結とかのんの始まり物語   作:cinnamon

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初手謝罪ごめんなさい!!!
前回、6月17日金曜更新だったんですけど、予約投稿忘れていたの、今の今まで気づきませんでした!
なので今回のお話は本来は先週金曜の更新の分となります!
本当に申し訳ありませんでした!

それでは本編、どうぞ!!








第三十一話 少し昔の、思い出話

 

「もっとこっち来ていいよ」

 

背中から聞こえるかのんの声に体が固まる。

小さく、僕にしか聞こえない声で誘う彼女の姿を捉えてしまうと後戻りできないようで、必死に壁へ体を向けた。

 

次の瞬間だった。

後ろから腕を腰に回されて引っ張られた。

抱き寄せられたともいえるその行動で、背中に熱が伝わってくる。

前方は壁、なら勿論、後方の熱の正体は……。

 

「結……」

 

脳が溶ける声で耳元ゼロ距離で放たれた言葉に必死に理性で抗う。

 

「結は……イヤ?」

 

甘く囁くかのんに迷う。

無言を貫いていると腰に回された手が離れる。

解放されたと安心したのも束の間、かのんはそっと布団を捲り、上半身を起こした。

 

視界の端でかのんを確認した僕は覚悟したように目を強く瞑る。

すると今度は下半身に強い体重を感じた。

 

驚いて目を開けると、かのんが僕の上に跨るように座っていた。

 

「ねぇ結……イケナイコト……しよ……♡」

 

微笑を浮かべたかのんはそのまま上の服をはだけさせるように脱ぎ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうのはまだはやいって!!!」

 

目を開けた瞬間視界がクリアに広がり、布団の暖かみを感じる。

 

ハァ……ハァ……!!

 

……夢?

 

全身の汗がスゴい。

昨日寝てないとはいえ、昼間のたくさん遊んだから疲れていたのかもしれない。

かのんのあんな夢を見るなんて……。

頭が寝起きで回らない……。

 

そうだ、今の誰か起こしたかな?

 

不安ながらも周りを見ると、幸いすみれさんも可可さんもすやすやと寝ていた。

 

が、しかし。

 

「……かのん?」

 

かのんの姿が見当たらなかった。

 

まさか僕に気を遣って廊下で寝てたり……!?

 

思いつくやいなや、僕は部屋を飛び出して廊下に出た。

 

するとそこには靴を履い外へ出ようとするかのんがいた。

 

「あれ、起こしちゃった?ごめんね?」

「あ……いや……そういうわけじゃなくて……!」

 

とりあえずは床で寝させていたわけではないと分かって安心した。

でもさっきの事で顔を見れない……。

 

「そ、そうだ。どこか行くのか?」

「うん。外の空気、吸いたくて」

「僕もついて行っていい?」

「うん。いいよ」

 

トントン、とつま先で地面を二回叩き準備万端の意を示すかのん。

となりに並んで僕も靴を履いたのを確認するとかのんは先行しだした。

 

「歌詞、まだ思いつかないんだ」

「ゆっくり考えたらいいさ。時間はある……わけじゃないけど、半端な出来だけは勘弁」

「うん、分かってる」

 

並んで海岸へと続く道路を進む。

既に磯の香りが少しだけ漂っているほど、もう海は近い。

 

「そういえば」

「……?なに?」

「この前ねーちゃんに変なこと言われなかったか?」

「あっはは、紬さん、結のこと心配してたよ」

「改めて言われると、それはそれで恥ずかしい」

 

ねーちゃんが僕を大事にしてくれてることは分かってるが、そういうのは水面下の想いとして、口に出さないのが普通だと思う。

 

「いいお姉さんだね」

「肯定したら照れるからしない」

「否定もしないんだね」

「うるさい」

 

なんていうかかのんは、打ち解けると少し意地悪になる。

Sっけがあるのか、相手を挑発するような事が増えてきた。

 

隣で僕の表情を伺って笑うかのんは見てて可愛いとは思うが……。

その、夢の中で襲われた記憶が少し蘇るので心臓に悪い。

 

