ディスカバリーで殴り込む   作:ホワイト・フェザー

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4:アベンジャーズ、再集結

 その着信音を聞いたスティーブはびっくりして飲んでいたコーラを吹き出しそうになった。この3年間一度も鳴る事がなかったからだ。隠れ家で一緒にいたサムとロマノフも驚いてスティーブを見ている。

 

「スティーブ、それは…」

 

「ああ…」

 

 ポケットから取り出したのはフリップフォン。スティーブはゆっくりと応答ボタンとスピーカーボタンを押した。

 

「トニー?」

 

『スティーブ…元気にやってるか?』

 

「まあまあだ。そっちは?」

 

『もちろんみんな元気さ』

 

久しぶりに聞いたトニーの声にスティーブは嬉しく感じた。

 

『スティーブ、俺は…俺は間違っていた。君はあの内乱の時も、その後も常に正面から向き合って生きてきたのに、俺にはそれが出来ていなかった。それに君やバッキーに対しても酷い事を言った。本当にすまなかった』

 

「いいんだトニー、分かっているさ。僕も謝らないといけない。ご両親の事を黙っていてすまなかった」

 

『両親の事は…受け入れたよ。俺も君も歳を重ねる。色々な事を割り切ったり受け入れたりして進んでいかないとな。進むと言えば、実はペッパーと婚約したんだ』

 

「本当か?それはめでたい。みんなでお祝いをしないとな」

 

『ありがとう。でもパーティーをやるには今起きている問題を片付けないといけない。それで電話したんだ』

 

「問題?」

 

『単刀直入に説明する。まずソーの故郷、アスガルドが滅亡した。ソーが姉貴と喧嘩したら吹っ飛んだらしい』

 

「………えっ?」

 

 思わず声が裏返ってしまった。サムとロマノフも口が開きっぱなし。懐かしい名前が出たと思ったら滅亡って…しかも姉と喧嘩して惑星が吹っ飛ぶってどんな喧嘩をすればそんな事になるんだ?宇宙はレベルが違うな。

 

『それでアスガルドの避難民が今地球に来ているんだ。とりあえず俺が持っている幾つかのリゾートホテルで滞在中。ここまでは良いんだが…』

 

 その後の説明に愕然とする。アスガルドの避難船を容赦なく攻撃してきたサノス。彼はテッセラクトやヴィジョンのマインド・ストーンといったインフィニティ・ストーンを狙っている。既にサノスの攻撃で惑星が1つ滅亡している。地球外のヒーローチームであるガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。彼らもサノスを止めるべくストーン回収に動いている。原因は不明だが32世紀の別次元地球から来た軍人、カーク。トニーも理解できないレベルの技術力を持っていて彼も協力してくれる。そして遂に地球に戻ってきたハルクことバナー。バナーの名前を聞いたロマノフもこれには頬を染めてニッコリ。早く付き合えばいいのに。

 

『…という感じだ。使えん協定のせいで国連の動きは亀並に遅いが、それについてはカークに考えがあるそうだ』

 

「そうか…確かにこれはチーム一丸となって戦う他ないな。何をすれば良い?」

 

『今から座標を送る。その隠れ家から1キロ程南の空き地にカークが降下艇に乗って待機している。合流したらスコットランドのエディンバラに行ってヴィジョンとワンダをピックアップして欲しい』

 

「分かった。すぐに移動する」

 

『ありがとう。本部で会うのを楽しみにしてるよ』

 

「僕もだ。では」

 

 

 

 電話を終えたスティーブ達はすぐに移動を開始した。警察に見つからないように、しかし急いで動く事10分。座標の空き地に到着したが降下艇はいない。しかし空き地に入ると突然降下艇が現れた。ヘリキャリアのような光学迷彩を使用しているようだ。後部ランプから武装した男が1人出てくる。彼がカークだろう。

 

「君がカーク?」

 

「そうだ。ジェームズ・T・カークだ。よろしく」

 

