ようこそ愛憎混じる学び舎へ 作:妄想癖のメアリー
ちなみに水無瀬くんの一人称が「僕」に変わっていますがミスじゃないです!
side:水無瀬
さて、僕が転生を自覚して早10年がたった。4年ほど前にあの息が詰まる白い部屋から逃げ出し、生活の基盤を整え、平凡な中学生活を送り、僕の待ちに待ったこの日がとうとうやってきたのだ。
まったく本当に綾小路先生に対抗するための準備には、非常に長い時間を要した。しかしそのかいがあって、僕たちはつかの間の自由を得たのだ。
嗚呼、彼女は元気にしているだろうか? あそこから抜け出した後は、連絡も何も取ることができなかったが、松雄さん達とははうまくやれているのかな? そもそも約束通りちゃんと合格したのだろうか?
僕がいなくなった後も四期生の彼らとはうまくやれているのだろうか? きちんと自分を磨く努力を怠っていないだろうか? まあ、あの親バカ先生がいるからその辺はあまり心配していないが、もしもということがある。
彼女が非常に優秀であることは疑いようのない事実だが、やはり気になるものは気になる。
水無瀬はバスに揺られ、忙しなく指を動かしながら窓から流れる桜満開の景色を見て想いをはせる。
「あなたにしては随分と慌ただしいですね。そんなに彼女のことが気になるので?」
水無瀬の目の前に座る杖を持った銀髪の少女が少し驚いたように彼に問いかける。水無瀬はその問いに素直に答えた。
「そりゃあ気になるさ。いくら彼女が優秀だとしても万が一のことがある。そもそも僕は彼女があそこから逃げ出す事には直接関係していないんだ。接触しようにも危険性を顧みたらそれもできないしね。だから僕は彼女達を信用するしかないのさ」
「……それでも意外です。あなたなら『彼女ならすべてうまくやってくれる。そう信じてるさ』とでも言うのかと思っていました。あなたから彼女の父親の話はよく聞きますが、あなた自身も大概ですね」
呆れたように少女は語る。
「おいおい、僕が綾小路先生と同じだと言いたいのかい? ……まったく心外だ。僕はあの人ほど不器用で親バカではないよ」
不機嫌そうに形のいい眉をへの字にして語る水無瀬。
「それに君だって随分と楽しそうじゃないかい? そんなに彼女と戦いたいのか? 競争はそれぞれの実力を高いレベルへと導いてくれる素晴らしいものだとは僕も思っているが……やっぱり僕にはその考えはよくわからないよ」
「ふふ……いったい誰のせいだと思っているんでしょうか? 私をこんな体にした責任は取ってもらいたいものです」
意味深な事をいう彼女に周りの乗客は驚いたように水無瀬を見る。
「はあ……からかうのはやめてくれないかい? ──有栖ちゃん」
「あら? 何も嘘をついたつもりはございませんが……一体何を想像したのか気になるところですが……まあいいでしょう。私のすることには変わりありませんから」
にこやかに彼女──坂柳有栖は語る。
「私はあの偽りの天才を完膚なきまでに叩きのめし、天才は生まれながらにして天才だということを証明します。そしてその後は──水無瀬君、あなたです。……まだあなたの元までは届きませんが、いずれは必ず私はあなたを倒します。神に愛されたなどというあなたの妄言をたたき割って差し上げましょう」
「それは結構。……ところでここには20人近くの人が乗っているけどそこは気にならないのかな? 随分と格好よく決めたみたいだけど……」
周りからの微笑ましいものを見る目に気づいた坂柳は水無瀬をジト目で見つめた。
「……意地が悪いですよ、水無瀬君」
「さっきのお返しだよ」
※4年前 ホワイトルーム史上初めての脱走者が出た少し後の話
20XX年XX月XX日 PM11:20-翌AM01:20
