結とかのんの始まり物語   作:cinnamon

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第六話 生徒会

「おはようございます……」

 

かのんが歌えるようになった日から1日が経過し、翌朝、目を擦りながらアクセサリーまみれの部屋の扉を開け、階段を降りるといつも通りそこには叔父さんが……

 

「あれ、いない?」

 

珍しいこともあるものだ。

朝から熱心に仕事なのか。

 

なんでもいいが、目下のところ朝ご飯をどうするかという問題がある。

 

いつもは叔父さんが作ってくれてるから気にしていなかったけど、僕の料理スキルはゼロだ。

 

何かないものかと冷蔵庫を開けるとサンドイッチがあったので勝手に頂く事にする。

 

これなら食べながら登校できるので今日は少し早めに出ていこう。

 

素早く身支度を済ませながら一つ目のサンドイッチを頬張る。

 

「行ってきます」

 

誰もいない家だが形式上一応挨拶はしておく。

玄関の鍵をかけて下に降りながら通学路の下り坂を通り抜ける。

 

そして大きな交差点に出たところで見覚えのある姿を見つけた。

 

「今日は歌わないの?」

「あっ、結!おはよっ。今からでも歌おうか?」

「おはようかのん。そうなるとまた逃走劇が始まるからやめてほしいな」

「可可は聞きたいデス!」

 

並んで話しているとかのんの背中からひょこっと顔を出す内巻きボブ。

 

「おはよ可可ちゃん」

「おはよう可可さん」

「おはようございマス。お二人とも奇遇デスね」

 

まぁ通学路は被ってるし会うこともあるだろう。

 

「可可、今日はいつもより早起きできたので2人とも出会わないと思ってマシタ」

「僕は朝食が早めに済んだから早めに出た」

「私は足取り軽くっていつもよりいろいろ早かったかも」

 

つまり僕含めこの3人は偶然各々違う理由で早めに登校しているわけだ。

それってつまり、

 

「運命みたいだねっ」

 

すごい偶然、なんてちっぽけな言葉を使おうとした僕を遮ったかのんの一言はその場にいる僕と可可さんの時を止めた。

 

「かのんってさ、ポエミーだよね」

「ええっ!?」

「それは可可もおもいマシタ」

 

「そうかなぁ……?」と首を傾げるかのんを見て思わず笑ってしまう。

 

「そういう結だって、感情豊かになったよね」

「そう?」

「そうそう。初対面の時なんか、『なにそれ、僕に利がないじゃん』みたいなクールな性格だったのによく笑うようになってさ」

 

確かに……いや僕の素がかのんに見えてきてるだけだと思う。

そんなちょろい男じゃないと思うけどな。

 

「あの〜」

「どうしたの可可ちゃん?」

「可可、ずっと思ってたのデスが……」

「なに?」

「お二人とも、いつのまにか名前呼びニ?」

「「!?」」

 

いつから……って昨日の夜からなんだけど、あの小っ恥ずかしい流れを素面の今、説明しないといけないの!?

 

えっ、無理無理!

 

「えっと〜、昨日あれから色々あって〜?」

「イロイロとはなんデスか?」

「それは……」

 

かのん!余計なこと言うな!全部が失言になる!

どうする?もう逃げるか?逃げるか。うん逃げよう。

 

「ア、ア〜!ボク学校コッチダ〜!」

「ちょっ、ちょっと結!待って!」

「かのんサン!イロイロとは!?」

「そ、それは〜!」

 

騒いでる2人を置いて僕は角を曲がってその場を離れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます」

 

ガラガラ……と教室の扉を開けると次の瞬間体に強い衝撃がぶつかって体が後ろに反る。

 

「結ち〜ん!今日は早いね〜!僕に早くあいたかったの〜!?」

「きゅ う に !」

 

ガシッ!

