結とかのんの始まり物語   作:cinnamon

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第三十話 エンジョイ☆サマー!! in 神津島!後編

 

「ようこそ〜!私たちの島へ〜!」

 

手を振って聖澤さんが迎えてくれた。

船がゆっくりと停止し、下船のアナウンスが流れたので荷物をまとめ終わった僕らは船の外へ出た。

船から足取り軽く港へ降りると真夏の太陽が直に当たり、まさに灼熱の南島というイメージが僕らを襲う。

 

すぐ近くにもうサニパの二人が迎えに来ていたので、

 

「今回はよろしくお願いします」

 

と、顧問らしく頭を下げておく。

 

「気は使わないで。同じライブに出るんだから」

 

そうは言っても親しき仲にも、という言葉があるぐらいだ。

頭ぐらいは下げておき得だと思う。

 

 

それから僕らは拠点の家に荷物を置かせてもらったあと、今後の行動を決めることにした。

 

「じゃあまず練習場所だけど……」

「その前に」

 

僕の言葉を遮って柊さんが前へ出る。

 

「ここに来たら皆んな羽根を伸ばして楽しんでもらいたいの」

「それが私たちの願いでもあるんだ。だ〜か〜らぁ〜」

「「「「な、なんでしょう……??」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「いっしょっしゃぁ〜!!!」

「遊ぶぞ遊ぶぞ〜!!!!」

 

海への道を全力ダッシュ!!!!!

まず最初!!やっぱ島といえば海!!飛び込みだぁ〜っ!!

 

ザッバーン!と大きな音を立てて聖澤さんが飛び込む。

そして下から「気持ちいいよ〜!!」と手を振ってくれる。

 

「……これ、行くの?」

「僕お先ぃっ!!!!」

 

聖澤さんと違い僕は少し助走をつけて前方向に踏み台を蹴って飛び出す。

 

宙に浮かんだ体は慣性の法則に従って前方へ放物線を描きながら……!!

 

ザッバーン!!!と景色が一転。

ぬるま湯のような温度が体を包む。

むぅ。水の中とはいえ、南島、冷たくてさっぱりというわけではないか。

 

水から顔を出すと柊さんが寄ってきて「随分危ない飛び込み方するのね」と言ってきたので「ちょっと度胸には自信がありまして」と返す。

そう、ストリートダンス中に出会った顔タトゥーの人に比べたらこのくらい……。

 

さて、一方かのんたちは……?見上げるとまだ駄々をこねてるらしく誰も飛んでいなかった。

 

「ちょっとアンタ、先いきなさいよ!」

「な〜んで可可なのデスか!?」

「……上騒いでるわね」

 

うーん……そうだ!

 

「最後までヒヨった奴ランニングプラス10本なー!」

「「「ええっ!?」」」

 

上からブーイングの嵐が巻き起こるが、聞こえない。

とっと飛べば済む話なのに。

 

「効果薄いな。20本ならよかったか?」

「あなた、実は鬼よね……」

 

そうですかね?僕は優しい方だと思うんですけど。

 

バシャーン!

 

と今度は控えめな音が後ろから聞こえた。

 

誰か飛んだかと思って振り返るとそこには子供が。

児童用の低めのジャンプ台もあるみたいだ。

 

「いいなぁ〜私あっちにしよ〜っと」

 

あ、かのんヒヨってる。

 

「センターは誰っ!?」

 

おっ、すみれさんが釘刺した。

 

「わたし……かな?」

 

そうですね。

 

「じゃあお手本見せなさいよ!!!」

 

そーだそーだ。

 

「かの〜ん!!子供用から飛んだら歌詞の締切短くするからな〜!」

「えぇ!?」

 

したから一応追いうち。

逃がさないからな。

 

「わたし……た"か"い"と"こ"ろ"き"ら"い"っ"!」

「いいからいくいく♪」

「うわぁっ!?た、助けてああっ〜っ!?!?」

「「かのん!ってあああああ〜〜っ!?」」

 

あ、三人纏めて落ちた。

 

「飛び込みというより、落下ね」

「全員最後までビビってたからプラス5本な」

「「「結(サン)の鬼!!!!」」」

 

 

なんとでも言え!

さぁ次は!

 

「んんっ〜!オイシイ〜!!マンゴーみたいデス!」

「いやパイナップル味ね」

「違うよバナナだよ〜」

「味音痴しかいないのか。これはキウイだ」

「これは島の特産品でパッションフルーツのアイスだよ」

 

あ、違った。

ポーチからスマホを出して「パッションフルーツ」と検索欄に入れる。

 

うぇっ、なんかいい見た目とは言えないな。果肉がコーンスープみたいだ。

味は甘くていいんだけど。

これはアイスにして大正解な食べ物だなぁ。

 

「サニーパッションはアイスまであるのデスか」

「な訳ないでしょ」

 

オチもついたので次!!

