ついに作戦の日が来た。AATISの点検をしたところ、やはり爆発物がしこたま設置してあったそうだ。しかもライアの輸送に使うはずだった高速道路にも大量の爆発物が設置されていた。ゲームと同じだね。UNSAの爆発物処理班が徹夜で取り除いたんだとか。お疲れ様です。リトリビューションとタイガースは地球大気圏内にて待機している。ジュネーブ郊外の空軍基地にもジャッカルが待機しており、SDFが攻めてきたらすぐに駆けつける事になっている。これなら勝てるでしょ。
『これが最後の戦いになるだろう。通信回線は常時接続状態を維持。レイエス艦長、フェラン艦長、カーク艦長、全員の幸運を祈る』
「了解です、艦隊長。火星を派手に荒らしてきますよ」
よーし、それでは行きますか。ポイント使ってコッチを生け捕りにする方法も考えたしな。
「データ、火星に行こう。これで終わらせるぞ」
「了解しました、艦長」
まさに壮観という言葉がぴったりだ。タルシス造船所所長と副官はコマンドセンターから艦隊を眺めながらそう思っていた。予定よりも早くオリンパス・モンス級超大型空母の2番艦と3番艦が配備されたのだ。コッチ艦隊長率いる第8軌道艦隊には2番艦パヴォニスが、所長が兼任している火星宙域防衛艦隊には3番艦アンセリスが配備され、既に出撃準備は完了している。
「オリンパス級が3隻揃うのをこの目で見ることが出来るとは思っていなかったよ」
「私もです。しかしこれで我々の勝利は確実なものとなりましたね」
「その通りだな。オリンパスの修理も完了したからコッチ艦隊長はいつでも地球を攻撃できる」
ディスカバリーとタイガースに逃げられてエンジンを片方やられたコッチは、とにかく怒りを沈めて分析に専念した。スーパースローモーションで戦闘映像を再生したところ、ディスカバリーの船体表面にシールドのようなものがある事を確認した。更にF-SPARが直撃した時の映像ではそのシールドに大きなヒビが入っていた。つまりF-SPARを何回か当てればシールドが消失してディスカバリーを沈める事が出来る。
「それに
「そうですね。これも艦隊長のお陰です」
タルシス造船所には防衛用の対空ミサイルと対空砲、更にスケルター隊2個小隊が駐留している。そこに新たに設置されたのが小型のF-SPARと言える試作エネルギー対空砲、F-SPAR AAだ。F-SPARの技術を歩兵火器に転用したのがF-SPAR Torchだが、これは拠点防衛用に開発されたものだ。威力は通常のF-SPARの半分もないが、速射性は極めて高く3秒に1回のペースで射撃が可能となっている。この兵器が造船所の8ヵ所に設置された。エネルギーは軌道エレベーター経由で地上から送られるので敵が沈むまで撃ち続ける事ができるのだ。
「しかし問題はディスカバリーに命中させる事が出来るかという点ですね」
「それはそうだ。一瞬で違う場所にジャンプするからなあいつは。なんかズルい」
「いきなり飛んできて滅茶苦茶にしてすぐ逃げるというのはセコいですよね」
「全くだ。
そう言いながら所長は窓の外にいるディスカバリーを指差す。
「本当ですよ全く。もう少し空気を読んで…えっ?」
「はい?」
2人は窓の外をよく見る。どう見てもディスカバリーです。本当にありがとうございました。
「敵襲だ!総員戦闘配置!!」
「また来やがった!スケルター隊を出せ!」
「F-SPAR AAを起動!チャージ中です!」
「コッチ艦隊長へ知らせろ!」
「何!?」
コッチは報告を受けて造船所に目を向ける。確かにディスカバリーがいた。
「絶対に逃がすな!艦隊の全火力を集中して奴を…」
「艦隊長!ライア中佐のトランスポンダー信号が途絶えました!」
「何だと!?」
あの信号が途絶えたという事は、地球に潜入させていたスパイ達がライアを奪還してAATISも破壊された事を意味する。今こそ地球に侵攻しUNSA本部を破壊出来るはずだ。
(だがこのままディスカバリーを放置する訳にはいかん。どちらを優先する?…地球が最優先だがディスカバリーは放置できんな)
「パヴォニスとアンセリスは地球へ急行しUNSA本部を瓦礫の山にしてやれ。私はここに残りディスカバリーを破壊する!」
「了解です!」
「戦闘可能な全艦艇及び艦載機はディスカバリーを攻撃せよ!ここを奴の墓場にしてやれ!」
また来ました火星。やっぱオリンパスが3隻もいると圧迫感半端ないな。
「艦長、造船所の各所にF-SPARを内蔵したと思われる砲塔が複数確認できます」
「マジかよ、あいつらあれを量産して造船所に取り付けたのか」
それはアカン。とにかくジャンプしまくって攻撃を受けないようにしないとね。その間にオリンパス2隻がジャンプしていった。でもコッチが乗るオリンパス・モンスはそのまま。やっぱりこっちに残ったか。
「こちらディスカバリー。オリンパス級2隻が地球へジャンプした。コッチは火星に残っている。AATISで風通りを良くしてやってくれ」
『こちらリトリビューション、了解です。そちらもコッチをボコボコにしてやって下さい』
「もちろんだ。データ、光子魚雷の制限を解除。自由射撃を許可する。だが量子魚雷は使っちゃ駄目だぞ。
「了解しました、艦長」
