結とかのんの始まり物語   作:cinnamon

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第二十五話 キミなら出来ると思うよ

 

「というわけで説得は失敗しました!」

「失敗しましたじゃないっ!」

 

翌日、学校に着くや否やすました顔で元気よく夏樹は平安奈さんへの説得の失敗を報告した。

 

「任せてって言っただろお前……」

「言ったかな〜?言ったっけ〜?」

「お前……」

 

これはやっぱり平安奈さん諦めるしかないかぁ……。

 

「今日は雨だし、練習も無さそうだね」

「練習も無い、平安奈さんも来ない。よくないことしかないな」

 

思わずため息が出る。

なんで雨の日っていうのはこんなに気分が落ち込むものなんだろう。

 

「夏樹〜結〜先生が職員室で呼んでるぞ〜」

「ん?」「なに?」

 

扉から入ってきた同級生が教室中に聞こえるように伝えた。

 

先生が呼んでる?何のよう……かは分からないけど、この2人ということは多分……

 

 

 

 

 

 

 

 

「お察しの通り、生徒会だ」

 

職員室で待ち構えていた先生はこちらが口を開くより先にそう言った。

 

「2ヶ月ほど先だが、ウチにはとあるイベントがある」

「はい先生!」

「はい時雨くん」

「文化祭!ですよね!」

「そう正解。とっくに準備期間なわけだ」

「にしても早くないですか?まだ2ヶ月も前ですよ」

「そうはいうが雨宮。何をするかぐらいはもう決まってるのか?」

「何を……?」

「ゆいちん忘れた?生徒会入る時に言われた言葉」

 

生徒会入る時に……?

えーっと……うーんと……思い出せ〜っ、思い出せ〜っ!

 

「出し物だよ。ホントに忘れてたんだ」

「出し物……あぁなんか一つ出来るんだっけ」

 

すっかり忘れてた。

 

「そうは言っても成り行きでなった生徒会、やりたいことなんて……」

「なら僕が決めちゃっていい?」

「常識の範囲内ならな」

 

僕は特にしたいことはないし、夏樹の好きにさせてやろう。

 

「決まったら報告しに来い。あと夏休みは準備期間だからどっちか1人はいてもらいたい。夏休み中、2人とも旅行とかの予定はあるか?

「ないです」

「同じく」

「じゃあ変わらないな。夏休み中どっちか、もしくは両方学校に呼び出すかもしれんがいいか?」

「暇だったらいくよ〜」

「右に同じ」

「おし、じゃあいい。言いたいことはそれだけ解散!」

 

手をひらひらとさせて用無しを宣言する先生。

でもまぁ、2ヶ月先の文化祭よりも先に。

 

「まず目下のところの平安奈さんの方が先だよなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆいちんはさ〜」

「ん?」

「雨って好き?」

 

放課後、結ヶ丘へ向かう途中、隣で傘をさして並ぶ夏樹が突然口を開いたかと思えば、そんなことを言った。

 

「どうした急に」

「ほら、ゆいちんの苗字って雨宮じゃん?だから雨好きかなって」

「……まぁ好きではないな。濡れるし暗いし。少なくとも、今降ってるコレを止められるなら、今すぐにでも止めるよ」

「僕は好きだよ」

 

僕の言葉の後にすぐさま割り込んできた。

 

「……それはなに?僕が好きだから〜とかいうしょーもない理由?」

「違うって〜!ゆいちん自意識過剰〜!」

「お前後でぶっ飛ばすからな。……で、なんでなんだよ」

「……雨の日って外に出なくて済むでしょ?」

 

まぁ確かに。

もっとただしくいえば、「外に出ない理由が正当化される」だけど。

 

「イベントもなくなって、ずっと家に居られる。だから好きなの」

「それは……」

 

家族といられるからか?と茶化そうとして言葉に詰まった。

以前、コイツの家に行った時のことを思い出したから。

家族写真を、倒していたのを思い出したから。

 

コイツにとっての家族とはなにか分からないけど……。

 

いいこと、ではないよな。

 

「さて、この辺かな」

 

僕が考え込んでいるのを知ってか知らずか、会話を不自然にきって夏樹は立ち止まった。

 

この辺、の意味を理解しかねて周りを見渡す。

それはなんの変哲もない、いつもの商店街。

近くにアイドルショップとかクレープ屋があるだけの大通りだ。

 

「なぁ夏樹、この辺ってなにが……」

「こっちこっち」

「うおっ!?なんだよ!?」

 

腕を引っ張られて路地裏に引き摺り込まれる。

結局僕は夏樹の言葉の真意を知らないままだ。

 

「夏樹、一体なにして……」

「静かに!隠れてるんだから!」

 

隠れて……えぇ?

