ようこそ愛憎混じる学び舎へ   作:妄想癖のメアリー

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12、34話をそれぞれ統合した影響でしおりがおかしくなってしまいました…
現在見ている話が最新話かどうか確認お願いします!


第19話 押しつけがましい愛ほど鬱陶しいものはない

 

 

「はあー……疲れたな。ん?」

 

 一之瀬の悩みを解決した後、本を読んでいた水無瀬の元に一通のメッセージが来ていた。端末を取って画面を開くと、そこには櫛田の名前が映っていた。

 

 [佐倉さんについて相談があるんだけど、時間あるとき電話できる? ]

 

「……別に忙しくないんだから普通に電話すればいいのに」

 

 そうは言っても好きな相手に電話を掛けるのは少しハードルが高いのだ。

 そんな彼女の初心な行動に微笑ましさを感じながら水無瀬は電話をかける。メッセージが来たのは30分ほど前だったが、間もなく繋がった。

 

「もしもし? 水無瀬君」

 

「こんばんは桔梗ちゃん。メッセージ見たよ、どうしたんだい? 佐倉さんについての相談って事だったけど……」

 

 ある程度予想はついているが水無瀬は質問をした。

 

「えっとね、この前話しかけた時、佐倉さんのデジカメ壊れちゃったからその責任を取りたいなーって」

 

「ああ、あの件か。あれに関しては僕が指示をしたから君が悪いわけじゃないだろう? それに明後日の日曜日に電気屋に持っていくっていう約束をもうしているからね」

 

 その言葉に納得したかのように声を上げた櫛田

 

「そっか! だから誘ったときに予定あるって断わられちゃったのかー」

 

 そうして少し悩んだ後、櫛田はこう提案した。

 

「その修理の約束、私も行っていいかな?」

 

「……いや、申し訳ないけど2人で行きたいかな。すこし気になることがあって」

 

 快諾しそうな水無瀬であるが、意外にもその提案を断る。

 

「そっか……」

 

「すまないね。────これは内緒なんだけど……この審議、勝ちは確実だから大丈夫だよ」

 

「え!? そうなの! ……そうなんだ、分かった」

 

「ああ、安心して待ってて」

 

 そうして数秒間沈黙が流れる。会話を展開することが上手い2人にとって、それはやけに長く感じた。

 

「あのさ……」

 

 そんな中切り出したのは櫛田。しかしその後の言葉は中々出てこない。暗闇の中を歩くかのような自信のない言葉がポツポツと流れて来る。

 

「えっと、水無瀬君が言う愛ってさ……その、なんて言っていいか分かんないんだけど──どこまでがホントなの……?」

 

 水無瀬は自分の表情が強張るのを感じた。しかしそれを悟られないように気を配りながら聞く。

 

「ホントって?」

 

「……ううん、何でもない。ごめんね、変なこと聞いて。じゃあまた月曜日」

 

「ああ、おやすみ。桔梗ちゃん」

 

 そう言って電話を切る水無瀬。その後ため息を吐いた彼は改めて櫛田の凄さを実感したように呟いた。

 

「……さすがだね。あの子は」

 

 

 

 ──そう言った彼が内心どう思っていたのかは、誰にも分からなかった──

 

 

 

 

 

 

 

 日曜日の昼前、水無瀬は佐倉との約束を果たすためショッピングモールへとやって来ていた。大体土日は誰かと出かけている彼にとって、1人で寮を出る感覚は珍しいらしい。暇をつぶすようにイヤホンで音楽を聴きながら歩いている。

 別に同じ寮なのだから一緒に行けばいいと思う彼であったが、佐倉にとってその行動はハードルが高いのだろう。現地集合という形に落ち着いた。

 

「えっと、『家電屋の前で待ってます」か……あ、いた。こんにちは、佐倉さん」

 

 集合時間の5分ほど前に到着した水無瀬であったが、そこにはすでに佐倉が待っていた。

 彼女は帽子を被って、更にそこにマスクまでしている。それでも一瞬で気が付いた水無瀬はもう才能なのだろう。

 

「あ、こんにちは。水無瀬君……ごめんねこんな格好で。来て見て思ったけど、少し不審者っぽいかも……」

 

 そんなことを言う佐倉に否定しようとした水無瀬だったが、それが難しいことに気づき苦笑いで答えた。

 

「……まあそうだね。せめてマスクは外した方がいいよ? 逆に目立ってしまう」

 

「うん……そうだね。いつも付けてたんだけど、やめた方がいいかも……」

 

 そう言ってマスクを外す彼女に水無瀬は確認を取る。

 

「よし、じゃあ行こっか。ここでいいんだよね?」

 

「はい、お願いします。すみません……こんなことに付き合わせてしまって」

 

 そう言って申し訳なさそうに頭を下げる彼女に水無瀬はやんわりと咎めた。

 

「こらこら、あんまり自分を卑下するもんじゃないよ。大事なカメラなんだろう? こういう時はありがとうって言わなきゃ」

 

