1:ファースト・コンタクト
「おっ?」
落とし穴に落ちたと思ったら何故か椅子に座っていた。そして目の前に広がるのは親の顔よりも見たあの光景。ディズカバリーの艦橋だった。
「すげぇ! これはすげぇや!」
よく見ると自分の服装も変わっていた。グレーをベースに指揮官を示す赤色が肩掛け帯のようにワンポイントに入る32世紀の制服デザインだ。階級は大佐になっている。コムバッジは縦長の楕円形で、通信・翻訳・GPS機能に加えて、転送装置とトリコーダーも兼ねているやつだ。コムバッジを開くと氏名が表示された。
「おいおい、この名前なのかよ…」
ジェームズ・T・カーク。長い歴史を持つスタートレックシリーズの最初の主人公。それが転生後の新たな名前になっていた。あの伝説の艦長の名前をもらうとか重圧がやべーんですけど。でもまあやるしかないか。
「さて、どうやって動かすかな…AI君いる?」
「おはようございます、艦長」
爽やかな男性の声ですぐに返答が来た。女性の方が…いや、やめておこう。
「おはよ。なんて呼べばいい?」
「特に名前は決まっていません。艦長が決めて下さい」
「では君は今からデータだ。よろしくな、データ」
秒で決めた。スタートレック:ピカードに登場した時はびっくりしたし、その最期に感動した。
「では艦長、ご命令を。現在本艦は太陽系小惑星帯内のケレス軌道上にて遮蔽装置を使用した状態で待機しています」
「わかった。胞子ドライブにてジャンプを行う。目標は月軌道。ブラック警報」
「了解です、艦長。ブラック警報発令。胞子ドライブ起動準備」
第1船体の回転ギミックが動くと同時にあの独特な警報音が響き渡る。この警報音がとても好きだ。生で聞けるなんて最高過ぎる!
「ジャンプ後にシールド出力を最大、武装の準備を。念の為だ」
「了解です、艦長。胞子ドライブ、準備完了しました」
「よし、ジャンプ!」
船体から離れたワープナセルがパイロンに寄り接続し、艦全体がきりもみ回転して瞬間移動する。外から見てみたいけどそれは無理か。
駆逐艦タイガースの集中砲火によりSDFの空母アレスは木っ端微塵に吹き飛んだ。これでSDFからムーンポートを奪還して艦隊が再建可能となった。ニック・レイエス中佐はその爆発を眺めながらリトリビューションに針路を向けた。
「任務完了だ、タイガース。SCARは帰投…」
そこまで言った時、突然新たな艦艇がリトリビューションとタイガースの目の前に出現した。
『なんだあの船は!?』
『SDFの新手か!総員攻撃準備!』
『タイガースは射撃準備完了! いつでも攻撃可能だ!』
しかしレイエスにはどう見てもこの船がSDFとは思えなかった。艦の形状も色も、今までのSDF艦艇とは異なる部分が多すぎる。
「全部隊、攻撃中止!繰り返す、攻撃はするな!こいつはSDFじゃない!」
『レイエス、ならこいつは一体何なんだ?』
副官のソルター少佐に聞かれるも即答できないレイエス。分からないなら聞くまでだ。
「ゲイター、全周波数帯で通信準備。あの不明艦とコンタクトを取りたい」
『了解しました、サー。どうぞ』
「こちらUNSAリトリビューション臨時艦長のニック・レイエス中佐だ。所属不明艦、通信に応答せよ」
しばしの沈黙の後、返答が来た。だがその返答に誰もが首を傾げる。
『こちら
惑星連邦? 宇宙艦隊? 一体何の事を話している? レイエスは混乱しつつも会話を続ける。
「いや、こちらは特に被害はない。大丈夫だ」
『そうか、良かった。ところで
「こちらも惑星連邦や宇宙艦隊といった名称を初めて聞いた。一体どういう組織なのだ?」
『あー…もし良かったら会って話す事はできないだろうか。お互い認識に差があるようだし』
「そうだな…上司に確認を取る。カーク大佐、少し待っていて欲しい」
『わかった』
通信を切ったレイエスは思わず頭を抱えたくなった。SDFに奇襲攻撃を受けるわ、艦隊は壊滅するわ、変な宇宙船がやってくるわ、もう勘弁してくれと心の底から思った。
「中佐…頑張って下さい」
「そこは助けてくれるんじゃないのかイーサン!?」
「ジョークです」
エンハンスド・タクティカル・ヒューマノイドであるイーサンがサムズアップしていた。
転生先がCall of Duty:Infinite Warfareの世界ってマジ?