 

「抱きつくな!!」

「あ"あ"〜っ!!痛い痛い痛い!頭割れちゃう!アイアンクローは僕死んじゃう!!!」

 

僕の手のなかでジタバタするコイツは時雨夏樹。

黒髪で低身長。

160cmもないその体は小動物的な人気を他校の女子から買っているらしい。

本人はその人気を使って女とよく絡んでいるところを見る、と同級生(男)達から妬まれている。

 

そんな陽キャのコイツと仲良く……訂正。

コイツと絡むようになったのは遡ること入学式の日。

 

 

 

 

 

 

「校長の話つまんなかったな〜」「え、俺もそのゲームやってるよ!?」「アイツもB組!?あそこ神メンじゃん!」

 

入学式が終わりクラスへ戻るとすでにグループが出来りつつあった。

 

僕は完全にその機会を逃し、未だに孤高の道を歩んでいる。

 

「お前ちっちぇ〜!」

「ちっちゃい言うな!威嚇するぞ!キシャ〜ッ!!」

 

特に前の席の男子。めちゃくちゃな人だかりで、あんなに明るいと相性的に絡みたくない。

 

あの威嚇してる小さい男子は特に明るくて僕とは合わなさそうだ。

 

「は〜いみんな席つけ〜!ホームルーム始めんぞ〜!」

 

あ、先生が帰ってきた。

 

各々が席に戻って静かになる。

 

「うーっし、まずは配布物から。名前呼ばれたら出てこい。雨宮!」

 

当然あ行である僕から呼ばれるよね。

立ち上がって教卓へ向かう。

 

その時ふと前の席の小さい男の子が気になって目を配った。

次の瞬間、机の上に置いてある筆箱に赤い宝石の入った銀色の玉のようなアクセサリーに僕は目を奪われた。

 

なんて…………

 

「綺麗ぇー……」

「!!!!!」

 

ガタッ!!!

 

「キミ!名前は!?」

「えっええっ!?」

 

突如立ち上がったその席の主はこちらの手を取って目を輝かせた。

 

「名前は!?」

「ゆ、結!雨宮結!」

「そっか〜!結、じゃあ結ちんだ!」

「結ちん!?」

「いまの!これ見ていったよね!?」

 

バッ!と自身の筆箱をとって僕に見せる。

これって……アクセサリーのこと?

 

「まぁ……そうだけど……」

「これね〜!良いでしょ〜!世界で一個しかない、僕の〜」

「こら時雨。ホームルーム中」

「あっ、忘れてた。ごめんなさい☆」

 

先生から注意されてピタッと動きを止めて椅子に座り直す時雨さん。

 

すっかり注目の的になってしまった僕は、恥ずかしがりながらプリントを貰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけであれからやたらと懐かれている。

本人曰く、自慢のアクセサリーを褒められたのが嬉しかったらしい。

そんなにか?

 

 

「痛い痛い!結ちんそろそろ手の力抜いて!」

 

あ、まずい、回想にふけってたら本人の存在忘れていた。

 

「ごめんごめん」

「もぉ〜、僕の可愛い頭が割れちゃったらどうするつもり?」

「ボンドとアロンアルフアどっちがいい?」

「直せないよ!?」

 

夏樹のくだらない話は置いておいて自分の席に鞄を置いて整理を始める。

 

「もぉ〜結ちんったら酷いな〜。そんなんじゃあ先生からの伝言いいたくなくなっちゃうよぉ〜!」

「なんだか左手でもアイアンクローしたい気分ですね」

「ごめんって。いまから僕と2人で職員室に来いってさ」

 

職員室?なんで?

