ようこそ愛憎混じる学び舎へ   作:妄想癖のメアリー

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確認不足で設定と違ったらごめんね。

1話のまえがきの通り入れ替えました!


第1ー2話 愛が足りない!

 

 

 

 side:綾小路(7歳)

 

 わたしが水無瀬柊を最初に認識したのは二年ほど前の話だった。

 その時に感じた衝撃は今でも記憶に新しい。数学のテストを受けている最中、唐突に彼は倒れた。実力のない生徒は生き残ることができないここでは、あまり珍しい事でもなく「ああまた一人脱落か」と思いわたしは気にせずに問題を解いていた。

 

 倒れて五分ほどたったころだろうか? 唐突に彼は何もなかったかのように座り直し、問題を解き始めた。その様子を見ていたわたしは「珍しい事もあるものだな」と思ったが、異常な事態はこれからだった。

 彼はテストを開始してから30分ほどたった頃、隣の女子生徒に朗らかな笑顔で話しかけたのだ。

 

「おや……そこが分からないのかい?そこの問題はこの公式を使って計算するんだよ?」

 

 

 

 と、まるで教えることが当然という様子で。彼の声が無機質な白い部屋中に広まった。試験を監督していたわたしの父を含む研究員は皆呆気に取られていた。だが父が

 

「水無瀬、何をしている。席に戻れ」

 

 と非常に強い口調で促した。威圧感満載でだ。以前までの彼のような平凡な生徒だったら、その指示に従っていたのだろうが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「綾小路先生、テスト中に私語を話した五歳の子供に対してその注意の仕方は不適切です。もう少し優しく語り掛けることはできないのでしょうか?」

 

 と彼は言い返した。

 今のわたしの語彙であの雰囲気を表すとしたら空気が凍っていたと言うだろう。この白い部屋の支配者であり、父に逆らうことは許されていない中、五歳の子供が言い返したのだ。それも「言い方がキツい」という、怒られた側とは思えない尊大な態度でだ。

 

 わたしはその瞬間今まで父から感じたことのない()()という感情を感じた。それはそうだろう。多くの部下や教え子がいる中でコケにされたのだ。腹が立たないほうがおかしい。

 

「……二度は言わんぞ。席に着け。そしてテストを終わらせるんだ」

 

 今思えばここで怒りを抑えた父は英断だったと思う。それこそ怒りに任せたら彼の思うつぼだった。

 

「またそれですか? テストはもう解き終わりましたよ。五歳の子供が到底やるとは思えない微積分の応用をね。私も英才教育は大事だと思いますがこれはやりすぎです。こんなペースでこなしていったら脱落者が増えるのは当然でしょう? 第一この施設の運営方針そのものが……」

 

 ……なんか語りだした。周りの様子など気にもかけずに長々と。

 聞いている側からしても筋の通った理論だったと思う。ただその内容は、この白い部屋の運営方針を真正面から否定する言葉だった。当時幼く、物心着いてまもない頃だった私にとって、その言葉は父によって作り上げられた価値観にヒビを入れた。

 

 周りの生徒や研究員がぎょっとした目で彼を見る中、父は

 

「……今日のカリキュラムは中止だ。各自部屋に戻りなさい。……そして水無瀬、貴様は私と一緒に来なさい」

 

 そういった父は有無を言わさず彼の後ろ襟を掴みつかみ上げるといつもよりも大股で部屋へと戻っていった。

 

「おい! 何をする! 子供に言い負かされ、挙句は力業で解決か?! そんな調子なら将来絶対娘さんにも嫌われるぞ!」

「……うるさい! ジタバタ暴れるな! いいからおとなしくついてきなさい!」

 

 そんな声が廊下にこだまする中、わたしは部屋に戻った。どこで知識を得たのか分からない彼が語っていた()について考えながら──―

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……まったく君のお父さんはなかなか手厳しい人だったよ……あれは将来ろくな父親にならないぞ全く」

 

 それから数時間ほど後、げっそりとした様子の水無瀬が休息中のわたしの部屋に入ってきた。心なしかその丸々とした頬もどこか痩せこけて見える。

 

「何の用……?」

 

「いいや特に用はないよ。ただ君が私の語っていた内容に興味を示していたからね」

 

 そういってわたしの部屋の椅子に腰かけた彼は語る。面白いものを見るかのように、にこにこと笑っている彼。

 その一方でわたしは内心穏やかではなかった。

 

