ワカンダでヴィジョン、ワンダ、ストレンジの3人を降ろした後、すぐに胞子ドライブでピーターのところまで連続ジャンプ。やっぱ胞子ドライブはチート技術だよなあ。みんなで艦橋に移動して雑談しているうちに現場に到着したが…
「あちゃーこれはひどい」
どでかいサンクチュアリⅡがベネター号に向けて集中砲火を浴びせている。弱いものイジメにも程があるだろうに。小型軽量で機動性も高いベネター号はうまく攻撃を避け続けている。
「こちらディスカバリー、待たせたな。これより攻撃を開始する。ピーター、俺の船の影に隠れろ。あいつの攻撃で沈む事はないからな」
『待ちくたびれたぜ!』
ベネター号の退避を確認してから俺は指を鳴らす。
「データ、異世界のヒーロー達に我々の戦いを見てもらおうじゃないか」
「そうですね、艦長。あのイカれたハゲに惑星連邦宇宙艦隊の授業料がいかに高額か教育してやりましょう」
サンクチュアリⅡはその巨大な船体に無数の対地対空両用砲及びミサイル発射装置を備えている戦艦だ。その戦闘力は宇宙一であるとサノスは自負していた。パワー・ストーンの保管場所であるザンダー星もこの船で焼け野原となったし、今まで戦ってきたどんな敵もこの船を沈める事は出来なかった。
サノスにとって不幸だったのは相手が悪すぎた事だった。まずディスカバリーのシールドが硬すぎてサンクチュアリⅡの攻撃が全く効いていない。全ての攻撃が命中しているにも関わらず、ディスカバリーの船体には傷一つ付いていない。一体あのシールドは何で出来ているんだ、とサンクチュアリⅡの乗組員全員が思っていた。
更にサノスを驚かせ、そして苛つかせたのはディスカバリーが搭載している兵装だった。あの船体から放たれる青いレーザー光線はサンクチュアリⅡの船体を容易に切り裂いてくる。ステイツマン襲撃時にディスカバリーから受けた攻撃のせいでQシップは既に宇宙の藻屑となり、船体の修復については簡単に済ませた状態だった。それを見越したかは不明だが、ディスカバリーはその修復箇所を狙って攻撃してきた。そのせいで船体右の翼が中央部分からへし折れてしまった。
おまけに船体のあちこちにミサイルが着弾すると、船体に穴ができるかわりに何故か船内のシステムが次々とダウンしていく。ディスカバリーから発射されたイオン・ミサイルの集中攻撃によるものだった。射撃管制装置や各種センサー等が次々と機能不全を起こし、挙句の果てには主機関までもが緊急停止。この攻撃でサンクチュアリⅡは完全に沈黙し、丸裸の状態となってしまった。非常電源により最低限のシステムは稼働しているが、戦闘艦としての機能はゼロになった。
そんな船内でサノスの部下達が右往左往している中、ある女性が拘束装置から抜け出す事に成功した。装置に供給されていたパワーが切れたおかげだ。女性は痛む体を引きずりながら愛用の武器を回収して外の状況を確認する。窓から外を見ると見慣れない宇宙船と見慣れた宇宙船がいた。
その女性、ネビュラは見慣れた宇宙船ことベネター号に通信を繋いだ。
「艦長、敵艦はイオン・ミサイルにより完全に沈黙しました。最低でも30分は再起動不能となるでしょう。それに翼を大きく損壊しているので電子機器が復旧したとしてもすぐには動けないかと」
「よくやった、データ」
トニーはあっという間に敵の巨大戦艦を無力化したディスカバリーの性能に驚きを隠せなかった。スティーブ達も唖然としている。だが当のカークはつまらなそうな表情だった。
「どうしたジム?なんでそんな顔してるんだ?」
「いや、どうにもしっくりこなくてね。なんというかこう、噛みごたえがないなと。あんなどでかい船なんだからもっと強力な兵器を搭載してると思ってた。シールドがないのは分かっていたけどショボい砲とミサイルしか積んでないって…はぁ」
どうやらもっと派手に戦いたかったらしいな。
「まあ気持ちはわからんでもないけど、とりあえずピーター達が無事だからいいんじゃないか?」