一体誰から……?

 

「ほら来たよ!」

「だから何から隠れて……あぁ、なるほど」

 

路地裏から顔を出すと納得した。

こんな雨の中、金髪をたなびかせる女の子なんて、1人しかいない。

 

平安奈さんだった。

 

「で、隠れてる理由は?」

「僕は任せられた分の仕事はした。あとはセンターの仕事」

「だから理由を答えろって」

 

悪態をつきながらもつい気になって平安奈さんの方を覗く。

 

なにか見てる……?ここからだと丁度平安奈さんの体が重なって画面が死角だ。

 

『輝きのシューティングスター追いかけて星になる』

 

このフレーズは……

 

「クーカーの映像、もうネットに上がってるんだね」

「あぁ、話題性もあるみた……い……で……」

「……?どうしたのゆいちん」

「いまの、見たか?」

「いや?なんかしたの?」

「…………完コピ」

 

文字通り、画面の前で平安奈さんはクーカーのダンスを、Tiny Starのフリを、まるっきりコピーしてみせた。

練習の時も思ったけど……

 

「上手いし……なんだよ、結局やりたそうじゃんか……!!」

 

震えた。

じっとしていられなくなって立ち上がる。

そのまま僕は平安奈さんへ一直線へ駆け出して……!

 

「はいストップ」

「ってわぁっ!?」

 

服の袖を夏樹に摘まれて止められた。

出鼻をくじかれた僕はもう抗議しようと夏樹を振り返ると、

 

「それはゆいちんじゃなくて、やるべき人がやるよ」

「やるべき人?」

 

「みーちゃった!」

 

平安奈さんの方から聞こえた、平安奈さんとは違う声に振り返る。

 

かのんだった。

かのんにフリを見られて平安奈さんはギョッとしたが、すぐさま平静を装った。

 

「ここにいると思ったんだ」

「……しつこいわよ」

「実は話があって」

 

話?確かに平安奈さんに積もる話はある。あるというか、むしろ僕が今しに行きたい!

 

「まぁまってよゆいちん、見守ろ」

 

そんな思いを完璧に察知して、いやむしろこうなることを見越して隠れておいたのか、夏樹は僕をなだめた。

 

次の瞬間。

 

「私、こういうものです!」

 

 

かのんが頭を下げた。

彼女の突然の奇行で僕は頭が真っ白になった時、今度は背中を叩かれた。

 

「ほらいまっ!いくよ!」

「お、おう?」

 

夏樹に言われるがまま立ち上がって彼女たちの元へ。

 

「すみれさん、あなたをスカウトに来ました」

 

遅れてきたのか、可可さんと千砂都さんと並ぶ。

 

「あれ?2人ともここにいたんだ」

「まぁ偶然」

「僕は狙ってたけどね〜」

 

千砂都の問いに夏樹はケラケラ笑ってVサインをする。

狙ってた……?この状況を?

 

「クーちゃん」

「なんでショウ?」

「ギャラ子がスクールアイドルを舐めてたこと、怒ってくれた?」

「もちろんデス!それはもう骨の髄まで教えてやりマシタ!」

「ん、なら僕からはいいや。あとはかののんの仕事」

 

腕組みをして2人の方を向き直る。

……全部夏樹には想定済みだったみたいだ。

 

「私たちはスクールアイドルを続けるために結果を出さなくてはいけません。ショービジネスの世界でのあなたの知識と技術で、協力して欲しいんです!」

 

……スカウト。そうかスカウト。

平安奈さんがこの辺をずっとウロウロしてたのは……!

繋がった。だから彼女を……!

 

「だから言ったでしょ!私は……!」

「センターが欲しかったら、奪いに来てよ!」

 

一言。一喝。

彼女のそれを聞いた夏樹は、隣で笑みをこぼしていた。

 

「すみれちゃんを見て、私思った。センターやってみようって。だから奪いに来てよ!」

「馬鹿にしないで!見たでしょ!コレでもショービジネスの世界にいたのよ!アマチュアの駆け出しに負けるわけない!」

「じゃあ試してみてよ」

 

試してみてよ。その言葉を聞いた夏樹は、

 

「クックックッ……!あっはっは!!」

 

大笑いしていた。

 

「いや最高だよかののん!いうねぇ!流石だねぇ!」

「夏樹くん!?いつの間に……!?」

「どーよギャラ子。センターってのは、()()()()()()だよ」

 

夏樹が前へでて、平安奈さんに近づく。

 

「僕は、キミなら出来ると思うよ。平安奈すみれ」

「私……なら」

 

夏樹が……名前を……!?