上記時間に水無瀬柊(以下04-02)による脱走事案が発生。
04-02は当日カリキュラム終了4時間後E-02からE-07までの施設の警備用電源を遮断。※1対処に向かった整備員や制圧に向かった警備員計12名を無力化したのち、西職員用出口より脱走。
脱走後は○○氏(研究員。事案の関与は尋問※2ののち否)の自家用車にて南東の方向へと向かう。現場から南東60km離れたYY県YY市郊外崖下にて横転した状態で車が発見される。
現場には04-02のDNAと一致する多量の血液が見受けられる。04-02は死亡したとみなし、捜査を打ち切る。
※1:遮断時の詳しい状況については下記報告書記載。
※2:四期生、担当職員すべてに調査を行った。内容については下記報告書記載。
──担当報告官 ▲▲──
「報告を見る限り脱走したは良いが、慣れない運転と極度の緊張状態による不運の事故といったところでしょうか」
報告書を読み上げた年老いた男性は失望を隠さずに感想を言う。
薄暗い部屋に二杯のコーヒーが置いてあった。
「……よく見ろ。別途資料に記載されているが、事故の現場からは出血多量になる量の血液しか検出されていない。裏を返せば肉片や髪の毛なども確認されていないということだ。しかも炎上がひどく状態が悪いものばかり、事故時点で流れた血液かどうかも判別がつかない。死亡したとみなすには早計だ」
男の体面に座る壮年の男──綾小路父は語った。
「彼の身体的にはかなりの量です。死亡は確定でしょう? さらに大々的な調査が実施できない以上死亡の判断は極めて正しいです」
「いいや、あいつは生きているだろう。それも間違いなく」
そう言って一枚のカルテを取り出す。
「これは……」
「水無瀬柊のカルテだ、ここ2か月ほどの定期診断の結果だ。それ以前は極めて健康的だったが、基準値をギリギリ下回らない貧血の症状が出ている。おそらく奴は自分の血液をこの時のために抜いていたんだろう」
「そんな! あり得ません! 第一誰が彼に協力するというのですか!? ……いや、ありえない話ではありませんね」
「ああ、ホワイトルームも一枚岩ではないからな、おそらく奴が私の成果を嫌っている者に何かしらの条件を提示したのだろう」
「それで、彼が生きているとわかったらどうするので? 連れ戻すのですか?」
綾小路父は乾いた口を潤すためコーヒーを一口含んで答える。
「いや、特に影響はないだろう。奴は外の世界に出たがっていたからな。ここにたどり着く可能性も限りなく低い。放置しても害はない」
「(……だが私の目的を阻むなら今までのように容赦はしないぞ……水無瀬柊)」
──最後の一口のコーヒーはひどく冷めていた──
時は現在へと戻る。
「……悪かったよ、確かに少し意地を張ってしまった、いい加減拗ねないでくれ。新たなる門出の日に友達がそれだと気まずくてしょうがないじゃないか」
少し困った様子で水無瀬は坂柳に話しかける。車内でのやり取りから数分が経過した後だった。
「いいえ、別に拗ねてはいないのでお気になさらず」
「それを人は拗ねているというのだよ。……柄にもなく僕も少し浮かれているようだ。何せこれから人生で一度しかない高校生活がまた始まるんだからね」
「……はあ。わかりました。今回は許して差し上げましょう。……それにしても今日は意外なことが多いように思えます」
「例えば?」
「あなたですよ水無瀬君。私はあなたとは長い付き合いであることを自覚していますがあなたは先ほどのように物事の始まりを気にする人とは思えませんでした。形から入るような人種とは真逆だと思っていましたが……」
