結とかのんの始まり物語   作:cinnamon

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第二十二話 おもしれー女、グソクムシだった

 

 

放課後になった僕と夏樹はいま、結ヶ丘の校門前にいた。

 

「やだ〜!帰らせて〜っ!」

「ハイハイ、いいから腹くくれ」

 

必死に抵抗する夏樹の手を握り仲良く手を繋いで校門を跨ぐ。

校門で男2人が騒いでいるものだから当然女子校らしく注目も集まるわけで。

 

「ほら、見られてるだろ。ちょっと静かにしろ恥ずかしい」

「なら帰して〜!」

 

コイツいつまで駄々こねてんだ!?

そう言いそうな気持ちをグッと抑えて腕を弾く力を強める。

 

「お疲れさまです。お二人とも」

 

そんな時に、校舎側から声をかけられた。

何者かと振り向くとそこには葉月さんがいた。

 

「あまり校門で騒がないでいただけますか。よくない噂がたちます」

「それは申し訳ない葉月さん」

「夏樹さん、あなたが原因でしょう。しっかりしてください」

「恋怖い〜!でもこれには正当性あるから!」

 

……夏樹?恋?

 

「待って、夏樹、葉月さんと知り合い?」

「知り合いも何も、恋は僕の……」

「同じ小学校でして」

 

夏樹の言葉をスパンと遮るように葉月さんが言葉を発した。

夏樹は言葉を遮られてムッとしたのか、「そう、まぁそういうこと」とそっけない返事をした。

 

「へぇ〜、夏樹って葉月さんにはあだ名つけないんだ」

「僕がつけ始めたのは恋とであった後だからね〜」

 

そうなのか。あだ名といえば小学生というイメージがあるからてっきりなにか理由があるのかと思ったが、単純な順序の問題だったのか。

 

「それより、夏樹さんが入るのは許可していませんが」

「一人も二人も一緒ってことじゃダメですか」

「…………」

 

確かに校門を跨ぐ許可が出ているのは僕一人。

夏樹は無許可だ。

 

そう言うこともあってか葉月さんは少し考える仕草を見せる。

 

「そういうのって恋が決めるものなの〜?」

「…………確かに普通は教師が決めることです」

「じゃあ保留ってことで今回は見逃してください!」

「……今回だけですよ」

 

こちらの必死の頼みに苦虫を噛み潰したような苦悶の表情をして葉月さんは答えた。

そしてそのまま旧校舎を指差して

 

「では早く移動してください。校門で騒がれるのも、見逃している私の前にいるのも、なかなかに不都合です」

 

確かにそれもそうだ。

 

「ありがとうございます!夏樹、いくぞ」

 

素早く退散しようとまた夏樹の腕を引っ張る。

意外にも夏樹はそれに抵抗せず、なんというか……葉月さんを見つめて上の空、といった感じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぃーっす!遅れた」

「「「うぃ〜っす!」」」

 

すみれさん以外とうぃっすを交わしておく。

無事部室に着いた僕は古びたドアを開けるとまず見えたのはホワイトボードと、そこに書かれた数字。「かのん 34」。

 

凄いな。勝つとは思っていたがここまで圧勝か。

 

「あ、ギャラ子おひさ〜」

「え?あぁあの時の!あなたも顧問なの?」

「まぁそんなもんだよ」

「それで、話は今どこまで進んでるんだ?」

「ちょうど部長もかのんにしまショウという話が始まったところデス」

「お、それいいな。かのんいいよな?」

「ちょっと待って!そんななし崩し的に……!」

「……納得できないわ」

 

ん?

ポツリと呟いた平安なさんの言葉に空気が変わる。

 

「納得できないったら出来ないの!どうして!?歌だってダンスだってわたし、全然負けてないでしょう!?」

 

うーん、それはそうなんだが……

 

「それも全部、アピールタイムでみんなに見てもらっての結果だよ」

「恐らくオーラとか華とか、かのんの方が可可やあなたよりセンターぽいのデスよ〜」

 

図星だったのか「うぐっ!?」とダメージをもらったかのようによろける平安奈さん。

 

カリスマ性と以前言ったが、かのんのそれはこの中では1番だ。

それはきっと誰のためでもなく、自分のために歌っているから。

仕方ないといえば仕方ない。

 

「まぁいつかセンターは変わるかもしれないし……」

「やめる」

「えぇ!?」

「ふん!センターになれないんだったらこんなところいる意味ないもの!」

「あーあ……」

 

予想通りだと思わず夏樹が頭を抱える。

僕も同じことをしたい。

 

荷物を抱えて出て行った平安奈さんを追いかけてかのんは頭をぶつけているし……どう収集つけるのこれ……。

 

「兎にも角にも今日は練習……ってわけにもいかないな」

 

窓から外を覗く。

雨だった。

僕らの未来を比喩するかのような土砂降りの雨。

 

こうなったら気分もパフォーマンスの質も下がってしまう。

 