「僕がスティーブ・ロジャース。よろしく頼む。こちらは相棒のサム・ウィルソン、そして彼女はナターシャ・ロマノフだ」

 

「みんなの活躍はトニーやブルースから聞いているよ。一緒に戦えて光栄だ。早速移動しよう。出してくれ!」

 

 カークが操縦席に声をかけるとゴテゴテしたロボットが無言でサムズアップしていた。ウルトロンよりロボットって感じだな。

 

「あれは…ロボットか?」

 

「そうだ。C6二足歩行ロボット。元々建設現場での作業や警備の為に開発されたんだが、パーツを変えれば高性能な戦闘ロボットになるんだ。アイアンマンのように空を自由に飛んだりビームは出せないけど、宇宙空間でも戦えるし自分で考えて戦うからなかなか強いぞ」

 

 そんな話をしている間に降下艇はどんどん加速していく。これは間違いなくクインジェットより高性能だな。スティーブは知らなかったがこの降下艇、レイブンの最高速度は時速3100キロメートル。ブースターを使用すれば時速130000キロメートルまで加速して大気圏脱出も可能になる。ちなみにクインジェットの最高速度はマッハ2.1。宇宙にも行けるが改修が必要である。

 

「忘れるところだった。キャプテン、トニーからこれを預かってきた」

 

「これは!?」

 

 カークは床の格納スペースからある物を取り出した。それは盾だった。アベンジャーズ内乱時の傷は完全に修復されている。そしてユニフォームも新調されたものが入っていた。

 

「トニーはキャプテンが戻ってきた時に備えて準備していた。出来れば直接渡したかったそうだ」

 

「…ありがとう。やはりこいつが一番だ」

 

 

 

 着替えた後カークから最新の情報について説明を受けた。ガーディアンズは間もなくリアリティ・ストーンが保管されているノーウェアに到着するそうだ。またタイム・ストーンを管理しているドクター・ストレンジもトニー達と合流。今回の戦いに参加してくれるそうだ。ソーはニダベリアに到着したがサノスのせいで手こずっているらしい。

 

「なおクリントだが現在彼は自宅軟禁中だから連絡はしていない。彼には守るべき家族がいるからな。邪魔するのは良くない」

 

「そうだな。ワンダとヴィジョンには連絡済みなのか?」

 

「ネガティブ。これからしようと思っている。ビデオ通話にして…出るかな?」

 

カークが壁のパネルを操作するとモニターにワンダとヴィジョンが映った。あれ、ヴィジョンが人間みたいになっている。めっちゃイケメンじゃないか。

 

『スティーブ?それにサム、ナターシャも。どうやってこの番号を…』

 

「ワンダ、電話を切らないでくれ。ヴィジョンが狙われている。いや、厳密に言うとマインド・ストーンが狙われているんだ。もうすぐエディンバラに到着するから一緒に来て欲しい。トニー達も動いているしバナーも宇宙から帰ってきた。もう一度チームで戦う、だから協力してくれないか?」

 

『何故私の額にあるストーンが狙われている?またヒドラの連中か?』

 

 かつてマインド・ストーンはロキが杖に入れて使っており、その後はヒドラが奪ってワンダとその双子の兄であるピエトロ・マキシモフの人体実験に使用していた。最終的にアベンジャーズが回収し、紆余曲折を経てヴィジョンの額に収まっている。またヒドラが狙い始めたとヴィジョンが考えるのも不思議ではない。

 

「正直ヒドラが狙っていた方がまだマシだったよ。今回の敵は宇宙からやってくる。ストーンを集めてとんでもない事をやらかすつもりなんだ」

 

『分かったわ、すぐに準備する。どこに行けばいい?』

 

既にカークは地図で着陸場所を選んでいた。その場所を告げる。

 

「エディンバラ・ウェイヴァリー駅の近くにあるセント・アンドリュー・スクエア・ガーデンまで来て欲しい。街のど真ん中だが素早く着陸して君達を回収する。可能か?」

 