「まあ気にして損はないからね……よく中学校の先生も言っていたじゃないか。『はじめと終わりよければすべてよし』って。誰だって出鼻を挫かれる事は嫌だろう? 僕もそのうちの一人なだけだよ」
「ふふ、そうですね……私もなるべくならこれから楽しい学生生活を送りたいものです。中学校では競争相手はあなたしかいませんでしたから」
上機嫌に坂柳は語る。
「やっぱり楽しそうじゃないか。まあそうだね……多分中学の時よりかは楽しめると思うよ。何せこれから向かう所は日本で有数の高校だ」
「あら? 楽しそうに見えますか? ……それだけではありませんよ。想い人の知らない側面を知れて私は嬉しく思います」
からかうような視線を向け坂柳は語る。
「……やめてくれ。さっきとは別の意味で気まずいよ。やっぱりまだ根に持っているじゃないか……あとこれから入学した後はそのような言動はなるべく控えてくれ。君は知らないと思うが周りに勘繰られて大変だったんだから」
当時を振り返り苦笑いしながら水無瀬は呟く。
「あら、その話は先ほど終わったじゃないですか? しつこい男は嫌われますよ? それにあれはわざとです。クラスメイト達の対応に暮れるあなたは見ていて面白かったですよ。彼らのような年頃の子供たちは美男美女に弱いですから。あなたは女性慣れしてるにもかかわらずかなり対応に困っていましたね」
当時の様子を思い出したのか楽しげに語る。
「勘弁してくれよ。それに僕はそんなに女性慣れもしていない……前を含めて恋愛関係になったのは片手の指に入るくらいだ」
どこか遠い目をしている水無瀬。続けて彼は話す。
「そして自分で言うのか……それに君だって年は変わらないだろうに」
「それを言うならあなたもでは? 水無瀬君。あと容姿も生まれ持った才能であることに変わりはありません」
微笑みながら坂柳は語る。その容姿も相まって幻想的な雰囲気を醸し出していた。
それに劣らない容貌を持つ水無瀬だがその発言に対しては苦笑いをしていた。
「嫌な発言だね全く。……僕はまた特別さ、前と足したら君のお父さんとも対して変わりない」
「……にわかには信じられませんがね、その話は」
「まあ別に信じなくてもいいけどね」
──そんな会話を続けること十数分。──
「ん、ふうー……立ち続けるのも体が凝って大変だ」
バスから降りると伸びをし一人愚痴る水無瀬。目的地は、高度育成高等学校前。
「爺臭いですよ水無瀬君。そんなに嫌ならわざわざ譲らずに、私の隣に座ればよかったものを」
「何を言っているんだ。優先席には座るべき人がいるだろう? 僕のような人間は座るべきではないよ。体調が悪い方や、お年寄り、妊婦さん等座るべき人に譲るべきだ。そのような心遣いは尊い愛だよ」
口角を上げ水無瀬は語る。
「また
「まあ僕が好き勝手やっていることだしね、他人に強制はしないさ。押しつけがましい愛ほど鬱陶しいものはない」
「よく言えますね。あなたは心の底では赤の他人への慈しみなど感じていないはずなのに、何がそこまであなたを動かしているのでしょうか?」
「……全く人を良く見る子だ君は」
重くなった空気を払しょくするかのように笑顔で彼女の頭を撫でまわす水無瀬。撫でられた彼女は抵抗せずとも抗議するような目で彼を見つめる。
「……子供扱いはやめてください。私はもうそんな年じゃありません」
「昔から好きだっただろう? 君は僕から見たら慈しみ、護るべき大事な子供だよ。それに一つアドバイスだ」
なでる手を止め、その手で彼女の頬を優しくなでる水無瀬。
「子供扱いをやめろって言っているうちはまだ子供のままだよ。覚えておくといい」
「……」
────彼が彼女に向ける愛は、誰から見ても確かに本当に見えただろう────
──なおこれら全て学校で行われているが……それを指摘するのは野暮だろうか? ──