 

夏樹の言葉にしばし考え込んだ平安奈さんは、照れ隠しのようにそっぽ向いたまま……

 

「……いくら出すのよ」

「えっ?」

「いくら出すったら出すのよ!スカウトっていうのなら当然契約金は必要よ!」

 

金とるのかよ。

 

「あるよ」

 

あるのかよ。

……えっ、あるの?

 

僕の驚きも束の間、かのんは平安奈さんに寄って、手を開いた。

 

……お守り?これ……昨日見た。

 

「うちの神社の……!」

「コレでどう?」

 

……やられた。

僕じゃ思いつかなかったかもしれない。

これが、センターとしての、カリスマ性。

 

「参ったな、平安奈さん、これに勝たなきゃいけないとは大変だ。願掛けはしときなよ」

「………すみれでいいわよ。あと、これ全然聞かないわよ?」

「そう?」

「だって……」

「あっ、おんなじデスね!」

 

平安奈さんの鞄にも、お守り。

たしかに、まだ願いは叶ってない。

でも、それは、まだってだけだ。

 

不意に光が目に差し込み、瞬きをする。

 

やまない雨なんてないなんて、安っぽい表現じゃないけど。

 

「でも、まだ分からないよ」

 

この雨が止むってことを、信じたいんだ。

 

「諦めない限り、夢が待っているのは、ずっと先かもしれないんだから」

 

この空のように、いつか晴れることを────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────。

 

「……おまえこうなること分かってたのか?」

「なにが?」

「すみれさんの背中を押すのはかのんだってこと」

「んー、半分ね」

「半分?」

「ギャラ子の背中は僕じゃ押し切れないのは分かってたよ。だから最後はかののんに。まぁホントのところ、かののんがやってくれるかは半信半疑だったけど、そこはアレだよ」

「アレ?」

「センターを信じたってこと」

「……なるほどね」

 

苦笑してしまう。

賭けにしては勝算が低すぎるその行動を通してみせたのか。

時雨夏樹、僕が思ってる以上にとんでもないかもしれない。

 

「さ、晴れたしいまから練習しよー!」

「いまからぁ!?」

 

いくぞー!と言わんばかりに手を天に掲げ、千砂都さんが意気込む。

 

コーチが1番やる気あるのはいいことなのか悪いことなのか。

 

「まずはここから学校までダッシュ!いくよー!」

「待ってよちぃちゃん!」

「行くデス〜!」

「ちょっと!私を無視しないでよ〜!」

「ゆいちん、僕らも!」

 

全員が学校へ駆け出す。

僕も夏樹の後を追って地面を蹴り出した────

 

 

その時、ポケットが震えた。

ただしく言えば、ポケット中のスマホが震えた。

 

「あ、ちょっと待って」

 

先を走っているみんなが止まる。

スマホを取り出してみると、叔父さんから電話がかかってきたみたいだった。

 

雨で心配したのか、なにか急用なのか。

いろんな推測を立てて、僕は電話をとった。

 

「はい結です」

 

…………うんうん。

………は?

 

「えぇっ!?ちょっと待ってください叔父さん!!そんな急に……!?」

 

…………はいはい。

え、じゃあもう……ってこと!?

 

「明日!?明日っていくらなんでも……ちょっと!………切れてる……」

「ど、どうしたの結?」

 

血相を変えて電話をしていた僕を見かねてかのんが聞いてくる。

だが僕はそれどころじゃなかった。

明日……明日……!

 

「明日、ねーちゃんが来る!!」

 

 

「「「「「ゆい(くん)(さん)(ちん)のお姉さん!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、6/3金曜19時更新。



余談 先日お気に入りが50件超えました。100の半分です。ありがとうございます。3ヶ月連載してまだアニメ4話ぐらいしか進んでませんが大丈夫ですかね?ラブコメもそんなにしてませんし。
絶対二期までに12話行きませんよね?これ二期生どうします?

と、心配事は山ほどある訳ですが、ひとまず、今までの感謝をこめて、お気に入り50件ありがとうございました。
100件は遠い未来のお話かもしれませんが、失踪はしないつもりで頑張るので、これからもフラッと月水金の19時に立ち寄っていただけたら幸いです。
これからも感想評価お待ちしております。
それではまた、あとがきで会いましょう
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