「うん。ありがとう! 水無瀬君」

 

 その言葉に安心したかのように返す佐倉。最初に会った緊張感も抜けていて、続けて会話をしていた。

 基本的には水無瀬が投げかけて佐倉が返す形だったが、二人は傍から見て仲の良い友人に見えたそうな。

 

 

 

 家電屋に入った2人。その内装を見て改めて水無瀬は感心したように語る。

 

「それにしても改めて考えるとこの学校ってすごいと思わないかい? たったの数百人余りの学生のために有名なお店がズラリとならんでる」

 

「確かにそうかもね……カメラとか高校生が興味なさそうなのにしっかりと売ってるし」

 

「いい趣味だと思うけどね。ポイントが貯まったら安いモデルでも買ってみようかな? その時は相談するからよろしくね」

 

 端末には何百万おものポイントが貯まっているのに白々しい男である。

 

「そ、相談か……分かった。荷が重いけど頑張るね」

 

「ああ、頼むよ。あったよ。修理を受け付けてくれるところ」

 

「あ……」

 

 何故か突然ピタリと佐倉の足が止まった。彼女の顔は何か嫌なモノでも見つけたように強張っていて、その視線の先には特におかしなものはない。

 

「大丈夫かい? 佐倉さん」

 

「あ、えっと……その……」

 

「大丈夫。ゆっくりでいいよ」

 

 そう言う水無瀬に対して佐倉は深呼吸して答えた。

 

「何でもないから……」 

 

 そう言って懸命に笑顔を浮かべ、修理受付の場所へ向かった。

 店員に話しかける2人。その内容はもちろん修理についてだ。基本的には水無瀬が話して、その都度の疑問や質問には佐倉が答える形だ。

 しかし店員の様子がやけにおかしい。先ほどからの様子を見た水無瀬は彼女の先ほどからの様子に納得するように考えていた。

 

「(この店員……なるほどね。僕に対する嫌悪感と嫉妬。これが原因か)それじゃあ修理が終わったら僕の所へ連絡をください」

 

 そういって佐倉の持っていたペンを受け取る水無瀬。それに対して店員は焦ったように語る。

 

「ちょ、ちょっと君? このカメラの所有者は彼女だよね? それはちょっと……」

 

「何か問題でも?」

 

 少し語気を強めた水無瀬。それに対して驚いたのか言葉を鎮める店員。

 

「い、いえ。特に問題はありません……」

 

 程なくして必要事項の記入も終わり、用紙と共にデジカメが無事預けられる。 

 ホッと胸を撫で下ろした佐倉ではあったが、修理されたデジカメが戻ってくるまでに2週間ほどかかるらしく、その点にには酷くがっかりしていた。

 

「よし! じゃあ行こうか佐倉さん」

 

 そう言ってその場を離れようとする2人に対して、それを止めたのは意外にも先の店員だった。

 

「すみません。連絡に関して少し伺いたいことがあるのですが……」

 

「分かりました。彼女も一緒にですか?」

 

 焦るように早口でまくし立てる店員。よほど聞きたいことがあるのだろうか。

 

「いえ、連絡先は個人情報なのでお客様お一人でお願いします」

 

「って事らしいから、少し外で待っていてくれないかい?」

 

「……うん、分かった」

 

 そう言って不安そうに店を後にした佐倉。彼女が居なくなったのを確認した水無瀬が切り出す。

 

「それで、話とは何でしょうか?」

 

「ああ、それはですね──」

 

 3分ほど話した店員だったが、唐突に緊張した雰囲気で問いかける。

 

「──お客様と彼女は、どんなご関係で?」

 

 彼自身は世間話を装った会話が出来たと感じているだろうが、余りにも彼は店員としては不適切なその様子に水無瀬は笑うのをこらえながら返答する。

 

「関係ですか……?」

 

「はい。随分と親し気にされていたので」

 

「普通の友人ですよ? 彼女はあまり人と話すのが得意ではないので、カメラの修理に付き添った。それだけです」

 

「そうですか……」

 

 その瞬間露骨に安心する店員。それを見た水無瀬は自分の内に()()()()を感じるのを自覚しながらその場を切り抜けようと店員に問いかける。

 

「(全く……嫌なことを思い出すよ)話は以上ですか? この後も予定があるので早く終わりたいのですが……」

 

「ええ! 大丈夫です! ありがとうございました」

 

「では、失礼します」

 

 そう言ってその場を離れる水無瀬。店を出て辺りを見回した彼、先ほど集合したベンチに佐倉はいた。

 彼女は心配一色の声色で話しかける。

 

「大丈夫だった……? 水無瀬君」

 

「ああ、特に何もなかったよ」

 

 要らぬ心配を掛けないように実際に会ったことを隠して話す水無瀬。

 

「そっか……良かった」

 

「よし、これで今日の用事は終わりだね。他に寄りたい所とかあるかい? 付き合うよ」

 