特に何かやらかしたわけでもないし、なにか良いことをした記憶もない。

 

「本当になんなんだろうね。僕にも見当つかない」

 

……これは実際に行ってみるしかなさそうだ。

 

「もしかしたら僕、生徒会長になれたりして〜!」

「いくよ」

「無視はやめてよ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコン、と職員室の扉を3回叩いて入室する。

 

「1年A組の雨宮結と時雨夏樹です」

「お、きたか。こっちこっち」

 

職員室の奥で担任の先生が手で招いてくる。

「失礼します」と先生のもとまでよると先生は椅子を此方に回して話す体制を取った。

 

「お前らを呼んだのは他でもない、生徒会への誘いだ」

「は?」

「ほら〜!」

 

先生からの予想外の一言に驚いて思考が止まる。

 

「もしかして生徒会長!?」

「それは3年がやる。夏樹じゃない。だがどうだ?やってみるか?」

「やるやる〜!面白そ〜!」

「ま、待ってください!!」

 

手をあげて志願した夏樹は置いて、僕は先生に捲し立てる。

 

「生徒会ってなんで僕らなんですか!?そういうのって普通3年からじゃ!というか、なんで僕らなんですか!夏樹はまだしも僕は目立たない一般生徒ですよ!?」

 

僕の問いに先生はコホン、と一息ついて説明を始めた。

 

「まずなんで3年じゃないのか、という話だが……。この学校は各学年から2人、計6人で生徒会は構成される。そして学年の各行事を各学年の生徒会が運営する、というシステムだ」

 

つまり、学年オリエンテーションは2、3年の生徒会は関与せず、1年だけでやる、ということか。

 

確かにそれなら各学年2人ずつ、というシステムに納得できる。

 

「次になぜお前らか、と言う話だが。夏樹が選ばれた理由はわかるな?」

「まぁ……初日から目立ってましたし」

「いえーい☆」

 

こんな場面で隣でピースを出来るようなポジティブな人だから印象に残りやすいのだろう。

 

「一年の何人かに生徒会候補を聞いたらな、夏樹の名前がダントツだったんだ」

 

妥当な結果だろう。

 

「で、よくその隣にお前がいた。以上」

 

…………は?

 

「つまり結ちんは僕のお供って事だね〜!」

「なんですそれ!?」

 

急展開すぎる話の流れに思わず職員室なのに大声でツッコんでしまう。

 

「で、どうだ。やるか」

「やるやる〜!とうぜ〜ん!」

「お断りします」

 

2人同時に真反対の答えが出ると先生は頭をかいて困ったように僕にこう説いた。

 

「そんなこと言うなよ。メリットだってあるぞ?」

「例えば?」

「各学年の生徒会は1つだけ文化祭で好きな出し物が出来る」

「お断りします」

「だめか〜」

 

先生が肩を落とす。

出したい出し物もないし、無駄に労力をつかうのは勘弁したい。

 

「頼むよ。2日後に他校の生徒会と交流会があるんだよ」

「そっちの都合じゃないですか。悪いですけど他を……」

 

まてよ、他校の生徒会?

 

「それってもしかして、結ヶ丘の生徒会長も来ます?」

「あん?もちろん来る……というか、そこしかこない。あそこ、うちの姉妹校だ」

「なになに〜?結ちん、気になる女子がいるのー?」

 

結ヶ丘の生徒会……つまり、うわさの葉月恋に会える……。

敵上視察が出来るのか……。

 

これは少し、心が揺さぶられるが、これだけで生徒会になるというのは……。

でも……葉月恋は気になる……!

 

「結ちん結ちん」

「なに夏樹?いま真剣に悩んでるんだから黙っ……」

「結ちんが僕と生徒会やってくれるなら、あのアクセサリーあげちゃうかも」

 

なっ……!?

ッッッッッッそれはッッッッッッ……!!

 

「………………分かりましたよ!やりますやります!」

「いっやったー!」

「じゃあ2人で決定だな。2人ともよろしく頼むぞ」

「どーんと任せて!」「仕事は少なめでお願いします」

 

 

 

こうして僕は夏樹と生徒会を始めることにした。

やれやれ、スクールアイドルのサポートと両立できるのかな、僕。




毎週月水金19時更新です。
次回は4月13日(月)です。

夏樹くんはすみれをヒロインにするために登場させています。
あとの出番をお楽しみに
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