「ねぇ、お姉さんがいるってどんな感じ?」

「そうだなぁ……僕とねーちゃんはあんまり関わらなかったからなぁ。いってしまえばほぼ他人」

「姉弟なのに?」

「あぁ、かのんには妹が居たんだっけ。まぁ僕らはそこら辺は普通とは違うと思う。……ちょっと昔話してもいいか?」

「うん、いいよ」

 

海辺に着いた僕らは肩を並べて座り込む。

かのんはいそいそと靴を脱いで裸足になり、砂浜に長居をする意思を示す。

その意思を汲み取るように僕も裸足になって昔のことを語り始めた。

 

「小学生……の時だったかな。叔父さんにストリートダンスの大会に誘われて」

「小学生……それって」

「あぁ、虐められるより前の話。会場は何処かはもう忘れたけど、近くの路地裏で迷子になってさ。年齢が一桁の幼い僕はじっとしてれば見つけてくれるのに不安で無駄に色んなところを走り回ったんだ」

 

そして……出会った。僕の、出発点に。

 

「随分走り回ってとあるホールの、裏口で同じぐらいの少女に出会った。でも、その子は泣いていた」

「泣いて……?」

「もう10年近く前の話だからな。鮮明には覚えてない。けど、僕はその子を励ましたくて、近くの本屋まで連れていった」

「本屋?」

「うん。ほら、子供といえば漫画でしょ?っていう安直な考え」

「なるほど。結らしいや」

 

クスリと笑うかのんに夜風が当たり、髪が揺れる。

美しいとも表わせるその姿に思わず一瞬絶句したが、悟られないよう、僕の語りは続く。

 

「そんでまぁ女の子だったから少女漫画だ!って思って。たくさんある種類の少女雑誌から選ぶことにした。そしたら表紙の中に目を引くぐらいキラキラで大きな指輪を見つけてさ。これだー!って思ってなけなしのお小遣いで買って少女の元へ行ったんだよ」

「……んん?指輪?泣いてる……女の子……?」

 

話の途中でかのんがなにかひっかかったかのように動きを止めて固まる。

だが話が良いところなので僕は語りをやめない。

 

「その指輪を女の子にあげた時の反応は忘れない。顔がパァッと晴れて大事そうに指輪を嵌めて。それ見て思ったんだ。僕も人をこんなふうに笑顔に出来るアクセサリーを作るんだって」

「……へ、へぇ〜。ちなみに、その指輪ってオレンジ色の星形のプラスチックが付いたものだったりする?」

 

声を上擦らせながら目を泳がせるかのん。

 

……?寝起きだから調子が悪いのだろうか。

ただ、かのんが言ったことは事実なので肯定はしておく。

 

 

「そうだけど。なんでわかったんだ?」

「えぇ!?あ、いやその〜そう!その雑誌、私も買ってたから!」

「そうか。かのんが少女雑誌読んでたとはちょっと意外だ」

 

酷い偏見かもしれないがむしろ持ち前のカリスマ性で友達百人作って富士山の上でおにぎりを食べるぐらいにはアウトドアかと思っていた。

 

「話を戻すと。その子が歌が好きみたいでさ。そう、まるでかのんみたいな……」

「あー!ソウナンダー!キグウダナ〜!」

「そう、すごく奇遇なんだ。だから初めてかのんの歌を聴いた時、なにか運命かもって思った」

「アハッ、アハハハハ!」

 

僕の言葉に照れたのか奇妙な笑い声をあげる。

やっぱり寝起きだからテンションがおかしいと思う。

 

「それで!?その子はどうしたの!?」

「お礼に僕一人だけのために歌ってくれたんだよ。ホールの裏の二人きりのステージで。それが忘れられなくて、僕にとっての『アイドル』だったんだよ。その子は」

「へ、へぇ〜。その女の子凄いね」

 

結局、その子とはあれ以来会ってないけど、それは一人の人生に大きな影響を及ぼした。

 

「家に帰ってアイドルみたいだった!凄い子いた!ってはしゃぐ僕を見て、ねーちゃんはアイドル志望になった。結局、アイドルの才能は開花せず、舞い込んできたビジネスチャンスに乗っかった結果がモデル業ってわけ」