そこからはもう一方的な戦いとなった。こちらは好きな所に一瞬でジャンプ出来るのに対し、SDFはそれが出来ないから仕方ないね。オリンパスや造船所からF-SPARが飛んで来るけど全然当たらない。造船所の小型F-SPARの攻撃はそこまで強くないけどすぐに次のビームが飛んでくるから、威力を落として速射性を上げたんだろうな。
「7時方向から駆逐艦5隻が急速接近中!敵艦載機がミサイルを発射!」
「敵駆逐艦隊に光子魚雷を連続発射。艦載機はフェイザーで薙ぎ払え。ミサイルは放置で構わん」
接近する光子魚雷を迎撃しようと敵駆逐艦が対空砲で弾幕を張る。しかし健闘むなしく魚雷は命中し、駆逐艦は蒸発してしまった。敵艦載機もフェイザーの攻撃で次々と火の玉と化した。あのスケルター、かっこいいよな。ジャッカルも好きなんだけど前進翼のスケルターに惹かれるんだよね。
「オリンパスがF-SPARをチャージ中です!」
「F-SPARの攻撃を受けた直後にオリンパスの真上にジャンプ。例のミサイルを発射して無力化する」
「了解です」
他の攻撃を受けながらF-SPARが命中した結果、ついにシールドが1枚吹っ飛んだ。しかし2枚目のシールドがあるから安心。
「ジャンプ完了、オリンパスは正面です!」
「よし!イオン・ミサイル連続発射!」
俺がポイントを使って買ったのはイオン・ミサイル。Star Wars:スコードロンに出てくる兵器でスターファイターに搭載されるミサイル兵器の一種である。イオン・ミサイルは敵のスターファイターを無力化させたり、主力艦のサブシステムを不能にすることができる。これをオリンパス目掛けて大量に撃ち込んでやった。するとF-SPARはもちろん対空砲等が次々と動かなくなり、オリンパスの攻撃能力は完全に喪失した。
「オリンパス、沈黙しました!」
「データ、あいつが動けるようになるまでどれぐらいかかると思う?」
「腕のいいダメコン要員がいたとしてもあのサイズの船ですから、どんなに頑張っても20分は動けないでしょう」
このままオリンパスに乗り込んでコッチを捕まえて地球に帰るのもありだが…
「艦長、次はどうするんですか?造船所はまだ無傷ですから破壊すべきでは?」
「造船所はちょっと考えがあるから放置でいい。それより軌道上の敵艦艇及び艦載機はほとんど破壊したが敵はまだ残っている。あそこに」
そう言って俺は火星を指さした。
「これより火星大気圏内に降下してSDFの軍事施設を攻撃する。目標は軌道エレベーター周辺の造船所や航空基地、制限時間は20分だ。なお光子魚雷は威力が大きすぎるから使用禁止。フェイザーのみで攻撃する」
「了解しました、艦長」
「コール少佐、君のモニターで敵施設内にいる非武装の民間人をスキャンする事ができる。1人でも民間人がいる施設は攻撃対象から外してくれ。SDFみたいに民間人を殺すような事はしたくないからな」
「分かりました!」
「ヘルナンデス大尉は軌道上に来るであろう敵増援の索敵を頼む。既に土星方面へ救難信号を送っているはずだ。ヒロセ大尉はオリンパス・モンスの監視を。再起動したら知らせてくれ。シンクレア大尉は敵通信網の妨害を。通信施設や目につくアンテナ全てにイオン・ミサイルを撃ち込んでやれ」
「「「了解です!」」」
火星に住む人々は皆恐怖のどん底にいた。民間人はパニック状態に陥っていた上、軍人もまた怯えていた。なぜこんな事になった、どうしてこうなった、と誰もが思っていた。
地球との戦争開始に皆が喜んでおり、最初の奇襲はうまくいったものの、それ以降はほとんど負けている。しかも数日前に火星軌道上で艦隊が敗北した上、2つの衛星も破壊された。だが今回こそは大丈夫だと人々は信じていた。あのオリンパス級が3隻もいるなら問題はずだ、と。しかし現実は非情だった。軌道上には友軍艦や航空機の残骸が浮かび、オリンパス・モンスは全く動かなくなってしまった。更に見たことがない船が降りてきて、地上軍事施設への攻撃が始まった。
火星が誇る対空防衛システムが全火力を敵艦に叩き込む。航空基地から出撃した戦闘機から次々とミサイルが発射される。しかし敵艦は全くの無傷であった。敵艦からの攻撃は凄まじく、対空砲や対空ミサイルは燃え盛る鉄と何かのオブジェとなり、戦闘機は残骸となって地上に落下、航空基地は石器時代レベルまで破壊され、造船所は隕石が落ちたようなクレーターと化した。
それを見ていた人々は一斉に都市部から逃げ始めた。上流階級の連中はシャトルで、そうでない者はローバー等で郊外へ逃げ始めた。郊外には大規模なシェルターが備わっており、都市部に住む全員が収容可能となっている。あの敵艦は民間人には攻撃をしてこなかったので、全ての民間人が避難する事が出来た。負傷者はいたものの死者は出なかった。
ある人は言う、あの船は死神か悪魔だと。全員を殺すまで攻撃を止めないだろうと。だが他の人は、地球でやった仕返しを受けているだけだ、と言う。大量の民間人を殺した、その報復だと。
20分。たったそれだけの時間で7箇所の通信基地、3箇所の航空基地、2箇所の造船所、5箇所の弾薬庫、2箇所の発電所が完膚なきまでに破壊された。後の歴史で『地獄の20分』と呼ばれる一方的な戦闘であった。
まあこんなもんかな。民間人の犠牲者も出ていないし、軍事施設はだいたいふっ飛ばしたし。SDFは当分の間動けないだろう。ヨシッ!