「(なぜ見抜かれている……?)」

 

「君は今自分の感情を読まれていて驚いているだろう。だが私は愛の伝道師だからね。それくらいは手に取るようにわかるのさ」

 

 チャラけた様子で彼は語る。意外と冗談も言うらしい。

 そして打って変わって真面目な顔で彼は続ける。

 

「今のところ私の話について興味を示してくれたのは、あの集団の中では君だけなんだよ。最もほかの生徒たちはそんなことに気を配る余裕すらないという感じだけどね。……嘆かわしい話だよ、普通なら親、友人達の愛を欲する年頃だろうに。生まれた時からこの白い部屋で過ごす彼らは、そんなこと考えることもなくその一生を過ごしていくのさ」

 

「……愛とかはよくわかんない。わたしは生まれた時からここで暮らしてきた。父から優しくしてもらったこともないし、友達もいない……ねえ、あなたの言う愛ってどういうものなの?」

 

 苦笑いしながら彼は答える。予想以上に食いついてきたわたしに驚いているようだ。

 

「難しいことをきくね君は……だが私から言えることはたった一つだ、愛とは人間の営みの中で最も尊いものであるということだね。親愛、友愛、恋愛、兄弟愛、家族愛等、具体的な例を挙げるときりがない。そのくらい人間にはありふれている感情ということだ。誰にだって人を愛する権利があるし、愛される権利がある。どんな悪人でも善人でもね。しかし人から愛を受けるためには必ず代償を払わなくてはならない」

 

「代償……?」

 

 わたしはその代償というのが理解できなかった。首をかしげるわたしに彼は言う。

 

「それは人からの愛には必ず報いなければならないということだよ。他人を愛せない人間は、他人から愛されるべきではない。他人の愛を裏切ったものは必ず罰せられなければならない。君が人に愛されたいのであればまずは君が他の人を愛しなければならない。受け身ではいけないんだよ……積極的に誰かを愛さないとね」

 

「でも誰かを愛する事は……多分難しいと思う。わたしは今まで『最後に自分が勝っていればそれでいい』と教えられて生きてきた。そこに過程は関係ないし、どんな犠牲も厭わない……この世は勝つことがすべてだと父も言っていた……だから他人を愛するという感覚がわからない」

 

 当たり前だろう……わたしはそれまでの人生で誰からも愛されることなく生きてきた。語学の授業で習う友達との掛け合いも、親から子へとかけられる慈しみも何も、何も知らなかった。

 

「だったら身近な友達を作ればいい。友達とはいいものだよ。苦しいときは支えあい、楽しいときはそれを共有するんだ。この娯楽のない白い部屋の中でそれをするのは少し難しいかもしれない。だが友との語らいは好いものだ。どうだい? 綾小路さん? 私と友達になってくれないか?」

 

 混乱していたわたしに彼は優しく語りかける。それはある意味恐ろしく、とても甘美な提案だった。ただひとつ確実に言えることは、その提案はその後のわたしの人生を豊かにしてくれたということ。

 

「……わかった。友達になってみる」

 

 最初は知識欲だったか? 今となっては別物になってしまった。心の中では何十回も葛藤したことは覚えている。だがわたしは少しの間を置いて彼に答えた。

 

「ああ、じゃあ改めて自己紹介だ。私の名前は水無瀬 柊(みなせ しゅう)。趣味は読書と音楽鑑賞、人と喋ることだ。『愛こそはすべて』という言葉を座右の銘にして生きている。君は私の生まれて初めての友達さ。よろしくね」

 

 そういって彼は右手を差し出す。

 

「……ん?」

 

「握手だよ、握手。知識としては知っているけどするのは初めてかな?」

 

 そういってわたしの手を掴み、上下へと動かす彼。

 

「次は君の番だよ。綾小路さん。ホワイトルームでは自己紹介の練習はしないのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……わたしは──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────初めての自己紹介はそれは見事に失敗してしまったが、わたしの手よりも少し大きい握られた右手はとても暖かかったことを覚えている。────

 

 

 

 

 

 

 

 

 side:水無瀬

 

 突然だが、すこしだけ私の出す問題を真剣に聞いて、答えを考えてみてほしい。

 

 

 

 問い・人は平等であるか否か

 

 

 