『問題ないわ。今すぐ移動する』

 

「ではまた後で」

 

通話を切った後気になった事をカークに尋ねる。

 

「そういえばカーク、この機体はレーダーには映らないのか?」

 

「もちろん。このレイブン、そして俺の艦であるディスカバリーには遮蔽装置が搭載されている。電磁スペクトル及び既存の全センサーから身を隠し、尚且つ視覚からも消し去るステルス技術、それが遮蔽装置だ。この世界の地球の技術では100%検知不能だから安心してくれ」

 

「すごい技術だな。音も聞こえないのか?」

 

「当然。まあ大気圏内だと離着陸時の風でバレるかもしれないな」

 

 

 

ロマノフは機内に置いてある武器に興味津々だった。

 

「これは拳銃タイプ、でこっちがライフル…」

 

「それは我が連邦の標準装備だよ。拳銃型がタイプ2・フェイザー、ライフル型がタイプ3・フェイザーだ。どちらも極めて高威力だから取り扱いにはご注意を」

 

「…そんなに威力があるの?このサイズで?」

 

「どっちも人体を一瞬で蒸発させる程度の破壊力がある。タイプ2なら最大出力で巨大な岩石を吹き飛ばせるぞ。一応麻痺モードがあるから非殺傷兵器としても使えるけど、至近距離からぶっ放すと肉体や内臓が機能不全起こして死んじゃう事も稀によくある」

 

「おう…」

 

ロマノフは静かに持っていたタイプ3・フェイザーを元の位置に戻した。

 

「でもあなたが持っている武器は実弾兵器よね?」

 

「俺は元々海兵隊で訓練を受けて、その後特殊部隊の訓練を受けた。フェイザーは便利だし強力だけどパワー切れになったらただの鉄屑になる。だから実弾兵器の方が好きなんだ。実弾兵器は今よりあまり進化してないよ、ほら」

 

 そう言ってカークは最初に会った時に持っていたアサルトライフルをロマノフに渡した。確かに見た目はアメリカ軍が使っているM4カービンにそっくりだ。サプレッサーにフォアグリップ、ACOGのような照準器が付いている。

 

「サイトが見やすくていいわね。それに近接用の投影型レティクル…持ちやすいし気に入ったわ」

 

「ディスカバリーに戻ったらもっと色々な武器がある。この戦闘スーツ一式も用意するよ。スーツがあればこういうのも使えるようになる」

 

カークは左腕から素早くシールドを展開した。僕の盾みたいだ。

 

「これは格納型シールド。ほぼ全ての実弾兵器を止める事が出来る。時間制限付きだけどエネルギー兵器も防御可能、フェイザーも含めてね。試験では戦闘機搭載の30ミリ機関砲も食い止めた。でもレールガンを撃ったら流石に10発くらいで壊れたよ」

 

「いやレールガン止めれるだけでもすごいでしょ」

 

ロマノフがそう言うとカークは悲しげな表情で首を振る。

 

「そうでもないさ。俺が所属している惑星連邦は設立以来約10世紀の間、とんでもない敵達とひたすら戦ってきたんだ。流石にサノスのようなイカれた野郎はいなかったけど、それでも敵は強力な軍隊を保有する恒星間国家だったり機械生命体だったりした。その過程でとんでもない数の軍人や民間人が死んだ。俺も多くの友人を失った。俺の艦も、これらの武器も、全ての設計図は先人達の血で書かれている。我々は今の世代を守る為、そして次の世代を守る為にも技術開発を止めてはいけない。だから決して現状に満足してはいけないんだ」

 

「10世紀も戦いを!?尋常じゃないな…」

 

 彼のいた宇宙にはとんでもない連中がうじゃうじゃいるということか。この世界の人類は惑星間移動すらままならない状態だ。もっと宇宙関連技術の発展が進まないとな。この戦いが終わったらトニーやバナーに話してみるか。あとワカンダにも協力してもらえないかな。