「それもそうか。よし、じゃあ針路をタイタンに向けるとしようか。あ、でもその前に」
そう言うとカークは折れた敵船の翼の近くに船を飛ばし、あろうことかその翼をトラクタービームで引き寄せ始めた。
「な、何してんだジム?」
「こんな事言わなくてもわかっていると思うけど、この艦橋にいる全員はみんな優しい心を持っている。落とし物を見つけたら持ち主に返すのは当然の事だろう?だからこの折れた翼を返してやろうと思ってね。ただし思いっきり振りかぶって投げつけてやる。なーに、パワー・ストーンを持ってるサノスならノールックで、しかも片手でキャッチできるだろうよ!」
どうあがいてもオーバーキルじゃないか。だが放り投げる前にピーターから通信が入った。
『ジム、そのデカい破片を投げつけないでくれ!敵の船に味方がいる!』
「味方だって?スパイでも忍ばせていたのか?」
『違うの。私の義理の妹、ネビュラがサノスに捕まっていたみたい。でも混乱に乗じて船から脱出しようとしてるの。お願い、彼女を助けて!』
ガモーラの話だとサイボーグ化したネビュラから通信が入ったそうだ。昔は殺し合っていたらしいけど少し前に和解してサノス打倒の旅に出ていたらしい。
「家族なら絶対に助けないとな。分かった、何とかしよう」
通信を切ったカークは即座に救出作戦を計画した。参加するメンバーはカーク、俺、スティーブ、そしてソー。短時間で素早く任務をこなすという訳だ。
「だがジム、どうやってあの船に乗り込むんだ?あの降下艇を使うのか?」
スティーブの質問にジムは首を振る。
「時間がない。だからこれを使うんだ。みんな胸に付けてくれ」
渡されたのは小さな楕円形のバッジみたいなもの。いつもカークが左胸に付けているものと同じだな。
「詳しい説明は省くがこいつには転送装置が組み込まれている。これを使って直接乗り込む」
「て、転送装置?」
「こういう事だ」
そういうと俺の目の前にいたカークが突然消えてスティーブの後ろに出現した。こんな小さな装置でワープができるのか!?32世紀ヤバいな。ちょっと練習したけどこれは便利だ。
「ディスカバリーが敵艦の上を通過する時に転送装置で侵入。負傷しているネビュラを確保したらディスカバリーに戻りタイタンへ撤退する。所要時間は5分もかからないな」
「交戦規定は?」
「ステルスを維持。極力見つからないようにする。だがバレた場合は派手にやろう。捕虜はいらん、皆殺しだ」
サプレッサー付きアサルトライフルに弾倉を入れながら冷静に話すカークの目は軍人のそれだった。チェストリグには各種グレネードや予備弾倉、レッグホルスターには拳銃型フェイザーが収まっている。
もうネビュラ捕まってたんか。でも救出できるならしておかないとガモーラがサノスに連れて行かれる可能性があるからな。急いで救出しよう。
「よし、行くぞ」
他の3人に合図してサンクチュアリⅡの船内に転送。転送場所は倉庫のような場所で無人だった。HUDにはネビュラの位置が表示されている。ここから20メートル離れた部屋に隠れている。
「こっちだ」
通路を進み、曲がり角を覗き込むとチタウリ・ソルジャーが廊下をうろついていた。しかもこっちに来る。ハンドシグナルで3人を待機させ、俺は腰のベルトからある物を取り出した。両手で握れるほど長い柄と斜めに傾斜した鍔を持つそれは、一見ナイフのように見えるが肝心の刃がない。チタウリが曲がり角に差し掛かった瞬間、俺はスイッチを入れながらチタウリの胸にそれを突きつけた。
その瞬間、ぼんやりとした白色光に縁取られ、不気味な輝きを放つ真っ黒な刀身がチタウリの胸を貫いた。力と敏捷性強化、更には電子神経回路網によるサイバネティクス的補強まで施されたサイボーグであるチタウリだったが、このダークセーバーの前には無力だった。黒いプラズマブレードが一瞬で反応炉を蒸発させ、チタウリは何が起きたかわからない、という表情のまま死んだ。
「ジム、それは?」
死体を倉庫に押し込んだ後にソーが聞いてきた。
