世界ってこんな輝いていたか!?
オイオイ気分最高で今ならなんでも出来そうだ!
「出来た出来た〜♪僕って天さぁ〜いっ♪」
「…………どうしまショウすみれ。結サンが変デス」
「えぇ……それもかなり気持ち悪い方にね……」
キッチンの隅でなにかコソコソと話している可可さんとすみれさん。
「急に用事を思い出して6時間も部屋に篭ってたと思ったら、急に出てきてあぁなったって事は、その間に何かあったのかしら」
「すみれさ〜ん、なんの話ぃ〜?」
「うわっ!ぬるっと介入してくるんじゃないわよ!」
「いいじゃ〜ん」
「結サンが……夏樹サンのようデス……」
え〜?そんなことないと思うけどぉ〜?
ただテンションは最高潮!
あんなものが創れるなんて……僕って実は天才!?
うへ、うへへへへへ。
変な笑い声が出ちゃうよまったく……!!
「気持ち悪いニヤけ顔してないで、少しは料理を手伝いなさい」
「よっしゃ任せろ!激ウマ黒焦げ料理作ってやる!」
「アンタ役に立たないわね……」
料理出来るならそもそも最初からしてるから。
といかそこまでハッキリ言うのか。
でも実際、役に立たないことは事実だし、ここは退散させてもらおう。
「あ、そうだ。かのんは?」
「かのんなら、外にイマス。集中したいとかナントカ」
集中……ってことは作詞だろうか。
昨日なにか掴めそうと言っていたが、今日のことを含めて練り直しているのかもしれない。
少しは労いに行ったほうがいいか。
「じゃあ僕はかのんのところに行こうかな」
「いいけど、その気持ち悪い笑いはかのんの前ではしない事ね」
「さっきから僕に対して酷くない!?」
気持ち悪い連呼しすぎ!
僕の上機嫌がいつまでも続くと思うなよ!?
「おぉ〜い、かの〜ん。かーのーんー?」
って訳で。
かのんを探しに外で歩き回ってるわけだが。
なかなか見つからない。あと残ってるのは海辺の堤防とか?
「かの〜ん?何処に……あっ、いた」
本当に堤防にいるのか。
でもあれ……
「隣にいるのは……聖澤さん?」
何か二人で話しているが……。
ちょうどいい。聖澤さんは昼の御恩もある。
一度ちゃんとお礼を言っておきたい。
二人が一緒にいる理由は分からないがとりあえず近づいてみる。
「スクールアイドルじゃなければ、応援してくれるっていうんですけど……」
「なんの話?」
「うわあぁっ!?って結!?ヌルッと介入してこないでよ!」
後ろから声をかけただけでひどい言われようだ。
「聖澤さん、どうも」
「悠奈でいいよ。それより、出来たの?」
「それはもう凄いのが……うぇへへへ」
「……なんの話か分かんないけど、大丈夫な奴……?」
おっと、すみれさんに注意されてた笑いが出てしまった。うへへへへへ。
「結、夏樹くんみたい」
そのくだりはさっきやったからいいだろ。
「それより、実際なんの話?」
「あぁうん。私はなんのために歌うんだろうって」
「…………?おかしなこと考えるな」
「そう?」
「聖澤さん……悠奈さんはどう思います?」
「まぁ何かのためじゃないからといって、スクールアイドルを続けちゃいけない訳じゃない、し。歌うのが好きだからって子も、沢山いるよ」
「はい、今はそう思う思うようにしています。ちぃちゃんもそうだろうし……」
唐突に出た千砂都さんの名前に固まる。
そうか。まだかのんは……知らないのか。
言うタイミングなら……いまだろうけど、何か、今言うのは、ずるい気がする。
こう……千砂都さんの覚悟とか、いろいろ裏切るような気がして。
人知れず重い空気に黙りこくっていると、悠奈さんが会話を続けた。
「あぁ、この前のダンスの」
「そうです!もうすぐ大会があって、ダンスで結果出したいって、今頑張ってるんです!」
「それでこっちには来なかったんだ」
「ちぃちゃん、小さい頃からダンスが好きで、練習続けてきたから」
「本当に好きなだけなのかな」
悠奈さんの一言がスパン、と会話を断ち切るように空気を変えた。
「よく分からないけど、それだけで別行動を取ろうなんて、言うのかなぁって」
言われて……少し納得した。
「好きなだけじゃ……だめなんだ」
「……結?」
言葉にされてやっと頭で理解できた。
そうだ、好きなだけじゃ、いつまでも情熱は続かない。
歌が好きなかのんが、歌えなくなったように。
僕が、何を作りたいのか、分からなくなったように。
一人だったら、きっと、ここまで来れなかった。
かのんと出会うことが無かったら、僕は別の学校で、なんとなく人生を過ごして、無為な日々を送っていたかもしれない。
自分が変わるのはいつだって。
「誰かのために。ただ一人のためでもいい。目標が、道標がないと、走り続けられない」
きっと、かのんも分かってる。
分かってるから、僕が言うんだ。
「かのん」
「何?」
「私はなんのために歌うんだろう、だっけ?正しくは、誰の為に歌うんだろう、だ」
「…………!」
僕にとってかのんが特別な存在であるように、かのんにとって彼女は。
それが僕ではないことに少し嫉妬心はあるが、そうでないとむしろ僕は納得がいかない。
「答えは、出た?」
「…………はい。ちょっと分かった気がします」
そう悠奈さんに答えるかのんは、ちゃんと何かを掴んでいるようだった。
千砂都さんの未来が彼女の手に握られているのは、まだ知らないまま。
それでも、きっとなんとななるだろう。かのんを信じよう。
今回ちょっと短めです。代わりに次は長いです。
次回更新7/4(月)19時