先ほどの場面とは打って変わって校舎内。ひときしりいちゃついた後周りから向けられる暖かい目とざわついた声から逃げるように速足で移動した彼らはクラス分けの掲示板前へと来ていた。
「まだそんなに人が来ていませんね……」
「……まあ、急いできたから」
「はあ、全く一体誰のせいだと思ってるんでしょうか、明日には噂になっていますよ」
「……いや、マジでごめん」
「私はAクラスで、水無瀬君はDクラスですね」
「ふむ、別クラスか、まあ確率は四分の一だからね。しかし君のお父さんなら僕と君は同じクラスにするだろうと予想していたが」
腕を組み首をかしげる水無瀬。
不思議そうにしている彼とは対照に坂柳は嬉しそうだ。
先にAクラスへと向かう二人
「まあ私としては嬉しい限りです。この学校で行われるであろう何らかの試験であなたと戦えるのですから」
「ほんとに君はぶれないね。というかその理事長情報は大分ズルいんじゃないかい? 僕は何も知らないというのに」
苦笑いで話す水無瀬。それに対して不敵な笑みを浮かべる坂柳は語る。
「私は勝つためなら手段を選ぶつもりはございません。それにこのくらいのハンデも与えてくれないのでしょうか? 私の想い人は随分と狭量ですね」
「わかった、わかったよ。君が僕に挑んでくるなら僕は君のその愛を真正面から受け止めよう」
にこやかに人を惹きつける笑みで水無瀬は語る。
「……その言葉の節々に愛を入れ込む癖、抑えた方がいいですよ。あなたのクラスメイトは変な勘違いを起こします。特に女子は。……無駄に不幸な人が増えるだけですよ」
彼に告白しては見事に撃沈、教室で泣いていた昔の同級生を思い出し遠い目をする坂柳。
「……そうだね、気を付けるよ」
──そうこうしているうちにAクラスの教室についた二人──
「放課後あなたの部屋へと行きます。部屋の番号を後でチャットに送っておいてください」
「ん、了解。一度部屋に戻ったら食品を買い出しに行くつもりだけど一緒に行くかい?」
「ええ、ここに来てからもあなたの料理が食べられるのは嬉しい誤算でした。あなた抜きで父が料理できるか心配ですが……」
「……まあ大丈夫だろう、いざとなったら料理本を送るし、連絡は取れるからね」
そう言って別れる二人、その後水無瀬はDクラスの教室へと来た。
彼は指定された席に座り訝しげに考える。
「(外から見たAクラスとは随分と違うみたいだね。それに日本有数の進学校の割には随分と……)」
クラスの様子を見て思索にふける彼だったが、後方からこちらを気にするような視線には気づいていた。
それを確認し水無瀬は表情には出さないものの内心は喜色にあふれていた
「(嗚呼、やはり君は素晴らしい、素晴らしいよ綾小路さん!! こんなに心躍ったのはいったい何十年ぶりだろうか? 少なくとも二度目の生を受けてからは初めてだ! あの白い部屋に生まれて来たことを喜んだのは初めてだよ! 4年だ、4年間我慢したんだ。僕がいない間に何を学び、どのように成長したんだい? 早く話したいよ綾小路さん!)」
とか内心思っている割に自分から話しかけに行かない水無瀬、面倒な男である。
だが心が荒れているのは彼だけではなかった。
「(丸4年と23日8時間……これは私が水無瀬が別れてから経った時間。昔と比べて約29㎝も身長が伸びてて体つきもがっしりしているし、顔つきも前はかわいい感じだったけど今は凛々しくなっている……訳4年の月日が流れてあなたもだいぶ変わった。
けどあの匂いと優しそうな表情、そして私の本能が間違いないと言っている! やっと会えた! でもどうして話しかけに来ない? ……そうだ、水無瀬は『受け身ではいけない』と言っていた!
