ディスカバリーで殴り込む   作:ホワイト・フェザー

5 / 23
4:よーしパパ火星で暴れちゃうぞー

 目眩から復活したレインズ艦隊長から新たな任務が来た。リトリビューションは天王星にてフェニックスオプスを実行。タイガースは水星及びケレス近辺のパトロール任務。そしてディスカバリーは初めて単艦での作戦に挑む事となった。

 

 ただの作戦ではなく、ゲームにはないオリジナルの作戦だ。作戦名はランダムアタッカー(通り魔)オプス…いや作戦名に通り魔って単語を入れるのどういう事なんよ。作戦エリアは火星。表向きの作戦目標は『SDF火星防衛艦隊への威力偵察』となっているが、真の目標はジュネーブ奇襲攻撃の仕返しとコッチ艦隊長の顔面に泥を塗りに行く事である。その為の装備もUNSAより提供された。

 

「よーし、いっちょ派手にぶちかますとするか!コール少佐、準備は出来ているか?」

 

「問題ありません、艦長。いつでもいけます」

 

 更に今回の作戦ではコール少佐と他3名にも役割がある。UNSAから提供された装備の運用は彼女達が行うのだ。

 

「よろしい。ではランダムアタッカーオプスを開始する。データ、火星にジャンプだ」

 

「了解です、艦長」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 SDFの駆逐艦ヴァリアントは出来たてホヤホヤの新造艦だ。数日前に各種試験を無事に終え、現在は火星周辺のパトロールから帰投中である。艦長以下乗組員達の士気は高く、UNSAの連中を叩き潰せる日を楽しみに待っている。明後日から金星方面に出撃し、既に展開中の空母ヘラスの護衛任務が始まる。我々の戦いはここから始まるのだ、ヴァリアントの艦長はそう考えていた。

 

 彼らは良く訓練された優秀な軍人だ。多数の友軍艦が展開している本拠地が目の前にあるが、油断などは全くしていない。いつどんな事が起きても我々なら直ちに対応出来る、そう信じていた。

 

『呼ばれてないけどジャジャジャジャーン!ちわーディスカバリーでーす!』

 

 瞬きをする間に見たこともない大型艦が突然目の前に出現し、それとほぼ同時に全周波数帯からテンション高めの男の声が大音量で鳴り響き、更に青色のレーザー光線がヴァリアントの船体を文字通り真っ二つにした。この間たった3秒。ヴァリアントの乗組員達は一体何が起きたのか、あの船は何なのか、それらを考える間を与えられる事なく、宇宙の藻屑と化したのであった。

 

 

 

 

 

『なんだあの船は!?UNSAか?』

 

『駆逐艦ヴァリアント、及びネレイダム轟沈!』

 

『総員戦闘配置!あの船を撃沈しろ!』

 

『スケルターを早く上げろ!』

 

 うわー敵さん大慌てだな。いいぞ、混乱は俺達の味方だ。全部沈めてやる、と言いたいところだが作戦通りに行こう。

 

「全速前進!目標はタルシス造船所だ。針路上の敵艦及び敵機はフェイザーで蹴散らせ。他は後回しだ、雑魚は放っておけ!」

 

「了解です、艦長」

 

「少佐、射程に入ったら合図をくれ」

 

「了解しました、艦長」

 

 SDFの駆逐艦やA-JAKカッター、更には艤装途中の巡洋艦が艦載砲や機銃、ミサイルでディスカバリーを撃沈しようとするが、まあシールドあるから攻撃効かないんだよね。

 

『こちら駆逐艦アルシア!機関大破!我操舵不能!救援を……!』

 

『くそったれ!アルギレ爆沈!スケルター隊の被害甚大!』

 

『アスクレウスが吹き飛んだ!もっと攻撃を集中しろ!』

 

 これで5隻は沈めたから、ここからはフェイザーの威力を落として機関部のみを破壊する。スケルターやA-JAKカッターなら威力を落としても一撃で破壊できるから問題ない。敢えて沈めずに身動き出来ないようにしてやろう。

 

「艦長、射程に入りました!」

 

「了解だ、少佐。データ、例のミサイルを造船所に向けて発射だ!」

 

 

 

 UNSAから提供された装備とは特殊なミサイルだった。大量の針状機械が時限信管により造船所手前で炸裂し、円錐状に撒き散らすフレシェット弾である。これで何をするかと言うと、造船所及びSDFのメインフレームへのコンピュータウイルス攻撃だ。

 

 針状の機械は造船所のあちこちに突き刺さる。そこから造船所のシステムにウイルスが流し込まれる。あっちの部屋では重力が切れたり、こっちの部屋では生命維持装置が、反対側ではいきなりハッチが開いてダイナミック宇宙遊泳を、といった感じである。控えめに言って地獄だね。

 

 更にSDFのメインフレームから重要な情報を引き出してUNSAに送信する。現在使用されている暗号、部隊の配置情報、今後の作戦方針等々。UNSAにとってはどれもこれも宝の山だからね。

 

「少佐、これで作戦目標を完了したと言えるかな?」

 

「十分過ぎる戦果です、艦長!帰投しましょう」

 

「いや、もう1つやることがある。手伝ってくれ」

 