「え、そうなの?元からモデル志望じゃなかったんだ」

 

そう。だから言ってしまえばねーちゃんは僕の影響でモデルになったといっても過言ではない。

 

「そういうわけで幼い頃からアイドル志望で芸能界を生き抜いてきたねーちゃんと僕は会う頻度も少なくなった。僕の我儘で、ねーちゃんの人生を縛ってしまった」

 

僕はその場で立ち上がってお尻に着いた砂をはたき落として大きく背伸びのストレッチをする。

体を動かした反面、冷静になった頭で大きく息を吐いて、僕は言う。

 

「だからさ、ねーちゃんには出来るだけ恩返ししたいんだ。ずっと近くにいたねーちゃんと離れた今だから、ちゃんと感謝したいんだ」

「ずっと……近くに…… 」

 

僕の言葉を聞いたかのんは何かを思い追加のように立ち上がり僕の横にならんだ。

そしてそのまま以前、船の上で見せたヨガのポーズを取った。

 

「……かのん?」

「黙って。……今いい歌詞が思い浮かびそうなの」

 

すっかり集中モードに入ったかのん。

こうなったらもう聞く耳も持たないだろう。

邪魔にならないよう、先に帰ろう。

 

宿へ向かおうと振り返ると……

 

「……アッ」

「……可可さん?」

 

可可さんが道路のガードレールに頭を半分出してこちらを見ていた。

かのんは集中していてもう周りが見えていないので、僕一人で可可さんの下へ歩く。

 

「可可さんも起きたんだ」

「ハイ……お邪魔してスイマセン……」

「邪魔?何が?」

「お二人ともいいフンイキだったので出るに出られず……」

「いい雰囲気じゃない!」

「デスが、日本の漫画でこのようなシーンはカケオチというト……」

「間違ってるからそれ!」

 

だから隠れてたのか!

しかも夢のこともあって下心がゼロかと言われればちょっと後ろめたい所もあるので反論もしづらいのが厄介だ!

 

「そういうんじゃなくて……」

 

どう答えるか決めあぐねて言葉を濁していると後ろから

 

「可可ちゃん?」

 

とかのんの声を当てられた。

振り向くとかのんは集中モードを切ってこちらに気づいているようだった。

 

「歌詞はいいのか?」

「うん。もうちょっとでなにか掴めそうなんだけど……やっぱり思いつかないの。ちぃちゃんが私にとって何なのか、まだ言葉にできないんだ」

 

僕に幼馴染という人はいないからかのんの気持ちは分からない。

だからなにかアドバイスしようにも、上手く出来ない。

ずっと近くにいる友達、強いて近い存在を言うなら……。

 

『駆け抜けるシューティングスター♪』

 

「あ、ごめん、電話」

「結、着信音私たちなんだ……」

「照れ臭いデス」

「いいだろ別に。ちょっと出てくる」

 

こっそり設定していた秘密がバレて照れ隠しにその場を離れる。

携帯の電源をつけると着信元は「夏樹」と出ていた。

 

噂をすれば影、というがタイミングが良すぎる。

何処から監視してないだろうな。

というかこんな時間に電話?

寝る前に話したばかりなのに、なんの話だろう。

 

「はいもしも……」

『ゆいちん!!!大ニュース』

 

耳をつんざく電話越しの夏樹の声に脳が痺れる。

大ニュースはいいが、なんで今なんだ。

 

「夜なのに元気だな。要件は何?」

『その前に、近くにかののんはいる?』

「いない……けどそれがどうした?」

『実はちさとんが……!!』

「千砂都さんが?」

『ちさとんが……!!!』

「だから何だよ。勿体ぶらずに早く言えよ」

 

あまりに焦らすので多少の苛つきとともに吐き捨てたその言葉は、とうとう夏樹の口を割る。

波乱の種の、1つを撒いて。

 

 

 

 

 

『ちさとんが!海外に行っちゃう!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 




次回更新は6月22日水曜日19時です。
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