例を示せと上目遣いで訴えてくるかのん。

 

「その……全体的に?」

「逃げた!」

「結ちん逃げた!」

「逃げマシタよこのヒト!」

 

もしかして僕の味方0人?

 

「そっか……そっかぁ……!えへへ」

 

本人は聞いたくせに照れてるし……。

 

「結ち〜ん!!!かののんはやっぱり可愛いねぇ〜!!」

「もう勘弁してくれ……」

 

精神の限界を迎えた僕はぐったりと肩を落としながら店を出たのだった。

 

 




次回5/11水曜日19時です
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