 なんとも人間らしい無意味で、生産性の無い問いなのだろうか? こんなものを語る暇があれば君の父親、研究員、ホワイトルーム生全員まとめて、愛とは何かを教えてあげたいよ。残念なことにこの体は大量の睡眠を欲している。半日連続で語るので精一杯だろう。情けない。昔なら丸三日間は語れたのに……何? 話がそれている? おっと、すまない。手短に終わらせよう。

 私の考えを結論から話すとすると平等だと思っていたが否ということだ。

「思っていたとはなんだ?」と思うかもしれない。しかしこれには理由があるのだ。

 

 まず私が認識を改める前の考えについてだが、有史以来我々人間は皆平等に母親から生まれみな平等に死へと向かう。現状今の世界の化学力ではこの流れは止めることはできない。 どんなに寵愛を受けた人生を送っても、人から愛されることを知らずにその命を潰えても最後には絶対的な死が訪れその人生すべてを忘れるはず()()()()()()()

 

 ……過程は重要ではない、なぜなら人生を数値化した所でいうところの、0と100は先に述べたように絶対的なのだ。まあ、この事実は僕の周りの人間たちには。受け入れがたい事実だったらしい。

 だが私はこれからもっと受け入れがたい話をする。覚悟はいいかい? この話はまだ誰にも話したことがないんだ。  

 

 

 

 よしいいだろう。心して聞きたまえ。私は前世で死刑になった後に神に会い、その後この世界に前世の記憶を保持したまま、生まれ変わったのだ。

 ……ああそっぽを向かないでくれ「また嘘ついてる」なんて君は今思っているのだろうがこれは紛れもない真実だ。

 

 私の人生について高い評価を下した神がこの世界に転送した。やはり私の愛は神に届いたのか……

 

 もう一度新しい()を育む機会を設けてくれた神には感謝しているが、流石にこれは酷いと思わないかい? なんだこの()()()()は? 

 

 私たちは生まれた時から外の世界に隔離されていて、娯楽も一切存在しないこの小さな目の痛くなるような白い世界で毎日のように厳しい訓練や試験を耐えなければならない。

 

 人権はどうした? 参考書以外の本はないのか? こんなのだから私たち四期生はもう半分ほどしか残っていないじゃないか。本は心を豊かにしてくれる素晴らしいものだとなぜ気づかない!? 

 

 ……外の世界はここより楽しいのかって? 何を言うんだ綾小路さん。外の世界が全てこんなつまらない所だったら私は赤ん坊の頃には首を吊っている。

 

 ……人工的に天才を生み出す施設

 ──『人間は神と悪魔の間に浮遊する』──これはパスカルの言葉だよ。授業で習っただろう? 人は神と悪魔のちょうど中間に立っていて、どちらにも容易に転ぶと言う意味だ。だが私はここを見て少し違うことを思ったんだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()宿()()()()()()()()()なのだろう。生まれた時から全て数値で管理し、使えない不良品はゴミ箱行き。やっている事は神よりも傲慢、悪魔より悪辣だ。

 

 そもそもとしてここには愛がない。百歩譲ってここを孤児院のようなものと考えてみたとしても何なんだここのスタッフは? 子供という可能性の塊になぜそこまで愛を注げないんだ? 大体この施設の方針として……

 

 まったく、君はどう思う? ()()()()()()

 

 

 

「愛とかはよくわかんないけど……わたしは水無瀬がいるならそれでいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ...君は相変わらずだね──

 

 

 

 

 ―生徒報告書―

 

 ID:04-02

 名前:水無瀬 柊 (ミナセ シュウ)

 年齢:7 (四期生)

 誕生日:4月29日

 身長:128㎝

 体重:25kg

 

 

 ─評価─

 

 すべての評価において四期生の中でもトップの非常に優秀な成績を収めており。現在のカリキュラム達成度を考えるに三年程度ですべての履修が完了すると予想される。二年ほど前に頭角を現すまで綾小路が四期生最高傑作と思われていたが、その評価を覆すこととなった。

 ─追記─

 評価が上がった同時期から著しい自我の発達が見受けられ、問題行動を起こすようになった

 よって最高傑作を綾小路へと変更する。

 

 

 

 

 

 




評価に関してはそれっぽく書きました

TS綾小路の名前どうしよう?

  • 変えたほうがいい
  • 清隆のままでいい
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