「こいつはダークセーバー。プラズマブレードを展開する剣だ。静かに殺すなら刃物が一番だしな。隣の部屋だ」
部屋に入ると壁際に座り込みこちらに銃を向けている女性がいた。ネビュラだ。
「おっと撃つな、味方だ。ガモーラから君の救出依頼を受けた」
「あんた、達は…?」
「アベンジャーズ、地球のヒーローチームだ。まあ俺は違うけど。とにかく行こう」
でも部屋を出た瞬間警報音があちこちから鳴り始めた。
「バレたか!?」
「みたいだな。データ、急いで戻ってこい!」
『了解、到着まで30秒』
でも敵は30秒も待ってくれない。通路の奥から敵がやってきた。
「こっちは俺とソーが守る。スティーブ、トニーは反対側を頼む。あと30秒だけ耐えれば良い!」
「分かった!」
ソーが新しく作ったストームブレイカーをぶん回して暴れている横で、俺はNV4で敵を倒していた。威力不足かもと思っていたが普通に倒せるみたいだな。しかし敵がやたらめったら多い。
「あと15秒!」
「敵が多すぎるぞ!」
トニーやスティーブも大変そうだけど待つしかない。それに時間稼ぎをするにはピッタリのデバイスがある。チェストリグから反重力グレネードを取り出して2つをスティーブに投げる。
「スティーブ、これを使え!敵を足止めできる!」
「わかった!」
俺もグレネードを敵の足元に投げつける。すると半径2.5メートル内の重力が消失して敵は宙に浮いてもがき始める。これが反重力グレネードだ。浮いてる敵を撃ち殺しつつ、ついでにプラズマグレネードもあるだけ全部投げつけておく。
『艦長、まもなく到着。カウントを開始します!』
「わかった!間に合いそうにないならそっちで強制的に転送してくれ!みんな、俺が合図したら転送装置を起動しろ!」
「「「了解!」」」
NV4の弾を使い切ってしまったので、レッグホルスターから抜いたタイプ2・フェイザーで攻撃。敵が一瞬で蒸発しやがる。これは危ないけど威力は十分だ。次からタイプ3・フェイザーも持ってこよう。
「ジム、あれを見ろ!」
ソーに言われて通路の奥を見る。するとなんか強そうな4人組を従えた大きくて紫色の野郎がいた。反射的に俺は紫色の奴を指差し叫んだ。が、たまたまそいつの名前をど忘れしてしまった。
「みんなあれを見ろ!ハゲだ!つるっつるの紫ハゲが来たぞ!!」
「ぶっふふっ…!」
それを聞いたネビュラが吹き出しサノスは動きを止めた。そうだ、あいつの名前はサノスだった。理由は不明だがどうも怒っているみたいだ。まあ船はボロボロにしたし、チタウリも殺しまくったし、怒るのも無理はないかな。
『3…2…1!』
「今だ!」
顔を真っ赤にしたサノスがチタウリを押しのけながら突進してきたけど、俺はネビュラを抱えて転送装置を起動して一瞬でディスカバリーの艦橋に戻った。トニー達も怪我なく戻ってきた。
「作戦成功、全員無事で何よりだ。データ、遮蔽装置起動。ベネター号を掴んでジャンプしろ」
「了解です、艦長。タイタンまで胞子ドライブで連続ジャンプを開始」
「クソ!また逃げられた!」
サノスは怒り狂っていた。あと少しでリアリティ・ストーンを手に入れるところだったのに、あの忌々しいディスカバリーに邪魔された上、サンクチュアリⅡも大損害を被った。更に捕らえていたネビュラも奪還される始末。おまけに…いや、髪の話はやめよう。
「サノス」
そんなサノスに声をかけるコーヴァス・グレイヴ。
「なんだ?」
「あのディスカバリーと呼ばれる船からインフィニティ・ストーンの反応を検出しました」
「ほう、いくつだ?」
「4つです」
つまり今も場所が不明なソウル・ストーン以外の4つ全てがディスカバリーに搭載されているということになる。
「奴らの現在位置は?」
「タイタンに向かっているようです」
「…タイタンか」
かつての故郷に敵が向かっている。そう聞いたサノスは一瞬だけ懐かしさを感じた。
「船が直り次第タイタンへ向かう。最悪の場合、大気圏に強行突入して構わん。数で攻めれば勝てるだろう」