「ううん、大丈夫」

 

「よし、じゃあ帰ろっか。今日は楽しかったよ。また月曜日学校で」

 

 そう言って解散を切り出した水無瀬。現地集合だったのでここで解散とする予定なのだろう。そんな彼に対して佐倉は動かない。

 

「あのっ……!」

 

 少し声を張り、佐倉が彼に真っ直ぐ目を向けた。視線が交錯するとすぐ逸れたが。

 

「……須藤くんのこと、わ、私でも協力できるかも知れない……」 

 

「協力なら既にしてもらってるよ。写真のデータは匿名で貰ったって事にする予定だからね」

 

「えっと、そうじゃなくて……その証言というか、目撃者というか」

 

 歯切れ悪く語る佐倉。その内容を聞いた水無瀬は驚いたように彼女に問いかける。

 

「それは佐倉さんが目撃者として名乗り出るという事なのかな? ……僕にとってはすごく嬉しい話だ。だが今日は恩を着せるために君を誘ったわけじゃないんだよ?」

 

「大丈夫……それは分かってるよ。……多分、黙ってたら後悔、すると思うから」

 

「嬉しいよ。ありがとう、佐倉さん」

 

 彼女は自分の意志でしっかりと足を踏みしめたのだ、己が成長するための険しい道のりに。

 それに感動しながらも、彼女の周りの状況を考えて一瞬眉間に皺を寄せる水無瀬だったが、幸運なことに彼女は気が付かなかったようだ。

 

「(彼女の道のりを阻むものは何人たりとも許す気はない。どんな手を使ってでも排除してみせる)」

 

 

 

 ────そう固く誓った水無瀬であった────

 

 

 

「水無瀬。何調べてるの……って大事件。坂柳ー!」

 

「騒々しいですね……一体何があったんですか──ってこれ」

 

「大変、水無瀬がついにグラビアを見るようになった。これは大問題」

 

 そう言って騒ぎ出す2人。いつもなら笑いながら咎めるであろう水無瀬だったが、いつになく真面目に綾小路へと問いかける。

 

「清楓ちゃん。この画像の子に見覚えはないかい?」

 

「これは、佐倉……?」

 

「佐倉さんってDクラスの方ですよね? 事件を目撃していたっていう……彼女が一体どうしたのですか?」

 

 いつもなら茶化す2人であったが、彼の様子を見てただ事ではないと思ったのか真剣な表情だ。

 

「グラビアアイドル雫。人気が出てきたタイミングで突然活動を停止、その時期はこの学校に入学した時期と同じ。そして極めつけは彼女のアップロードした写真だ」

 

「これは……この学校の寮の扉ですね」

 

「確かに言われて見れば似ている。だけどどうして?」

 

 坂柳が確認し、綾小路がそう質問した。

 

「彼女のブログのコメントだ、見てくれ」

 

 そう言ってとあるサイトを見せる水無瀬。そこ何ともおぞましいモノが映っていた。

 

『運命って言葉を信じる? 僕は信じるよ。これからはずっと一緒だね』

『いつも君を近くに感じるよ』

『今日は一段と可愛かったね』

『目が合ったことに気づいた? 僕は気づいたよ』

 

 ────『ほら、やっぱり神様はいたよ』────

 

「……気持ち悪い」

 

「ええ……そうですね、これは何と言うか……」

 

 余りの内容に言葉が出ない2人に対して、更に驚愕の事実を水無瀬は告げる。

 

「……そして恐らく僕の予想が正しければ、この書き込みを行っているであろう人物は、この学校の店に勤務している者だ」

 

「それって……」

 

 何かに気づいたように綾小路が声を出す。

 

「ああ、かなり危険だ……済まないが僕は須藤の事件から降りる。明後日の審議には清楓ちゃんが出てくれ。このボイスレコーダーのデータを渡しておく。後は君に任せた」

 

「うん。分かった……気を付けてね?」

 

「分かってる。大丈夫さ」

 

 2人の信頼関係が見て取れるやり取りである。

 

 

 

 その後就寝した2人を置いて寮の近くの公園まで来た水無瀬。誰かに電話をしているようだ。

 

「もしもし、お久しぶりです。坂柳理事長……はい、少し相談がありまして」

 

 相手はこの学校の責任者である坂柳理事長。彼がホワイトルームから出て行って、この学校に来るまでの4年間、世話になった人でもある。

 周囲を警戒しながら先ほどの問題を相談する水無瀬。

 

「──はい、分かってます。騒動にならないように済ませるつもりです。……分かりました。ありがとうございます。では、失礼します」

 

 電話を終えた水無瀬。ため息を吐いた後にふとうんざりしたように呟いた。

 

 

 

「全く、これだから嫌いなんだよ。()()()()()()()ってのは」

 

 過去の思い出をかき消すように呟いた彼であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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これから出て来る試験の内容説明どのくらい欲しいですか?個人的にはちゃんと理解していた方が、楽しめると思います

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