 

 

 

 

 

 

 

「って色々遊んだけど……」

「やっぱりゆったりするのが一番だよな〜」

 

島の高台から景色を一望する。

 

「風が気持ちいい〜!」

「というか結」

「ん?すみれさんどうしたの?」

「なにか私たちに言うことはないのかしら?」

 

ふふん、と胸を張ってくるすみれさんには悪いが……なんかあったっけ?

 

「あ、ランニングプラス5本はマジだけど」

「そうじゃないわよ!ほら、同学年の女の子が水着を着てるのよ!可愛いの一つぐらいあるでしょ!」

「お、おう……」

「なにその微妙な反応?似合ってないとでも言いたいの?」

「そうじゃなくて……かのんとかラッシュガード着てるし、そういうの、触れちゃだめかなって……」

 

今のご時世、そういうの厳しいしさ。

女の子を嫌な気分にさせるかもしれない行動ってのは結構神経を尖らせて常日頃警戒しないといけない。こう言う立場なら尚更。

 

僕が難しい顔をして釈明をするとすみれさんはサングラスをかけてモデルのように一回転した。

 

「なら私には言いなさい」

「じゃあ……似合ってる」

「安直過ぎでしょ!何処がいいとかないわけ!?」

「セクハラ案件になりたくないよぉー!」

「い い な さ い」

「はい……。スリットのある水着を着ることによってすみれさんの元の体系の良さが前面に出されていていいなと思いました……」

「よろしい」

 

なんの公開処刑?

満足そうにうなづくすみれさんに項垂れていると今度は可可さんが頬を膨らませて目に見えて不機嫌そうだった。

 

「あの、可可さん?」

「グソクムシだけが褒められてムカつきマス。可可には無いのデスか」

「えぇっ!?」

 

なにその嫉妬心!?

どんだけすみれさんに負けたく無いの!?

 

「可可じゃ魅力がないから仕方ないわよ〜」

「なんデスと〜!?結サン、可可には無いのデスか!?」

「はいっ!?え、えっと、可可さんも似合ってると思う!快活な可可さんらしくてすみれさんとは真逆に男性人気が出そうだと思いました!」

「ほら、グソクムシとは違って可可はモテモテなのデスよ〜!」

「はぁ〜!?アンタね、そもそも……ってきょぁっ!?」

 

急に突風が後ろから僕らを襲う。

恥ずかしいことを連呼したせいで火照った僕にはちょうどよく涼しい……!

浴びるように目を閉じその風を感じると横から「ギャラクシ〜っ!?」という悲痛な声が聞こえたので目を開ける。

 

あ〜、帽子飛んでいっちゃった。

 

「そんな大きな帽子被ってくるからデス」

 

勝ち誇ったようにドヤ顔をする可可さん。

争いを早めに沈めないとめんどくさいなコレ。

 

「次行こうか。サニパの2人が待ってる」

 

二人をいなして踵を返す。

 

「サニパのお二人が!行くデス〜!!」

「あ、こら待ちなさい可可!話はまだ終わってないわよ!!」

 

サニパという言葉が出ると途端に元気になり道路を爆走していく可可さん。

その後を大急ぎでついていくすみれさんの後へ僕もついていこうとすると、不意に僕のラッシュガードの袖が引っ張られた。

 

「……かのん?」

「あの……その……私も褒め言葉欲しいな〜って。いやラッシュガード着といて何言ってるのって話だけど私アイドルだし!?周りの評価とかどう見られてるかとかどうかぐらい知っておいて損はないと言うか!?」

「お、おう。そんな早口にならなくても」

「なってないし!」

「そ、そうか」

 

食い気味に答えるかのん。

さっきから様子がおかしいけども。

 

「大丈夫。かのんも似合ってるし、可愛いよ」

「……本当?」

「本当。だから自信持ちなよ」

 

露出が少ないから良くないみたいな思考では僕はないのでそこから辺は安心して欲しい。

僕の答えを聞いたかのんは数秒固まった後後ろを向いた。

あ、あれ?

 

「かのん?」

「ちょっと待って、今顔作ってるから」

「……なんの?」

 

かのんって意外とアイドル意識高かったりするのかな。

僕としては結構他人に自分がどう思われるかは気にしない真っ直ぐな女の子、ってイメージなんだけど、顔を作るってことはやっぱりなにか顔にあるとアイドル的に見せられないとか思ってるのだろうか。

 

そんなことを考えていると遠くから「ギャラクシー!!!」と雄叫びが聞こえてきた。

 

……あの二人何やってんだ。

 

「かのん、そろそろ僕らも行かないと」

「うん。だよね。行こう!」

 

やっと振り返ったかのんはいつも通りの笑顔だったが、心なしか少し上機嫌だった。

 

 

 

 

 

 

 