つまり私から話しかけに行かないといけないという事、でもどうしよう。彼に言われてから私は他者と積極的にコミュニケーションをするように心がけた。しかしまだ私には実力が足りない……どうしよう、なんでホワイトルームではこういう時の対処法を教えてはくれなかったの!?)」
ホワイトルーム関係者が聞いたらそんな状況あるわけないだろ。とでも言いそうな理不尽なことを思う綾小路。
こっちも大概重い女だった。
そんな様子のおかしい綾小路に対して隣人の黒髪の少女、堀北鈴音は動揺を隠さずに問う。
「……先ほどから随分と血走った眼で彼を見つめているけど大丈夫かしら? 綾小路さん? ……はっきり言って申し訳ないけれど隣で知人がそんな目をしていたら気持ちが悪いわ。そんなに気になるなら話しかけにでも行けばいいじゃない? 私の隣でバスで不適切な音量でおばあさんに席を譲るぐらいの図太さがあるなら難しいことではないはずよ」
こちらも一悶着あったようだ。
「(水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬水無瀬……)ん? どうかした? 堀北」
「……何でもないわ」
たった今気が付いたようなそぶりをみせる綾小路に腹を立てた堀北だったが、話が通じないことが分かると冷たい目を彼女に向けながら今後話しかけることはなかった。
──そして時は流れ全員が席に着いて数分、教師と思われるスーツを着た女性が教室に入ってきた──
水無瀬も綾小路も脳内が荒ぶっている中、彼女は告げる。
「新入生諸君、私がDクラス担任の茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している。まず初めに言っておくが、この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの三年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。今から一時間後に入学式があるがその前に、この学校に設けられている特殊ルールについて書かれた資料を配る。以前入学案内と合わせて配布してあるがな」
そういって前の席から全員に資料が回ってくる。この頃には流石に二人とも落ち着いていた。
side:水無瀬
配られた資料を確認する、まあ合格発表とともに送られてきた資料で内容は一字一句すべて把握済みではあるが一応内容を確認する……うん特に変わりはないようだね。
この学校には全国に存在する高等学校とは異なる特殊な部分がある。そのうちの一つはこの高校の生徒全員に敷地内での学校生活を義務付けるものである。
まあこれだけならそこまで珍しいものでもない。しかし決定的に異なる点として、在学中は特例を除き敷地外部から一切出ることは出来ない。外部との連絡を含む接触を完全に遮断しているのだ。たとえ親兄弟であってもそこに例外はない。
が、しかしその反面生徒たちが苦労しないような設備も充実している。60万平米おもの広大な土地の中に数多くの施設が存在する。カラオケ、映画館、カフェ、大型ショッピングモール等だ。正直下手な県庁所在地よりも都会であることは否めないだろう。
東京湾を埋め立てた土地で、そこに小さな町を箱庭のように作って何をしているかと思えば、毎年たったの160人の高校生を入学させているときた。昔この学校の存在を坂柳理事長から直接聞いたときは自分の精神年齢も忘れてワクワクしてしまった記憶がある。
まあそれは置いておいて、茶柱先生は説明を続ける。
「今から学生証カードを配る。それを使えば敷地内の全ての施設を利用することができ、売店などで商品を購入することも可能となっている。端的に言えばクレジットカードのようなものだな。ただし消費されるのはこの学校内でのみ流通しているポイントだ。
「施設では機械に学生証を通すか、あるいは提示することで使用できる。非常にシンプルな使い方だろう? それからポイントは毎月一日に生徒全員に自動的に振り込まれることになっている。新入生全員、平等に一人十万ポイントが支給されているはずだ。なお、このポイントは一ポイントあたり一円の価値がある。それ以上の説明は不要だろう」