「今日はこの調子だと練習は無理だね」

「帰りまショウ」

「ちぃちゃんいつも長い時間付き合わせちゃってごめんね」

「2人のために力になりたいの。気にしないで。じゃあ今日はこれで」

「……僕らも帰ろうか」

 

 

 

 

 

 

 

雨の中、僕たちは帰路についた。

夏樹と僕とかのんで、可可さんと別れる時に話したことを思い出す。

 

 

 

 

『センターを任せる、ね』

 

かのんの口から出た言葉を復唱する。

結ヶ丘の校門を傘をさして渡る時にかのんが言い放った。

 

『だって、センター任せるっていえば、すみれちゃん辞めないんだよ?だったら任せようよ』

『それはどうでショウか?センターはスクールアイドルの憧れ。誇りを持つべきデスよ』

 

以前かのんが、中途半端な気持ちでやるなんて他の部活に失礼だ、なんて言っていたことがあった。

 

これも同じだ。人間関係を優先して妥協をしていいことなんてない。

 

 

『でも、すみれちゃんどうしてそこまでこだわるのかな?』

 

センターにならなくていい。確かに口で言うのは簡単だけど……彼女にとっては相当重要なことらしい。プライド……なんだろうか。

 

「……ん?ちょっとみんな!」

「うわっ!?」

「なに!?」

 

夏樹が急に僕ら2人の前方の傘の骨組みを掴み引き下ろした。

必然的に傘で前方の視界が遮られてしまう。

その行為で過去の回想から現在に引き戻される。

 

「何すんだよ夏樹!危ないだろ!」

「あれ!あれっ!」

 

あれ?傘を持ち上げて前方を見ると交差点を渡る平安奈さんがいた。

 

……もしかして傘で視界を隠したのって向こうにこっちを見られてもバレないから?

落ち込んでる風には見えないけど……

 

「平安奈さん……」

 

次の瞬間、かのんは駆け出した。

僕の横をすり抜けて。

 

「ちょっ、かのん!?」

「尾行だ尾行だ〜っ!」

「夏樹!?尾行って……よくないぞ!プライベートなんだからさぁ!」

 

かのんの後をついていくと平安奈さんの後ろの看板にかのんが隠れていた。

 

夏樹と僕が追いついたと同時、平安奈さんが止まって、こっちを振り向いた。

 

バレた!?

 

焦って傘を盾にして隠れる。

 

「………………」

 

しかし平安奈さんは何事もなく無言で僕らを横切った。

 

「なにしてるんだろ」

「尾行よりはマシなことだろ」

「お散歩とか?」

「雨の日に?蛙じゃないんだから」

 

3人でヒソヒソと看板裏で話し合う。

するとまた平安奈さんはUターンした。

 

「ちょっ!?喋るからバレた!?」

「いいから隠れろ!」

 

素早く看板の裏に雪崩れる。

 

「あの〜」

「あ、はい!」

 

ん?平安奈さん……話しかけられてる……?

 

「駅はどっちでしょう?」

 

道案内……らしい。声は雨音でよく聞こえないけどキレ気味に平安奈さんが駅の方向を指差す。

「スカウト」という言葉が聞こえたような気もするが……。

 

 

「あっ、ギャラ子行っちゃう!」

「追おう!」

「あっコラ待て2人とも!」

 

 

 

 

 

 

「ここは……?」

「神社……だな」

「お参りにでもしに来たのかな……?」

 

狛犬……犬なのかこれ?

それの後ろに隠れる僕ら。

ストーキング対象は以前、平安奈さん。

 

神社なんかに来て一体何を……?

 

『グッソクムシ〜♪グッソクムシ〜♪』

 

…………あん?

 

『グ〜ソクソクソクグソクムシ〜♪』

 

しれっと平安奈さんの後ろに回り込んでみる。

音源はスマホ?後ろから覗き見てみると……なんというか……グソクムシの着ぐるみ?をきた小さな平安奈さんが奇妙な踊りを……だな……ふふっw

 

 

「ん"ん"っ!」 

 

笑ってしまいそうになった所を咳払いで誤魔化してみる。

 

「ギャラ子可愛い〜っ!」

「これがショービジネス?」

 

2人とも無敵だな。尾行してきた自覚ありますか???

 

純粋に褒めてる2人はいいけど……ごめん僕ちょっと笑いそうだ……!!!!

 

テレビ出演ってそういう……!!!

 

「み〜た〜な〜ぁ〜っ!!!」

 

もう!ほら!平安奈さん怒ってるって!謝って!ほら!謝って!!!

 

「グッソクムシ〜♪ってこれギャラ子だよね!何歳?ちっちゃ〜い!」

 

火を注ぐなバカ夏樹!

 

「あんたねぇ〜〜〜っ!!!」

 

 

も、もうしら〜〜〜んっ!!!!!!




次回更新は5/27金曜日19時
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