結とかのんの始まり物語   作:cinnamon

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予約投稿忘れてました。(初犯じゃない人)
1時間ほど遅れましたがご容赦ください……!
本編どうぞ……!!


第三十六話 あきらめたくないから

 

 

 

 

「千砂都ちゃんを迎えにいく!?」

 

かのんの提案に聖澤さんが驚愕する。

そして少しの間考えて怪訝そうな表情を浮かべて首を横に振った。

 

 

「うーん、ハッキリ言って難しいかな」

「やっぱり……」

「うん、当日はお祭りってこともあってこっちから向こうに行く船はいいけど、向こうからこっちに帰ってくる船は混んでると思うんだ。事前に予約でもしないと行けないんじゃないかなぁ……」

「そう……ですか……」

 

聖澤さんが突きつける現実にかのんの顔が曇る。

まぁ、でも……

 

「はい、かのん」

「…………?なにこれ?」

「当日の船の予約席」

 

その現実は関係のないことだけど。

 

手渡した乗船券を受け取ったかのんは、それを数秒固まったまま眺め……

 

「……え、えぇっ!?」

「予想してないと思った?昨日の夜あたりから様子がおかしかったし、最悪僕一人で連れてこようと思ったけど……決心してくれて助かった」

「ま、待って!ってことは……」

「うん、行けるよ。千砂都さんの下へ」

 

途端に今度はパァッと表情が明るくなるかのん。

 

「問題はないみたいだね。でも、フェスに遅れたら許さないからね!」

 

聖澤さんも了承の意を見せてくれた。

 

「流石に席は全員分用意できなかったけど……」

「ううん、それでもいいよ!ありがとうっ!」

 

……本当は海外に行くっていう千砂都さんをかのんの下へ連れて行ってなんとかする作戦だったが……形が変わってしまった。

しかし結果オーライ、という事でよしとしよう。

 

「じゃあフェス当日!」

「うん、当日!」

 

当日に!千砂都さんの下へ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────なぁーんでこうなるの……」

 

ガックリと隣で肩を落とすかのん。

 

「船の遅延は仕方ない。僕らが急いでも船の速度は変わらないよ」

 

当日、僕らは都心、というか、本州に戻るために船に揺られた。

しかし、出港から数十分後、波が荒く到着に遅れが発生するというアナウンスが流れてしまった。

 

「ちぃちゃんの大会、間に合うかな……」

「ギリギリだろうな。港から会場まで距離があるし」

「……結、さっきからずっと携帯触ってるけど何かしてるの?」

「夏樹と、とある人に連絡してる」

「とある人?」

 

かのんが首を傾げた瞬間、「ボォーーーッ!」という汽笛が耳をつんざく。

そして次の瞬間、『現在、到着に遅れが発生しているこちらの船は、只今から正常な運航に戻ります』とアナウンスが流れる。

 

「……今からだと20分遅れ、ってところか」

「間に合うかな?」

「それまでは引き止めてもらうんだ。そのために連絡した」

「連絡?」

「もう会場に着いたって。……頼むよ、夏樹」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めて彼女を見た時───不気味さを覚えた。

ダンス教室の中でも異才を放つ彼女に、視線は自然と集まった。

でも彼女は、人と関わることはあまり無かったように思う。

休憩時間で皆んなが座って休んでいる間も、彼女はストイックに鏡に向かって一心不乱にステップを踏んでいた。

────なにが彼女をそこまで奮い立たせるのだろう。

 

燃えるような瞳に僕は恐怖を覚えた。

なんでそこまで一つの物に執着出来るんだ。

ダメだったら諦めたらいいだろう。

才能があるから辞められないのか?ならその瞳はなんだ。何がそこまで君を虜にする。

 

その答えを知らないまま、僕は彼女と会わなくなった。

 

だからひさびさにたこ焼き屋の屋台であった時は驚いた。

彼女は前とは見間違えるほどの快活さで、幼馴染の子の話を楽しそうに話していたから。

そして……その女の子の話をする時、決まって少しだけ、悲しそうな顔をする。

 

────だから、何かを諦めたんだと悟った。

悪い事じゃない。諦めてしまうのも一つの手だ。

でも──────それでも。

 

 

 

「足、震えてるよ」

「…………!!夏樹……!!」

 

 

あの燃える瞳は─────まだ消えていないから。

だから、まだ僕も、彼女を諦めきれない。

 

「海外の件、かののんには話したの?」

「……ううん、かのんちゃんに話したら……きっとかのんちゃんは助けてくれるから。今回は私一人でやらなきゃダメなの」

 

そう答える彼女は、苦しそうだった。

僕に何が言えるだろう。

 

──────僕には、想いがない。

 

かののんの歌のように。

彼女のダンスのように。

ゆいちんのアクセ作りのように。

 

何かに燃えるように熱中したことがない。

何色にも染まっていない、からっぽな心。

 

だから寄り添うことができても、救うことは出来ない。

ギャラ子の時もそうだった。

僕の言葉で、僕の行動でギャラ子が救われたわけじゃない。

分かっている。

今回も────同じだ。

 

 

「情けないね」

「…………!!!」

 

僕の一言にちさとんが固まる。

それでも僕は止まらない。

 

「頼らないって言って、その震え。やっぱりちさとん一人には荷が重いんじゃないの?」

「それは……!」

 

歯を食いしばりながらもちさとんは僕に言い返せない。

思うところがあるんだろう。こんなの、たった一言、「私なら出来る」の一言で終わるのに。

それが出来ない。だって……

 

「かののんがいないから。ずっと頼り切った結果がこれか」

「…………」

「なんていうか……ちさとんって不器用すぎてかののんこと分かってないよね」

「私が……かのんちゃんのことを?」

 

ハッと顔を上げてこちらを見つめるちさとん。

まるで何かの答えに縋るように。

自分の探している何かを求めるように。

 

「自分に自信が持てないのはかののんを信じてないからだよ。ちさとんを信じるかののんを信じてよ」

「それって……かのんちゃんが……!」

「ま、僕が言う分には推測だから、本当の気持ちは……本人にでも聞いてみたら?」

 

次の瞬間、

 

「おーーーーい!!」

「待てってかのん……!は、速すぎ……!」

 

駆け足でこちらへ向かってくるかのんに、必死で後をついてくるゆいちんがいた。

 

「かのんちゃん!?」

「はぁ……はぁ……間に合った……!!」

「どうしてここに……!?」

「来ちゃった」

 

笑うかののんにちさとんが驚く。

一方で僕は遅れて登場したゆいちんに声をかける。

 

「お疲れ様。思ってたより10分もはやいけど、バスか何かあったの?」

「ぜぇ……はぁ……それは………!」




次回更新7月8日金曜十九時
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