「艦長、オリンパス・モンスが動き出しました!」
「まずい…敵の増援が出現しました!駆逐艦7隻、空母が2隻!」
「了解だ。増援を片付ける前にまずはコッチを捕まえる」
「捕まえるといってもどうやって?我々だけで乗り込むんですか?」
「いやいやそれはしないよ。レイエス艦長やオマー軍曹みたいな戦闘スキルは持っていないからね。ピュッと行ってパッと捕まえてサッと戻ってくるさ」
ポイントで精神と時の部屋みたいなの買えないかな?それで特訓すれば俺も特殊部隊みたいな戦闘スキルが身につくんだが…もしくは超人血清とか。
「とりあえずオリンパスの真横にジャンプしてくれ。ジャンプ後に艦橋目掛けてイオン・ミサイルを発射。フェイザーでF-SPARを破壊しろ」
「了解です」
折角修理したのにまた無力化される可愛そうなオリンパスであった、まる。しかもF-SPARもなくなっちゃったね。
「じゃあ行ってくるわ」
念の為に用意した宇宙服を着て転送装置でオリンパスの艦橋にジャンプ。するとなかなか悲惨な事になっていた。まず生命維持装置が停止しているから無重力状態。んでロボット達はイオン・ミサイルのせいで機能停止。そしてコッチも空中でくるくる回っていた。
「えっ生きてる?」
「な、なんだお前は!?」
「生きてんじゃん良かった~。とりま寝ててね」
挨拶代わりにハンド・フェイザーでコッチを麻痺らせ、一緒にディスカバリーに戻る。
「ヒロセ大尉、ヘルナンデス大尉、こいつをちょっと格納庫まで運んでくれ。真ん中に拘束衣があるからそれ着させておいて」
「「了解です」」
ちなみに拘束衣は映画『羊たちの沈黙』でハンニバル・レクターが移送される際に装着されたやつだ。コッチを捕まえるならこれしかないと思ってカタログから買っておいた。
「さてデータ、残りの敵を殲滅する。蹴散らしてやれ」
「了解です。蹂躙という言葉の意味を教えてやりましょう」
5分後にはオリンパス・モンスと敵増援艦隊も宇宙の藻屑になり、残っているのは造船所だけとなった。これでSDFもおしまいだな。とりま報告入れておこう。
「こちらディスカバリー。オリンパス・モンス、敵主力艦隊及び敵地上施設の破壊に成功。なおコッチ艦隊長の身柄を拘束した。お土産も手に入れたのでこれより地球に帰投する」
『こちらリトリビューション。こちらもオリンパス級2隻の撃沈に成功した。作戦は成功だ!』
『こちらトップキャット。よくやってくれた!我々の勝利だ!』
「よし、そろそろ地球に戻るとするか」
「造船所は何で攻撃しないんですか?あれが残ったままですと、SDFは再び軍拡を…」
「造船所本体は攻撃しないけど残すつもりはないよ。まずはこうする」
最大出力のフェイザーで造船所下部、正確に言うと軌道エレベーターを攻撃する。この際注意しなければいけない点は、エレベーターの先端が都市部やシェルターの方向に倒れないようにすること。これで造船所は完全に宙ぶらりん状態に。ただこのままだと火星に向かって落下しておしまいになる。
「次にトラクタービームで造船所をこちらに引き寄せる」
タイガースを牽引するのとは訳が違う。トラクタービームへ全エネルギーを注入して何とか火星重力圏から脱出する事ができた。なんか造船所の一番高い所に白旗が見えるけど気のせいだろう。
「最後にフックで掴んで準備完了!」
ケルベロスを運ぶ時に使ったでかいフックで造船所をつかむ。あとやることはもちろんわかっているよね?
「データ、地球に帰ろう。胞子ドライブ起動」
「了解です」