『フゥー!ゆいちん言うじゃん!』

「は?いや普通に感想言っただけだろ」

『いやぁ、無自覚が戦犯というか』

 

すっかり夜。温泉に浸かり終わった僕はかのんたちの拠点の前で夜風を浴びながら夏樹にこれまでの事を電話をしていた。

 

こっちは楽しんでしまったので、悪いと思いながらも残ってくれた夏樹には感謝しないといけない。

 

『それよりライブは大丈夫そう?』

「かのんの歌詞次第だな。急かしてはいるんだけど、全然作詞が進まないみたいで……。そっちはなんかあったか?」

『いーや?強いて言うならちさとんがガチモードってぐらい。なんかすごく気合い入ってるんだよね。今回の大会』

「へぇー、かのんたちと離れて専念すると言われた時は驚いたけど、効果はあったみたいだな」

『…………かもね』

「……夏樹?」

『ううん、なんでもない。もう遅いから切るね』

「そうか。悪いな、残ってもらって」

『お土産よろしくね。バイバイ』

 

ティロン♪と切断の音声が流れる。

最後の方、随分思い切りが悪かったが、何か思うところがあるのだろうか。

夏樹と千砂都さんは小さい頃同じダンススクールにいたと聞く。

そう言う縁から、すこし彼女のことを気にかけているのかもしれない。

 

「いたいた。結さん。よろしいですか?」

「柊さん。はい、今行きます!」

 

宿の方から手を振って柊さんがこっちに来いと合図しているので駆け足で向かう。

 

「それで、僕の宿は何処に?」

「??ここですが」

「あ、そうなんですね。じゃあ僕の部屋は何処に?」

「みなさんと一緒です」

「…………???」

 

……………………………???????????

 

ダッ!ガラガラ、ピシャッ!!!!

 

「あ、結くんおかえり〜」

「聖澤さんッ!一応貴方にも聞きますね!?僕の部屋は何処ですか!?」

「……?宿はここ一つしかとってないよ?」

「…………ここ、寝室ひとつしかないわよね?」

「ベッドも二つしかありまセンが……」

 

可可さんとすみれさんが顔を見合わせる。

 

オイオイ冗談キツいって……!!

 

「悠奈さん、それって……」

「うん、4人でここで寝て欲しいの」

「いいわけないでしょ!!!!」

 

すみれさんが部屋中に響き渡るようにツッコむ。

そうだよな!?そうだよね!?

普通そうなるよね!?!?

 

「でもここしか用意できてないんだ」

 

申し訳なさそうに視線を逸らす聖澤さん。

 

「じゃあ僕ホテルにでも……」

「この島にホテルはないよ?」

「そうだったここ有名な観光地じゃなかった……」

 

昼間たくさん遊んで忘れていたけどそもそも島興しがスクールアイドルの弱小観光地だったこの島。

ホテルなんかあるわけない……。

 

仕方がない。

 

「じゃあ僕廊下で寝るから……」

「待って!」

 

荷物をまとめて廊下へ出ようとするとかのんが止めた。

 

「結、昨日も船で寝てないでしょ?ベッドで寝なよ。私が床で寝るから」

「気持ちは嬉しいけど、明日から練習の女の子を床で寝させるとか僕は嫌だね」

「じゃあ私と可可ちゃんとすみれちゃんで一つのベッド使うから!」

「狭いわよ!」

「可可はそれでも……」

「いーや譲れないね。ダブルベッドなんだから僕が床で寝れば解決するんだろ?」

「イヤ。絶対に結はベッドで寝かせる」

「なんなのこの争いみたいな譲り合い」

 

すみれさん、分かってくれ。

もうコレはモラルとかそういう話じゃない。

引けねぇんだよここまで来たら……!!!

 

なぜか分からないがアツい闘志が湧き上がってくる。

この勝負、絶対に譲れない!!!

 

 

「あ、それじゃあさぁ……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ消すわよ。いいわね」

 

すみれさんが消灯確認をする。

 

だが僕はそれどころじゃない。

ひたすら無心。108の煩悩を素数を数えることで消すので精一杯だ。

 

パチン、と電気が消える音がして暗闇が部屋を覆う。

 

なんで……なんで……!?

 

「結」

「ハイっ!なななななんですかかのんさん何か不埒な事をしたのなら即謝罪からこの首を差し出します!」

 

なんで僕とかのんが……!?

 

 

「そこまでしなくていいから。そんな端っこだと狭いでしょ。もっとこっち来ていいよ」

 

同じ布団に……っ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回更新6月17日金曜日19時   

余談 本来は前回の前半と合わせて二十九話にしようとしてたんですけど、なんかハイペースにまとめても七千字の大所帯になってしまって、なくなく二つに分けてしっかり書きました。お陰でいつもよりラブコメが多かったと思います。こう言うこともたまにあります
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