これは俺が個人的にやりたいやつなんだ。コッチ君にメッセージを送らないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サレン・コッチ艦隊長は目の前の惨状に愕然としていた。まさかUNSAが母なる火星を攻撃するとは思わなかった。損害報告は目も当てられないレベルでひどいものだった。駆逐艦ヴァリアント、ネレイダム、アルシア、アルギレ、アスクレウスの5隻が沈没、駆逐艦4隻、巡洋艦2隻が大破、更にスケルターも50機以上が撃墜された。しかも造船所経由でSDFのメインフレームがウイルス攻撃でめちゃくちゃになった。復旧にどれだけの時間が掛かるか検討もつかない。これだけの被害をたった1隻の船が生み出した。

 

(一体UNSAはどんな船を建造したのだ?スパイの情報にはこんな形状の船はなかった。リトリビューション、タイガースとは明らかにデザインや兵装が異なる…)

 

オリンパス・モンスの艦橋でそんな事を考えていると通信が入る。

 

『艦隊長、通信ブイのようなものを発見しました。内部スキャンの結果、ウイルス等は確認できませんでした。映像ファイルが1個あります。再生しますか?』

 

「今すぐ再生しろ」

 

 再生すると男が映っていた。UNSAではない、見慣れない制服を着ている。艦橋もUNSAの軍艦には見えない。

 

 

 

「イエーイ!コッチ君見てるー?今から君の大事な火星を俺達が…あー、ごめん!もう吹き飛ばした後でしたー!」

 

オリンパス・モンスの艦橋は静まり返っていた。画面の男は気にせず続ける。

 

「いやーSDFの船って弱いね!あっという間にドカンよドカン。もっと頑丈に作った方がいいんじゃないですか~?てか疑問なんだがあのスローガンってどういう意味なん?なんだっけ…Mars enemagraだったっけ?まあいいや」

 

※Enemagra(エネマグラ)は前立腺マッサージ器具の名称です。

 

ニヤニヤしながら話す男はここで真顔になった。

 

「でも、怒っちゃ駄目だよ?だってコッチ君、ジュネーブや月でひどい事したもんね?軍人はもとより、民間人も容赦なく殺しまくっていたもんな?だったら文句言えないでしょ?人が嫌がる事をしてはいけません、って子供の頃教わらなかった?まあ君の幼少期はどうでもいいとして」

 

男はカメラに近付いてドスの利いた声で静かに言った。

 

「いいかボッチ君。あ、コッチ君。今君に何が出来るか教えてあげよう。そんなに難しくないから大丈夫。実にシンプルだ。S()D()F()()U()N()S()A()()()()()()()()()()()()。それが出来ないなら、次会う時にお前は死ぬ。それだけの話だ」

 

カメラから男が遠ざかる。

 

「最後になるが自己紹介を。私の名前はジェームズ・T・カーク大佐。惑星連邦宇宙艦隊所属、USSディスカバリーの艦長だ。UNSA所属ではないからな!よく覚えておけよ。あ、最後にもう1つ。オリンパス・モンスが火星にジャンプしてから15分が経過するとフォボスとデイモスが吹っ飛ぶからよろしく。まったねー!」

 

 

 

 動画の再生が終わるのとほぼ同時にフォボスとデイモスが光った。カークが配置していたステルス魚雷ランチャーから量子魚雷が各衛星に4基ずつ発射されたのだ。

 

 ディスカバリーに搭載されている光子魚雷の威力は300アイソトン。25アイソトンの光子魚雷1基で大都市が数秒で壊滅する。そんな反物質弾頭の光子魚雷よりも更に威力が高いのが量子魚雷だ。真空エネルギー反応爆発を引き起こす弾頭となっている。そんな物騒な代物を4基も撃ち込まれたフォボスとデイモスは、文字通り粉々に砕け散った。破片が四方八方に飛散したせいであちこちで被害報告が上がる。

 

 

 

 

 

 そんな中、コッチの部下も、C12ロボットも、全員が無言だった。人間はもちろん何故かロボット達も一種の共通体験を味わっていた。エネルギーを最大にチャージしたオリンパス・モンスのF-SPARに狙われてるUNSAの連中というのは、多分こういう心境なのだろう、と。どう考えても助からない武器に狙われている恐怖感。彼らはそれを痛感しまくっていた。

 

 コッチは自分の感情を制御しようとしていた。コッチは常日頃から『死は恥ではない!』と言い切る程の冷酷かつ残忍な性格であり、SDFの広告塔としての役割も果たす高いカリスマ性の持つ男なのだ。そんな人間が感情に流されてはいけない。

 

 しかし彼もまた1人の人間だった。目の前のモニターに映る、満面の笑みを浮かべながら横ピースをしているカークと名乗る男を見て、コッチは無意識に拳銃を抜いていた。部下が止める間もなくコッチはモニターにマガジンに装填されていた全弾を撃ち込んだ。

 

使い物にならなくなったモニターを見て、ようやくコッチは口を開いた。

 

「報復だ!復讐だ!あの船に死を!あの男に死を!火星を、我々を怒らせた事を後悔させてやれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、カット!」

 

「よーし!人を煽るのって楽しいな~。手伝ってくれてありがとね、少佐」

 

帰投する前にこんな事をしていたカーク艦長とコール少佐であった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。