最後の一言に教室中がざわめく。新入生全員、つまり入学しただけで皆10万円のお金が支給されたのだ。僕らのような学生の身においては大金に思えるだろうが内心僕はこうも思っていた。
「(まあそこまで驚くことでもない額だ。少し多い気もするがこんな箱庭を作るほど国が金をかけているんだ、妥当っちゃ妥当であるといえるだろう。高校生の小遣いだけならともかく、衣食住の住以外のすべてを自分たちで賄わなければならない状況だからな)」
「ポイントの支給額の大きさに驚いたか? この学校は実力で生徒を測る。入学を果たした時点のお前たちにはそれだけの価値と可能性がある。それはお前たちに対する評価の表れだ。遠慮なく使え。ただし、ポイントは卒業後には全て学校側が回収する流れとなっている。現金化などは不可能だから貯め込んでいても得にはならんぞ。配られたポイントはどのように使おうがお前たちの自由だ。仮に必要ないと言うのであれば誰かに譲渡することも問題は無い。だがカツアゲのような真似はするなよ? 学校はいじめ等の問題には敏感に対処する。何か質問はあるか?」
少し気になったことがあるため質問させてもらおうか。
「質問よろしいでしょうか!」
僕は意図的に少し明るい口調で先生へと問いかける。
「……水無瀬か。いいだろう質問を続けろ」
……やはり坂柳理事長の言ってた通りこっちの情報はある程度深いところまで伝わっているみたいだね。
あまり時間をかけるのはよくないだろうしさっさと質問するか。
「ありがとうございます! 先生は毎月1日にポイントが振り込まれると仰っていましたが、振り込まれるポイントは例えば問題行動などで減ったりするのでしょうか?」
僕がそう質問すると、先生は少しにやにやとして質問の答えを返してさえくれた。
「なんだ水無瀬、入学早々喧嘩でもする予定か? すまない、冗談だ。質問に答えよう……と言いたいところだが、その質問には答えることはできない。だが先も言った通り
落ち着きのないクラスメイトをよそに茶柱先生は締めくくり、教室を後にした。
望んでいた答えは返ってこなかったが、僕は自分の推測が正しいことを確信した。
「(なるほど。ある程度の当たりはついたな。茶柱佐枝は間違いなく優秀だ。あれでは見抜ける生徒は殆どいない。だがあまり嘘が得意ではないのだろう、読み解くこと自体はそこまで難しくはなかった。彼女が事実と微妙に異なることを説明した点は何点かある。
一つはクラス替えについて、専門科目を学ぶような学校でもない限り基本的にはクラス替えは行うはずだ。なぜなら同じクラスで3年間過ごしたとして交友関係が狭くなり、コミュニケーション能力が磨かれなくなる。坂柳理事長がそれを理解していないはずがない。つまり進級とは別の何らかの条件でクラス替えは発生するか、メンバーがバラバラになったら不都合が生じるということ。これは有栖が言ってたクラス間の競い事があることの裏付けにもなる。
そしてポイントについて。上手く思考を誘導させた手腕は目を見張るものがあるが彼女は言っていた『この学校において買えないものはない』と。それが例えば出席日数、テストの点数等成績にかかわってくるものかどうかの確定はできないが、覚えておいて損はないだろう。
そして最後が支給されるポイントと評価の関係について。やはりポイントは変動する。それも大きな校則違反などではなくおそらく授業態度等の小さな面でも判断されるだろう……妙に多くの監視カメラがあった理由がこれというわけだ。そしてこの評価が何を基準に、どのように増減するかはわからない……これも調べる必要がありそうだ)」
「(入学して良かったと心から思えるよ! ……楽しくなってきたじゃないか!)」
────先ほどと同じように頬杖をついて学校について考える水無瀬は、とても楽しそうに見えたと後に綾小路は語る。────
高度育成高等学校学生データベース
水無瀬柊
※イラスト、キャラのイメージを損なう可能性あり。
推し男子高校生メーカー Picrewより
結構時系列がばらばらになってる自覚はあります。
一応読みやすいように工夫はしましたが、もし読みずらい等あれば順序を変えさせていただきます。
文章の長さどのくらいがいいみんな?長い方がいいなら頻度落としてまとめて投稿するかも(約束は出来ないけど参考にしたい)
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