 

 

 

 エディンバラの着陸地点には既に2人が待っていた。カークはレイブンを静かに着陸させてから遮蔽装置を解除。2人を素早く機内に招き入れた。

 

「スティーブ、それにみんな。久しぶり。あなたは初めましてよね?私はワンダ・マキシモフ。彼はヴィジョン。よろしくね」

 

「ジェームズ・T・カークだ。こちらこそよろしく。ではアベンジャーズ本部に行こう。でもよく考えたら遠いな」

 

 確かにこのエディンバラからニューヨークまでは直線距離で約5000キロメートルは離れている。1時間以上はかかるだろう。

 

「今は時間が幾らあっても足りないし…よし、ちょっと近道するか。全員座席に座ってジェットコースターみたいな安全バーを下げてくれ」

 

「どうするつもりだ?」

 

「ブースターを使う。このレイブンは追加パーツ無しで第三宇宙速度を超える速度を出せるんだ」

 

壁を背にする形で配置されていた座席が回転して正面を向く。こいつは嫌な予感しかしない…

 

「第三宇宙速度…時速換算で60100キロメートルより速く飛ぶのか!?」

 

「ブースターを使えばこいつは時速130000キロメートルまで加速する。ここからニューヨークまでなら3分くらいで着くぞ。よし、ブースター点火!思い切りかっ飛ばせ!」

 

 数秒後、機外から凄まじい音が響くのと同時に一気に加速を開始した。僕達は極めて強いGのせいで座席に押し付けられている。正直息も出来ないくらいつらい。なのに隣にいるカークはまるで子供のような笑みを浮かべている。しかもこっちを向いて話しかけてきた。

 

「そう言えばみんな飯は食べた?腹が減ってるならディスカバリーで用意するよ。ハンバーガーから寿司まで何でも作れるからな」

 

「そ、れは…楽しみ、だ!」

 

「ちなみに俺が一番好きなハンバーガーはカールスジュニアだな。あのパティが美味しくてたまらないんだ。次点でバーキン、あとベガスのハートアタックグリルも最高だな」

 

 呑気にバーガーの話をするカーク以外の全員が考えていたのは、こいつ体が丈夫過ぎるしメンタル強いな!ってことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱブースターで加速するのは楽しくていいな!みんな静かだったけど疲れてたのかな?まあいいか。アベンジャーズ・コンパウンドに着いたのはその3分後だった。ロスにバレないようにアメリカが保有する偵察衛星は全てハッキング済み。キャプテン達が映らないようにしてある。着陸するとトニーとバナー、ストレンジが待っていた。

 

「やあスティーブ」

 

「トニー」

 

 トニーとスティーブは和解の握手。お互い笑っている。これが見たかった。原作みたいにサノスにやられないようにしないと。で俺はストレンジと握手。

 

「初めまして。ジェームズ・T・カークです」

 

「ストレンジだ、よろしく。トニーから君は別世界から来たと聞いた。どんな世界なのか興味があってね」

 

「なかなかスリルがあって面白い世界ですよ」

 

和やかに話す一方で…

 

「や、やあナターシャ…」

 

「私の事を覚えていたのね、ブルース・バナー。最後の通信は途中で切られるし全然連絡もないし探しても見つからないし、てっきり忘れられたのかと思ってたわ」

 

「そんな、君の事を忘れるなんてありえないよ」

 

「ならあなたは3年もどこをほっつき歩いていたのかしら?」

 

「いや、それには複雑な事情があって…」

 

「事情?あらそうなの。なら話をしましょうか、その事情とやらについて」

 

「待って…首が締まる…引きずるのは…」

 

 ブルースは般若と化したナターシャに首根っこ掴まれて建物の中に消えていった。明日の朝食は赤飯でも用意しないとな!でも赤飯文化はアメリカじゃ通用しないか。

 

「これでカップル成立かな」

 

「そうだな」

 

その場にいた全員でうんうんと頷く。

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